いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

文字サイズ
文字を通常サイズにする文字を大きいサイズにする

狼煙上げる「令和の百姓一揆」 “農家の危機は食料の危機” 所得保障し安定供給守れ 生産者が院内集会 3月にトラクター行進も

(2025年2月24日付掲載)

熱気にあふれた「令和の百姓一揆」院内集会(2月18日、参議院議員会館)

 農と食が危機的な状況に直面するなか、「農民に欧米並みの『所得補償』を! 市民に安定して食を手にできる生活を!」を掲げ、山形県の農家・菅野芳秀氏が代表を務める実行委員会が「令和の百姓一揆」を呼びかけている。昨年、食の憲法といわれる食料・農業・農村基本法が改定されたが、食料自給率の向上は謳われないままであり、同法にもとづく基本計画が3月末にも閣議決定されようとしている。こうしたなかで実行委員会は2月18日、衆議院第2議員会館で院内・オンライン集会を開催し、農家の実情を明らかにすると同時に、3月30日に東京都内でおこなうトラクター行進・デモ行進【実施要項は下記チラシ参照】を、農政を転換し農業を立て直す運動の一歩にしようと参加を呼びかけた。

 

○       ○

 

 開会挨拶に立った菅野芳秀実行委員長は、「令和の百姓一揆」を企画した動機について3つをあげた。

 

菅野芳秀氏

 もっとも大きな動機は、農民に欧米並みの「所得補償」を求めていくことだ。菅野氏は「このままでは日本から百姓がいなくなろうとしており、村がなくなろうとしている。そこまで危機が進行しているにもかかわらず、食べ物をつくり続けてきた農民を守りながら日本の食料供給先を守っていこうという声はまったくない。水田農業の時給は10円。1日8時間働いても80円だ。基本的人権などないような状況が長く続いている。国会では国民の最低賃金を1050円にするかしないかをめぐって議論がたたかわされたが、時給10円で国民のコメづくりをする農家を守れるかという話はまったく出てこない。“基本的人権として1050円が必要だ”という声があったが、農民は国民ではないのかと思うような状態にずっと放置され続け、暮らしのために農業からどんどん離れていっている。このままでは日本から農民はもちろん、農家もいなくなる状態を前にしている。果たして、こんな日本づくりでいいのかということを国民に問うことが、令和の百姓一揆の最大の動機だ」とのべた。

 

 二つ目に、都市部の市民、とくに貧困層が食べられない状況にあることをあげた。菅野氏は団体を通じて都市部の市民にコメなどを届ける運動もしている。「百姓だけが大変なのではなく、都市部の市民も場合によってはコメが食べられない状態に放置されている。なんの手もそこには差し伸べられていない。生活保護があるではないかというが、生活保護はそれほどたやすく使えるような形にはなっておらず、とくに貧困層が大変な状態のなかに放置されている。令和の百姓一揆の二つ目の動機は、市民が命の危機を感じることなく食べ物を食べることができる仕組みをつくっていくことだ」とのべた。

 

 最後に食料自給率の低さに触れ、今輸入農産物が止まれば飢え死にする国民が出ることに警鐘を鳴らした。「食べ物を持っている人に土下座をしてでも食べ物を分けてくれといわなければならなくなる。国家も食べ物を持っている国に土下座して分けてくれといわざるを得ない。生き延びるためにひたすら土下座してお願いするしかないのが、食べ物がないことの悲惨さだと思う」とのべた。

 

 このままでは、日本国民の多くが食べるために犯罪を犯すような事態に至ると指摘し、「食料生産の基礎である農村・農業を守っていくことがいかに大事かということだ。われわれの世代だけでなく、未来世代の利益のためにも村と農民を守らなければならない。多くの農民は離農し、離村している。この流れを押しとどめて、なんとか食料生産の安定的な確保をするには、農民に所得補償をしっかり提供しながら守っていかなければならないということだと思う」と語った。

 

 集会では能登農業協同組合の藤田繁信組合長が昨年の能登地震、豪雨災害で被災した農地の復旧がいまだ手つかずになっている現状を報告したほか、水田、野菜、果樹、畜産、酪農など各分野の農業者が切実な現場の実情を報告した。

 

 どの農業者からも、経営の厳しさと同時に、国民が食べる物がなくなるという危機的な事態を前に、農業を守ることは国民の生命と国の未来を守ることだとの意見があいついで出され、消費者とともに「令和の百姓一揆」を成功させることへの思いが語られた各発言者の意見:別掲

 

「農家の自殺年間400人」 社会を変える運動を

 

 報告を受け、農協関係者や農業者などからも、トラクター行進をともに成功させたいという思いがあいついで語られた。JA常陸(茨城県)の秋山豊代表理事は、農業の現場で農家が次々離農している現状を語った。とくに昨年と一昨年、農地を守ってきた女性たちの離農が進んでおり、残った担い手も地域の田や畑を背負いきれない状況になっているという。担い手も70代後半であり、「団塊の世代」の担い手が倒れれば20町歩、30町歩という田が耕作する人を失い、条件の悪い田は耕作放棄地になっていく状況が急速に進んでいるとのべ、「私が一揆に賛成なのは、このままでは農村から崩壊し、崩壊したところから若者が都会に出て行ってスラム街ができるとか、日本全体がダメになると思うからだ。そこをデモをやって訴えなければだめだ」と語った。

 

 管内のある地域では20%が耕作放棄地、10%は個人、残りの7割を4人が10町歩ずつ耕作しており、うち2人が離婚、2人は未婚で頑張ってきたが、もう限界だという訴えを受けて、基盤整備に挑んでいるところだという。「そうした悶々(もんもん)とした気持ちをデモで表現する。茨城だったら国道をトラクターに乗って行くくらいの気合いがないとダメだ。全国のみなさん、結集してもう一回、日本の農業を盛り返そう」と呼びかけた。

 

 食・農業の問題に長くとりくんできた山田正彦元農林水産大臣も、「日本の農業はこのままではダメになる。令和の百姓一揆でみんなで立ち上がろうではないか。生産者も消費者も、日本の農業をもう一回、なんとかわれわれが食べていけるようにしよう」と力強く呼びかけた。

 

 農家でもある市議会議員の男性は、農業者の自殺が年間400人にのぼっていることにふれ、「私も25年間農業を営んでいるなかで、研修事業や販売の現場でかかわったことのある方が5人、みずから命を絶った。農家が100万人を切る、30万人まで減るという公文書も出ている状態を少しでも是正したいと思う。それは農耕民族の血を引いている日本人全体の責務だと思っている。だからこそ私も今回、トラクターをこの地に持ってくるつもりだ。ルールを守り、市民、県民、国民の方々に届くようなデモを少しでもお手伝いさせていただく。亡くなられた方のご冥福と、そしてその悔しさを全力でこのデモにぶつけたい」と語った。

 

 集会では改めて、3月30日のトラクター行進はゴールではなく、各地域の農業者や消費者がつながって農政を変え、食と農を守る運動の第一歩であることが確認された。現在、同じ日に沖縄でもトラクター行進をしたいという声が上がっているという。

 

 菅野代表も最後に、打ち上げ花火ではなく継続的に運動をつないでいくことの重要性を強調。「今の農を無視する、命を無視するような社会を根本的に変えるまで運動を継続的に進めていく第一歩が3月30日の令和の百姓一揆。ともに運動を続けていこう」と呼びかけた。

 

◆トラクター行進への参加について

 

 実行委員会は、全国の農家にトラクター行進への参加を呼びかけている。トラクターを持ち込む場合に限り事前申し込みが必要で、トラクター搬入費用については10万円を上限に補助をおこなうとしている(個別の相談可)。

 

 トラクターで行進に参加する場合は、事前に申し込みフォーム(https://t.co/NTmvjUZ7hq)に入力して申し込むか、メールで申し込む必要がある。

 

 メールによる申し込みの場合は、件名に「トラクター申し込み」と明記のうえ、①名前、②メールアドレス、③住所、④電話番号、⑤免許の種類〔有(小型)/有(大型/無)〕、⑥トラクターナンバー、⑦トラクターの車高、幅、長さ、⑩当日の搬送方法、⑪参加人数(搬入者含む)を本文に記入し、下記のアドレスまで送信するよう求めている。


*実行委員会のメールアドレスは hyakushoikki.japan@gmail.com

 

関連する記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。なお、コメントは承認制です。