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長崎市中心部を襲った大規模冠水 海面が副振動(あびき)で急上昇

最高潮位は238㎝を記録 九州で冬から春先にかけ頻発

 

海面上昇で冠水した国道206号線(21日夜、長崎市)

 長崎市で21日午後8時半ごろ、海面が短周期で上下に変動する「副振動(あびき)」による海面上昇でJR長崎駅をはじめ市内中心部が大規模な冠水被害に見舞われた。

 

 長崎海洋気象台によると、「あびき」は東シナ海大陸棚上で発生した気象現象の擾乱による気圧の急変が原因で、それによって発生した長波が海低地形などの影響を受けて増幅していき、湾内に入ると共鳴現象などの影響を受けてさらに増幅し、湾奥で数㍍もの上下振動になる。九州西部から奄美地方において冬から春先にかけて頻発しているものの、予測することは「現在の技術では極めて困難」という。

 

 この日、長崎港では8時半に大潮の満潮を迎えており、そこにあびきの波が重なることによって、わずか30分間で1㍍5㌢も海面が上昇し、最高潮位は過去最高の238㌢を記録した。

 

 海抜の低いJR長崎駅周辺、宝町、茂里町近辺、さらに銅座町や松ヶ枝町でも道路が冠水し、住宅や店舗など数十軒が床下・床上浸水に見舞われた。国道206号線では、車のタイヤが完全に水に浸かるほどの潮が押し寄せ、川や排水溝からも逆流してきた水があふれ出した。道路がプール状態になったため動線が遮断され、電車やバスなどの交通網がまひし、市民生活に大きな混乱をもたらした。JR九州は、線路が冠水したため長崎駅~浦上駅で列車の運行を見合わせた。2本が運休、14本が最大で1時間40分遅れ、1600人に影響が出た。松ヶ枝町の住宅地や銅座・思案橋などの繁華街では膝上まで水に浸かったり、車が水没して使用不能になる被害もみられ、低地対策が喫緊の課題であることを突きつけるものとなった。

 

 移転新築した県庁(庁舎敷地のみ地盤かさ上げ)、長崎市が200億円かけて建設を計画しているコンベンション(MICE)施設予定地の周辺道路も海水に浸かり、高潮や津波など災害時における立地の脆弱性を改めて浮き彫りにした。

 

 

 周辺に住む市民は「雨も降っていないのに家の前の道路が川になっていて驚いた。午後10時くらいまで水が引かず、逆流してきた潮の圧力で下水管が破裂した地域もある。海抜の低い長崎市内では潮位が変動するこの時期によくあることではあるが、今年は特にひどい。近年は1時間に100㍉も降る集中豪雨も頻繁に起きているので、これが加わっていたらもっと被害が大きくなっていたのではないかと思う。県庁や県警もわざわざ高台から海岸沿いに移転したが、パトカーも浸水してブレーキがきかなくなっていたようだ。ハコモノ開発よりも優先すべきことが放置されている」と危機感を露わにした。

 

 別の市民は「銅座の飲み屋では、急に水が流れ込んできて客を全員窓から外に避難させたという。すり鉢状の街なので低地の中心部ほど高潮の被害が出やすい。県庁は市民の避難所に指定されているのに、海抜ゼロ地帯にあるため道路が冠水してたどり着けないし、一番危険な場所になってしまっている。市民生活の安全を第一に考える行政であってほしい」と語っていた。

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