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欠陥機F35を150機も爆買い 米軍需産業にATM扱いされる防衛省

 防衛省が16日、航空自衛隊に新たに導入する垂直離着陸戦闘機の選定作業を終え、垂直離着陸が可能なF35B(米ロッキード・マーチン社製)に決定したと発表した。1機当りを約140億円と見込み、来年度予算概算要求には6機導入する経費を盛り込む方向だ。昨年12月に閣議決定した防衛計画の大綱(防衛大綱)や中期防衛力整備計画(中期防)に盛り込んだヘリ搭載護衛艦「いずも」空母化の一環で、自衛隊を攻撃部隊へ変貌させる動きを加速している。

 

 安倍政府は「米国製兵器を買え」という要求にそって、F35を105機買い、これとは別に「いずも」に搭載するF35Bを42機買いこむ方向を明らかにしている。合計でF35を約150機日本国内に配備する計画を進めている。

 

 だが大手メディアが「最新ステルス戦闘機」ともてはやすF35は「未完成機」であり、事故を何度も起こしている欠陥機だ。F35は開発開始から20年近く経過し、米軍は試験運用を続けながら改修し完成に近付ける「スパイラル開発」という手法をとっている。つまり実験機に米兵を搭乗させ、事故が起きれば改修するというもので、いつ事故が起きてもおかしくない状態で実戦運用を続けている。

 

 そのため2017年6月には操縦士が酸素不足になる事例が5件も発生した。2018年1月には米会計検査院(GAO)が未解決の欠陥が966件あり、このうち111件が危険な事故に直結する内容だったと発表した。2018年9月には米サウスカロライナ州でF35Bが墜落し、今年4月には航空自衛隊のF35Aが墜落している。

 

 さらにF35は米国の空軍、海軍、海兵隊の要求をみな基本設計に組み込んだため、機体が重すぎるという戦闘機としての致命傷を抱えている。燃料を満載するとエンジン1個の単発でありながら機体重量は35㌧もあり、エンジン2個のF15戦闘機(40㌧)とあまり変わらない。馬力が弱いうえに機体が重いため「曲がれず、上昇できず、動けない」と揶揄されるほど動きが鈍く、40年も前に開発されたF16戦闘機との模擬空中戦に負けている。衛星情報収集技術は最先端であるため団体戦になると力を発揮するが、一対一の空中戦になると余りにも弱いと評価されてきた。

 

 加えて米国防総省運用試験評価局はF35Bの寿命が製造当初の想定(8000飛行時間)を下回り、2100時間以下にとどまるとの見解を示した。これは国産のF2戦闘機の寿命(6000飛行時間)の3分の1である。このような米国製欠陥機を大量に買い込み、自衛隊に配備する動きが顕在化している。

 

 そして同時進行するのが垂直離着陸できるF35Bを、海上自衛隊最大のヘリ搭載型護衛艦「いずも」(全長248㍍、基準排水量約1万9500㌧)に搭載し自衛隊に空母を配備する計画である。

 

 この計画は防衛省が2017年頃から「いずも型護衛艦」と「ひゅうが型護衛艦」(いずも型より少し小型)を対象に調査研究をすすめていた。当初は「米軍の後方支援実施」を目的とし、米軍のF35Bが垂直着艦したり航空機用の昇降機で船内の格納庫に移動させることを想定していた。ところがその後、日本にF35Bを買わせて自衛隊を最前線に配備し、米軍が後方へ下がる軍事配置の具体化が進んだ。

 

 防衛省が計画している「いずも」の空母化は甲板に耐熱性加工を施し、F35Bの垂直離発着を可能にする内容だ。甲板改造で「いずも」にF35Bを10機搭載できるようにし、出撃や燃料補給に活用することを想定している。

 

 現在、日本にヘリ搭載型護衛艦が4隻あるが、それをみな空母化するなら、日本周辺海域に空母を4隻配備したのと同じ意味を持つことになる。それは艦載機を最大90機搭載できる米軍横須賀基地の原子力空母「ロナルド・レーガン」、米軍佐世保基地に配備した超大型強襲揚陸艦「ワスプ」(輸送機や攻撃ヘリなど約30機搭載可能)とあわせ、空母6隻体制でアジア近隣諸国ににらみを効かす体制である。

 

 安倍首相は「いずも」が就役した2015年3月、参院予算委で自衛隊を「我が軍」と公言した。そして憲法が定める「戦争放棄」の規定を踏みにじり、自衛隊を米軍の下請として戦争に動員する体制づくりを推し進めた。安保関連法では米軍が攻撃されれば即座に自衛隊が応戦していくことにつながる集団的自衛権を認めた。南スーダンに派遣した自衛隊員に「宿営地共同防護」や「駆け付け警護」の任務を担わせ、米兵や米軍宿営地が攻撃されれば自衛隊が応戦するための地ならしをした。朝鮮半島の軍事緊張に乗じてヘリ搭載護衛艦が米軍艦船を守る「米艦防護」の前例をつくった。そして今では米本土防衛のため「イージス・アショア」など攻撃ミサイルを、日本列島に張り巡らそうとしている。

 

 こうしたなかで「専守防衛」「国防」の建前をなし崩しにして国産空母の配備に乗り出している。米軍に成りかわり他国を攻撃する戦力を自衛隊に持たせようとする動きが露わになっている。

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