佐賀空港へのオスプレイ配備計画への反対が続く地元佐賀市川副町のスポーツパーク川副体育センターで26日、「オスプレイ反対5・26決起集会」(主催/佐賀空港への自衛隊オスプレイ等配備反対地域住民の会)が開催され、川副町内の地元住民をはじめ佐賀市内外から560人が参加した。現在、佐賀空港のオスプレイ配備計画は、昨年8月に突如として受け入れを表明した山口祥義佐賀県知事が、24日に地元漁協に対し自衛隊との共用を否定している公害防止協定の見直しを求める説明会をおこなうなど正念場を迎えている。しかし、それに抗い、この地に住む人人の生業と地域の平和を守り引き継いでいくという地元住民の気概に溢れた集会となった。
初めにオスプレイ反対住民の会会長の古賀初次氏があいさつをおこなった。古賀氏は「佐賀空港のオスプレイ問題は今年で5年目を迎えている。昨年8月の佐賀県知事の受け入れ表明は県民に対する裏切りである」と強く批判した。そしてこれまで筑後大堰や諫早干拓などの国策事業によって漁場を奪われ続けたがそれでも有明海を守り続けてきたことを語り、「漁師は少少のことでは負けない。一緒になって頑張ろう」と呼びかけた。
続いて佐賀県議会議員の徳光清孝氏、江口善紀氏、衆議院議員の原口一博氏が挨拶をおこない、議員としてオスプレイ反対を貫いていく決意をのべた。
その後、住民の会がこれまでの経過と5年間の反対運動の活動を報告した。
2014年7月19日、新聞報道によって突如佐賀空港へのオスプレイ配備計画が発表された。同月22日に防衛省が県に来て要請をおこなうという住民にとっては寝耳に水の話だった。そして報道のとおりに防衛副大臣が佐賀県を訪れ、オスプレイ17機の配備、目田原駐屯地のヘリ50機の移駐、米軍オスプレイの訓練基地利用のために佐賀空港に隣接した自衛隊基地を建設するという計画が発表された。その後、防衛省は翌年に米軍の訓練に関してはいったんとり下げたものの、「全国の他の空港と横並びで」検討するとしている。
これに対し地元では2014年に自治会長3名によって対策協議会を発足させた。翌年にはスポーツパーク川副体育センターで400人が参加した初めての反対集会がおこなわれ、対策協議会から「佐賀空港への自衛隊オスプレイ等配備反対地域住民の会」へと変更された。それから毎年この反対集会は開催され、今年で5回目となる。住民の会としてオスプレイ反対を訴える幟を立てたり、署名活動、チラシの配布をおこなっている。その結果、県内外から約12万筆の署名が集まり、県に提出している。
この間にもオスプレイや目田原の戦闘ヘリの墜落事故が多発している。住民の会のオスプレイ計画に反対する根拠として、30年前の佐賀空港建設時に公害防止協定が結ばれ、佐賀空港は自衛隊との共用はしないことが明記されていること、また空港に隣接する自衛隊の基地建設計画地の地権者は地元漁協で、地元漁協は事あるごとに基地反対を表明している。自衛隊基地は強制収容ができないため、地元漁協が反対するかぎり基地は建設できないことを強調した。
続いて南川副でノリ養殖を営んでいる漁師の佐々木成人氏と石尾義幸氏が、地元の漁師として何度も国策事業に翻弄されてきた歴史やこれからの有明海を守り引き継いでいくという切実な思いを語り、オスプレイ配備に反対する決意をのべた。
筑後川を挟んで対岸に位置し、佐賀空港建設当時に公害防止協定を結んでいる柳川市の新谷信次郎市議が「対岸といっても空と海は一つに繋がっている。柳川でも豊かな農漁業を守らなければならない」と、共に反対していく決意をのべた。南川副出身の川崎直幸市議も「自衛隊との共用はしない」という公害防止協定の一文には、当時の戦争体験者の二度と戦争を起こしてはならないという強い思いが込められていることを語った。
会場では活動継続のためのカンパも呼びかけられ、参加者から多額のカンパが寄せられた。最後に副会長である原口巧氏の「30年かかって結ばれた公害防止協定をわずか3時間で覆すなど絶対に許されないことだ。オスプレイ来るな!」とのかけ声でシュプレヒコールをおこなった。
古賀初次 オスプレイ配備反対地域住民の会会長
佐賀空港のオスプレイ問題は今年で5年目を迎えた。
昨年8月24日に山口祥義佐賀県知事は防衛大臣と会談し、たった3時間後に佐賀空港へのオスプレイ受け入れを表明した。前回の知事選のときに「佐賀県のことは佐賀県で決める」といったあの言葉は何だったのかと、私は強い憤りを感じた。完全に山口知事に騙され、裏切られたと思い、頭の中が真っ白になった。これは佐賀空港建設当時に県が漁協、農協、当時の川副町、柳川市などと結んだ公害防止協定を無視する、暴挙としかいいようのない理不尽なやり方だ。
そして先日、山口知事は有明漁協を訪れて漁協幹部と会談をし、公害防止協定の見直しを要求している。新聞報道によると30分間立ったまま話をしているが、自分は県知事だからたてつく者は何もないという完全に上から目線だった。あの報道を見て私は腹が立った。完全に漁民を舐めている。
そして口では「県は漁協のパートナーだ」と白白しいことをいっている。「国防に対応するため約束の変更をしてほしい」というが、国防のためなら県民の命や財産はどうでもいいのかといいたい。
また、「オスプレイは有明海や県の上空では過酷な訓練はおこなわない」というが、何を嘘ばかりいっているのかと思う。100億円は有明海の漁業振興のための基金というが、そんな100億円など漁業者は何も求めていない。何でもかんでも金で済ませるような漁民を見くびる発言には呆れかえっている。
有明海はこれまでに筑後大堰、諫早干拓、嘉瀬川問題などの国策事業があった。そのたびにノリの不作、魚介類の不漁、底生生物の絶滅等、宝の海から死の海へと変化している。それでも堪え忍んで漁業を続け、海を守ってきた。これ以上海を汚すと生き物が殺され、次はそこで働く漁民までもが生活のできない状態へと追い込まれるのは目に見えている。漁師は少少のことでは負けない。強い精神と根性を持っている。
今度の佐賀空港問題は住民の命と安心安全が第一に優先されるべきだと思っている。戦争の道具であるオスプレイやヘリコプターを配備するなどもってのほかだ。
先日の山口県知事からの説明のあと、徳永組合長の最後の言葉で「元佐賀県有明海漁連会長の田中茂氏の著書に『地域振興策とか美しい言葉で環境を軽視すると、有明海が死滅する』とある」といわれていたが、まさにその通りだ。田中茂氏は犬井道の出身で、南川副の初代組合長だ。先人の言葉には重みがある。
これまでの池田直元知事、香月熊雄元知事、井本勇元知事はそれぞれ「自衛隊との共用はしない、させない、ありえない」といっている。有明海のノリは食べたら日本一美味しいノリだ。この美味しさは、有明海という素晴らしい海と自然の恵み、そして漁師の努力、汗の結晶だと思っている。海の神様から授けられた天職だ。現在、後継者は毎年数名ほどだが徐徐に増えている。両親が年をとって体が弱ってくるのを見て後を継いでくれる心の優しい若者たちばかりだ。山口知事はそのような漁業者に寄り添う気持ちがあれば公害防止協定の見直しではなく、計画の撤回をするべきだ。
いいたいことは山ほどあるが、今後私たち住民の会は県内はもとより県外どこへでも出かけ、本当に佐賀空港の発展を目指すミニ集会、講座などを開き、たくさんの人と情報を交換したいと思っている。そのことによって佐賀空港問題がよりよい方向に進展していくと信じている。県民が知恵を出し合い、話し合えば佐賀の未来は明るい日差しが差すと思っている。みなさん一緒になって頑張りましょう。
佐々木成人 海苔師(南川副支所)
南川副でノリ養殖を営んでいる。収入のほとんどをノリ養殖でまかない、家庭の基礎を築いている。私は南川副の組合員としてこのオスプレイ問題を注視してきた。今日は私なりの意見をのべさせていただきたい。
まずなぜ反対なのか。私なりにいわせてもらえれば「嫌なものは嫌」ということだ。いろんな人の立場で意見や考え方が違っていることも確かだ。しかし私たち漁業者は、いかなる理由を持ってしても佐賀空港に自衛隊やオスプレイが来て欲しくはない。
来て欲しくない理由とは、私たちの立場からすれば漁場環境がどうなるかというのが一番の懸念だ。一度変化した海の環境が元に戻るのはなかなか難しい。私たちの第一次産業というのは、自然相手の仕事だから環境の変化には非常に敏感だ。今まで培われた技術や経験が通用しなくなることもたくさん出てくるかもしれない。それから一番大事なのは元に戻せないということだ。
オスプレイ問題を考えるうえでどうしても私の頭に浮かぶのは諫早湾干拓事業のことだ。あの事業もいまだ解決せず、時間ばかりが過ぎている。「環境の変化があるときには誠意を持って対応する」といった一文があるにもかかわらず、その約束が守られることはない。オスプレイ問題で一度同意してしまえば、後に環境の変化が起きても、許容範囲だとか影響はほとんどないと国はいってくると思う。それが今までの経験と歴史だ。
私も一度だけあった南川副支所でのオスプレイ配備の説明会に出席した。そのときに組合員のみなさんからいろんな質問が出ていた。騒音、飛行時間、将来は米軍基地になるのか、その他諸諸の質問だったが、そのすべてにおいて「ここはこうです」「そこはこうなります」「だから安全です。だから配備させてください」というふうに国の関係者は繋いでいく。私も一言だけ「質問すればするほどそのすべてにおいて答えを出し、いろんな質問に答えたので組合員への説明は十分にできたと締めくくるつもりではないか」と意見をのべさせていただいた。それ以降、組合員への説明会は開催されていないので、私も新聞やテレビで見る情報しかわからないが、冒頭いったように嫌なものは嫌なのだ。
最後に、先日、山口知事が組合長はじめ運営委員長たちにこれまでの経緯説明をしていたが、組合としては「今日は知事の説明を聞いただけ。生活の場である有明海を守りたい思いは変わらない。これが組合の答えで組合員の総意であり、崩してはならないことだと思っている」という。これからもこのスタンスでいって欲しいと思っている。古賀会長の言葉にもあったが、徳永組合長のコメントのなかで元佐賀県有明海漁連の会長田中茂氏の著書に「地域振興とか美しい言葉で環境を軽視すると有明海が死滅する」という言葉が書かれていると紹介された。この言葉を読んで、経験から出る言葉だな、後世に有明海を繋いでいってほしいなと思った。
私も後世に有明海を引き継ぐ橋渡しの一人として、目の前にあるオスプレイ配備計画に反対する意志を改めて強く感じた。これからも力をあわせて共に頑張っていきましょう。
石尾義幸 海苔師(南川副支所)
私は高校卒業後、漁業に50年くらい従事している。漁業に従事した当時の漁業に対する考え方として、今までは「捕る漁業」だったが、これから先は「育てる漁業」にしていかなければならないといわれていた。
ところが現在の有明海は魚介類がものすごく減少、消滅して育たない海になっている。主な海産物として、タイラギ、アサリガイ、アカガイ、アゲマキ、シジミガイ、メカジャ、ウミタケ、それに魚類のグチ、スズキ、ワラスボ、コノシロ、クルマエビ、クツゾコなどがあげられる。この魚介類が消滅、激減した要因は、国の公共事業である筑後大堰建設と諫早干拓閉め切り工事だ。
その当時の筑後大堰の事前説明会では、毎秒50㌧の水量を流すとの条件が付き、「これだけの水量があれば影響はありません」という説明だった。諫早湾閉め切り工事のときでも国の説明は「閉め切っても影響はない」ということだった。しかしそれはもろくも崩れ去っている。
現在、海のなかに行けば、全然といっていいほど船が見当たらない。しかし今現在、有明海の漁業でノリはかろうじてとれている状況で、いつとれなくなるのか不安を抱えている。諫早湾を閉め切ったことで稚貝と稚魚が湾内で発生していた自然環境がなくなり、また湾内の干潟での浄化作用が消滅している。このことを人間で例えれば、子宮と肝臓がないのと一緒だ。非常に残念でならない。
今までの国の対応や行政のやり方から感じとれることは、公共事業や行政のやることを進めるためには自分たちの都合の良いことだけを公表し、都合の悪いことは表に出さない、口先だけで相手を誤魔化すやり方が目に余る。地域住民の痛みを理解しようとしない行政、これで民主主義といえるのだろうか。行政不信が募るばかりだ。佐賀空港に関する公害防止協定のなかに明記されている「自衛隊との共用は考えていない」という、県と近隣漁協とのとり決めが生きているにもかかわらず、県の首長である山口知事は独断専行している。地域住民や県民の痛みがまるでわかっていない。テレビの時代劇に出てくる、我が身のことばかり考えている悪徳代官のように思えてならない。
もし自衛隊が配備されれば次は米軍が来ることが予測される。オスプレイが17機、ヘリコプターが50機。そして次には米軍機が何機来るか予想もできない。オスプレイは別の名を「空飛ぶ棺桶」とか「未亡人製造機」とかいわれているそうだ。神埼市千代田町でも2018年2月5日、戦闘ヘリコプターが住宅に墜落した。住宅3棟を炎上させたうえ、隊員2名が死亡、小学5年生の女の子が軽傷を負うという大事故が起きた。
墜落を不時着といい、南スーダン派遣の自衛隊の日報を「ありません」と隠蔽する防衛省だから「安全・安心」といわれても信用する気になれない。67機がいつ落ちてくるかもわからないというのは恐怖そのものだ。それに米軍が加わればそれこそ最悪だ。沖縄のように事件が発生するようになる。生活環境の悪化は避けられない。安心して枕を高くして寝られないことになる。そして仕事も安心してできないと思う。
そのような佐賀にならないために佐賀空港の軍事基地化を食い止め、子どもや孫により良い佐賀の環境を残していこうではありませんか。これからも軍事基地反対のご協力をお願いする。