いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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戦時翼賛化の流れに抗う 平和外交が育む真の防衛力とは れいわ・山本太郎×伊勢崎賢治 軍備拡大が進む沖縄で街宣

(10月25日付掲載)

多くの聴衆が集まったれいわ新選組の街宣(22日、沖縄県那覇市パレット久茂地前)

 衆院選が終盤戦に差し掛かるなか、れいわ新選組代表の山本太郎参議院議員と同党衆院選公認候補の東京外国語大学名誉教授・伊勢崎賢治氏(比例東京ブロック)は22日、沖縄に飛んだ。山本代表は候補者を擁立した沖縄4区を練り歩いた後、伊勢崎氏とともに那覇市のパレット久茂地前(沖縄県庁前)で街宣をおこない、「台湾有事」を想定した沖縄本島や先島諸島の軍事要塞化や43兆円の予算をつけた「異次元の軍拡」を批判。ウクライナ情勢が日本の軍拡を進めるための言説として利用され、政府与党だけでなく、立憲や共産を含む主要野党もそれに手を貸す総翼賛化が進むなか、それに抗う新しい外交・安全保障政策を提起して支持を訴えた。那覇市での街宣で両氏が訴えた主張の概要を紹介する。

 

那覇市内で演説する伊勢崎賢治氏(22日、沖縄県)

パレスチナ・ガザで起きていること

 

 伊勢崎賢治 僕は東京外国語大学で17年間教えてきた教員だ。同時に防衛省の統合幕僚学校という陸海空自衛隊の精鋭たちを教える学校でも教員をしてきた。だから自衛隊員はみんな自分の子どものように思っている。

 

 今日はまずパレスチナの話をしたい。僕は若い頃からこの問題にかかわっており、パレスチナにいたこともある。連日報道されているガザ――これまでアフガニスタンやイラクなど世界各地で国際紛争を目撃し、それに関わってきた僕だが、これだけひどいことを目撃したのは初めてだ。

 

 今、パレスチナのガザ(人口約220万人)でおこなわれていること。これは誰がやっているのか? イスラエルだ。沖縄は国際都市なのでイスラエルの方もいらっしゃると思うが、僕が批判するのはあくまでも政府であり、国民ではない。これを区別しなければ、今度は「イスラエル人みんなが悪い」というユダヤ差別が始まるので注意する必要がある。私が批判するのは、あくまでもイスラエル政府と、その後ろにいるアメリカ合衆国政府だ。

 

 国際紛争のなかで、今ガザで進行していることの何が特別なのか? これは戦争とはいえない。ジェノサイド(大量虐殺)であるということだ。一般的な殺人事件とは違う。個人的な恨みをこえて、国籍、言語、肌の色、信じている宗教などの「属性」で人間を抹消するという試みであり、国際法で規定される戦争犯罪のうち最も重いものだ。これが今、パレスチナ・ガザでおこなわれている。もう1年が経ってしまった。

 

 去年10月7日、いわゆる「テロリスト」のハマス(パレスチナのイスラム組織)がイスラエルで襲撃事件を起こした。「テロリスト」――この言葉も僕は大嫌いなのだが、これはだいたいにおいてアメリカが命名し、後で都合が悪くなるとこれを変えたりする。たとえば、後にノーベル平和賞を受賞した南アフリカ共和国のマンデラ大統領も、2008年に指定が解除されるまではアメリカにテロリスト指定されていた。「テロリスト」という言葉は非常に恣意的なものであり、気をつけて使わなければならない。とくにアメリカがこれを得意としており、都合の悪い人々をテロリスト扱いする。

 

 昨年10月7日、確かにハマスは突然攻撃を仕掛けた。でも、その前からガザでは、圧倒的にイスラエルが戦争犯罪を犯した戦闘がずっと続いてきた。そのうちの一つが去年の10月7日のあれだ。マスコミはあれを「テロ攻撃」といっているが、それは間違いだ。あれは、これまで攻撃を受け続けてきた弱者の側が奇襲反撃をしただけだ。もちろんイスラエルの一般市民の命が奪われた。だが、それを上回ることをイスラエルはガザの人たちにやってきたわけだ。

 

 昨年10月7日以降、その報復として「テロリストを殺せ」ということでガザでのジェノサイドが進行している。イスラエルは、幅10㌔、長さ50㌔という狭い地域(ガザ地区)に大量の爆弾を落とし、すでに4万2000人の一般市民が亡くなった。その大半が子どもと女性だ。

 

 僕は米軍とアフガニスタンで一緒に働いてきたので、いまだにメールで交友があるが、将校クラスの軍人の一人がこういう言葉を送ってきた。

 

 「あんな狭いところに、あんな短時間で、あれだけの爆弾を落とすのか」

 

 同じようにアメリカがイラクやアフガニスタンでやったことが批判されてきたが、そのアメリカ軍人をして「これは異常である」といわしめるほどのことがおこなわれている。

 

イスラエルの爆撃による死者が増え続けているパレスチナ自治区ガザ(2023年10月)

イスラエルによる砲撃で廃墟となったガザ南部のハンユニスの居住区(2023年12月)

 これは国際司法によって、すぐにジェノサイド認定されるだろう。ジェノサイドは属性を抹消することだ。個人ではできない。必ず政治家がいる。イスラエル政府であれば、ネタニヤフ首相とその閣僚たちだ。彼らは明確にその意志表示をしている。そして、末端のイスラエル兵士たちはそれに呼応するかのように、みずから爆弾や大砲を撃つ前に「あそこの町にはテロリストしかいない」「無辜の市民はいない」「根絶やしにしろ!」といって砲弾を発射し、その様子をスマホで動画に撮ってインターネット上に流している。それも自慢げに。

 

 ある人は、今ガザで進行していることを「殺戮の上意下達の国家的意志が、史上最高レベルに記録されながら進行するジェノサイド」と評している。ひとつの種族を根絶やしにするという意志表示が毎日、毎日、ちゃんと記録されながら進行するジェノサイドは史上初だ。

 

 その意味でも、ガザでおこなわれていることは異常なことだ。これを止めなければならない。われわれ日本人として。

 

ガザ虐殺が始まってから組織した超党派議連

 

 伊勢崎 イスラエルのガザ侵攻が始まってすぐに僕らは立ち上がった。超党派議連を作り、政治家を動かし、日本政府にイスラエルに対する外交プレッシャーを与えさせるためだ。

 

 そこで、さらにひどいことが起きた。僕は元国連の人間だ。国連の中には国連組織として一番古い国連がある。UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)という。

 

 UNRWAは、ガザの生命線であり続けた。つまり、水、医療、食料、電気を供給する。これなしにはガザは死滅してしまう。昨年10月7日以降、イスラエル政府はこの国連機関に何をしたか? 

 

 この国連機関の中には、パレスチナ人スタッフが現地の国連職員として働いている。国連職員になるのはすごく難しい。イスラエル政府は、その現地スタッフの中にハマス=「テロリスト」の仲間がいるから国際社会はこの国連機関に対する資金提供をやめろと各国に圧力をかけた。これになんとアメリカ、イギリス、フランスなど主要な西側諸国が従ってしまった。これはどういうことか? 生命線が絶たれると人々は餓死してしまう。

 

 これはもう始まっている。先ほどいったガザの死者4万2000人には、瓦礫の下に埋まっている死者は含まれていない。実際にはもっと多くの人が武力攻撃で死んでいるのだ。さらに、そこに兵糧攻めを仕掛ける――まさに、これこそがジェノサイドだ。西側の主要国がこれをやると決めたのだ。

 

 それにこともあろうに日本政府が従ってしまった。アメリカにいわれたのだろう。

 

 これは歴史に残るジェノサイドだ。第二次世界大戦中に起きたホロコーストと同じように、5年後、10年後には、明確にジェノサイドとして教科書に載るはずだ。これに「日本人が加担した」という十字架を、われわれは次の世代に背負わせるのか? こんなことは絶対に許されない。

 

 だから僕らは行動を起こした。超党派の議員が集まってくれた。まず、れいわ新選組の山本太郎。れいわは、政党の中で唯一、党としてこれにコミットしてくれた。そして、今首相になった石破茂、同じく防衛大臣になった中谷元の2人だ。彼らは昔から僕の友人だが、とくに中谷氏は「日本イスラエル友好議員連盟」の会長でもある。その彼らが動いたことで、日本政府のUNRWAに対する資金停止措置を解除させることができた。

 

「人間の安全保障外交の推進を考える議員有志の勉強会」で発言する伊勢﨑氏(左端)〔2月14日、衆議院第1議員会館〕

 でも、これでガザのジェノサイドが止まったわけではない。今この瞬間に子どもたちが殺されている。絶対にイスラエル政府にプレッシャーを与えなければならない。今のところ日本政府はそこまでのことをやっていない。そこで僕たちが超党派議連の次の目標に掲げたのが、すでに欧州で数カ国、グローバルサウスと呼ばれる世界のほとんどの国がやっていること――つまり、パレスチナの国家承認だ。これを日本政府としてやることを話し合っている最中に国会が解散してしまった。

 

 落ち着くのを待てばいいと思っていたら、なんと石破、中谷両氏が権力側になってしまった。彼らが僕らと動くことができたのは自民党内の野党だったからであり、それをそのまま権力の座についたときにできるとは思えない。自民党がそんな党ならば、これほど日本は悪くなっていない。

 

 だから僕は山本代表にいった。「超党派議連にいた与党議員たちは、たぶん頼りにできない。僕らが引っ張るしかない」と――。本当は政治家にはなりたくなかったのだが、生まれて初めて自分がやるしかないと思った。もし当選したら、万歳なんていわない。そんな状況ではない。その日からパレスチナの国家承認に向けて行動を起こす。どうか応援してほしい。

 

ウクライナ戦争が浮き彫りにした日本の翼賛化

 

れいわ新選組代表・山本太郎参議院議員(22日、沖縄県那覇市)

 山本太郎 国民の6人に1人が貧困にある日本だが、沖縄はさらに状況が悪い。子どもたちの貧困は、全国の子どもの貧困の2倍だ。この物価高のなかで、沖縄県内では七割が「生活が苦しい」という。そして、所得の少ない家庭の50%以上が必要な食料を買えなかったと令和五年の沖縄県の調査で出ている。このような状況の中で、なぜ国は支援しないのか?

 

 国土面積の0・6%程度の沖縄に米軍基地と関連施設の7割を押し込み、多くの人たちがしんどい思いをしてるのに、なぜ経済的支援をしない? そして、南西シフト――ここ沖縄と先島を軍事要塞化していくという。中国とアメリカの揉め事に、日本がアメリカ側の尻馬に乗ってそのままいけば、沖縄は間違いなく戦場だ。まず最初に標的にされるのは誰か? こんなことは普通ではない。この状況を変えるのは政治しかない。つまり、この状況を変えるのは、みなさんしかいない。あなたがこの国のオーナーだから。力を合わせてやろう。

 

 どうして戦争が終わらないのか? ウクライナは3年たっても終わらない。もちろんロシアにも理由はあるだろうが、アメリカにも理由がある。

 

 アメリカ側の理由は何か? ウクライナに対する投資の90%が、アメリカ製の武器に変わってるのだ。それによってアメリカ国内は好景気だ。そういう関係でアメリカとウクライナは「ウィン・ウィン(両得)」なのだと、アメリカのブリンケン国務長官が記者会見でのべている。

 

 戦争が終わらないのは、金もうけのためなのだ。そして今、アジア周辺に会社や支部をつくっていた軍事企業が日本に事務所を移している。なぜか? 次のマーケットはここ(日本)だからだ。陰謀論でも何でもない、事実関係の話だ。

 

 緊張が高まるだけでも軍需産業の株価は上がる。それに加えて物が売れ、それを消費する。そんな循環をさらに拡大したいがために緊張を煽る。一歩間違えれば戦争だ。

 

 知っているだろうか? 台湾有事に関するさまざまなシミュレーションがおこなわれているが、戦争になったときに一体どんな結果がもたらされるか? 米空軍や軍事的なシンクタンクも含めてさまざまな結果が出ているが、どれもアメリカ劣勢だ。そして、短期間で弾も切れると。それによって台湾は中国に奪われずに済むが、人命と装備において多大な被害を受けるため成功とはいえないという結果が数々出ている。絶対に踏み込んではいけない。徹底的に回避しなければいけない。

 

 では、誰がそれを回避できるのか? 政治以外にない。つまり、軍備の拡大で得られるものはない。ひと握りの人間たちの利益のみだ。全体の利益を守るべき政治が、まずやるべきは外交なのだということを、国民のみなさんと一緒に声を上げて、この沖縄の軍事要塞化を何としても止めなければならない。

 

 そこで、アフガニスタンなどでの武装解除任務など、戦争を終わらせるという最も難しいことをされてきた実務家の伊勢崎さんにお聞きしたい。利害が対立するもの同士に武器を置けというのは、そう簡単な話ではないのでは?

 

アフガニスタンの軍閥兵士から武器を回収する伊勢崎氏(2002~2003年、伊勢崎氏提供)

 伊勢崎 そんな簡単に武器を置いてくれる相手はいない。両者が戦ってるなかで、それを止めるのは非常に難しい。ときには、彼らが犯してきたいわゆる戦争犯罪を一時的に問わないで、“銃を下ろしてくれ”ということをやらなければいけない場合がある。人命を助けるために。

 

 ウクライナ戦争が始まったとき、自民党を含めてすべての党、共産党までが、ロシア叩きに躍起になった。確かにロシアの行為は、国際法でいう侵略だ。いつか裁かれなければいけない。でも裁くまでに時間がかかる。その間に人が死ぬ。戦争犯罪がどんどん積み重なる。だから、まず止めなければいけない。「止めなければいけない」と声を上げたのは、れいわしかなかった。

 

 山本 ものすごく風当たりは強かった。逆風だ。党の支持率が下がったくらいだ。考えてみてほしい。「ロシアが悪だ」ということでみんなが当然、ロシアを吊し上げる。侵略したのだから。それに対して「ちょっと待て。その方法では戦争は終わらないじゃないか」と。「日本は中立の立場をとって、ロシアとの窓口になり、戦争が終わるためのテーブルを作っていく方に回らなければいけない」というと、「ロシアの手先だ」という話にされてしまうわけだ。

 

 伊勢崎 僕も同じようにいわれた。ちゃんと断っているのに。ロシアは国連憲章で一番やってはいけないことをやった。それを問わなければならない。でも、それには時間がかかるのだと何回も何回もいってるのに、「プーチンから金をもらってるんだろう」とまでいわれる。戦争とはこういう風になる。お前はあっちか、こっちか。そして、同胞叩きも始まる。これが恐ろしいところだ。

 

 残念なのは、共産党まで自民党と一緒に同じことをやったことだ。これを大政翼賛会(戦時中に戦争に国民を動員するため全政党が合流して作った政治結社)という。古い話だ。こうなってしまったわけだ。

 

 山本 ウクライナのゼレンスキー大統領が、国会でオンライン中継で何かしら演説をするというので聞いていたら、演説が終わった後、(国会議員は)みんなスタンディング・オベーションだった。私たちは立たなかった。どちらかの側にウエイトを置いてはいけない。当然のことだ。中立というのはそういうことなのだから。

 

 日本はその後、G7と足並みを揃えて対ロシア経済制裁にまで踏み込んだ。これは一番悪い手だと思う。なぜならロシア側を完全に敵に回してしまえば、この戦争を終わらせるための話し合いのカードを提案できない。目の前にロシアがいて、これまでも関係性があったのに、いきなり敵国ということに自分たちから飛び込むというのは、自分たちの安全保障的にもまずいし、戦争を終わらせることも難しくなってしまう。なぜそっちの方に転がるのか? と。

 

緩衝国家・日本の防衛のあり方とは

 

 伊勢崎 経済制裁というのは、ロシア全体にダメージを与える制裁だ。これは先ほどパレスチナのことで触れた「何々人を殺せ、痛めつけろ、攻撃しろ」というのと同じで、国際法上はやってはいけないことだ。これは戦後まもなくホロコーストの教訓から生まれた、ジェノサイド条約で禁じている「集団懲罰」にあたる。日本でいう連座。「みんな悪い」という意味だ。これはやってはいけない。

 

 そして、やったとしてもロシアは大き過ぎる。アメリカと同じだ。申し訳ないが、アメリカはこの世で一番戦争をし、同国人以外の国民を殺してきた国だ。戦争犯罪はもう並大抵ではない。だからといってアメリカを経済制裁するか? しない。これを二重基準という。そして、(経済制裁を)やったとしてもアメリカはびくともしないだろう。国力があり過ぎる。ロシアも同じだ。プーチンを痛めつけるためにこれをやり、その間、ずっと血を流してるのはウクライナ人だ。われわれではない。共産党員でもない。日本人でもない。

 

 つまり、「プーチンを痛めつける」という「正義」のために死んでいるのは、ウクライナ人なのだ。

 

 憲法9条を持つ日本が「まぁまぁ、やめなさい。机に座ろうよ」となぜいえないのか? 実はそれはもう他の国で始まっている。今、中国がそういう役割を担うようになってきた。昔はこれを日本がやっていたのだ。40年前、PLO(パレスチナ解放機構)のアラファト議長がまだ西側諸国全体からテロリスト扱いを受けていたとき、日本外交が初めて彼を日本に呼んだ(1981年10月)。その数年後、彼はノーベル平和賞を受賞した。日本はこういう外交をやった歴史がある。これこそ9条精神の外交といえるだろう。なぜそれを継承しないのか? それを継承することによって、それは日本の防衛力にもなるのだ。

 

 北欧のノルウェーという国を見てほしい。同じようにロシアと接している。でもノーベル平和賞の授与国であり、平和外交をやっている。そして、NATOの側、アメリカの側についている。それでもロシアを刺激しないことで、たとえばパレスチナのオスロ合意(イスラエルを国家として、PLOをパレスチナの自治政府として相互承認する和平合意)を締結させる主軸になったわけだ。

 

 つまり、こんな小さな国でも、こんな風に国際平和に貢献している国を痛めつけたら全世界を敵に回すことになる、というプレッシャーを自分たちの手でつくる。これが平和外交による防衛力だ。なぜ9条の国ができないのだろうか? やった時代はあったのだから、これをもう一度、この沖縄からやる。申し訳ない。沖縄の人にやれといっているように聞こえるかもしれないが、僕はここに骨をうずめるつもりだ。れいわと一緒にもう一度復活させたい。日本の外交、平和外交の資質を。

 

煽られる「脅威」は本当に脅威か?

 

 山本 周辺国家とコミュニケーションをとれない国はもう無茶苦茶だ。ご近所さんと何かしら挨拶も交わせず、拒絶し続けることは実質無理だ。

 

 今、米中緊張の中で、日本政府はアメリカ側に全ウエイトを置いて中国と敵対していくことをおそらく考えている。でも、アジア諸国は、「アメリカ側? 中国側? 冗談じゃない。俺たちに選ばせるな」といっている。「とにかくそれをやめろ。平和を望む。余計なことしてくれるな」ということを、小さな国であっても固まりになってやっていく。それこそ外交だ。

 

 一方、日本は、米中の緊張に乗っかって逆に軍拡をする。これは一番まずい。これを拡大していけば、いつか踏み外す。たいへんなことになってしまう。

 

 たとえ戦争にならなくても、緊張が高まるだけで人が死ぬ。経済で死ぬのだ。スーパーコンピュータ「富岳」の計算では、たった2カ月、中国から1・4兆円の部材が入ってこないだけで、日本では53兆円のものが作れなくなる。そこに関わる事業者、労働者はどうなる? 流通から販売まで影響が広がれば、損失の桁が変わる。戦争にならなくても、ただ緊張が高まり、少しの部品が入ってこないだけで、この国は詰むのだ。

 

 では何をすべきか? 外交しかない。対立する国とも話し合っていかなければダメだ。最悪の事態を避けるために。軍備を拡大し、対立を煽り、その先には間違えば戦争になる。火遊びはもうやめたほうがいい。一部の者だけもうけさせるために、中身も決まっていない43兆円もの軍拡で、アメリカから大量の武器を買い、国内ではより遠くに飛ぶ武器を作る――これで北東アジアの平和を守れるか? 守れない。いうべきことはいったうえで、しっかりと安全保障をつくっていく。ここ沖縄がその鍵を握っている。

 

 伊勢崎 ウクライナ戦争のことをもう一度思い返してほしい。実はアメリカがウクライナを対ロシアの最前線と位置付けて、軍事(兵器)供与をし始めたのは2014年からだ。それからずっとやっていたのだ。

 

 ときには敵からの見方も考えなければいけない。たとえば、もしメキシコに親ロシア政権ができて、アメリカとの国境沿いに、NATOやアメリカがウクライナでやってきたのと同じこと(軍事化)をしたら、アメリカ政府は黙っているだろうか? そういうことだ。そういうことをやり続けてきた結果、ロシア側がキレたわけだ。

 

 敵を軍事挑発する――ここが問題だ。ロシアのいうことや中国のいうことをすべて信じろとはいわない。でも、ちょっと冷静に考えてほしい。

 

 この40年間、アメリカが軍事侵攻した国はいくつあるか? 13カ国だ。そのうちのひとつが僕がいたアフガニスタンだ。では、中国が40年間で軍事侵攻した国は? ゼロだ。

 

 では、アメリカが国外に置いている軍事基地の数は? 750だ。80カ国に。そのうちの一つがここ日本だ。日本は一国で米軍基地を最も抱えている国だ。中国は中国本土以外に基地をいくつ持っているか? 1つだ。アフリカ北東部のジブチ。

 

 実はジブチには自衛隊基地もある。9条の国がついに軍事基地を国外に置くようになってしまった。誰がやったか? 旧民主党政府だ。僕はこれでも護憲派の友だちがいっぱいいたから、当時必死になって彼らを止めたが聞き入れられなかった。

 

 ジブチにはアメリカの基地も日本の基地も中国の基地もある。でも中国はそこだけしかない。もちろんサンゴ礁を埋め立てたりして騒がせてはいるが、他国の領土に軍事基地は一つしかない。確かに中国もロシアもアメリカと同じ大国であり、われわれは彼らがいっていることを警戒しなければならない。彼らがくしゃみをするとわれわれは風邪を引くのだから。でも、ちょっと冷静に考えるべきだ。われわれはあまりにも怖がり過ぎる。

 

 現在おこなわれている「キーン・ソード」(日米共同統合演習の名称)――どういう意味か? 「鋭い刀」。「鋭い刀」作戦だ。めっちゃくちゃ挑発しているのだ。それが今、ここで実施されている。誰だって敵がいたらその目の前に武器を並べたくなるだろう。ガキでも考える。子どもに失礼だが、その程度の発想だ。

 

 僕は一応、安全保障の専門家なのだが、そこではすごく残酷な言葉がある。「トリップワイヤー」。覚えてほしい。「仕掛け線」という意味だ。超大国、たとえばアメリカが、それに敵対する国、ロシアや中国など、その喉元近くに仕掛け線として武器を置く。それを遠くでアメリカが引く。そして何かのときには、アメリカ本土に脅威が来る前にそれを対処できる。トリップワイヤーを仕掛けたところが犠牲になっても――。これが軍事の考え方だ。

 

 ここが犠牲になる。日本全体の中では、まず沖縄。沖縄の中でも先島諸島。でも、しょうがない? それでも中国怖いから? ちょっと考えてみてほしい。同じようにアメリカと同盟関係を組み、ロシアに接している国がある。それがノルウェーだ。僕の学者仲間もたくさんいる。北極圏でロシアに接し、アメリカの最重要同盟国でもある。でも先ほどいったような平和外交をしている。果たしてノルウェーは、ロシアとの国境地帯に、沖縄の先島諸島みたいに武器を置いているか? 重武装しているか? していない。

 

 でも、ロシアで人権問題が起きたら真っ先にそれを追及する。それがノルウェーという国だ。人権国家なのだ。そういう距離のとり方がある。でも軍事的にやれば戦争になる。戦争になれば、ここが東京よりも先に狙われるのだ。だから、あえてちょっとの武装しかしない。そういうことだ。そういうやり方を親米国家でありながらやってきた国が現存するということも頭に入れてほしい。そうすれば、怖がる気持ちが少し和らぐはずだ。

 

 なぜ軍備が必要なのか? みなさんが怖がるから。ただそれだけだ。われわれに協力してほしい。力を与えてほしい。

 

アジアの問題解決はアジアの手で

 

れいわ新選組・山本太郎氏と伊勢崎賢治氏の街宣(22日、沖縄県那覇市)

 山本 怖がらせることによって得する人たちもいる。国家の予算をさらに軍備へと導くことによって利益が得られる人たち。そこから票がもらえる政治家がいる。戦争は商売、ビジネスだ。だから3年もウクライナ戦争は終わらないのだ。

 

 アメリカ国民は殺さないで、同盟国と自分たちが「敵」と決めている奴らを互いに削らせあう。その間、遠くから武器を送り、国内は好景気――「オフショア・バランシング」という戦略だ。遠いところから漁夫の利を得るという戦い方をアメリカはウクライナでもやってる。

 

 次のステージはどこか? アジアだという話だ。これを絶対に形にさせるわけにいかない。みんなが煽られれば煽られるほど、今の政治家たちは「さらに武器を」という話をしていきやすい。コントロールしやすくなる。やるべきことをやれ。それは何か? 外交しかない。外交の失敗が戦争だ。外交すらしてないじゃないか。当たり前のことをいっていこうってことだ。

 

 伊勢崎先生の話を聞いて、なるほどと思ったことがある。それは何か? すべての対立する当事者、対立しない人も含めて、その地域の者たちが集まって、話し合いができるプラットフォームをつくるべきだということ。今、石破首相が「アジア版NATO」みたいな話をしているが、そんなものはもう古いということだ。

 

 軍事同盟を拡げていきながら仮想敵国を囲っていくということでは戦争にしかならない。それではダメだ。中国も北朝鮮もロシアも、それ以外の国々も同じテーブルを囲む。コンスタントに囲む。軍事的緊張のみならず、さまざまなエネルギー問題だったり、その地域が抱える課題を定期的に話し合う場をつくっていく。そういった会議をどこに設置するか? この沖縄しかない。みんなでやろう。そういったことを事前にやりながら、紛争を未然に防いでいく予防外交が世界ではおこなわれているそうだ。日本もやろう。

 

 国民は超絶格差の中で苦しんでいる。物価まで上がり、中小企業はバタバタ潰れている。戦争? 軍備? ふざけてはいけない。今こそ国民生活を底上げして、この国の消費と投資を盛り上げる。日本の経済活動を世界平和に繋げていくという、以前、私たちがやったことをもう一回取り戻そう。取り戻す。取り戻す。「経済オンチたちから国を取り戻す」だ。


 30年も不況を続けるような国づくりした奴らなんてクビだ。それが自民党。それの劣化コピーが民主党だ。みんなで取り戻す。その先頭に立たせてほしい。希望をつくろう。希望はつくらないとできあがらない。やれるはずだ。こんな無茶苦茶にされたのだから、その逆をつくれるのも政治だ。比例は「れいわ」でお願いします。

 

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