いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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安倍首相の靖国参拝 

 安倍首相は内外のごうごうたる批判世論のなかを、昨年末の26日、靖国神社参拝を強行した。昨年1年、安倍政府が戦時国家づくりに暴走するなかで「再び戦争をさせてはならない」という国民の憤激がかつてなく高まり、先月6日の特定秘密保護法強行採決を前に知識人の集会やデモなど全国的大衆行動に発展したが、靖国参拝で世論はもう一段沸き立っている。「安倍内閣をたたきつぶせ」「これほど内外の支持のない内閣が長くもつはずがない」と語られるなど、強い行動意欲となってあらわれている。

 戦争の反省覆す「不戦の誓い」

 安倍内閣では昨年4月に麻生副総理らが靖国に参拝し、1月に入ってからは新藤総務相が参拝している。先月26日の参拝後に安倍首相は、「過去への痛切な反省の上に立って、二度と戦争を起こしてはならない」との「不戦の誓い」を口にした。しかし、かつての戦争の反省を覆して次次と戦争準備を進めてきたのは安倍政府にほかならない。
 当初、憲法96条の改定で憲法を改悪しようとし、世論の批判が強まると、今度は日本版NSC(国家安全保障会議)と秘密保護法を強行し、今年の通常国会では「国家安全保障基本法」の成立を狙っている。それはアメリカの指揮下で集団的自衛権の行使を認め、国民総動員の戦時国家づくりを狙うもので、憲法の戦争放棄の否定である。そのうえ自衛隊の海兵隊化を進め尖閣諸島問題で中国を挑発して武力衝突寸前の危機をつくり出している。
 また、靖国神社には、無理矢理戦場に駆り出されて殺された多くの兵士とともに、先の戦争で人民を戦争に駆り立てた東条英機らA級戦犯14人も合祀されており、これについては戦争体験者や遺族からも、またアジアの国国からも強い批判がある。戦争をひき起こした者を免罪して「不戦の誓い」をいうことはできない。
 そして、靖国参拝によって、いまだ首脳会談のメドもない中国や韓国をはじめとして、日本とアジア諸国との緊張をますます高めることになった。日本と中国、韓国との経済の結びつきは非常に強く、とくに中国は最大の貿易相手国である。こうした貿易の発展を犠牲にしてまで近隣諸国との緊張を激化させることは、日本経済を今以上に疲弊させる馬鹿げたことである。
 かつての戦争で、2世帯に1人以上の約1000万人が1銭5厘の赤紙で無理矢理戦場に駆り出され、郷里から遠く離れた中国や東南アジアや太平洋の戦場で殺され、また沖縄戦や全国各地の空襲、そして広島・長崎への原爆で非戦斗の老若男女が焼き殺され、あわせて約320万人が犠牲になった。日本人民は焦土のなかから立ち上がり、復興に尽くしたが、それは戦争で殺された自分の親、兄弟や息子、娘に対する心からの哀悼の気持ちから、二度と戦争を起こさない平和で豊かな国にすることを誓いとしたものであった。
 ここで問題は、かつての戦争をひき起こした最大の責任者である天皇をはじめとして、財閥や官僚、政治家、マスメディアなど天皇制軍国主義の支配者たちは、日本とアジアの人民に筆舌に尽くしがたい犠牲を強いたにもかかわらず、それに対してなんの償いもしてこなかったことである。そればかりか日本を侵略・支配するアメリカに命乞いをして、国民の多大な犠牲と引き換えに生き延び、敗戦後はアメリカの目下の同盟者となって引き続き支配階級の地位を与えられた。
 こうしてつくられた対米従属構造が、戦後70年近くたって日本を政治、経済、教育、文化など全面にわたる崩壊状況に至らしめた根源である。そして今度は、アメリカの下僕となって戦争までやろうというのが安倍政府である。

 「愛国」装う売国的な姿 米国の意向くみ行動

 靖国を参拝した安倍首相らは「愛国派」の装いをとっている。しかし彼らがやっていることは、かつて侵略戦争の犯罪を犯したアジア諸国への横柄な態度であり、他方で原爆を投げつけたアメリカに対する屈服である。それは強い者には媚びを売り、弱い者には居丈高に振る舞うというもので、民族の誇りなどといえるものではなく、まさに売国的な態度にほかならない。
 そして安倍の靖国参拝に、オバマ政府が「失望した」と声明を出し、メディアが「アメリカの制止も聞かず突っ走った」と騒いでいる。しかしアメリカが日本に「独立」の見せかけをとらせるのは、「日米安保」体制の基調となってきた。とくに最近では、経済的な衰退が明らかなアメリカは、日本をみずからの代理人として前面に立ててアジアで戦争をやろうとしている。安倍はそのようなアメリカの意向をくんで行動していると見るほかはない。
 昨年の中国による防空識別圏設定問題で、安倍政府は真っ先に中国に抗議し、国内航空各社に対して中国が提出を求める飛行計画を提出するなと要請した。しかしアメリカをはじめ韓国その他のアジア諸国は、乗客の安全を守るため、敵対的なフライトではないことを知らせようと飛行計画を中国に提出している。そのなかで安倍政府だけが乗客の生命や安全もかえりみずアメリカのいいなりになって乗客を前面に立てて中国を挑発するという、きわめて向こう見ずな突っ走りとなっていることが浮き彫りになった。
 さらにアメリカの日本支配の重要な手口は、戦争をひき起こした天皇を頭とする日本の支配階級と、戦争に駆り出され犠牲を受けた幾千万の人民との区別をなくし、日本人民にアジアへの「加害責任」を説教することであり、これに対してアメリカが「平和と民主主義」勢力であると描き、アメリカの原爆投下と対日占領を正当化することであった。
 戦後の日本のいわゆる「革新」勢力のなかでは、この影響を強く受け、アメリカを「進歩」とみなす潮流がはびこった。戦地体験者を戦争協力者だとみなして平和運動から排除し、遺族を含めて自民党側に追いやった。「じいちゃん、ばあちゃんが悪いことをしたから原爆が落とされた」という加害者論がはびこり、被爆者は体験を語ることを抑えられてきた。
 現在、被爆者や戦争体験者が「今こそわれわれの出番」「戦争体験を語り継ぎ、戦争を阻止しなければならない」と使命感を持って行動に立ち上がっている。そのなかで、「自由と民主主義のため」といって史上もっとも残虐な戦争をおこなってきたのはアメリカであり、「自由・民主・人権」は残忍な人殺しを生み出すイデオロギーであることが暴露されている。
 そのアメリカのいいなりになって、日本をアメリカの対中国戦争の盾にし、再び原水爆の火の海に投げ込もうとする安倍政府の、度はずれた売国性を問題にしないわけにはいかない。それは日本の発展を願いつつ死んでいったすべての戦没者を冒涜するものである。
 戦没者の死を無にしないためにも、だれが再び戦争をひき起こそうとしているかを鮮明にし、根源である「日米安保」体制打破のために各階級各階層が団結して、戦争を押しとどめ、独立した平和で豊かな日本を建設する運動を発展させなければならない。

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