(2025年2月19日付掲載)
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減税デモで「増税やめろ」とコールする山本太郎参議院議員と参加者(2月16日、福岡県)
れいわ新選組(山本太郎代表)は、年明けからも全国各地で増税反対デモとともに、おしゃべり会を継続しておこなっている。1月からは神奈川県横須賀市、二宮町、沖縄県浦添市、名護市、兵庫県神戸市、大阪府大阪市、愛知県名古屋市、豊田市、京都府京都市、広島県福山市、福岡県北九州市と全国を駆け回り、れいわ新選組の各選挙区の国会議員らとともに全国の市民と対面での議論を続けている。トランプ就任後の対米政策や、経済問題、食料問題やインフラの老朽化、さらには発災から1年以上が経過する能登被災地の問題など、参加者からの質問や意見は多岐にわたり、真剣な議論がくり広げられている。議席を3倍に増やした昨年10月末の衆院選後、各会場ではこれまで以上に多くの参加者が詰めかけ、立ち見も珍しくないほど注目度は高まっている。直近のおしゃべり会の質疑の内容を紹介する。
街頭と国会つなぎ永田町を揺らす
質問(愛知県・豊田市) アメリカの大統領がトランプになったことについてどう思うか?
山本太郎 アメリカの大統領を私たちが選ぶことはできない。だから誰が大統領になったとしても、日本の考え方や主張がぶれてはいけない。トップが変わるたびに自分たちの考え方を変えているようではだめだ。その点で、日本政府は対米従属の立場だけは一貫しており、宗主国アメリカ様と植民地日本という関係性は維持し続けられている。
今回の日米首脳会談では、主に国防関係の話をしたといわれている。私が一番注目しているのは、石破首相が日本企業の対米投資を1兆㌦(約151兆円)規模に拡大する方針を示したことだ。日本の国家予算を上回る莫大なカネだ。これは企業が投資するというが、日本のお金もつぎ込まれるだろう。
さらに、トランプ大統領は対日赤字について「(日本と)協力して均衡に戻したい」と明言し、達成できない場合の対応は「関税も選択肢」としている。つまり、日本の出方次第では、日本が輸出する物に対してより税金をかけてアメリカで売れないように圧力をかけるといっている。
アメリカは円安ドル高ではなく、円高ドル安に持っていきたい。通貨が安くなることは、本来国内にとってはプラスで、国内産業をもう一度立て直すための力が大きくなるものだ。トランプ大統領もおそらくそれを狙っている。そのなかでは日本国内の金利をさらに上げるという動きも出てくるだろう。アメリカから直接「お前たちは金利をもっと上げて、今の為替の状況を変えていけ」ということはいわないだろうが、おそらくそこを忖度させられる。それは自民党であっても立憲民主党であっても同じだ。今でさえ景気が悪いのに金利を上げているので、今以上に空気を読んで金利を上げる可能性が高い。
そうなると中小企業は今以上に借り入れが難しくなって倒産も増えるだろう。失業者も増え、今よりも安い給料しか手に入らない仕事に就く人が増え、便利に使われることになる。
円安にも円高にもメリットとデメリットがある。これだけ円安なのに国がまったく助けないから「円安は絶対にダメだ」ということになっているが、円高が加速すると今度はもっと大変なことになる。中小企業が苦しくなるだけでなく、家やマンションを買う人もどんどん減っていくことになる。
今回の日米首脳会談は「うまくいった」といわれるが、「ゼロ泊3日でケツを舐めに行ったんだな」というのが私の率直な思いだ。
質問(沖縄県・浦添市) 沖縄に直接かかわることだが、今ウクライナやガザのように虐殺や侵略が起きて世界情勢が怖い状態になっている。れいわ新選組の伊勢崎賢治さんは原発が狙い撃ちにされるということもいっていて、恐ろしいと感じる。伊勢崎さんは沖縄と北海道を無防備化して対話外交をすべきだというが、本当に大丈夫なのか?
山本 軍事的な緊張が高まったり戦争になったときに、原発が無傷でいられることが保証できる人がいるだろうか。「直接狙ったのではなく偶然だった」といいつつ、実際にミサイル攻撃のターゲットにされる。
アジアの軍事的緊張を煽り続けている者たちのなかに、「原発が狙われる」という者はおらず、むしろ原発再稼働や新規建設をいい続けている。彼らのなかでの安全保障なんて金もうけの道具でしかない。だからここまで軍拡が進む。
「原発が軍事の標的になる」というのは脅しではない。実際にロシアとウクライナとの間でそのような事象が起きている。原発は狙われるものだという認識を持ったうえでどうするか考えていくのが安全保障だ。
北海道や沖縄などの、ロシアや中国など近隣に大国がある地域に関しては、ある意味での緩衝地帯としての役割も考えられるといっているのが伊勢崎さんだ。伊勢崎さんはアフガニスタンなど世界のさまざまな紛争地帯において、国連や日本政府の代表などいろいろな立場で武装解除に携わってきた軍事の専門家だ。「このままでは中国にやられる」「軍拡だ」という主張一辺倒で上滑りしたようなタカ派的な者たちとは違う。戦争にさせないためには何が必要かという具体的な策を持っている人を一人でも多く国家に増やし、議論を活発化させなければならない。
伊勢崎さんがいっていることのすべてがれいわ新選組の考え方というわけではないが、同盟国など自分たちのお仲間の国々とだけ連携していくのは非常にマズい。だからすべての国、仮想敵国とされるような国とも交流する場をもうけなければならない。軍事、エネルギー、政治など衝突する問題について、各テーブルで話し合う協議体が必要だというのが彼の主張だ。この政策は私たちも支持している。
アメリカと関係性の強い国々とだけ繋がるのではなく、中国とも北朝鮮とも話し合わなければならないし、そのような協議体を沖縄に置くべきだと伊勢崎さんはいっている。実際に、ロシアと国境を接する国々において、そこを非武装とする「緩衝地帯」も存在している。世界に実例があるのだから、そのことについて議論や検討をするのが国会・政治家の役目だ。排除するべきものではない。
実際にアジアに緊張感はあるが、「危険だ」というイメージだけで思考を硬直化させるのではなく、経済で繋がって平和を守る考え方が必要だ。そのためにもさまざまな可能性について考え、リアルな国防、外交政策が必要だ。
安保のためには自主外交 アジアで孤立しない
質問(広島県・福山市) 仮にトランプ大統領と会談できるとしたら何を話すか?
山本 日本は、アメリカが中国に対して圧力をかけることを望んでいない。中国と直接外交をしたいと伝える。アジアの緊張を高めることは、日本・アメリカ・中国の誰のためにもならない。軍備拡大よりも前にまずは外交で問題を解消していきたい。日本はこれまでまともな外交ができなかったので、アメリカの意向に関係なく、近隣国日本としてまじめに外交していくつもりだということを了承してもらいたい。もし了承されなくてもやっていくつもりだということをまずいいたい。
アメリカと中国の緊張の高まりに対しては世界中の国々が反対している。なかでもASEANなどのアジアの国々が強く反対している。そうした国々は、アメリカ側に付くのか、中国側に付くのかについて「俺たちに選ばせるな」といい続けており、これが大きなブレーキにもなっている。一方で日本はアメリカの尻馬に乗って軍拡をしながらアメリカ追従を続けている。
スーパーコンピューター「富岳」で、日本と中国の間に緊張が高まった場合のシミュレーションをすると、2カ月間で日本に1・4兆円分の部品が不足し、約53兆円分の生産額を損失する。そこから先の関連産業の損失まで考えると、損失は53兆円ではすまない。戦争にならなかったとしても日本国民は経済的に死ぬ。だから平和しか道はないし、そのためには外交しかない。
本来ならアメリカと中国の間に入れるのは日本しかなく、「俺たちの庭先で揉め事はやめてくれ」といえる立場のはずだ。
現状、日本は外交をやっていない。日本と中国との間で尖閣問題がこじれたとしても、アメリカ側が一緒に戦争をやってくれるということはないだろう。
ウクライナ戦争を見ても、アメリカは武器しか送っていない。バイデン前政権のブリンケン国務長官は「ウクライナへの軍事的な投資の90%は米国内で米国の兵器製造業者による生産に費やされており、多くの雇用を創出し経済を成長させるため、米ウ双方にとってWin-Winだ」といっている。3年も続く戦争をアメリカが止めないことと、米国内の好景気は繋がっている。つまり戦争とは金もうけ、ビジネスだ。
そして「ウクライナの次は東アジアだ」と思っている人たちが数多くいる。日本国内ではすでに重工業系がもうかりまくっている。だがいくら重工業系がもうかっても30年間広く破壊され続けてきた国内は立ち直れないし、一部の分野だけにお金が注がれたところでそれは日本全体には波及しない。そんなことに向こう5年間で60兆円もつぎ込むなんてありえない話だ。優先順位が違う。
そして今、世界の防衛大手がアジアでの事業の重心を日本に移し始めている。イギリスのBAEシステムズは2023年中にアジアの統括機能を日本に移し、アメリカのロッキード・マーチンも同様の対応をした。「次に金もうけができる場所はどこか」と見たときに、防衛費を大幅に増やす日本に目を付けている。
アメリカは自国の兵士を送らずに、遠い所から武器だけは送り、金をもうけ続ける「オフショア・バランシング」という方法をとり続けており、次にアジアが舞台になったとしても同じだろう。絶対にそうさせないためにも外交が必要だ。だからトランプさんには日本がこれから自主独立を目指すということ、そういう方向性でないと国民が納得しないということをいわなければならない。そして実際に国内の政治でそういう力関係をつくっていかなければならない。
能登も救わぬ自民政府 民間の善意に丸投げ
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豪雪に閉ざされた能登被災地(1月、能登町)
質問(福岡県・北九州市) 能登半島の方たちを救ってほしい。私には6歳の孫がいるが、温かいご飯を3食食べられて、いつでも風呂に入られる。だが能登では食べ物も風呂も十分ではない。それなのに国会議員は国民の税金をもらっていながら国会討論中にスマホや居眠りだ。
山本 小倉に来る前日に広島でデモとおしゃべり会をやったが、その前日まで奥能登にいた。元日に大きな地震があった後、9月には水害まで発生してダブルパンチの状況だ。これに対して一刻も早く、少なくとも水害前の状態に戻さないと、被災された方々の気持ちが付いていかなくなる。だから9月時点で政府にいろいろ要求してきたが、ほとんど手当はなされなかった。
国はキッチンカーを出したというが、やったのは民間の牛丼屋さんだ。国が炊き出しのようなものをしっかりやらないといけない。
たとえば自衛隊なら食材さえあれば必要な分の料理を用意して必要なところに配る能力がある。それなのに国はとにかく自衛隊を動かすことを嫌がる。「便利屋ではないんだ」という感覚なのだろうが、災害から国民を守ることも国防だ。それをなぜ民間の善意に頼ってやろうとしているのか。
珠洲市における自衛隊の炊き出し実績を見てみると、1月6日に初めて100食分の炊き出しがおこなわれ、その後7日に470食、8日に570食と増えてはいるが、これでは足りない。国が先回りして食材を確保していない証拠であり、自衛隊の人たちが自分たちの食材や提供元を探してなんとかかき集めたものだ。国が指示したものではない。そして6日に初めて提供されるまでの間は、被災者がみんなでおせちなどを持ち寄って食いつないでいた。
私も1月6日に現地に入ったが、輪島市のある避難所では、5日に出た晩ご飯がせんべい2枚だったそうだ。能登半島は地理的な制約がさまざまあるから車両や人員の投入が難しく大変だといわれているが、ヘリだってある。人命を考えると、防寒具や食べ物、飲み物はまったく足りていなかった。昨年2月末時点で、珠洲市において必要な食数は、一食当り2500食。つまり1日に7500食必要だ。被災直後はこれよりもっと多い食数が必要だったはずだ。マヌケな政治家たちが指示せず、「やってます」とうアピールばかりしているが、現場の状況がすべてを物語っている。
能登町では、自衛隊の炊き出しが初めておこなわれたのが1月28日で、提供食数は300食だった。それまでの間、支えていたのは民間のボランティアだ。それではだめだ。国には、災害があったときに住民の命を守る責任があり、確実に3食食べられて安心できる場所で眠れる状況を担保するのは当然のことだ。1年経ったのにまだ水道も使えない地域もある。もし東京で同じことが起きていたら、餓死や略奪まで起きているだろう。
なぜ能登がギリギリこの状態でいられるかというと、能登の人々が元々持っているスキルがあるから何とかなっている。
1月6日の時点で珠洲市の先端の津波が来た地域に向かった。そこでは道路が陥没しているところに畳が敷いてあり、車で通れるようになっていた。その先に行くと重機が動いていて、地元の若者たちが「いつでも物資が運ばれてきてもいいように」と自力で道路を修復していた。ちょうどその頃、国会では与野党が協議して、国政政党の党首クラスは現地に入ってはいけないと決定し、首相ですら来ないという状況だった。そのことについてどう思うか聞くと「ヘリがあるだろう。俺が案内してやる」と。
私が政治にかかわるようになって約10年経つが、そのなかで「世の中を絶対に変える」という思いがありつつ「これはなかなか変わらないな」と思うことも実はある。だが、こういう人たちに出会うと、「捨てたものじゃないな」「まだまだやれるぞ」という気持ちにさせてもらえる。
とはいえ、復興・復旧が民間の善意に甘えるものであってはいけない。土砂撤去も民間やNPO、災害ボランティアの力だけ借りて、国は重機のリース代さえも払わないで、彼らに負担を丸抱えさせて自衛隊さえ出さない。能登半島でさえこんな状態だから、この先他の地域で同じような大きな地震が来たとしても、同じように見殺しにする気だろう。今の能登の状況は明日の私たちにもいえることだ。だからこそ絶対に手を離してはいけない案件であり、現地の声を国会でしっかりぶつけていく以外ない。
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能登被災地では災害ボランティアによる家屋内の土砂撤去作業が続いている(2月16日、輪島市一ノ瀬地区)
生産者の所得保障を 食料安保は喫緊の課題
質問(兵庫県・神戸市) 兵庫県の田舎から来た。れいわの農業政策について、農作物を国が買い上げて農家の所得を安定・向上させるというが、果たしてそれだけで間に合うのだろうかという不安がある。育成や養成についての考えはないか。一次産業に特化した派遣労働的な枠組みがあれば入口が広がるのではないか?
山本 基幹的農業従事者の70%超が65歳以上の高齢者だ。新規就農者も少ないなかで、このままでは国内での生産者はどんどん少なくなっていく。農業だけでは食べていくだけで精一杯という状況を変えるためには、安定した収入を得られるようにしないといけない。
今の物価高は、大きく分けて「食料」と「エネルギー」の分野に集中している。なぜなら輸入物価が上がっているからだ。農業で見ても、ハウス栽培なら燃料が必要だし、肥料や包装資材も欠かせない。酪農では飼料も必要になるが、これらを輸入に頼っている。
ウクライナ戦争などで打撃を受けた農家に対して、少し手助けしたくらいではどうにもならない。赤字生産のままいつまでも続けるわけにいかないし、その仕事をやりたいという人は増えない。
今の日本は外から入ってくるものが増えすぎている。国産か輸入物かを選んで購入できる人はいいが、所得が低い人は国産とか輸入物などといっている場合ではなく、安い物しか選べない。「買い物は投票と同じ。あなたの意志表示だ」という人もいるが、それは一定の収入があるからいえることだ。現状は「生きるためには1円でも安い物を」「産地がどこでも関係ない」という人が増えている。
海外の余剰作物を日本が買わされているという現状を変えないといけない。日本国内で生産力を高めるためには、農家が作ったものを国が良い値段で買うというのが一番手っ取り早い方法だ。不作のときには相場は高騰し、過剰に豊作の場合は相場は暴落する。そうした不安定要素を無視して、作った物に対して国が価格調整しながら買い上げて所得保障しないといけない。
「生産者」という職業を安定したものにしないと、労働力は確保できない。ちゃんと身入りがあって、子どもたちにも一般的もしくはそれ以上の生活がさせてあげられるとなれば、憧れの仕事にもなり得る。農業政策においては所得保障がすべてとはいわないが、かなり重要な部分だ。現状、生産者は他の産業に比べて労働の対価として得られるものが少ない。余裕がないなかで助っ人を呼んできたとしても、十分な賃金を払うことは難しい。だから今は賃金の安い外国人労働者を呼ぶしかない。
種や苗のレベルから考えると食料自給率は10%を切っているなかで、このままでは日本で国民の食料が作れなくなる。庶民の食べ物は輸入に頼り、ブランド品だけ残るような国のどこがいいのか。海外との交渉のなかで何かしら揉めたときに、相手から「なら食料の輸出を止めるぞ」といわれたら私たちはその国の属国になるしかない。
一般社団法人中央酪農会議が公表した酪農家の経営環境調査(2023年)によると、過去1カ月の牧場の経営状況は赤字が84・7%。1000万円以上の借入金がある酪農家が66・7%。そして58%が離農を検討している。経営悪化の原因については97・5%が「飼料価格の上昇」と答えている。他にも、「燃料費、光熱費の上昇」が85・4%だ。こうした部分は国が肩代わりできるはずだ。食料の安全保障問題にかかわる事態なのに、その頃日本政府は「作りすぎだから牛乳は捨てろ」「乳牛を殺せ」といいながら、欧州から大量に乳製品を輸入していた。
国が国民の食べ物を確保するためには、まず第一にカネが必要だ。若手の育成やヘルパーの確保も必要かもしれないが、そうした環境を整備するためにも、農業で安定した所得が保障されなければならない。
八幡愛 国会で農業委員会に所属しており、先日は帯広の酪農家の現場にも視察に行った。国の予算を見ると、食料安全保障が必要だからといって「スマート農業」とか「新しい機械を入れたら補助金を出す」という方向に向かっている。そうした投資ができるのは、大規模農場だけで、小規模農家は置き去りにされる。国は予算を付けてはいるが、その中身は小規模農家を淘汰していく方向性だ。企業でいう中小零細潰しが、第一次産業の現場においても起きている。みなさんにこれからの流れを注意深く見ていてほしい。
国がインフラ更新せよ 水道事業の脆弱性
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1月末に埼玉県八潮市で発生した水道管破裂による道路陥没は人員救出も復旧もメドがたっていない(2月11日)
質問(大阪府・大阪市) 水道事業について、過去と現在で有意差があるなら地方議員にそれぞれの自治体の実情について調べて質問してもらい、国会でもとりあげてほしい。
山本 水道についての管轄は、上水が厚労省、下水が国交省に分かれていたが、昨年あたりからすべて国交省の管轄に変わっている。なぜこれまで厚労省が上水を管轄していたかというと、これは憲法25条の生存権にかかわるからであり、人間の生きる権利と水は密接な関係性があるためだと思う。
水道法の改正によって、水道は自治体の持ち物でありながら、管理するのは民間という形が進められていくことになる。「民間の方が安く提供できる」ということだが、自治体として水のことを守ってきて、いろいろな知恵がある人たちを解雇して、人減らしによってカネが浮いたと喜んでいる。しかし水に関してのプロフェッショナルたちを切ったことで、そこから先のノウハウは運営を任された民間企業にしか蓄積されない。水道の持ち主である自治体からはノウハウがなくなってしまうのが一番大きな問題だ。
水道法改正が問題になっていた頃、私は水道の管路の更新事業を国がやれということを訴えていた。あの当時で60兆円くらいの予算が必要で、これを国が毎年「水道のニューディール」として予算を投入しながら交換するべきだという内容だったが、そうした予算の試算ができるということは、ある程度全国の水道にかかわる情報が出ているということだと思うので、そうした情報がアップデートされているか、もう一度調べていきたいと思う。
大石晃子 水道の管路については「地方公営企業法」によって法定耐用年数が40年とされているが、大阪府内では更新できているのは約35%だ。だが国も耐用年数40年に対して、「六60年とか70年でもいい」といって予算をケチろうとしている。その結果、大阪市内でも水道管が破裂したり陥没が多発しており、住民が被害を受けるしコストも高くなる。だから、寿命を延ばすよりも更新することを考えるべきだ。40年の耐用年数なら単純計算で毎年全体の2・5%ずつ更新していかなければ行き詰まってしまう。そのための予算や人員を確保するところから考えないといけないが、何かとケチろうとする。大阪でも、人件費を削るために職員を別部門に切り離して公営・民営化していった結果、現場の実態がどうなっているのかがわかりにくくなっている。
ネットの中より街頭へ 生の声政策に活かす
質問(兵庫県・神戸市) 兵庫県ではSNSでデマや誹謗中傷が拡散されて鵜呑みにする人が増えたり、選挙を金もうけの手段として利用する人もいる。二馬力選挙(候補者が自身への投票を呼びかけずに他の候補を応援する選挙)も実施されるなど、政治や社会が歪められている。私たちはどのように対処し立ち向かっていくべきか?
山本 兵庫県では「知事はクビだ」というところまでいったのに、その後の知事選で同じ人がまた知事になった。その背景にはSNS上で事実とはいえないことが流布されたり、さまざまなことが起きたと聞いている。この問題に関しては、ネットで情報を手にした人がどう考えるべきかとしかいえない。テレビや新聞などの媒体に関しても同じことがいえる。
ここまで部数が減っているなかで、新聞社にとっては購読料を払う読者よりも、確実に広告枠を買ってくれる企業側の方が重要であり神様的な存在だ。そして資本側がコントロールできるのはテレビや新聞だけではない。むしろネットの方がもっと簡単なはずだ。ネットではそれぞれの興味の世界に対して大量の情報が入ってくる。誰かが喋っている動画の切り取りなどを個人が編集して拡散すれば、目にする人が増える。事実とは違う内容が大量に流布されるのは、ネットで拡散されればお金になるという背景があるからだろう。
そうした状況のなかにおいて、何かしら規制する手段もあるだろう。しかしそれを望むことは同時に、自分たちの表現の自由などさまざまなものを犠牲にすることに繋がりかねない。情報を得た人がそのまま鵜呑みにすることがもっとも危険だ。一人一人がネットリテラシーを身につけていく以外に対処法はないと思う。
私たちもネットを使いながら選挙をしているが、そこに完全依存することはない。いくらネットの中で応援されていたとしても、それに見合うだけの議席は得られない。だからこそ現場で、リアルな対面での活動が重要だ。一般的なメディアから無視される現状においてはネットを通した発信は重要だし、速報性、拡散性の高さという面ではネットを活かすが、過信しすぎてはだめだ。
質問(大阪府・大阪市) 兵庫県と大阪府を歩いて、人々と触れあってみて、どういう問題があると感じたか?
山本 ポスター掲載の依頼などでいろいろな店にも入ったが、やっぱり景気が悪い。デモをやりながら街の雰囲気や反応にも目を配っているが、観光客の皆さんはまだ消費をする余裕がある人たちだが、そういった人たちが多い地域で減税や現金給付の訴えをすると、「必要だ」「頑張れ」と反応してくれる。街中に好景気という感覚はほぼないだろう。
国会のなかでは、「これからどんどん景気がよくなって、賃金も上がっていく社会を創っていきます」という空気があるが、いったいどこの国の話をしているのかと思う。街中の空気や人々の声は、国会の中には届かないのかと思ってしまう。街中でのデモやおしゃべり会の様子や、出会う人々の反応を見ていると、必要なことは目の前の生活を支えるための軍資金を国が直ちに出すことだ。
質問(広島県・福山市) 財務省の解体は可能か?
山本 財務省が力を持ちすぎだ。その家の中で財布を握っている者が一番強いし、逆らえない。この30年間、財務省がこの国の財政をはじめさまざまな所に影響を及ぼし、消費税増税まで進めた結果、国は衰退し続け、国民は死にかかっている。才能のない者たちはやめさせなければならないし、財務省のあり方も変えないといけない。
変えさせる方法は、人事に手を突っ込むのが一番手っ取り早い。れいわが訴えているような経済政策が必要だという人に財務省のトップになってもらわなければならない。そして人事権を手にする手段が、安倍政府のときにできた「内閣人事局」だ。当時は菅官房長官がトップで、官僚の人事に手を入れながら安倍政府に対して忖度する体制をつくっていった。このときは、内閣人事局が一部の者たちの利益を生むために使われた。だが、まったく逆に国民のための政治をおこなうための手段として、内閣人事局は残しておかないといけない。この局面において国民の貧困を救済して、傾いた日本を立て直すためには、人事権に踏み込める手段を破棄するわけにはいかない。リベラル政党といわれる者たちは、「森友や加計問題を生んだのが、内閣人事局だ」「なくすべきだ」というが、そんな者たちは一生夢の中で政治をやっておけばいいと思う。
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若い世代や飛び入り参加も目立つれいわ新選組主催「増税? ダメ♡ 絶対!」デモ(2月16日、福岡県)