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バイオマス発電はエコなのか? 燃料の自然発火で大規模火災が頻発 国内外の現地で起きている問題から考える

1月に火災を起こした下関バイオマス発電所。手前は野積みにされている木質チップ(山口県下関市彦島)

 全国各地で稼働しているバイオマス発電所のあちこちで火災が起こり、なかには何カ月も燃え続けて、地元の住民生活を脅かしている。政府が「脱炭素」「カーボン・ニュートラル」といって風力や太陽光とともに建設促進の旗を振ってきたバイオマス発電だが、ここにきて各地の住民たちがその問題点に気づき、反対の声を上げ始めた。バイオマス発電とはどういうものか。実際にバイオマス発電が稼働している現場でなにが起こっているのか。住民の反対運動で日立造船のパーム油バイオマス発電所建設計画を白紙撤回させた京都府舞鶴市で、その経験を全国に発信している「ウータン森と生活を考える会」事務局長の石崎雄一郎氏の報告や、バイオマスの専門家の意見をもとに考えてみたい。

 

計画を中止させた京都・舞鶴市民の報告

 

 バイオマスとは「生物資源量」という意味の生態学の用語で、エネルギー利用できる生物由来の資源(化石燃料は除く)のことだ。日本で利用されている主なバイオマスとしては、廃棄物系といわれる家畜排泄物、黒液(製紙工程副産物)や紙ごみ等、製材工場等残材などがあり、主に輸入に頼っている木質ペレット、アブラヤシ核殻(PKS)、パーム油などがある。それは冷暖房などの熱や輸送用燃料とともに発電に利用されている。

 

 2012年に再エネ固定価格買取制度(FIT)が始まって以来、バイオマス発電の認定件数と稼働件数は急増した。昨年4月からは、売電収入に補助金を上乗せした金額が売電事業者に支払われるFIP制度も始まった。

 

 2022年6月時点でFIT・FIP制度によって、全国で計560カ所・361万㌔㍗のバイオマス発電所が稼働しており、計895カ所・835万㌔㍗が認定を受けている【表参照】。問題は、稼働の3分の2、認定の8割が、輸入バイオマスを燃料とする「一般木材バイオマス」の発電所になっていることだ。また、2022~2023年に稼働した木質バイオマス発電を見ると、輸入バイオマスを主な燃料とする大規模発電と、地元の間伐材や木質チップを燃やす2000㌔㍗以下の小規模発電に二分される。

 

 大規模発電所の稼働があいつぐなか、PKSや木質ペレットの輸入が増加している。PKSは2021年の435・4万㌧から、2022年の510・3万㌧へ、木質ペレットは同じく311・7万㌧から440・8万㌧へ増加した。とくに木質ペレットは前年比41%増と、大幅な増加となっている。PKSはインドネシアやマレーシア、木質ペレットはカナダやベトナムからが多い【グラフ参照】。

 

 バイオマス発電について政府やメディアは、「燃料となる植物を燃焼させて排出されるCO2と、その植物が成長過程で光合成をして吸収するCO2の量は相殺されるので、カーボン・ニュートラル(炭素中立)」でありエコだと説明している。だがこれに対して、バイオマス発電を研究している専門家たちはこうのべている。

 

 まずバイオマス発電は、発電に必要な燃料を手に入れるために、海外の森林を大規模に伐採し続けなければならない。伐採すると長年蓄えられてきた炭素がCO2となって大気中に放出される。失われた生物多様性は二度と元には戻らないし、たとえ植林して人工的に再生させようとしても、それは100年以上もかかる。また、木材を加工し海外から日本に輸送する過程で、さらに膨大なCO2が排出される。そして発電をおこなうためにバイオマスを燃焼させタービンを回すわけだが、燃焼によるCO2などGHG(温室効果ガス)の排出量は、石炭火力よりも木質ペレットの方が多い。だからカーボン・ニュートラルでもエコでもない。

 

 バイオマス産業社会ネットワーク理事長の泊みゆき氏は、バイオマスを発電に使うと発電効率は30%台以下(水力発電は80%)で、FITなどの支援がないと継続は困難。一方、熱利用すると、利用効率は90%以上も可能で、燃料コストは化石燃料より安い。地元の林業振興と両輪で、バイオマスの熱利用を進める方が有効だと指摘している。再エネ推進といって無理矢理発電に使うのではなく、本来の性質にあった用途で使うべきという意見だ。

 

発電所の火災あいつぐ 木質ペレット発電

 

 バイオマス発電のなかで、木質ペレットを燃料とする発電所では、最近全国各地で火災があいつぎ、住民たちを驚かせている。

 

袖ヶ浦バイオマス発電所の火災(1月1日、DaigasアンドパワーソリューションのHPより)

 最近で一番被害が大きかったのは、千葉県袖ケ浦市のコンビナート地区にある袖ケ浦バイオマス発電所(7万5000㌔㍗)の火災だ。発電燃料である木質ペレットの貯蔵サイロ(最大1万㌧貯蔵可能)4基のうち1基で、今年の元日に発生した火災が鎮火せず、4カ月にわたって市消防による24時間体制の消火活動が続き、今月1日にようやく鎮火した。原因は、木質ペレットが自然発酵し、蓄熱して自然発火したためだと見られている。

 

 このバイオマス発電所は、大阪ガスの関連会社Daigasガスアンドパワーソリューションが運営するもので、火災によって臨海部を中心に異臭が広範囲に立ちこめ、市役所には市民からの苦情の電話が殺到した。

 

 また今年の3月14日には、京都府舞鶴市にある関西電力の舞鶴発電所(1、2号機合計180万㌔㍗)でも、バイオマス燃料を保管するサイロ2基が全焼する火災が起きた。この発電所は木質ペレットを化石燃料と混ぜて燃焼させている。関西電力は火災の原因について、①バイオマスサイロ内に貯蔵されていた木質ペレットが発酵・酸化して発熱するとともに、可燃性ガスが発生、②サイロ内と木質ペレットをボイラーへ運ぶ設備内に可燃性ガスが滞留、③発熱が進んだサイロ内の木質ペレットが自然発火し、それが可燃性ガスに引火した、と説明している。

 

 ごく最近では、今月20日午前5時20分頃、鳥取県米子市大篠津町にある米子バイオマス発電所(5万4500㌔㍗)で燃料タンクが燃え、火と煙があがる火災があった。これも原因は、燃料タンク内に貯蔵していた木質ペレットが自然発火したことだった。駆け付けた消防によっておよそ1時間後に消し止められたとはいえ、その3日前の17日夜にも同じ燃料タンクで火災があったばかりだった。この発電所は、三菱HCキャピタルや中部電力などが出資する合同会社が運営しているもので、山陰で最大規模のバイオマス発電所だ。

 

 こうした火災は近年、連続して起こっている。2019年4月16日、川崎市川崎区の京浜バイオマスパワー(出光興産などが出資)発電所内の、燃料の木質ペレットとヤシの核殻を貯蔵する倉庫で火災が起こった。1万5000平方㍍の倉庫に貯蔵されていた燃料は、約3万2500㌧にものぼる膨大なもの。燃えやすい燃料であるうえ、倉庫は開口部が少なく、熱と煙がこもった内部での消火活動は困難をきわめたという。10日間にわたってくすぶり続け、悪臭への苦情が市消防に連日寄せられた。

 

 2020年10月13日には、北九州市若松区のひびき灘石炭・バイオマス発電所で、燃料である木質ペレットを運ぶベルトコンベヤーから出火する火災が起こった。ベルトコンベヤーの摩擦熱が木質ペレットに引火したという。この発電所は、オリックスグループの響灘エネルギーパーク合同会社が運営している。

 

 これらの火災に共通するのは、木質ペレットは燃えやすく、大量に貯蔵されるとみずから発熱し、自然発火することがあるということだ。

 

木質ペレット

 この木質ペレットの自然発火について、電力中央研究所の報告を見ると次のような記述がある。「木質ペレット貯蔵時において、湿った空気の流入や結露により局所的な水分の集中が起こった場合、微生物による発酵熱が生じ、これが蓄熱されるとさらに自然酸化により発熱し、発火に至ると考えられる」。しかし、木質ペレットを大量に貯蔵した場合の異常発熱や可燃性ガスの発生など、自然発火に至る仕組みについては「知見が不足しており、安全性に関する指標が必要」としている。

 

 科学的な解明が不十分な木質ペレットの自然発火だが、木質ペレットの貯蔵量や貯蔵状態などの規制はどうなっているのか経産省の担当部局に聞くと、電気事業法などによる国の規制やガイドラインはないという。ただし、各自治体が木質ペレットを消防法にもとづく「指定可燃物」に指定していれば、届け出や立ち入り調査などは義務づけることができるそうだ。だがこれでは、つくるだけつくって住民が実験台にされている、といわれても反論できない。

 

 下関市内では彦島で、九州電力グループが運営する下関バイオマス発電所(7万4980㌔㍗)が昨年2月から稼働し始めた。ここでも今年1月21日午後九時頃に火災が発生しており、市消防の消火活動で鎮火された。原因は、停止作業中のボイラーからの逆火によるペレットの引火だという。3カ月の運転停止後、4月27日から通常運転に復帰している。ここは年間30万㌧の木質ペレットを使用する発電所で、木質バイオマス専焼としては国内最大級だ。

 

 現在、発電所側の敷地には木質チップが大量に野積みされており、高さは人間の背丈の倍ほどもある【ページ冒頭の写真参照】。専門家は「搬入時に一時的に野積みすることはあるが、何カ月も放置すると雨で自然発火する可能性がある」といっている。下関バイオマスエナジー合同会社に確認すると、「発電燃料だが、他の企業の所有」だという。

 

 また下関市内長府にも、木質バイオマス発電所(7万4950㌔㍗)が2024年9月の営業運転開始をめざして建設中だ。下関市は木質ペレットを再生資源燃料として「指定可燃物」に指定し、100㌔以上の貯蔵には消防署への届け出と立ち入り検査を義務づけている。

 

米国エンビバ社 ペレット工場の実態

 

 さて、この木質ペレットは、原木や樹皮、おが屑などを乾燥させて破砕し、熱と圧力で棒状に固めた固形燃料である。どこから輸入しているのかというと、主にベトナムとカナダからだが、去年はアメリカからの輸入が急増した。FITの買取価格が世界一高いからだ、と専門家は指摘している。

 

 現在、アメリカ南東部では、年産50万㌧をこえる大規模なペレット工場が次々に建設されている。世界最大の木質ペレット製造企業エンビバ社は、2025年までの長期契約の約半分、350万㌧以上を日本企業と締結し、さらに電源開発と石炭混焼発電向けに最大500万㌧供給する覚え書きを交わしている。

 

 このアメリカ南東部の様子を、泊みゆき氏が「バイオマス白書2023」で要旨次のように報告している。

 

 アメリカ南東部では至る所で小規模の皆伐がおこなわれており、エンビバ社のペレット工場周辺では自然林(広葉樹林)が純減していた。今後、エンビバ社が日本に850万㌧以上の木質ペレットを輸出するためには、東京23区より広い8万㌶の森林にある木材が必要になる。そのほとんどを工場周辺の森林から調達することになる。

 

 アメリカの大西洋岸平野は生物多様性ホットスポットで、ボブキャットなどの大型哺乳類をはじめ多様な生態系があるが、今後の森林伐採による影響が懸念されている。

 

 ペレット工場は24時間操業で動いており、数分ごとに木材を満載したトラックが出入りしていた。敷地内にはおが屑が山のように積まれていたが、防塵カバーはかけられていなかった。ペレット工場は黒人などマイノリティのコミュニティの側に建設されており、近隣では騒音や粉塵の被害が生じていた。住民は不眠、悪臭、のどの痛み、喘息の悪化を口々に訴えた。

 

 エンビバ社は大気汚染違反で何度か罰金を科せられているが、健康影響を定量化する研究やそれにもとづく規制が早急に必要だと考える。これはアメリカの問題であると同時に、輸入する日本も認識し対処すべき問題だろう。

 

住民の反対で頓挫 パーム油発電

 

 バイオマス発電には、パーム油を燃料とする発電所もある。京都府舞鶴市と福知山市の住民たちが白紙撤回に追い込んだのは、このパーム油バイオマス発電だ。2020年のことだった。パーム油バイオマス発電は、こうした住民運動の高まりと、燃料価格高騰のなかで、日本国内に8カ所あった発電所がすべて稼働停止に追い込まれている。

 

 舞鶴の住民たちがバイオマス発電の建設計画を耳にしたのは、2018年のことだった。この計画は、舞鶴市の基幹産業である日立造船が発案し、京都府と舞鶴市が誘致に積極的に動いたもので、舞鶴市喜多地区と舞鶴港喜多埠頭の府有地約3・8㌶にパーム油を燃料としたバイオマス発電所をつくるという内容だった。最大出力は6万6000㌔㍗で、パーム油はインドネシアから年間12万㌧輸入する。パーム油を使う発電所では国内最大規模で、FIT制度を利用して関西電力に売電するとした。

 

 住民たちは2019年6月以降、連続的に学習会を開き、パーム油発電は本当に「再生可能」なエネルギーなのか、FITによるバイオマス発電の問題点、パーム油の生産地で起こっていることなどを学んだ。当初、事業者が「環境にやさしいバイオマス発電」といって持ち込んできたので、いいことのように思う住民も多かったが、すでにパーム油バイオマス発電が稼働している福知山市に行って現状を知ることで危機感が高まった。

 

 そのなかで地元の会社経営者・森本隆氏が「舞鶴西地区の環境を考える会」を立ち上げた。考える会や自治会長らが、喜多地区のみならず他地区でもパーム油発電の問題点を伝える学習会を地道に続け、小学校やPTAにも働きかけをおこなった。オンラインでの反対署名は1万9000人から賛同が寄せられ、パーム油発電反対ののぼりが数多くの家の前に掲げられた。

 

 2019年3月の喜多地区住民アンケートでは、同地区の193戸中、回答があった188戸すべてがパーム油発電所建設に反対だった。2020年1月には、喜多地区自治会が満場一致で反対決議をあげ、自治会内に環境保全委員会を発足させた。

 

 舞鶴と福知山の住民たちは連携して運動を広げた。同年1月には両者の代表が経産省と環境省を訪れ、反対署名とともに建設中止(福知山は稼働停止と撤退)を求める要望書を提出した。

 

 2020年3月、住民たちは舞鶴バイオマス発電所の出資者であるAmp社に働きかけた。同社は、「投資回収が見込めないこと、地域住民の賛同が得られないこと」を理由に、パーム油発電に関わらないとの声明を出した。

 

 出資者不在となったが、しかし舞鶴市は推進の姿勢を崩さなかった。その後、建設・運営を請け負う日立造船が最初にFIT認定を受けていたこと(その後舞鶴グリーンイニシアティブ合同会社に譲渡)、多々見市長が日立造船・古川会長宛に発電所用地を斡旋する旨の信書を送っていたことも発覚した。

 

 住民たちは6月、日立造船の株主や投資している金融機関に対し、投資撤退を含めた同社との対話を促すためのダイベストメント(投資撤退)要望書を送り、株主総会へのアクションもおこなった。

 

 政党や議員頼みでない、住民一丸となった運動が広がるなか、同年6月26日に舞鶴市長が計画の断念を表明。7月1日からはFIT認定を取得していた舞鶴グリーンイニシアティブ合同会社の解散手続きが開始された。こうして市民の力で舞鶴のパーム油バイオマス発電計画は白紙撤回となった。また、福知山・三恵バイオマス発電所も同年12月、事業者が廃炉を決定した。

 

 住民たちとともに運動を担った「ウータン森と生活を考える会」事務局長の石崎雄一郎氏は、計画をストップさせた教訓について次のように語っている。

 

 「まず、住民みんなが団結すること。そして正しい知識を学び、知らせること。そして、行政や議会、経産省などへの働きかけ、金融機関や投資家への働きかけもおこなった。思いはみんなで暮らしやすい町にしていこうということであり、いろんな年齢層の人がそのために顔をあわせること自体が楽しかった。楽しみながらやることが長続きする秘訣ではないか」

 

東南アジアの熱帯雨林 伐採面積は九州に匹敵

 

 この住民運動のなかで、パーム油バイオマス発電について次のことがわかってきた。

 

 第一に、バイオマス発電所は近隣住民に健康被害をもたらすことだ。

 

 同じパーム油を燃料として使っていた福知山市の三恵バイオマス発電所(1760㌔㍗)についての教訓が明らかになっている。
 パーム油とA重油を燃やす三恵バイオマス発電所から、騒音や黒煙、悪臭が南風に乗って住宅地に広がり、頭痛や吐き気、めまいを訴える住民があいついだ。発電所から140㍍のところに自宅がある男性は、いろんな薬を処方してもらったが効かず、医者から引っ越しをすすめられた。すでに4軒が引っ越していた。悪臭は異常に高い数値を示し、「臭気指数規制」を導入している自治体なら規制対象になるほどだが、福知山市はそうした規制がなかった。

 

 事業者は住民説明会で「臭いは問題にならない」「近隣住民に迷惑をかけない」といっていたが、ウソだった。事業者と市が一緒になって、勝手に「騒音基準値」を変えたり、住民を説得するためのうち合わせをしていたことも暴露されている。

 

 舞鶴のバイオマス発電所の場合、建設予定地から半径1㌔以内には、喜多地区・下福井地区のほとんどが入り、小学校までは700㍍、防音壁からもっとも近い住宅まではわずか約80㍍である。しかも発電所の出力は、福知山の約40倍だ。

 

 第二に、パーム油をつくるために東南アジアでとり返しのつかないほどの森林破壊がやられていることがわかった。

 

 熱帯雨林でしかつくられないパーム油は、アフリカ原産のアブラヤシの果実から抽出される植物油だ。パーム油は現在、ほとんどが東南アジアで生産され、多くが食料品や化粧品として使われてきた。最近になってバイオマス発電の需要も高まり、インドネシアやマレーシアの豊かな熱帯雨林が、アブラヤシのプランテーション(大規模単一農園)をつくるために破壊されている。破壊された熱帯雨林の面積は1990~2010年の20年間で360万㌶といわれ、それは実に九州の総面積に匹敵する。

 

 この乱開発の対象になった東南アジアの森林の多くは、泥炭地である。泥炭地とは、枯れた植物が湿地の水中で分解されずに蓄積したもので、場所によっては最大20㍍以上もの厚さの地層となっている。つまり泥炭とは、石炭になる前の状態に近い土といえる。インドネシアではとくにスマトラ島東部などを中心にこの泥炭地層が広がっており、その上に熱帯雨林が茂っている。

 

 アブラヤシ農園に転換するにはこの熱帯雨林を伐採しなければならず、そのために湿地の水を抜くわけだが、そうすると泥炭は乾燥し、とても燃えやすくなる。インドネシアでは毎年、雨の少ない乾季のきわまった9~10月頃、森林火災が急増する。火災は何週間も、何カ月も続く。深刻なのは、火災が泥炭地に燃え移ることだ。そこでは一度発火し、土の中にまで火が入ってしまうと、完全に消火することがきわめて困難になる。2015年のインドネシアの森林火災ではオラウータンが焼け出され、空港閉鎖、学校休校となり、煙害は周辺国に及んだという。

 

 さらに泥炭地は、地球の陸地面積のわずか3%にすぎないが、世界中の森林を合わせたよりも多くの炭素が貯えられている。この泥炭が燃えると、通常の土地が燃えたときの20倍ものCO2が排出される。2015年のインドネシアの森林火災では、日本の1年間のGHG(温室効果ガス)総排出量をこえるGHGが排出された。

 

 アブラヤシのプランテーションは、そのほか先住民族の生活圏の破壊、生物多様性の崩壊など、多くの問題を引き起こしている。そのため米国やEU諸国では、パーム油による発電を禁止したり規制をかけたりしている。ところが日本では、パーム油はバイオマス燃料として認可されており、FIT制度で20年間、高額の売電収入を手に入れることができる。その原資は、私たちが毎月払う電気料金の中に含めて徴集されている再エネ賦課金だ。

 

 「地球にやさしいクリーンなエネルギー」というかけ声で、国のお墨付きを得た大企業が、東南アジアで大規模な森林伐採をやって住民生活や生態系を破壊し、森林火災まで引き起こし、日本国内でもあちこちで火災や健康被害を引き起こしている。これに対して大企業のもうけのために住民生活を脅かすなと、各地で住民たちが行動に立ち上がり、コミュニティの結束を強めている。

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この記事へのコメント

  1. 青木一政 says:

    木質バイオマスが実際にはエコでないことを突いた良い記事と思います。惜しむらくは福島県の汚染林を「除染」目的(実際には除染にならないが)で皆伐してバイオマス発電で燃やしている実態=放射能のバラマキ。更には、産廃業者が産廃焼却炉建設目的で、FIT認定を採り形式的にバイオマス発電とすると、廃掃法による焼却炉規制から免れられ、住民の反対運動の目くらましになっている点も掘り下げて欲しい。(福島県伊達市のバイオマス発電では、住民説明会で建築廃材60%、廃プラ40%と公言しています。

  2. 菅原義雄 says:

    東北大震災で汚染木をチップにして燃やしました。震災の復興の為に震災復興に協力したバイオマス発電所でしたがこれは実際政治家自身の選挙活動の点数稼ぎに利用され当社のガスエンジンは燃焼により日に日に高まる放射能濃度でエンジン劣化が急速に進み壊れてしまいました。一億円のエンジンを20年売電をかけて返済するはずの原価焼却もできずに終わり政治家に対する怒りが湧き出しました。震災協力はなんだったのか?技術者としてはこの機会を活用し地域の林業の活性化に寄与する政策を打ち出し地域を豊かにすることで邁進する政治家で欲しかった。政治家は地域に関心はなく自分の選挙のことしか頭にないのです。

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