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佐賀市川副で住民説明会 「佐賀にオスプレイはいらぬ」 戦争体験根ざす住民の訴え

オスプレイ配備計画の説明会で、防衛省職員に詰め寄る住民ら(7月29日、佐賀市)

 

 佐賀空港へのオスプレイ配備の問題をめぐって、佐賀市川副で九州防衛局が7月29日に住民説明会を開催した。会場となった市立スポーツパーク川副の体育館には住民たち340人(防衛局発表)が詰めかけた。そして「平和な川副に戦争のための基地はいらない」と反対の意見が次次とあがるなど熱気に満ちたものとなった。
 
 「アメリカに帰れ」が圧倒  米軍の下請をする九州防衛局

 最初に防衛局は北朝鮮による軍事挑発行動、中国による軍事力拡大、ロシア軍の活動の活発化などをあげ、島嶼(しょ)部の防衛のためのオスプレイ配備に佐賀空港が最適地であることを70分間にわたって何度も強調した。
 防衛局の説明後には次次と住民からの質問があいついだ。しかし、誤魔化しばかりでまともに回答しようとしない防衛局に対して始終、抗議の怒号が飛び交うものとなった。
 最初に質問に立った男性は「佐賀空港建設当時に、漁協と県との間で“公害防止協定”を結んでいる。“自衛隊との供用はしない、させない、ありえない”となっている。しかしこの公害防止協定を知りながら、それでも軍事利用したいといわれるのだろうか? さらに場合によっては米軍との供用もあるという。本当に米軍が来るのか?もう一つ、われわれは環境の問題も非常に心配している。オスプレイが来ることで経済効果もあるでしょう。しかしわれわれが生活するうえで重要な漁業に与える影響もある。にもかかわらず、説明にもあったように33㌶だと環境アセスをする必要もないという。環境問題は大変重要な問題だ。このことについてどう思っているのか」と質問した。
 それに対して、防衛局側が「公害防止協定のなかに自衛隊と供用しないということがあるのは承知している。ただ、公害防止協定に書いてある、排水の基準についてはしっかり守る。油については分離しないようにしたい。公害防止協定については直接の当事者ではないため回答はできない」と答えると、会場からは「質問に答えろ!」「誤魔化すな」と声が上がった。
 そして「米軍の利用については、当初米軍の利用も合わせてお願いしていたが、今日説明した内容には米軍の利用は含まれていない。ただ米軍基地が集中している沖縄の負担を軽減するのは、政府をあげてとりくんでいかなければならない課題だと思っている。その沖縄の負担を軽減するためにも本土でも受け入れなければならない。米軍がどういう所で訓練をしたいかが決まれば、日本全国のなかで横並びで考えていきたい。佐賀空港にお願いするということは現時点では答えられない。ただ、できるだけ日本全国で沖縄の負担を受け入れてもらいたい」との回答には、住民から「アメリカが出ていけ!」と口口に怒りの声が上がった。
 別の男性住民は「米軍の利用について質問があったが、私は日米地位協定について聞きたい。そのなかでは米軍は日本の軍事基地を自由に使えるとはっきり書いてある。日本の政府が望む、望まないに限らず、米軍からの要請があれば呑まなければならないのではないか? 私たちは知らないことばかりだから住民に対して安保条約や地位協定などの資料配付をお願いしたい。そして米軍の要請があれば断ることができるのかできないのか、教えていただきたい」とのべた。
 それに対して「米軍の使用については今の計画には入っていない。しかし、米軍の利用をお願いするときには突然、勝手にということはなく、事前に話をしていきたい」と回答。まともに答えようともしない防衛局に対し「まともに答えろ!」「沖縄では強奪しているではないか」との声が上がった。
 「“自衛隊との供用は認めない”という規定があるが、これはどうなるのか。環境アセスは33㌶ではやらなくてよいとなっているが環境アセスはやるのか、回答をお願いしたい」との問いには「県条例としては33㌶では環境アセスはしなくてもいいとなっている。やらなければならないとなれば対応していきたい。私どもとしては県の条例に従っていきたい。公害防止協定について、自衛隊との供用はしないというのは認識している。ただ、我が国をとりまく安全保障環境において、島嶼部を奪還する部隊を整備する必要がある。それを輸送するためにはオスプレイが必要と考えている。そのオスプレイを配備するうえで佐賀空港が最適地であると考えている。そして先ほどもいったように排水に関しての基準はしっかり守っていきたい」と同じような回答をくり返した。
 また、墜落事故などがあいついでいるオスプレイに対し「本当に安全なのか。各地でオスプレイの事故が報告されているが、欠陥商品を沖縄に押しつけ、さらにそれを佐賀に持ってこようというのか」との意見も上がった。

 70代男性の訴え 戦争になれば一帯壊滅

 70代の男性は「公害防止協定の中心問題は自衛隊との供用はしないということだ。その明記してあることに対して防衛省としては尊重する気があるのか、ないのか聞きたい」と問うた。そして「安倍内閣は集団的自衛権を認め、従来の専守防衛の姿勢を変えた。戦争となれば太平洋戦争を経験したわれわれは、空爆やミサイルや核兵器による攻撃を受けるかもしれないという恐怖を持っている。佐賀には玄海原発もあるし、日本中には54基もの原発がある。1発でもミサイルで攻撃されれば、玄海原発にあたったりすることがあればどうするのか。一帯が壊滅状態になる。そのことが福島原発の事故でわかったのではないのか」と怒りを語った。
 また「我が国をとりまく安全保障環境といって、北朝鮮や中国、ロシアを仮想敵国としているようだが、中国はいまやアメリカを追い越そうとしているような経済大国であり、核保有国であり軍事大国でもある。そんな国と戦争をするつもりなのか。かつての戦争で本当に無残な敗戦をしてきたわれわれとしては二度とあのような思いはしたくない。その思いをわかっていないのか専守防衛を覆し、集団的自衛権という名のもとにどこにでも戦争に行けるというような国になっている。私は非常に心配だ」と戦争体験に基づく痛切な思いをのべたが、それに対しても「私どもは公害防止協定の当事者ではないが、排水に関しては守っていきたい」とくり返した。
 ある男性が「島嶼奪還というが、誤魔化しがあるのではないか。小さな島のどこにオスプレイが着陸するのか。熊本地震のさいにはオスプレイが着陸するときに自衛隊は水を撒いていたというが、それは粉塵が舞い上がればオスプレイが墜落するという危険を知っていたからではないのか。こうやって誤魔化してオスプレイを導入するような姑息なやり方はやめてほしい。“公害防止協定に基づいてもう佐賀はあきらめます”とあなたたちはいわなくてはならないのではないか」と問いつめると、会場からは大きな拍手が沸き起こった。
 空港に一番近い地域の自治会長をしている男性は「先ほどからオスプレイの飛行のさいには海の方に飛ばすといっているが、オスプレイの排気ガスが一気に雨などで海に流れれば、ノリ漁業などは壊滅するのではないか。そのあたりはどうなるのか」と危機感を語った。そして「一番近い地区の住民ですが、はっきりいいます。来ないでください。防衛問題など難しいことは私たちにはわからない。いいすぎかもしれないが、人殺しの道具や施設は平和な川副にはいらない。これは地域住民みんなの思いだ」とはっきりとのべ、会場が沸き上がった。
 これに対して防衛局が「我が国の防衛上、オスプレイを配備するのは佐賀空港が最適であるとの判断だ。オスプレイが配備されたときには700~800人の自衛隊員が暮らすことになる。地域の夏祭りなどには隊員を呼んで欲しいし、基地の催しのさいにはぜひみなさんに来ていただきたい」などと回答し、「来んでよか」「いらないといっている」と怒号が飛んだ。

 詰め寄る住民ら 揺がぬ反対の意志表明

 挙手しているたくさんの住民を無視して説明会は強制的に打ち切られ、その後防衛局職員に住民が詰め寄る場面もあった。
 反対地域住民の会の代表は防衛局職員に対し、「こんなまともな回答のない説明会で、住民は到底納得できるものではない。われわれにとってこのオスプレイ配備の問題は死活問題だ。これだけ住民が反対しているのに何が何でも配備しようとするのは地方自治を踏みにじっている。どうしても強行するというのなら機動隊でも持ってくればいい。われわれは座り込みでも何でもするし、絶対に反対する」と強い決意を語った。
 そして「今回の説明会で多くの住民が真剣に考え、反対をしていることがいっそう明らかになった。その住民を蚊帳の外に置き、上の方だけで話を進めている。公害防止協定の問題についても防衛省が当事者ではないなど責任逃れだ」と批判、今後もさらに反対の運動を強めていくと語った。

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