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「営業規模に見合う補償を」 コロナ時短長期化で飲食の苦境増す 広島市流川の繁華街

 昨年12月から県による新型コロナ感染防止の集中対策が続いてきた広島市では、5日に3カ月ぶりに新規感染者がゼロとなり、政府の分科会が示す感染段階で最も高い「ステージ4」(爆発的感染拡大)相当を脱した。だが、昨年12月初旬からの長期に及ぶ飲食店等への休業・時短営業要請によって、客足が途絶えた中心繁華街では灯が消えた状態が続き、廃業のため改装に着手したり、空き店舗の看板も増え始めた。とくに数十人規模の従業員を抱え、複数店舗を経営する店ほど苦境に陥っており、営業活動の制限にともなう十分な補償をおこなうことが死活問題となっている。

 

時短要請で人通りが減り、飲食店の灯が消えている広島・流川の繁華街(6日)

 広島市内では昨年12月中旬から感染が急拡大し、広島県は同12日から感染防止集中対策を開始し、酒類を提供する飲食店への酒の提供時間や営業時間の短縮(休業含む)を要請した。1月18日から始めた第二次集中対策(2月7日まで)では、それまで市内中心部に限定していた要請範囲を広島市全域に拡大。酒類の提供を午前11時~午後7時までとし、全期間を通じて要請に応じた場合には一店舗当り84万円(1日4万円)を支給するとした。


 さらに現在、その措置を2月21日まで延長し、時短営業を午前5時~午後9時までに緩和しつつ、協力に応じた場合には一店舗当り28万円(1日1万円)、休業には38万円を支給するとしている。時短要請の対象外である県内の飲食店には、前年比売上30%減などを条件に、県と市町があわせて一律30万円を支給する方針だ。


 また広島県は、広島市内2カ所にPCR検査場をもうけ、高齢・障害者施設や医療機関、飲食店のほか、消防や理容、廃棄物処理業者などの職員、家族、出入り業者、利用者などが無料で検査を受けられるようにし、無症候感染者の早期発見に力を入れている。4月からは市内70万人(想定28万人)を対象にしたPCR検査も始まる。


 だが、「クラスター発生源」とされた飲食業界の窮状は、想像以上に深刻な状態にある。全国ニュースでは、緊急事態宣言にともなう飲食店への協力金で「車を買った」など一部の特殊事例がとりあげられ「コロナ太り」「協力金バブル」などといった言葉が煽られているが、多くの飲食店は依然として厳しい状態に置かれており、わずかな協力金では存続できない飲食業者からは、国や行政の補償のあり方を問う声が強まっている。

 

「億単位の借金」の声も 深刻な中規模店


 流川をはじめ市内に7店舗を構え、地元産の食材を使った鉄板料理やしゃぶしゃぶなどを提供してきた男性経営者は、コロナ禍で2店舗を閉め、要請に従って4店舗は休業したが、1店だけは時短要請には応じずに営業を続けてきたという。


 「感染者が出るたびに、まるで悪者のように飲食店が名指しで攻撃されてきた。1月からは時短営業すれば1日当り4万円の協力金が支給されるが、店舗の規模、従業員数、売上額によって赤字幅はまったく違う。1人や2人で回している個人店と、うちのように従業員だけで20人、バイトを含めると50人規模の店が一律では割に合わない。従業員は店にとってなくてはならない存在で、彼らの生活を守る義務がある。まったく売上がない状態で、数百万円もの家賃、給料の全額補償、社会保険料、厚生年金、労働保険などの負担は増し、昨年11月の決算では5000万円の赤字だった」と話す。


 「毎年高い税金を払っているのに、それに応じた補償がされないのならば、あまりにも不公平」と男性は語気を強める。


 「税務署が昨年度の決算や確定申告を見れば、どの店がどれだけの負担をして苦しんでいるのかは一目瞭然だ。その額に応じて売上を補償する措置がなされなければ、生殺しと同じではないか。“弱者を救済しています”というポーズで一般受けはいいかもしれないが、従業員や卸業者の生活まで握っている中規模店は首が絞まる一方だ。しかも、協力金も給付金も課税対象で、来年の納税額に上乗せされる。国や行政が守らないのであれば、例え悪者扱いされても店を開けて、従業員やなんの補償もない納入業者さんの収入を保障してあげなければいけない。国は感染症法改正で、要請に応じない店に行政罰だの、過料だのといっているが、罰金を払っても店を続けるつもりだ」と怒りをにじませた。

 

 店側も従業員の感染リスクを回避するためにマスクやシールドの装着、消毒、湿度調整、換気を徹底し、予約客であっても「マスクなし入店お断り」などの規制のもとで営業している。だが、「夜だけ営業自粛で、午前5時から夕方までは通常営業を許可するような感染対策にどんな合理性があるのか」「休業や検査は短期間に一斉にやることで抑え込まなければ、中途半端では、出口が見えないまま風評だけが拡大するのではないか」との疑問の声も聞かれる。


 県外にも店を展開している飲食業者からは「すでに3億円の赤字」「このままでは夜逃げしなければいけない」という声も聞かれ、「まだ余力があるうちに……」と廃業を決断する店もある。貸テナントの場合は半年ほど前に家主に申告しなければならず、原状復帰のための改装費も数百万円を要するケースもあり、決断も容易ではない。


 別の割烹店主も「持続化給付金や協力金をもらっても、すべて雑所得や一時所得に計上されるので、来年の納税額が上がる。雇用調整助成金も給料の6~7割が補償される程度で、それでは彼らも生活ができないので100%払っている。しかも、今年から理由もわからぬまま年金が減額されたり、国は支出した分をしっかりとり戻すようになっている。“協力金バブル”など、ぬか喜びでしかない。近所でも20年やってきた料亭をはじめ、年末年始でかなりの店が廃業した。コロナ明けにどれだけの店舗が生き残っているのかは不明だが、お客さんや従業員がいる以上は踏ん張って乗り切るしかない」と話した。8日からは通常営業を再開する予定だ。

 

 飲食に限らず、それに連なる卸売業者、食品加工業者、生産者など関連産業にも深刻な打撃を与え、消費減退の波が地域全体に広がっている。集中対策の効果を多角的に検証しつつ、その副作用については度合いに応じた手厚い支援をおこなうことが急務となっている。

 

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