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食料輸出制限の動き 「食料不足招く」とFAO等が警告

 新型コロナウイルスの感染が世界的規模で広がり、世界の食料貿易にも輸出規制などの影響が出始めている。すでに穀類の国際相場は上昇基調になっている。食料自給率37%と先進国のなかで最低の日本にとっては緊急時に、国民に食料を安定供給する備えをどうとるのか課題になっている。

 

 国連の食料農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)の事務局長が連名で3月31日、新型コロナと食料安全保障や食料貿易について共同声明を発した。

 

 共同声明では、世界の多くの人々の食卓や食料安全保障が国際貿易に依存しており、各国の新型コロナによるパンデミック封じ込めのための行動が世界の食料貿易と安全保障に影響を与えないよう、輸出制限などの措置をとらず協調する必要があると呼びかけている。 共同声明のなかでは「食料品の入手可能性への懸念から輸出制限のうねりが起きて、国際市場で食料品不足が起きかねない」と警告を発している。

 

 国連機関がこうした呼びかけを発するのは、すでに食料輸出制限の動きが出ているからだ。

 

 世界有数の小麦輸出国の一つであるカザフスタンは、小麦粉をはじめジャガイモやソバ、砂糖、ひまわり油などの輸出を禁止した。また、ロシアやウクライナが小麦輸出規制に動くことを予想して、小麦価格が急騰している。

 

 ロシアは小麦の国内価格の上昇を防ぐためすでに備蓄の放出に踏み切り、3月20日から10日間、全種類の穀物輸出を一時制限する措置をとった。

 

 世界3位のコメ輸出国ベトナムも、輸出の新規契約の一時停止措置を決めた。ベトナムのフック首相は3月28日、ベトナム商工省に対しコメの新規輸出を制限するよう命じた。世界的な新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、食料の供給が混乱すると予測し、社会の不安払しょくのために、国内の食料在庫を確保するためだ。当面は計27万㌧のコメを備蓄する。

 

 3月18日に開かれた会議で、議長を務めたフック首相は、「いかなる状況下においても、国民の食料確保は必ず保障されなければならない」と強調した。コメはベトナムにとっての重要な主食だが、ベトナムはインド、タイに続く世界第3位のコメ輸出国でもある。コメがベトナムの農産物のなかでも外貨の稼ぎ頭で、昨年のコメ輸出量は637万㌧、輸出総額は28億1000万ドンにのぼった。

 

 また、カンボジアのフン・セン首相も3月30日、新型コロナ感染拡大を受けた食料備蓄の一環として4月5日から精米の輸出を当面停止することを命じた。5日以降国際市場への精米輸出は全面禁止される。カンボジアは年間50万㌧のコメを輸出している。

 

 タイは、卵が通常価格の3倍に跳ね上がったことを受けて1週間の輸出禁止措置をさらに1カ月延長することを決定した。

 

 米CNNは3月25日に、3月14日までの1週間、米国の卵販売量が44%急増し、3月初旬以降、卵の卸売価格が180%上昇したと報じた。ウォルマートなど米大型流通企業は卵など買い占めの可能性がある食品に対しては数量制限をして販売している。

 

 アメリカではメキシコからの季節的農業労働者の不足で多くの作物の生産が危機にさらされている。ヨーロッパでも北アフリカや東欧からの移民労働者がおもに農業労働に従事しており、農業生産の減退が懸念されている。

 

 また、世界三大信用評価会社の一つであるフィッチは、労働集約的な農業が新型コロナによって大きな打撃を受ける可能性について言及した。パーム油や新鮮肉類を加工する場所では多くの人材が必要で、これにともなって感染の懸念が大きくなり、閉鎖など制限措置を受けることになると指摘した。

 

 マレーシア最大のパームオイル生産地であるサバ州は三地域のパームオイル農園の閉鎖を命じた。一部の従業員が新型コロナウイルスの検査で陽性反応を示したからだ。マレーシアはまた、3月18日から2週間にわたり国家封鎖決定を下したが、これを受けて隣国のシンガポールが騒然となった。

 

 マレーシアから供給される各種新鮮農産物のルートが止まることを懸念し、シンガポール国民が一時スーパーマーケットに押しかけ果物や野菜を集中的に購入する現象が起きた。

 

 フィッチはまた、新型コロナの長期化で農産物のサプライチェーンが影響を受ければ、食料を多く輸入している中東各国や韓国、日本なども比較的深刻な打撃を受けるだろうと指摘している。

 

 ロシアのタス通信は、コメ輸入が多いアジアとアフリカ国家が打撃を受ける可能性が大きいと伝え、とくにコメ輸入が多いフィリピンをあげた。

 

 また、高温砂漠気候のため食料品の80%以上を輸入に頼っているアラブ首長国連邦(UAE)とサウジアラビア政府も食料の備蓄を急いでいる。

 

 現在までに穀物輸出の禁止措置をとったのは、ベトナム、タイ、カザフスタン、エジプト、セルビア、カンボジアの6カ国。FAOは、4月から5月にかけて最悪の状況がもたらされる可能性があると警告している。

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