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外国人労働者に廃炉作業させる破廉恥 近隣各国はどう見るか

 東京電力が18日、福島原発などの作業のために、4月から始まった新たな在留資格「特定技能」の外国人労働者の受け入れを決めた。東電は3月28日に開いたゼネコンなど協力会社数十社を対象とした会議「安全衛生推進協議会」で、特定技能の労働者の原発への受け入れについて説明した。「建設」「産業機械製造業」「電気・電子情報関連産業」「自動車整備」「ビルクリーニング」「外食業」が該当するとし、なかでも廃炉作業にあたる「建設」が主になるとしている。東電は、再稼働をめざす柏崎刈羽原発(新潟県)でも受け入れる方針だ。

 

 特定技能は外食、宿泊など14業種を対象に日本語能力と技能の試験に合格すれば最大5年間働くことができる制度で、東電は原発での作業は「建設」の業種にあたるとしている。

 

 法務省はこれまで、福島第一原発内で東電が発注する事業について「一般的に海外で発生しうるものではない」とし、技能実習生の受け入れは「国際貢献」という趣旨から不可としてきた。だが特定技能について東電は、「法務省に問い合わせた結果」にもとづき「新資格は受け入れ可能で、日本人が働いている場所は分け隔てなく働いてもらうことができる」と判断したとしている。

 

 昨年5月には、「技能実習制度」で来日したベトナム国籍などの実習生6人を、放射線教育もおこなわないまま福島第一原発でがれきなどを焼却する施設の建設工事に従事させていたことが明らかになり、問題となった。6人は、東京の元請ゼネコンの下請企業が受け入れた実習生だった。

 

 また昨年3月には、ベトナム人実習生が、盛岡市の建設会社に雇用され、同社が請け負った福島県郡山市での除染作業に従事していたことが明らかとなっている。会社との雇用契約書には「除染作業」は記載されておらず、作業内容や放射能の危険性についての説明もなかった。

 

 法務省は「福島第一原発の敷地内で技能実習生が働くこと自体は、制度上違反ではない」「技能実習としてこれ(除染作業)をおこなわせてはならないという旨の法令上の規定はない」との対応をとった。そもそもベトナムには原発がなく、原発関連の技能移転などありえない。

 

 除染作業などの原発関連作業自体は、技能実習制度の対象となる職種ではない。技能実習制度は、途上国への技能移転による国際協力を目的とするという建前がある。事故を起こした原発での作業自体は、そうした技能移転の趣旨にそぐわず、職種として対象とならないのは当然だ。それにもかかわらず、これまで技能実習生による原発関連作業への従事が数数の抜け道をもうけて黙認されてきた。それを今後は公然とまかりとおらせる方向だ。

 

 昨年8月16日、国連人権理事会(本部ジュネーブ)で有害物質や廃棄物の管理・処分と人権への影響を担当する特別報告者ら3人が、東電の福島第一原発事故を受けて除染などをおこなう作業員が放射線被曝と重大な搾取の危険にさらされていると指摘し、数万人にのぼる労働者を保護するため、日本政府に緊急に対応をとるよう求めた。

 

 特別報告者は声明で「除染などのために雇われた労働者には、移民労働者やホームレスが含まれていると伝えられている」とし、「被曝のリスクに加え、経済的な理由から危険な労働条件を受け入れざるをえない状況や適切な訓練や防護措置がとられているかについて非常に懸念している」とした。

 

 福島の除染などにかかわった労働者は厚生労働省の調べで2016年に約4万6000人だった。放射線従事者中央登録センターは16年までの5年間で約7万6000人の労働者が雇われたとしている。特別報告者は「いくつかの大手企業に雇用契約が与えられ、何百もの中小企業に下請に出されている。こうしたとり決めが労働者を集めるブローカーに使われ、労働者の権利を侵害する労働条件につながっている可能性がある」と指摘した。

 

 これに対して外務省は「政府として真摯に対応してきた。一方的な申し立てにもとづく声明は、いたずらに不安をあおり混乱を招く」と反論し、改善の姿勢は示さなかった。

 

 東電はこうした国際的にも問題になっている不都合な現状にはふたをしたまま、福島原発事故処理に外国人労働者の大量投入をはかろうとしている。震災から8年が経過しながら事故処理は収束する兆しが見えず、果てしもない金銭と人員の投入を余儀なくされている。こうした日本人でもなかなか行きたがらない現場にアジア各国から低賃金な労働力を呼び寄せ、こともあろうか原発爆発事故の尻拭いの現場に従事させ、金銭と引き替えに危険にさらそうとしている。そして、事故処理もままならぬ者が、一方では再稼働を推進し、後は野となれ山となれの狂った行動に及んでいる。

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