広島市中心部の上空で米軍オスプレイの飛来があいついで目撃されている。岩国基地に空母艦載機60機が移駐し、極東最大の米軍基地に変貌して以来、低空飛行訓練を含む広島県内への飛来数は度をこえて増加している。74年前、原爆を投下した広島市の頭上まで傍若無人に飛びかう横暴さは、被爆地に対する挑発的な行動として市民の怒りをかき立てている。
今月15日、広島市中心部でオスプレイ2機が南東から北西方向に飛行していく姿が目撃され、機体から岩国基地を飛び立った米軍オスプレイであることが確認された。広島県国際課によると、同日は平和公園近辺から4件、北広島町から3件の目撃情報が寄せられている。これとは別に、広島市に対し、安佐南区や安佐北区から同じような米軍機の目撃情報が計9件寄せられた。2017年12月にもオスプレイ2機が中区上空を飛行して物議を醸したが、広島市中心部で米軍機の目撃情報があいつぐことは珍しい。
目撃情報を集約した広島県は17日、事実確認と飛行の禁止を中四国防衛局に申し入れた。これらのオスプレイ2機は横田基地配備機で、同基地と岩国基地を往復したさい、復路で広島市中心部の上空を通過し、北広島町をまわって横田基地に帰還したことが明らかになっており、本来避けるべき住宅密集地の上空を意図的に飛行したと見られている。
広島県の集計によると、昨年度の米軍機の飛行による騒音で70デシベル以上を観測した回数は、県内6カ所で4969回にのぼっており、前年度と比べて1・3倍に増加している。とくに岩国基地からの飛行ルートに近い大竹市阿多田島では3182回(前年比1・4倍)、江田島市沖美町では169回(同1・9倍)に達した。
2017年10月には北広島町の上空で訓練中の米軍戦闘機が、敵のミサイル攻撃をかわすための「フレア(火炎弾)」を十数発発射する事件も発生しており、住宅密集地を戦場に見立てた常軌を逸した訓練は今も止むことがない。
岩国基地の配備機数が120機をこえたことに加え、岩国基地を中心にして北側は山口県萩市から島根県浜田市、南側は愛媛県伊方町から西条市に至る広大な空域は横田空域と同じ米軍管理空域「岩国空域」に指定されていることが背景にある。山口県は光市から東部地域、広島県は廿日市市から大竹市、江田島市もすっぽりとこの空域の中に含まれ、米軍機が飛行可能というよりも、米軍しか飛行できない。米軍の許可なしには日本の航空機は進入することができない治外法権空域となっている。空域内の松山空港(愛媛県)に向かう民間機は、岩国基地の管制官の指示どおり飛ばなければならず、空域のすぐ西側にある大分空港へ向かう民間機も、高度制限などの制約を受けている。2016年のオバマ前大統領の広島訪問時には、岩国基地からオスプレイ4機に先導させ、「岩国空域」を通って広島ヘリポート(旧広島西飛行場)に降りており、この空域が「米軍占有」であることを内外に誇示するものとなった。
岩国基地では23日から、九州沖で「空母艦載機パイロットによる着艦資格取得訓練(CQ)」がおこなわれ、約60機の艦載機が滑走路の運用時間外にも離着陸をくり返している。騒音や墜落事故の危険性にとどまらず、「本土の沖縄化」の象徴として広島沿岸を含む一帯を核攻撃基地にする動きがあらわれており、被爆地を冒涜する米軍機の飛行に広島県内一帯で反発が高まっている。