(2024年12月27日付掲載)
れいわ新選組は24日、臨時国会閉会後に国会内で記者会見を開き、参議院議員の山本太郎代表、衆議院議員の櫛渕(くしぶち)万里共同代表、高井崇志幹事長が記者質問に答える形で今国会を総括した。衆院選で与党が過半数割れした後の永田町の現状や多数派となった野党の実態についても明らかにし、とくに今年の年頭から未曾有の災害に見舞われた能登被災地の救済よりも党利党略を優先して大胆な施策に踏み切らない自民党政府、それを補完する野党勢力について厳しく批判。さらに30年続く経済災害ともいえる深刻な不況から人々や中小企業を救う大規模な経済政策を一刻も早く打ち出すため、来年も国会の内外で国民運動を激しく展開していく決意をのべた。会見の要旨を紹介する。
“103万円の壁”どころでない師走
記者 衆院選後初めての本格的な論戦の場として招集された臨時国会が本日閉会した。臨時国会の振り返りと、来年の通常国会に向けた意気込みを。また、来年夏の参院選をめぐり、日本維新の会が与党に対抗するため1人区で野党候補者の一本化に向けた予備選挙を実施すべきだと主張しているが、れいわ新選組の受け止めと野党連携のあり方についての考え方は?
山本太郎 臨時国会が「論戦の場」というが、日本だけが先進国の中で30年も経済不況が続き、そこにコロナで国民は疲弊し、中小企業はバタバタ潰れている。そこに対して、どう底上げしていくかという論戦がおこなわれただろうか? どの政党も小粒の政策ばかり出して、その小粒の政策で懐が温まるのは一部だけ。30年の不況をしっかり底上げしていくような徹底した経済政策はほとんどの党が口にもしていない。
さっさと減税。消費税をやめろということだ。大企業だけが肥え太って30年もうけ続け、国民は疲弊して倒れている。国民の6割が「生活が苦しい」という状況だ。
次は国民や中小企業が豊かになる番だ。まずは消費を喚起し、需要を高める。その景気対策の第一歩として消費税廃止だ。そして、悪い物価高が収まるまで季節ごとに10万円の給付。そして社会保険料の減免だ。
「手取りを増やす!」とぶち上げた政党が出す小粒すぎる政策を、テレビ・新聞や国民が「いいぞ、いいぞ」といっているが、もっと本質を見てほしい。手取りを増やすなら大規模な減税と大胆な社会保険料の減免と給付が必須だ。そのような骨太な経済政策を論戦として闘わせるような場所にはまったくなっていない。そんな国会だった。事実上、国民を見殺しにするような補正予算しか組まれていない。
通常国会のみならず、毎回の国会に私たちは自分の政治生命と彼らの政治生命をかけて、死ぬ気で挑んでいる。
維新からの「候補者調整のために予備選挙を」みたいな話については、選挙のときだけ生き延びるような政策を考え出してくるなという話だ。常日頃から、国民生活を一刻も早く立て直す、30年で「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と呼ばれた地位からここまで国を転落させ、国家を没落させてしまったことに対してどうするべきか、そのために野党が力を合わせようとはいわず、何かしら小粒の政策を出して、選挙のときには「一本化しませんか?」。寝言は寝てからいえ、そういうことだ。次期参院選も私たちは単独でやる。
実質ザルの政治改革法 裏金の真相解明なし
記者 本日、政治改革に関する三つの法案が参議院本会議で成立した。れいわは政策活動費廃止法案に賛成した一方、他の二法案には反対した。三つの法案が成立したことについて受け止めを。
山本 「政治資金規正法の一部を改正する法律案」で、いわゆる政策活動費を禁止する法案に賛成したのは、それが不十分ながらも政活費がそのまま温存されるよりは一定の歯止めになる可能性が高いと判断したからだ。
次に「外国人等からの寄附及び政治資金パーティーの対価の授受の禁止」。これは外国人という話にしているが、結局、これからパーティーをやりまくるという話だ。まさに「パーリーピーポー」とは彼らのことだ。外国人に矛先を向けることでナショナリズムに火を付けて盛り上げ、「よくぞいった」みたいなことで誤魔化しながらパーティーそのものは継続するという代物だ。そういうものには賛成できない。
続いては、第三者機関「政治資金監視委員会」の設置法。第三者機関は必要だが国会の中に置いてはダメだ。なぜなら泥棒が大勢いる奴らが決める、お手盛りの監視委員会なんて意味がないからだ。国会の外に置くべきものだ。少なくとも三条委員会(府省の大臣などからの指揮や監督を受けず、独立して権限を行使することができる行政委員会)的な立場、それを超えるような強力な権限を持たせて、徹底して不正をなくしていこうという気概はまったく見えない。逆に「国会の中に置いてうまいことやろうぜ」感が満載だ。
これについては、議論が始まる前までは、公明党が筋を通して第三者機関の設置を主張してきたが、やっぱりさすがは「下駄の雪」。自民党に魂を売り、さまざまなものを手に入れてきたという人たちだ。今回も小さな飴玉をもらったかどうかは知らないが、さっさと折れて、国民民主党と公明党という、野党のふりしても一枚岩の者たちの力によって、お手盛りの監視委員会が成立した。そんなものに賛成できるはずもない。
高井崇志 政策活動費廃止法案については、当初は野党7党案と自民党案の二つが出て、それぞれ委員の数は同数だった。れいわ新選組の態度如何(いかん)によって決まるという状況だった。私たちは政局ではなく純粋に法案の中身で「ないよりはあったほうがマシ」ということで賛成した。れいわが賛成するという情報が伝わったのかわからないが、その状況を見て、自民党も「このまま自民党案を突っ張ってもしょうがない」ということで野党案を丸呑みして成立した。そういう意味では、れいわ新選組がキャスティングボートを握ったひとつの例だったと思う。
第三者機関設置法については、公明党が最初は「れいわさん、一緒にやりましょう」みたいなことをいっていたが、ある日突然、国民民主党と組んだ。国民民主と組んだ後に公明党が一生懸命、自民党に歩み寄る質問をし、自民党も公明党に寄り添うような質問をしていたので、これはもう出来レースだと感じた。これは「自・公・国」の枠組みをつくる地ならしだろうと思った。
政治資金パーティーについては、私たちはもちろん禁止すべきという立場だが、今回とくに問題になっているのは特定外国法人だ。これが経団連会長にキヤノンの御手洗さんがなったときに規制対象から除かれている。つまり外資系企業のほとんどが対象から除かれるようなザルな法律だ。そんなものに他の野党も賛成してるのが私は不思議でならないが、本当に大政翼賛的な形になってしまったなと思っている。
櫛渕万里 高井幹事長が政治改革特別委員会の中でもいっていたが、少なくとも(裏金議員の)証人喚問をやるべきだと、れいわは1年間言い続けてきた。少なくとも予算委員会の理事会で、参考人招致を年明けにおこなうことを野党側が要求し、年を越して真相究明をしっかりさせていこうという流れになったことは強調しておきたい。結局、裏金問題が何ひとつ真相究明されてない。いつ誰がどのように始めて、何に使われたのかの解明なしに政治改革の法案だけが通るのはあまりにもおかしい。真相究明、当事者の証人喚問、議員辞職に向かうところまで目指していく。
減税で実体経済動かせ 話にならない野党案
記者 補正予算の賛否について。今国会では国民民主党と維新の会が、それぞれの政策実現を理由として補正予算に賛成した。また、立憲民主党が1000億円の予算の付け替えによって結果的に予算を修正させたが反対に回った。これら各党の対応についてどう評価しているか?
山本 各政党、自分たちが考えた政策を実現したいという思いは持つものだ。ただ、それが実際どれくらい国民生活に寄与するのかを考えれば、最大限の要求をしていくことが非常に重要だと思う。そういう意味では、国民民主党も維新も政府にすり寄って自分たちの政策を前に進めようとしたということだけだと思う。
せっかく少数与党という状況になっているわけだから、逆にいえばもっと大胆な政策を野党側みんなでまとめたうえで(与党に)呑ませる。「呑まないなら俺たちがやるから」という方向を目指すべきだと思う。
「103万円の壁を178万円に!」みたいな話があったが、その高所得者に対してプラスが大きい政策を今、打つときなのか? ということだ。30年の不況、そこにコロナが来て、物価高でさらに厳しい状況だ。中小企業はバタバタと不況型倒産をしている。この状況を鑑(かんが)みたときに、日本全体の需要を喚起していくという政策を打たなければ、さらに日本経済は死ぬ。たとえ横ばいで進んだとしても、中小企業やそこで生活している人々はさらに傷つき、追い詰められていく。
小粒の政策で何かしら経済を活性化させようという考え方自体が、この30年、日本をダメにしてきたのだと思う。幅広く恩恵にあずかれるような、そして消費が喚起され、需要が高まり、日本の経済が上向くような政策を、今、大胆に打たないともう時間がない。
その小粒な政策を実現するために政権にすり寄りながら、「178万円」が「123万円」にしぼみ、そんなことをされながらも参院では補正予算案に賛成する(国民民主党)。ある意味で「次の下駄の雪は俺たちだ」という争いなのだ。はっきりいって国民にとっては関係のない話だ。今よりも生活が一刻も早くよくなるように、それも一部だけじゃなくて全体に波及するような効果を持つ政策を打つ必要がある。
手取りを増やす。結構な話だが、それが一部では足りない。しかも、消費性向等を見れば、所得が高い人たちは所得が増えても貯蓄や株投資に回ったりするわけだ。株価が上がったところで世の中景気良くなったか? という話だ。そうではなく、実体経済を動かすような政策を打たなければいけない。
それを考えたとき、やはり大胆に、私たちは消費税の廃止を訴えているが、5%減税くらいのものを打ち出して力を合わせてやっていくべきだ。だって選挙のときには、維新も国民民主もいっていたのだから。全体に波及するような、日本の国力を取り戻せるような、生活者も事業者も救われるような政策を打っていかなければいけない局面で、小粒のものを提案し、それを呑んでもらえたから「賛成」ということであるならば、この30年の日本衰退の原因をつくり出してきたものから脱却できていないといわざるを得ない。
そうはいいながらも、何かしら必要なものは入れていく必要があることは理解する。「だから野党8党で補正案を提案し、まとめて通したい」といってきたのが立憲民主党だが、政府自民党が発表した13兆円の補正予算に対して、その半分くらいの財政規模のものを提案してくるのだから、完全に狂った奴らだ。
不況とは社会にお金が回ってない状態のことだ。民間や個人はお金をなかなか増やしづらい。商売もうまくいかないし物も売れず、しかもその悪循環が30年も続いている。そんなときに誰がお金を出せるかといえば国家しかない。それをやるのが経済政策だ。
そう考えたときに13兆円でも足りないのに、それを7兆円に絞って提案するというのは、なかなかやべぇ奴らだ。はっきりいってロクでもない。結局は看板を付け替えても、民主党のままなのだ。このあたりは、自民党も民主党もほとんど中身は変わらない。提案されてる中身を冷静に考えたとき、一見大胆に見えても、今の状況を脱却できたり、是正できるというものではない。30年の不況からこの国を救い、ふたたび「ジャパン・アズ・ナンバーワン」に導けるような政策ではない。
この「民主党」に関しては、私たちにも案を出してくれといわれたので独自案を出した。でも13兆円の予算を7兆円に絞ろうというのだから、私たちの政策のどれもマッチするわけがない。それでも一緒にやってほしいとずっと言い続けるわけだ。私たちも諦めたくない(から粘った)。
そこで、能登半島地震の影響で石川県以外でもさまざまな方々が影響を受けている。屋根がずれたくらいでは「一部損壊」といわれて支援の対象外だが、雨漏りもするし、人によっては「空が見える」という人もいる。どうやってこの冬を越すのか? ということだ。(立憲案では)被災世帯への支援金の上限を現行の300万円から600万円に引き上げるというが、それは石川県以外の被災地の人たちにはまったく届かない。能登の支援としても全然薄い。そこで私たちは兆単位で要求してきたが、相手がまったく答えを出してこないので、最後に一番ミニマムに絞ったものが、石川県とその他、能登半島地震で影響を受けたところは被害区分に関係なく、暖房器具などを購入できるように、それも使途は限定せずに10万円を給付するというものだ。予算規模は138億円くらいだ。額面では大きく見えるが、国家予算から考えたらこんなものは大きなお金とはいえない。「さっさと出せ」レベルだ。だが、それさえも呑まなかったのが彼らだ。それで結局、野党8党で出すのはやめたという話だ。意味不明な連中だ。
立憲修正案の中身とは 与党の基本政策追認
櫛渕 13兆円の補正予算案を7兆円に絞りに絞って修正案を出した立憲民主党だが、その中には緊急ではないものまで残されていたので指摘させてもらった。
たとえば、マイナ保険証を促進していくための353億円。それを救急業務へ拡大するための20億円。あるいは辺野古も含めた米軍再編のための費用3307億円も計上されたままだった。それから無駄の象徴といわれる「大阪万博」の費用551億円も入ったままだ。さらに原発。次世代原子炉や新試験研究炉に241億円だ。「基金の部分は削った」というが、これらの政府案をそのまま残している。結果的に彼らは政府の修正案にも反対したが、彼らの独自案がこういうものであったことは、国民の皆さんにしっかりと見ていただかなければならない。
そして、能登の復旧・復興費用を1000億円に「増やした」というが、これは予備費を付け替えただけで全体の予算額は増えてない。政府が小手先で区分経理を変えればできる話であって、それを勝ち誇ったよう喧伝するのはおかしい。
れいわ新選組は、能登支援に2・3兆円を付ける補正予算の組み替え動議を出した。能登は地震から1年が経過する。しかも豪雨災害もあった。一方、阪神淡路大震災のときは1年間で3回の補正予算を組み、3兆円を出している。能登ではすでに予備費で7000億円出しているが、残りの2・3兆円を積み増すというのがわれわれの独自案だ。1000億円でよしとする立憲の案は理解できないので、引き続き通常国会でも闘っていく。
予算委員会の中で「(臨時国会での組み替え動議には)時間がない」みたいな発言が(立憲民主党側から)あったが、立憲自身が去年は6・9兆円くらいの予算組み替え動議を出しており、理屈が通らない。
記者 昨日、立憲民主党と維新の会、国民民主党が学校給食の無償法案を衆議院に提出した。れいわ新選組に共同提出の相談などはあったか?
山本 最初は野党8党で出したいという話があった。それは今、自民党が給食無償化みたいなことに対して踏み出してるから、それよりも早く法案を出したいという動機でいってきたのだが、最終的に「時間がないので3党でやることになった」という答えだ。本当に政局しか考えてない奴らだなと思う。その中身を少し見てみれば、「努力義務」とされている給食が、たとえば「義務」になったりするようなものにはなっていない。ただ自民党に負けてらんねぇというところで、年内審議はできないが早く出せというもので、何かしら大胆なものではないということだ。
櫛渕 それも今は野党が多数を占めているのだから、それこそ予算を人質にとって、やろうと思えばできた話だったと思う。給食の無償化だけではない。国対のスケジュールに則って、結局1日も採決で闘わずに予算を通してしまった。根本的におかしい。
記者 教育無償化を掲げている政党は、立憲民主も維新の会も教育の無償化を掲げている。れいわ新選組として無償化の問題で外せない課題は?
山本 というより、さっさとやれよ! と思う。なぜ今国会でそれを持ち出さないのか? 「クリスマスイブまでに(国会)終わらせようぜ」みたいな話だ。誰に会いに行くつもりなのか? そもそもサンタクロースのふりした泥棒ですからね、あいつらはっていうような話にも繋がる。
給食無償化はさっさとやるべきだし、金額を出すだけではなく、給食は「国の義務」というような形にしなければいけない。そうでなければ「お金が付けられないね」みたいなボケた話になったときに流れてしまう。ある年からは給食の無償化がなくなることも十分考えられるわけだから、それをしっかりルールの中で定めることを求めていく。それだけでなく、子どもたちの食事時間がものすごく短くなり、その短い時間の中で食べられる粗末な給食みたいなものが今、スタンダード化している現状もある。それを考えるならば、無償化になりましたということだけで終わりではなく、給食の量や質の向上も必要になってくる。
教育の無償化も当たり前だ。大学院卒業までの無償化を五兆円でできるんだから、さっさとやれよという話だ。最近は奨学金をチャラにするというようなことを維新がいい始めたということなので、さっさとやれよと。(自民党の)下駄の雪になるんだったら、それくらい勝ちとって来いよと思う。こっちは旗揚げのときからいっているんだが、ゴールは誰が決めてもいい。そういう話だ。
県の要請握り潰した政府 能登への自衛隊派遣せず
高井 山本代表が予算委員会で能登について質問後、涙を流したのではないかと話題になっているが、その真相は?
山本 泣いてはいない。直近の予算委員会で総理に質問したのは、自衛隊を年内に出してほしいということだ。自衛隊は都道府県の要請があったときに出すのがルールの上では原則だ。その原則から外れる場合も考えられる。本当に必要だということが考えられれば、総理大臣は最高指揮者なわけだから、都道府県が判断できない時には出すことだってある。
それは別として、今回はすでに県知事が自衛隊の出動を要請している。県知事として政府に対して要請すればなかなか蹴ることは難しいのだが、何を気遣ったか(石川県知事は)自民党の政調会長に打診している。自衛隊の要請をお願いしたい、と。逆にいえば、自民党側に迷惑かけられないから、行けるか行けないか打診してもらえないかという気遣いだ。気遣いするんだったら県民にしろよという話だ。
そこで、自衛隊を打診されたことに対して総理大臣としてどう考えたのか? ということを国会で聞いたら、(石破総理は)「正式には要請を受けてない」ってことで話を終わらせるわけだ。要請を受けてないんだから検討もできないじゃないかっていう話だが、ちょっと待てと。あなたは総理であるとともに自民党総裁じゃないか? と。自民党総裁であるならば、当然、党の政調会長が受けてきた話の内容を検討する立場だろうと。「どう考えたのか?」と聞いたら、自民党が判断したからって自衛隊を出せるわけじゃないんだ、あんたはルールをわかってないっていう方向に話をどんどん論点ずらししていく。
何いってんだ? と。大きな地震があって、その半年くらいの間に大きな豪雨もあって、土砂でたくさんの人たちが困っている状態だ。
自衛隊は一般的には民有地で活動はしないが、例外はある。2020(令和2)年7月には、豪雨災害を受けた熊本県八代市に自衛隊が派遣され、民有地の土砂撤去等さまざまなお手伝いをしてもらっている。「当時はコロナ禍だったから(ボランティアが制限された)」というが、今もコロナ禍だ。はっきりいって、あの当時よりもコロナにかかってる人は多い。何よりも(八代の被災地は)高齢者の多い地域だった。能登はどうか? 高齢化率がむちゃくちゃ高い地域だ。
堆積土砂の量を見ると、八代が4万。珠洲、輪島は7万、11万だ【表参照】。
石川県は11月頃から「年内に(土砂撤去を)なんとかしたい」といっていたが、ボランティアの数自体が圧倒的に足りていない。事業者がやれるようにスキームをつくっても事業者は入れない。なぜなら現地に泊まる場所もない。金沢から2時間半かけて毎日通わなくてはならない。作業時間が1日何時間になるのかを考えれば無理だ。
自衛隊を出動させるには、緊急性、公共性、非代替性の三要件を満たさなければならないという。本格的な冬が近づき、豪雪の季節は目の前。それまでに泥を一刻も早く掻き出して、少なくとも豪雨前の生活環境に戻してあげなければいけないという緊急性。公平性(公共性)の点でも、かつて八代では堆積土砂四万の時点で自衛隊が活動をしている。人も足りない。高齢者が多い地域であることを考えたとしたら、そこもクリアできる。非代替性、つまり事業者が入ったりボランティアが入って解決できる問題ではないからこそ、今を迎えているのだ。自衛隊が入るための三要件は満たしまくっている話だ。
櫛渕 予算委員会で山本代表の質問に対する総理の答弁があまりにひどいので、私も(衆院で)続きの質疑をした。真相としては、石川県知事は防災大臣に携帯で(自衛隊の出動を)お願いしていた。そして、防災大臣は自衛隊に内々に聞いていた。そして防災大臣の答弁では「自衛隊の三要件に当てはまらないという回答があった」というふうに知事に答えている。だから知事は(正式に政府に対して)要請をしなかったというのが実態だった。
しかも、私は予算委員会の理事会で能登半島に11月19日に視察に行ったが、その2日後の会見で知事は「もう省庁一体の支援が必要だ。自衛隊が必要だ」といっている。にもかかわらず22日、政府側に内々に相談して「認められなかった」という回答を受けて、急に「ボランティアで間に合います」みたいなことを発言した。
被災地の住民は置き去りだ。ちなみに現地のボランティアに聞くと、数字上で満たされたから知事はそう発言したのかもしれないが、日本海の冬は非常に悪天候で、すでに予定されている日も活動できていない状態にあるという。さらに、ボランティアも事業者も入れない土砂堆積地域が900件もあると県知事も認めている。
さらに屋根を覆うブルーシート。これにも専門技術がいるのだが、NPOがまったく追いつかず、もう来年6月まで残ることを決めた団体もあるという。自衛隊にはブルーシート部隊がある。ちなみに5年前の千葉の豪雨では、その部隊が2000人増員されている。要請すれば。それをなぜ能登にしないのか? という話だ。あまりにもおかしすぎる状況がある。
「過去10年間において1件も県からの自衛隊の派遣要請を断ったことはない」という答弁を昨日、防衛省がしていたが、このように裏で「前さばき」をやっていることを考えると、本来出すべきところで出していない可能性がある。今後、防災庁をつくるといっているが、自衛隊派遣の権限を持つ司令塔の問題を考えざるを得ない。
山本 震災後、まだ自衛隊が活動している時期にNPOの人や住民からお願いされて、自衛隊が何かしらお手伝いしたという例はある。たとえばブルーシートの張り方なども、NPOの人が自衛隊に指導するような形から始まったようだ。当然、今回は新規で入れなければいけない案件だ。
私が珠洲市に行った12月5日時点で、珠洲市では手つかずの場所を含めて土砂撤去が未完了の地域が216件。作業終了の見込みは来年の2~3月という見通しがすでに出ていた。
初めの予算委員会での質疑後、地元紙記事(12月7日)では、ボランティアが入れずに土砂が堆積したままの箇所が約900件という報道が出た【パネル参照】。
そのうえで「自衛隊どうなってんだ」って話をしたら(政府は)逃げ続ける。あげくは「あんた、法の建て付けがわかってないな」みたいな雰囲気をつくっているのだが、すでに知事から要請はあった。正式にではないが、知事が気遣いして水面下に近い形で自民党関係者にお願いをしたものを、勝手に「もうできない」と握り潰していたという話だ。無茶苦茶だ。
9月21日に能登で豪雨災害が発生した時点で、もっと早く自衛隊を出して、本来は自衛隊が手伝わないことになっている民有地、生活道路、農地にかかる土砂を一気に取り除き、少なくとも豪雨前の環境に戻すことくらいはできたはずだ。
それをやらずに何やったのかといえば解散総選挙だ。だから今になって自衛隊を出すことになれば、自衛隊が応援に入らなければいけない状況だったのに、それを無視して解散総選挙をやったことを自分たちで証明することになる。それを責められるのが嫌だから出さないのだろう。それ以外の理由が考えられない。そんなものはクズだ。害悪でしかない。
国民守る政治への転換を 来年はさらに激しく
山本 国土面積の0・45%しかない能登の6市町さえも復旧させられない奴らが、日本をどうやって守るのか。アジアの脅威が、とかさまざまいっているが全然関係ない。申し訳ないが、そんなものに対処できるような、適切な指示が出せるような輩ではない。自民党にしても他党に関しても。ここ(能登)でさえこの有様だ。
この状況のなかで、私が質疑の最後の締めあたりで「自衛隊をとにかく動かしてくれ、検討してくれ!」といったときに、私の右後ろ側、つまり自民党の席から「そうだ!」と声を上げた人がいた。自民党の議員だった。そして質疑が終わった後に私のところにやって来て、ものすごい笑顔で喋っている。
「自分はここ(能登半島)にルーツがあるんだ、なんとかしたいと思ってるんだけれど…」という話になって、「あなたがこうやって話題にしてくれて本当にありがたい」ということをいってこられた。
ものすごく笑顔でそれをいってこられたのだが、もうどう見てもこの人泣きそうだなっていう状態で話しかけてきたので、私もちょっとぐっときてしまった。自民党にいるんだからもっと声上げろよっていう気持ちもあるが、それよりも組織の中で抗えないことだったり、自分はなんとかしたいという気持ちは持ってるのにそれをやれない悔しさをこの人は持っているんだなと思うと、自分にもすごく込み上げてくるものがあった。
「力不足で申し訳ない」とその人にいってお別れをした。本当に泣きそうにはなったが、泣いてる場合じゃない。泣きたい人は他にもっと一杯いるわけだから、自分の力不足を嘆いたりとか、この質疑によって何かしら動かすことができなかったことを後悔している場合じゃないということで、自分の中で込み上げるものをこらえた。だから、泣いてはない。
要するに、今、近隣諸国との緊張を煽るような火遊びをしている場合ではないということだ。安全保障や外交防衛を考えるのならば、まず外交からしっかりやっていく。いろんな間違いが起こらないように当事者を集めたうえで、そういう協議体を持っていくことだ。
そして、国内の安全保障をしっかりやっていく。災害にあって2回も踏みつけられた人たちが今も苦しんでいるところに対して、自衛隊さえ出さないのは何ごとかということだ。0・45%の国土面積を守れない者たちに、日本なんて守れるはずもない。
やらなきゃいけないことは、そういう常軌を逸した奴らから国をとり戻さなきゃダメだっていうことが、やっぱり私たちの使命なんだなということを再認識しつつ、来年はさらに激しくやっていきたいと思う。