いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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安倍政治の審判問う3地方選 

 今月19日に投開票を迎える沖縄県の名護市長選を突破口にして、2月9日投開票の東京都知事選、同23日に予定されている山口県知事選と、安倍政府への審判を問う選挙が連続して控えている。野党が解体した状況のもとで自民党が返り咲いて1年以上が経過した。この間、「アベノミクス」といって金融緩和の大盤振舞がやられるかたわらで、米軍普天間基地の辺野古移転や岩国基地の大増強をはじめ原発再稼働や輸出、TPP(環太平洋経済連携協定)参加、消費税増税といった政策が次次とごり押しされ、さらにアジアの近隣諸国との緊張関係を激化させながら、特定秘密保護法、集団的自衛権の行使など露骨な戦時国家体制作りが進められてきた。国民世論に真っ向勝負を挑んできた暴走政治への審判が問われ、結果によってはドミノ倒しで思い上がった安倍政府を震撼させる事態になりうることから、全国的な期待と関心が高まっている。
 
 田母神担ぐべき安倍政府

 沖縄では名護市長選が12日に告示を迎えた。昨年末にかけて、安倍政府は「県外移設」を叫んで当選していた5人の沖縄選出国会議員たちを辺野古移転容認に衣替えさせ、仲井真知事との間では、2021年度まで毎年3000億円の沖縄振興費を支払うという金銭的条件でもって埋め立て合意をはかるなど、長年行き詰まっていた問題を一気に強行突破する動きを見せてきた。基地問題は国の専権事項で、県民世論がどっちを向いていようがおかまいなく、ごねたり物欲しさが隠せない地元上層部には、まるでアフリカやアジアの後進国首脳にODAを振る舞うのと同じように、大盤振舞で籠絡をはかるというものだった。「これで良い正月が迎えられる」という、満足感に浸った知事の発言も取り沙汰された。
 2010年に「県外移設」すなわち辺野古移転は容認しないと叫んで当選した知事が公約を破棄し、わずか1年前に同じ主張をしていた自民党国会議員たちが、石破幹事長の背後に勢揃いして公約を覆してきた。埋め立て容認後、県議会では仲井真知事の辞職要求決議が採択され、国会議員についても辞職妥当と見なす世論が高まるなど、強烈な反発が渦巻いている。沖縄全体が懐柔されたわけではなく、金銭的な見返りによって郷土を差し出していく者の姿があぶり出され、逆に孤立を深める様相があらわれている。
 「沖縄振興費」といっても、箱物をつくるのはいつも東京や本土側からやってくるゼネコンで、ODA方式そのもの。交付金は都会に回収していき、沖縄に現金収入をもたらさないことは多くの県民の実感となってきた。基地があるおかげで産業が育たず、「振興費」が何兆円注がれても活性化するのは利権集団ばかりとなり、結果、全国有数の貧困県として知られるまでになった。
 終いにはミサイルの標的にされかねない事態まできて、名護市長選が現在の沖縄県民の世論を示す決戦の場となっている。豪華な箱物施設を与えられ、最終的に故郷を追われた福島県民の経験と重ねても、武力衝突の標的となる最前線基地を抱え、戦火に巻き込まれるなら「振興費」などはした金にしかならず、第2の沖縄戦をくり返す代償といえるような代物ではないことは歴然としている。
 市長選そのものを見てみると、自民党は出馬したがっていた島袋元市長と、今回擁立した末松前県議との乱立抗争を経て一本化をはかり、移転容認は叫ばない作戦を展開。政府挙げて支援を本格化させ、末松陣営の総決起大会に出席した小泉進次郎が「決着がついたあとに問われるのは本土の覚悟。日本全体の覚悟だ」と叫んだりしている。菅官房長官も告示後の会見で、市長選の結果にかかわらず辺野古移転をおし進める考えを示し、決着済みの問題について何をいってもムダだという姿勢を見せたが、報道各社の事前調査で稲嶺リードが伝えられる展開にあわてふためいている。
 安倍政府に対する批判票の受け皿となっているのが、「辺野古移転反対」を掲げて前回当選した稲嶺市長(現職)で、「市長選で再選すれば市長の権限を使って阻止する」と表明している。

 有権者の審判恐れる姿

 東京都では、猪瀬直樹前知事が医療法人・徳洲会グループに5000万円をもらっていたことが発覚し、延延と情けない姿を見せつけた末に辞職。石原慎太郎後継は安倍首相との五輪騒動を済ませて表舞台から消えていった。
 都知事選には自民党が野党に転落した際に「自民党の歴史的使命は終わった」といって離党し、自民党を除名された元厚生労働大臣の舛添要一、社民・「日共」集団が担ぎ上げた前日弁連会長の宇都宮健児、元航空幕僚長で核武装発言を唱えたり、かつての大戦は侵略ではなかったと主張してきた田母神俊雄が名乗りを上げ、そこに脱原発を掲げて細川護煕元首相が小泉純一郎の応援を受けて登場する展開を見せている。
 このなかで独自候補の擁立に自信がなく、はじめから「小次郎敗れたり」の状態を露呈しているのが自民党で、昨年末に党独自の世論調査を2回実施したところ、舛添要一が人気トップだったといって、一度破門にした人間を相乗りで応援することを決めた。有権者の審判を極端に恐れているのが特徴となっている。「たたかう政治」なら、もっとも安倍政治を代弁しているのは田母神俊雄で、正正堂堂と自民党候補として担ぐなり、「ある意味で特攻隊」と出馬を賞賛した石原慎太郎といっしょに安倍首相が街頭に出て、原発推進や消費税増税、TPP推進、戦時国家作りなど訴えればよいのに、鞘を捨てた状態となっている。メディアが作り出してきた「高支持率」の化けの皮が剥がれ、同時に本人たちがもっともそのことを自覚していることを反映して、勝ち馬探しの迷走を続けた。そして、劇場型選挙の再来を思わせる細川登場にあわてている。
 民主党も細川擁立をいったん打診して本人から断られ、自公との相乗りで舛添支持になびいていた。ところが「脱原発」を掲げ、安倍政治に対抗する格好で細川が出馬を表明すると、こちらが勝ち馬と見て乗り換える動きを見せている。原発再稼働を強行した政党が「脱原発」に便乗するなど、こちらも恥を知らないと同時に、自信がなく宙をさ迷った状態となっている。
 かつての政府与党と現在の与党が、脆弱な支持基盤のうえでウロウロしているところに、「原発問題は国の存亡がかかった問題だ!」と主張し始めているのが細川&小泉の元首相組で、良し悪しを抜きにして「安倍対抗」色を売りにして目立っている。

 お膝元も批判世論充満

 山口県では、2012年夏におこなわれた知事選の最中から倒れ、がんの疑いが持たれてきた山本繁太郎知事が1年余りで辞職を表明し、2月23日投開票で知事選が実施されることになった。衆院山口2区で2度落選した後、安倍首相の肝いりで知事ポストを与えられたが、就任直後から入退院をくり返した挙げ句、復帰のメドが立たずに降板となった。名護市長選、東京都知事選の流れを受けた、首相のお膝元での最終審判として注目を浴びている。上関原発はもちろん、極東最大の米軍岩国基地をめぐる問題など、全国的な共通問題を含んだ重要争点が問われることになる。
 自民党は安倍首相のお気に入りであるキャリア官僚数人に声をかけたのち、総務省財政課財政企画官の村岡嗣政(41)を擁立する方針を固め、一気に選挙日程を動かし始めている。そこに毎回泡沫の「日共」集団が候補者を擁立し、前回選挙に登場した飯田哲也が脱原発を掲げて立候補の意志をあらわし、同じく前回選挙に立候補した元民主党の高邑勉が飯田を追うようにあわてて出馬を表明。自民党VS批判票の分裂選挙によって、自民党が知事ポストを得る選挙構図になっている。
 1年半前の選挙では、山本繁太郎の得票は目標だった35万票に遠く及ばず、約25万票。全有権者からの支持率は21%にとどまった。それに対して飯田が18万5000票、高邑が5万5000票を得た。とくに瀬戸内海側の工業地帯では自民党に対する批判票が3万票ほど多く投じられるなど、これまでにない票の出方となり、一騎打ちならば拮抗状態だった。
 国政隷属の自民党県政と山口県民との鋭い矛盾になってきた上関原発の問題があり、オスプレイ配備をはじめとする米軍岩国基地への空母艦載機移転、海兵隊移転など基地増強の問題など、名護市長選、東京都知事選とも重なった全国共通の課題が重要争点として問われている。「保守王国」で首相はじめとする代議士連中を抱えているおかげで、全国があれほど嫌がっている原発や基地を次次と郷土に招き入れ、そのことによって代議士たちが中央政界で出世し、山口県は沖縄県と同じように全国トップクラスの少子高齢化、産業破壊による経済の疲弊に見舞われてきた。それに対する県民の批判世論も充満しきっている。
 山口県では自民党が支持率21%という、極めてもろい支持基盤のうえに立たされながらポストは押さえていく。その他の八割ないしは自民党を上回る3割の支持を集めうる野党なり、対抗勢力が見当たらないのが実際の姿となっている。既存政党がみな自民党の付属物になっている状況は国会以上に先行し、民主党は今回の知事選でも自民党候補との相乗りを検討している始末だ。多くの県民にとって日頃から受け皿が乏しいが、そのなかでも前回選挙では「脱原発」を叫んだだけであれほどの得票が勝手に流れていくという、自民党にとっては脅威となる民意を突きつけた。
 「今の段階では白紙」と叫んでいた上関対応について、安倍政府の原発再稼働・輸出路線に隷属して推進に舵を切り、オスプレイ受け入れ反対も公約破棄した山本県政が行き倒れとなり、地元山口においても、安倍政府に一泡吹かせるような結果を示すかが注目されている。

 上関では2月に町議選

 なお、山口県では原発計画を抱える上関町で、福島事故後初の町議選が2月16日投開票で実施される。国会が一強支配になるよりもはるかに以前から、上関では電力会社の独裁支配体制が築かれてきた。推進派、反対派といっても町民の思いを代弁する議員など一人もおらず、みな原発にぶら下がって飯のタネにしていることへの怒りが強く、議員候補者への信頼がない。この推反の勢力図がどう転ぼうが、大勢に影響が出るようなものではない。仮に推進派がすべての議席を独占したところで、祝島の漁業権を取り上げることなどできず、いわんや周辺自治体・議会の同意を得たり、全県民的な了解を得ることなど不可能で、原発建設に着手できるような状況にはない。
 このなかで、福島事故が起きてなお、事故後の対応や避難場所の検討や心配すらなく、盲目的に事故以前と同じ調子で推進を叫んでいる議員や町政幹部たちのいい加減さが暴露されており、住民にとって福島と同じように故郷をたたき出された場合の対応については、決して曖昧にすることができないものとなっている。売町政治から抜本転換し、民主主義を回復して中電による植民地状態を解決することこそ迫られている。
 名護市長選、東京都知事選、山口県知事選と続く3連戦が、直接には投票権のない地域も含めて、全国的な注目を浴びている。連敗すれば死に体となるのが安倍政府で、「高支持率」といいながら、もともと全有権者からの支持率は16%(1昨年末の衆院選の比例得票)だった弱さがあらわれ、有権者を恐れた姿をさらしている。
 選挙は対米従属の日本破滅の道を進むか、独立して日本の立て直しの道を進むか、戦争・貧困の道か、平和・繁栄の道か、聞く耳のないファッショの道か、民主主義の道かが鋭い対立となっている。原発やTPP、農漁村破壊、米国に隷属して日本列島を対中国、対朝鮮戦争の火の海に投げ込んでいく問題などすべてをつなげて、全国団結によって鉄槌を加えること、全国的な大衆運動の力を強めることが重要になっている。
 いまや安倍政治があちこちで破綻し、外交だけでなく選挙で内政も行き詰まる気配を見せている。安倍政府を震撼させるような結果に期待が高まっている。

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