米軍普天間基地問題をめぐって、日本の独立と進路をめぐる問題として安倍売国政治への憤激が全国で拡大している。2月末の日米首脳会談以後、選挙公約を公然と覆してTPP参加を正式表明して憤りが噴出したが、性懲りもなく「アメリカとの約束を守る」と名護市辺野古への新基地建設に乗り出しているからだ。欠陥米軍機・オスプレイが全国で低空飛行訓練を開始し、集団自衛権行使など戦時国家体制作りへ向けた法整備が進行し、沖縄・尖閣諸島有事を想定した共同作戦計画策定も動いている。このなかで安倍政府は「沖縄の負担軽減」と称する「全土の沖縄化(米軍基地化)」を強行。「国防」と称して中国や朝鮮には居丈高で、尖閣諸島には「不審船」が近寄っただけで大騒ぎをするのに、実際に日本の独立を奪い、基地をおいて占領し続ける米軍には一言も「出て行け」とはいわず、せっせと基地を提供するのである。「移転先をどこにするかではなく、米軍基地が居座り続けていることが問題」「大田知事のときもだが県はいつでも裏切る。全国で下から運動を広げることが要だ」と沖縄県下でも語られている。
安倍政府が沖縄県に、米軍普天間飛行場移設先の名護市辺野古沿岸部の公有水面埋め立て許可を申請した。「普天間基地の危険除去」といいながら、滑走路を二本体制にし、使い古した基地を最新鋭基地に更新するためである。申請は沖縄防衛局員がこそこそと段ボールで書類を持ち込んだが、県の受領印も受けずにわずか数分で立ち去った。全県の基地撤去世論は強く「どの政党もアメリカの手下だ」との実感が語られている。
辺野古南側海域で漁業権を共にする宜野座村、金武、石川の3漁協(正・准組合員数計316人)はすでに「豊かな漁場を再生することはわれわれの使命」と新基地建設即時中止を求める大会決議を採択。県下の全41市町村も反対を表明している。こうした全県全国世論に包囲されるなか仲井真知事は「移設は不可能」との態度。だが法律にのっとって実務処理を進めていくとの姿勢をとっている。
沖縄戦体験者の男性は「移設先が県外か県内かとの論議もあるが、全国でオスプレイが飛び回っている。もう沖縄に来るなということだけ論議していても変わらない。辺野古への基地建設はどうみても増設だ。“沖縄返還”“サンフランシスコ講和”とかいろいろいわれたが、その結果できあがったのが今の日本。首相はアメリカのいうことしか聞かない。植民地だし独立国ではない。だから県知事もどの政党も最初、反対といっていてもひっくり返る。もう政党にも知事や市長にも幻想を持つことはできない。全国で結束して日本の将来のことを考えるときだ。アメリカは最初から日本を中国進出の基地にするために沖縄戦をやって日本人をたくさん殺した。米軍基地は日本を守るためにあるのではない」と強調した。
沖縄・尖閣有事を想定 露骨な日米共同作戦
普天間問題をめぐっては日米首脳会談で安倍の方から「普天間移設と嘉手納以南返還の両方を早期に進めたい」といい、オバマがうなずくと「同意を得た」と見なしただけだ。それを「米国との約束を着実に進めていく」(菅官房長官)といって、県民も国民の同意もないのに埋め立て申請を強行し、批判が出れば「安全保障環境は厳しさを増している。米海兵隊の抑止力はわが国とアジア太平洋地域の平和と安定に不可欠だ」(安倍首相)と色をなして反論する。国民の利益や日本の国益は二の次でアメリカに尽くして恥じない姿は露骨になっている。
米国防総省のリトル報道官は「米軍再編の非常に重要な一歩だ」といい、米上院外交委員会のメネンデス委員長も「持続可能な米軍の沖縄駐留は日米同盟活性化に貢献する」とのべ、普天間問題がもっぱら米国の都合に根ざしていることを隠さない。
このなかで日米両政府は沖縄・尖閣諸島をめぐる日本有事を想定した共同作戦計画策定に着手している。「検討作業は数カ月を要する」とされるが、たとえ決定されても「機密扱い」で非公表。この基本線が「尖閣諸島に中国軍が侵攻した場合は陸上自衛隊が奪還作戦を展開、米軍の海兵隊が支援に入り、海軍、空軍も海上・航空自衛隊と協力して作戦を遂行する」内容となっている。これまでの日米防衛協力指針(ガイドライン)に基づく、日本有事を想定した共同作戦計画と違い、一般的な任務分担にとどまらない。特定地域を想定した初の有事計画であり、辺野古への新基地建設の動向と密接にかかわっている。
日本全土盾にする屈辱 米軍再編の意図露わ
もともと米軍普天間基地問題は、95年に発生した米海兵隊の少女暴行事件を契機に噴き上がった基地撤去世論を受けて、96年のSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)で合意された。だが「住宅密集地のど真ん中にある危険な米軍基地の除去」といいながら現実は実弾射撃訓練や米軍の戦斗機訓練を全国の自衛隊基地に拡大しただけだった。そして2001年のNYテロ事件を機に小泉内閣が有事法制や戦時動員体制を具体化。2006年に「米軍再編計画」発表となっている。
この「米軍再編」は米本土の米陸軍第一軍団司令部を座間(神奈川県)に移転し、そこに陸自中央即応集団司令部を統合させるなど、米軍と自衛隊の司令部機能の一体化が柱。日本全土のインフラも米軍の都合で整備し、日本全土をアジア侵略をにらんだ出撃拠点へ変えることが眼目だった。このため青森県の空自車力分屯地に米軍のXバンドレーダーを配備し、横須賀基地に原子力空母を配置。岩国基地は厚木からの空母艦載機部隊を移転させるため「沖合移設」「民空開港」と欺いて滑走路を二本体制にし、「愛宕山にニュータウンを造成する」とだまして米軍住宅整備を進め、空母が接岸できる岸壁も増設した。そしてオスプレイを飛来させ、今後は最新ステルス戦斗機F35も配備する計画が動く。被爆地・広島湾岸一帯を核攻撃の前線基地へ大増強させてきた。
このもう一つの柱が「普天間移設」を掲げた新基地建設だった。当初、普天間には使い古した滑走路が一本しかなかったが、移設に乗じて滑走路増設を画策。辺野古の滑走路をV字型にすると決め、事実上二本体制に増強する計画とした。輸送ヘリも垂直離着陸機オスプレイに更新。単なる移転ではなく沖縄や日本全土を出撃基地化する意図が露呈している。
そのため海兵隊司令部や家族を沖縄より安全なグアムへ移動。米軍は後方で無人機などの遠隔操作をし、矢面にたつのは日本となる関係だ。それを「沖縄の負担軽減」とありがたがって、日本が移転費まで負担してやる有様。日本は2010年度までにグアム移転費のみでアメリカに8・4億㌦貢ぎ、最近も新たに1・1億㌦(約93億円)出すと安倍政府が約束している。
在日米軍再編に伴う日本側の負担総額は少なくとも2兆~3兆円(米国防総省)と見込まれている。東日本大震災の復興のためだと増税する一方で、被災地はいまだにダンボール生活をよぎなくされ、日本の税金が米軍基地新設に投入されている。米軍は戦後67年も占領し続けてきたが、今後数十年も居座り続ける意図をあらわにしている。
「危険保障」の日米安保 沖縄戦で基地奪い
アメリカは沖縄戦で1500隻の艦船と55万人の兵力を動員し、18万7000人も大殺戮して沖縄を奪いとり基地にした。それから戦後67年へた現実は、新しく基地を整備して永続的に居座り続け、日本中を核攻撃の標的にさらす危険な現実が浮き彫りになっている。
沖縄侵攻にさいしてアメリカがやった「アイスバーグ作戦」では沖縄戦の任務を「沖縄を解放し、基地として整備し、沖縄諸島における制空、制海権の確保」と規定。当時の沖縄戦米艦隊司令官ハルゼーは「ジャップを殺して殺しまくれ。もしみんなが自分の任務を立派に遂行すれば各人が黄色い野郎どもを殺すのに寄与することになる」と檄を飛ばした。当時の米陸軍参謀長マーシャルも「戦後に予想される紛争地域のなかに黄海周辺がふくまれる。従って琉球に基地を置き、残りの地域を非軍事化して友好国にゆだねることが望ましい」とのべている。
1945年8月15日付のニューヨーク・タイムスは「太平洋の覇権をわが手に」と題して「われわれはペルリ(ペリー)以来の願望を達した。もはや太平洋に邪魔者はいない。これで中国大陸のマーケットはわれわれのものになる」との記事を掲載した。アメリカは明確に沖縄、そして広島、長崎に原爆を投げつけ、全国空襲で焼き払って日本全体を占領し、中国の侵攻拠点とする目的をもって武力で基地を奪いとった。
そして戦後67年間、日本を占領し続けたうえまだ沖縄や岩国に新たな基地増強を押しつけている。「日米安全保障」の現実は「危険保障」である。それがTPPで対中国包囲網をつくって日本の富を根こそぎ奪いとり、日本全土を基地化する米軍再編を強行してアジア諸国との対立を煽り、あげ句の果てはアメリカのための対中国戦争の盾となる屈辱に通じている。
失業や生活苦など国民生活でのあらゆる苦難の根源は敗戦後から続くアメリカの日本支配、国益を売り飛ばす日米安保体制を軸にした売国政治にある。日本とアジアを再び原水爆戦争の火の海にさせないため米軍基地を撤去させ、日本の独立・平和をめざす生産点を基礎にした全国的な下からの大衆行動が求められている。