関西電力の岩根茂樹社長は27日に臨時の記者会見を開き、同社の八木誠会長や岩根社長ら役員・社員20人が福井県高浜町の森山栄治元助役(今年3月死去)から、2011年2月から18年2月までの7年間に約3億2000万円分の金品を受けとっていたことを明らかにした。
高浜町には関電の高浜原発1~4号機が建設されている。森山元助役は1969年に高浜町役場に入り、建設課長や収入役をへて1977年から退職する87年まで10年間にわたって助役を務めた。この間の1985年に高浜原発3、4号機が着工し、営業運転を開始した。同元助役は原発誘致を中心的に主導し、退職後も町の都市計画審議会で委員を務めるなど行政と深くかかわってきた。
元助役から受けとった約3億2000万円のうち約1億8000万円は、八木会長、岩根社長、豊松秀己元副社長・原子力事業本部長、森中郁雄副社長・原子力事業本部長(元高浜原発所長)、大塚茂樹常務執行委員(元高浜原発所長)、鈴木聡常務執行役員・原子力事業本部長代理の6人が受けとっていた。このほか14人が残りの約1億4000万円を受けとっていた。
岩根社長は受けとった金品は「一時的に保管していたがすべて返却した」「基本的に違法な行為ではなく、不適切な行為であったため公表はしなかった」と説明し、すでに会長、社長に対し報酬減の処分をおこなっており、問題はないとの見解を示した。
昨年1月に金沢国税局が高浜原発や大飯原発の関連工事を請け負う高浜町の建設会社への税務調査に着手したことで、これらの会社から工事受注に関係する手数料として森山氏に約3億円の資金が流れていたことが発覚した。なお、高浜町の建設会社は2015年から18年に原発関連工事を最低でも25億円受注していた。このカネがキックバックのような形で元助役を介して関電幹部らにわたっていたと見られている。森山氏への税務調査によって、関電役員ら6人の個人口座に送金したり、菓子袋を関電側に届けていたことも明るみに出た。総額は7年間で約1億8000万円にのぼった。
国税局の調査が始まった昨年、関電側は慌てて森山氏から受けとった金品の全部や一部を返却するなどしたうえで、岩根社長が記者会見して社内調査結果を発表して謝罪し、これ以上の追及を逃れようとしている。
原発関連の工事費は、電気料金から出ている。その一部が関電役員らに環流しており、「原発マネー」の不透明な流れに対する疑惑は深い。しかも明らかになったのは国税局による税務調査の期間内のことであり、これ以外の期間にも「原発マネー」の還流があるのではないかと疑惑が深まっている。
東京電力福島第一原発事故以後、関電が電力業界での力を増し、今年6月には岩根社長が大手電力会社でつくる電気事業連合会会長に就任し原発再稼働強行を主導している。社会的な責任も大きく、今回の疑惑の波紋は関電だけにとどまらず、他の電力会社も同様に「原発マネーの還流」がおこなわれているのではないかという見方が広がっている。
今回発覚しているのは紛れもない収賄であり、「保管していた」で済まされる問題ではない。原発事業を通じて、電力会社幹部たちが私腹を肥やすという犯罪を検察や捜査機関は黙認するのか、東電幹部たちが無罪放免にされた現実と併せて問われている。