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閣僚が相次ぎ核武装発言 核大国になる再処理工場運転

 日本で初の使用済み核燃料の商業用再処理工場の最終試運転が3月31日、青森県六ヶ所村で開始された。来年8月から本格操業をめざしている。フル稼動すれば全国の原発で発生する使用済み核燃料のうち800㌧の処理ができ、4㌧強のプルトニウムをとりだすことができる。プルニウムはアメリカが長崎に投下した原爆の材料である。当初計画していた高速増殖炉での使用は、1995年のもんじゅの重大事故で破たんしている。とり出したプルトニウムは既設の原子炉で使おうとしている(プルサーマル計画)が、それはカムフラージュでしかない。再処理工場の運転を急ぐのは、原爆の材料にする以外になく、核武装の準備を現実的に推進していることを示している。

  破たんしている核燃料サイクルをごり押し
 青森県六ヶ所村に建設した使用済み核燃料の再処理工場は核燃料サイクル施設である。核燃料サイクルとは、核燃料となるウランの採鉱から、核燃料を原子炉で使用した後の放射性廃棄物の処理処分までの一連の流れのことをいう。日本の原子力政策は「資源の少ない日本で、原発から発生した使用済み核燃料を再処理してプルトニウムをとり出し、それを高速増殖炉で燃やしてさらに多くのプルトニウムを生産する準国産のエネルギーとなる」という核燃料サイクルの確立をとなえてきた。
 これは、アメリカの要求でもあり、原発の燃料となるウランはアメリカの余剰ウランの受け皿であった。現在全国で五五基の原発が運転を開始し、年間で1000㌧の使用済み核燃料が発生する。これまでは使用済み核燃料の再処理は、イギリス、フランスに委託してきた。04年末現在で、日本国内に5・7㌧、英仏に37・4㌧、合計43・1㌧のプルトニウムを保有している。これは原爆約5000発分に相当する。六ヶ所村の再処理工場が07年に計画どおり運転開始になれば、年間4㌧ずつふえていく。
 核燃料サイクル確立の当初の計画では、再処理でとり出したプルトニウムは高速増殖炉で使用することになっていた。だが、95年12月に「もんじゅ」が冷却材のナトリウム漏れの重大事故を起こし、計画は破たんした。ばく大な資金を投じて、使い道のないプルトニウムを抽出する再処理工場が必要なのかどうか、電力業界はおもに経済性の面から核燃料サイクル見直しの論議を高めてきた。核燃料サイクルコストは、直接処分した場合に比べ、1・5倍から1・8倍高くつくという試算もされ、経済的理由からは再処理を強行する理由はない。
 また日本は97年に「余剰プルトニウムは持たない」と世界に宣言している。高速増殖炉の破たんで、プルトニウム保有の合理的な理由はない。そのため、一時しのぎとして、国は従来の軽水炉でプルトニウムを燃やすプルサーマルの導入を強行し、なんとかプルトニウム保有を正当化している。
 
 コスト高く 重大事故も
 ドイツでは90年代はじめに国内での再処理と高速増殖炉建設の放棄を決定。再処理を国外の再処理工場(フランスとイギリス)に委託して、MOX燃料を国内にある既存軽水炉の一部だけで使用することとした(これは、日本のプルサーマル計画に相当)。おもには経済的な理由であり、使用済み核燃料を再処理した場合と、直接処分した場合のコストでは再処理した場合は1㌔㌘当り約70万~120万円増額になるとの試算を出している。
 日本では、最近になって使用済み核燃料を再処理した処理コストは18兆8000億円になるとの試算を発表した。これには、廃炉の費用や廃棄物を地中に埋めて最終処分する費用はふくまれておらず、コストはさらにふくれる。原発関連の技術評論家の1人は「直接処分に比べて、再処理・プルサーマル方式は、年間当り1つの原子炉で100億~200億円の割高になる。東京電力がすべての原子炉でプルサーマルを実施すれば年間1700億~3400億円の損失になる」と試算している。経済面でいけば、核燃料サイクルは高くつきすぎる計画である。
 また、安全面でももんじゅの事故をはじめ、JCOの臨界事故、東海村再処理工場の爆発・火災事故など、通常の原発での事故以上に重大事故が発生している。核燃料サイクル施設では強い放射能をもつ物質を大量にあつかい、また技術的にもまったく未完成なためである。ドイツは90年代はじめに建設中の高速増殖炉を臨界させないまま中止したのは、技術上の問題があったからでもある。現在、高速増殖炉の開発を継続しているのは、フランス、ロシア、日本の3カ国だけであり、日本のもんじゅ開発もとん挫中である。再処理工場もまた、イギリスは工場を閉鎖しており、フランス、ロシア、日本だけにあり、安全性は確立されていない。
 さらに技術的な面だけでなく、原爆の材料が大量に蓄積されている再処理工場など核燃料サイクル施設は、格好の武力攻撃の標的になるという問題がある。フランスでは、9・11事件直後、再処理工場の警備を空軍に依頼している。
 このように、経済的にも安全性の面でも、核燃料サイクル確立政策は、当初計画が破たんし、使い道のないプルトニウムがたまるばかりである。にもかかわらず、国は六ヶ所村の再処理工場の稼働を急ぎ、さらに大量のプルトニウムを生産しようとしている。そこには明らかに発電とは別目的の、核武装準備の狙いがある。しかも遠い将来の問題ではなく、現実的な課題としてとりくまれている。

 「日本の核武装」を要求するアメリカ
 最近では、閣僚らの「日本の核武装」にかんする発言があいついでいる。
 安倍晋三官房長官は02年、副官房長官時代に早稲田大学で講義し、「大陸間弾道弾(ICBM)を持つのは憲法上、問題ではない」「核兵器使用は違憲ではない」「核兵器を持ちたいなら堂堂とそういうべきだ」等等発言した。この安倍発言が問題になったとき、当時の福田官房長官は「理屈からいえば(核兵器)は持てるだろう」と答え、「抑止力としてそういうもの(核兵器)を持っていた方がいいという考え方もある……」「“憲法改正”をいう時代だから、非核三原則だって、国際緊張が高まれば、国民が“(核兵器を)持つべきではないか”となるかもしれない」と発言している。
 また、麻生太郎外相は昨年末、チェイニー米副大統領らとの会談で「常任理事国はみな核を持っている。アジアではインドもパキスタンも持っているという話もある。北朝鮮がこのまま核開発を続ければ日本も核武装しなければならない」と発言。さらに拉致被害者を救う会の佐藤会長は「むこう(北朝鮮)は制裁を宣戦布告とみなし、ミサイルをうちこむということに必ずなる。日米安保条約を発動し対応すると首相は答えるべきだ。戦争を恐れてはならない。長期的には我が国が核ミサイルを持つことだ」と主張している。
 小沢一郎氏は02年「核兵器をつくるのは簡単だ。一朝にして何千発の核弾頭を保有できる。原発にプルトニウムは3000~4000発分あるじゃないか」と、中国を威嚇する発言をおこなった。
 「日本の核武装」をアメリカはどうみているか。
 03年3月、チェイニー副大統領は北朝鮮の核開発にふれ、「日本は核武装問題を再検討するかどうかの考慮を迫られるかも知れない」とのべている。「アジア2020年」という文書のなかでも「核抑止力はアジアの安全保障にとって重要になる……アジアにおける信頼できる同盟国と、広範囲にわたる抑止力のシステムを共有する」ことをめざす、すなわち、アメリカとの緊密な連携のもとでの日本の核武装を要求している。
 この方向で自衛隊も「防衛力整備上考慮すべき基本的考え方」のなかで「米国は戦略的にも戦術的にも核戦力を中心とした装備をおこなっているので、連合作戦においては、米国は核使用をおこなう可能性がある。したがってわが国としても核戦争遂行力を保有することは望ましい」とのべ「アメリカとの共同作戦を遂行する場合、自衛隊が核戦争遂行力を持つことは不可欠だ」としている。
 北朝鮮にたいして排外主義をあおるのと並行して、「日本の核武装」への世論誘導がたくみに仕掛けられている。しかも、日本は国際的にはすでに「日本の技術水準があれば、核武装は六カ月あればできる」と見られる潜在的な核大国である。使い道のないプルトニウムを際限なく生産する再処理工場の稼働は、核武装の道を突きすすむためのものであり、日本をアメリカの原水爆戦争の戦場にする許しがたい計画である。

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