辺野古新基地建設のための埋め立ての是非を問う沖縄県民投票は24日、投開票を迎えた。開票の結果、賛成11万4933票(19・1%)、反対43万4273票(72・2%)となり、辺野古新基地計画に対する県民の圧倒的な反対意志を改めて日米政府に突きつける結果となった。沖縄県民を蹂躙する力が何重にも加わるなかで、島ぐるみの力は切り崩されるどころか勢いを増し、知事選結果をも上回る票数で頑強な意志を示した。辺野古新基地建設計画を追い詰めている。
県民投票の投票率は52・48%で、昨年9月の知事選(63・24%)を下回ったものの、反対票は投票総数の72・2%を占め、知事選で玉城デニー氏が獲得した過去最多の39万6632票を3万7641票上回った。県民投票条例では、辺野古の埋め立てについて「賛成」「反対」「どちらでもない」のうち、いずれかが投票資格者総数(115万3591人)の25%(28万8398票)を上回った場合、知事は結果を尊重する義務を負い、ただちに首相と米国大統領に結果を通知すると定めている。反対票の投票資格者総数における割合は37・65%と条例規定ラインを大きく上回り、辺野古新基地建設問題をめぐって国と対峙する玉城県政は大きな民意の後ろ盾を得たことになる。玉城知事は3月1日に上京し、安倍首相と在日米大使館に結果を通知する。
なお、県議会での条例可決後、県民投票における投票事務を拒否する方針を示していた宜野湾、沖縄、うるま、宮古島、石垣の五市長や保守系議員らが、選択肢への追加にこだわっていた「どちらでもない」は5万2682票で、投票総数の8・8%だった。普天間基地を抱える宜野湾市でも投票率は51%を越え、66・8%に上る2万6439人が反対票を投じている。
24日午後10時過ぎ、反対票が条例で規定する29万票を上回ったことを受けて、「オール沖縄」勢力でつくる新基地建設反対県民投票連絡会は概略以下のようなコメントを発表した。
「辺野古新基地建設反対、埋め立て反対の圧倒的民意がここに示された。辺野古に造られようとしている新基地は耐用年数200年の基地である。未来の子どもたちにこれ以上の基地被害を与え続けることはできないとの県民の強い思いが表れたものだ。日本政府はこの民意を受け止め、辺野古新基地建設をただちに断念するべきだ。そして“普天間基地の5年以内の運用停止”の約束通りただちに運用を停止すべきだ。政府がその民意を踏みにじり、工事を続けることは、日本政府みずからが民主主義と地方自治を破壊することを意味する。米国政府もこれまでのような“これは日本の国内問題”という他人事としての姿勢は許されない。基地を置いている当事者として真摯に受け止め、辺野古新基地の中止、普天間飛行場の即時運用停止を実行すべきだ。全国、米国民、世界のみなさん、今回の県民投票の民意を尊重するようともに行動に立ち上がっていただくよう訴える。玉城デニー県知事にも、あらゆる手段を行使し、県民と団結して奮闘されるように要請していく。政府が作り出す対立と分断を乗り越え、心を一つに新基地建設のための埋め立てに反対し、誇りある豊かさを実現すべく、これからも県民、全国のみなさんと力を合わせて頑張っていく」
共同代表の呉屋守将会長は、「投票率が5割をこえたことが第一の目標の達成だ。そのうち反対が全有権者の4分の1をこえ、出口調査でも70%以上、自民党支持者でも半分以上が反対という結果となった。辺野古問題のワンイシューに限ると、政府の行動がまったくもって不条理であり、許されるものではないということを明確に示している。これまで沖縄県民は、みずから作り出したものではない辺野古基地問題の押しつけによって長年、分断と対立に晒されてきた。今回で“もう終止符を打つんだ”という気持ちがこの結果を生んだ。これからは衆院沖縄三区補欠選挙、参院選など全国的な選挙があるが、沖縄の声を尊重することが日本の民主主義の前進に繋がることを訴えていきたい」とのべた。
また、「賛成であろうが、反対であろうが、70年にわたって虐げられてきた沖縄の経験に立って重い一票を投じてもらいたいというのが私の原則的立場だが、法的拘束力もないといわれるなかにあっても、圧倒的多数の県民が反対の意志を示したことは“これ以上我慢できない。これ以上の基地負担は百害あって一利無し”と多くの県民が思っていることの証左だ」と強調した。
分断工作乗り越え結束 日米政府の思惑覆す
「辺野古」県民投票は、昨年9月の知事選で示された辺野古新基地建設反対の民意をより明確に示すための追撃戦となり、計画を遂行するうえで県知事が許認可権を持つ「埋め立て」に対する賛否を問う形でおこなわれた。
それは、県と国との法廷闘争において知事選や国政選挙の結果だけでは「県民の民意はどちらかわからない」としてきた司法判断を見据えたもので、辺野古問題に対する民意をより明確な形で可視化するうえで投票率が50%をこえることが一つの焦点となった。
投票実施に至る過程では、県内五市長や議会が投票事務を拒否し、一時は全県実施が危ぶまれたが、官邸の意向を忖度して県民の権利を奪う暴挙に対して、保守や革新にとらわれぬ県民世論の下からの突き上げでこれを覆した。
全県実施が決まると自民党、公明党、日本維新の会は自主投票を決めて組織的な活動をおこなわず、日本政府は「法的拘束力がない」「埋め立て工事は投票結果に左右されない」とアナウンスして低投票率を煽ったが、15日から各地でおこなわれた期日前投票では、初日から投票所の前に長蛇の列ができ、有権者の20・5%にあたる23万7447人が投票を済ませるなど、県民の行動によって政府の思惑はことごとく覆された。
辺野古新基地をめぐっては、建設予定地全体で軟弱地盤問題が浮上し、政府は7万本をこえる砂杭を打ち込むなどの計画変更を余儀なくされている。計画変更には沖縄県の承認が必要であり、新基地計画は事実上、頓挫の局面を迎えている。幾度とない国政選挙、知事選挙、さらに県民投票でも地元合意を得られず、物理的にも暗礁に乗り上げている辺野古新基地計画は、中止こそが最も現実的な選択となっている。