いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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「貧困か繁栄か、戦争か平和か」 れいわが訴える2つの争点 山本太郎×伊勢崎賢治 衆院選中盤の演説から

(10月23日付掲載)

合同で街宣をおこなうれいわ新選組の山本太郎代表と伊勢崎賢治氏㊧(比例東京ブロック)

 衆院選(27日投開票)後半戦に入り、議席倍増を目指すれいわ新選組の山本太郎代表は、近畿から九州にかけて街宣活動をくり広げている。争点が乏しい「与野党対決」「政権交代」キャンペーンが宙に浮くなかで、人々の切実な生活実感に根ざした経済政策を掲げ、30年に及ぶ増税と緊縮政策で国内を疲弊させてきた旧勢力(与野党)の馴れ合い構図を痛烈に批判しながら、白けムードや諦めで政治に背を向け、社会の破壊に拍車を掛けるのではなく、腐った政治と社会を立て直す主体として有権者が力を合わせること、みずからがその結集軸として国会で徹底的にたたかう決意を訴えている。さらに、国連や日本政府代表として世界各地で紛争解決にあたってきた東京外国語大学名誉教授・伊勢崎賢治氏(れいわ比例東京ブロック候補者)も街宣に合流し、貧困と戦争に抗う力の結集を大きな争点として論戦を展開している。各地の街宣でのれいわ新選組の主張のトピックを紹介する。

 

みんなを豊かにする政治を有権者の手で(横浜)

 

 山本太郎 みなさん、景気はいいですか? 賃金が上がっているというのは本当ですか? 大きな企業で5%ほど賃金が上がったと騒いでいるが中身を見てほしい。定期昇給も含めると3%程度しか上がっていない。

 

 一方、(自民党政府は)「物価上昇に負けない賃上げを達成」といっているが、そんな賃上げが実現している企業がどれだけあるだろうか。

 

 帝国データバンクの9月報をみると、中小企業がバタバタ潰れて、8割が不況型倒産だ。賃金が上がる社会をつくっていくならば、まず景気を良くする以外にない。これまでの自民党政権のように大企業に対して「どうか賃金を上げて下さい」とお願いをしに行くだけでは、神社に頼み事をしているのと同じだ。

 

 政治がやるべきことは、そういうことではない。経済政策を徹底的に打たなければいけない局面だ。なぜなら今、日本は30年の経済不況にあえいでいる。物価高だけで困ってるわけではない。先進国で唯一、日本だけが30年間も不況が続き、そこにコロナ、物価高が合わさった、ある意味での「経済災害」が続く緊急事態にあるのが日本だ。

 

 国内をみてほしい。6割の国民が「生活が苦しい」という。この国では貧困が拡大している。国民の6・5人に1人が貧困。高齢者の5人に1人が貧困。1人暮らし女性の4人に1人が貧困。ひとり親世帯の2つに1つが貧困だ。社会の底など完全に抜けてしまっているのだ。とうの昔に。

 

 一方、自民党の国会議員は数千万円もの裏金を作ってネコババしてもクビにもならない。お金も返さない。逮捕さえされない。そして多くの国民が貧困化しているなか、一握りだけが富を蓄え続けている。大企業は、この13年間に内部留保は600兆円超だ。わかりにくければ現預金で考えてみてほしい。139兆円をこえるお金を貯め込んでいる。つまり、もうすでに、この国は超絶格差社会になっている。

 

 どうしてこんな状態になったのか? 政治の責任だ。なんでもかんでも政治の責任にするな、そういう方がいらっしゃる。とんでもない。この国で起こっている多くの問題は政治に責任がある。なぜか? この国で生きている限りは、この国で作られたルールに則って生きるしかないからだ。政治と自分は関係ないと思っているかもしれないが、直結している。知らず知らずの間に、ルールに従って生きなければいけない状況にされている。赤信号では止まり、青信号で進むのは、道路交通法に則っているからだ。消費税が上がるのは嫌でも、上げることが決められたら、みんな素直にレジで払う。消費税法に則っているからだ。

 

 この国において、あなたの生活、この国の経済が壊されるような、さまざまな政策・法律が通りまくった30年――。乾いた雑巾をさらに搾るような行為を30年も続ければ国は壊れる。すでに壊れている。では、諦められるか? 諦められない。政治によって壊された社会は、政治によって作り直すしかない。そのチャンスが選挙だ。だから力を貸してほしい。

 

 もうすでに国会のなかでは、与党も野党も茶番。反対しているかのような顔を見せている野党でさえも、与党側と調整して、とんでもない法律の採決に力を貸している。そのなかで空気を読まずに、たとえ数が少なかったとしても徹底的に戦うという姿勢を示す野党の存在が必要だ。それを「れいわ新選組」と呼ぶ。この数を増やしていただきたい。

 

 徹底的に抵抗することによって生まれることがある。それは何か?

 

 2019年、山本太郎一人で旗揚げしたれいわ新選組。私たちの1丁目1番地は、経済政策だ。人間の尊厳を守れる社会をつくるためには、30年間失われ続けたこの社会と、この国を立て直す必要がある。そこで私たちがいったのは「消費税の廃止」だ。

 

 「そんなバカみたいなことをみんなが信じるわけがないし、できるわけがないだろ」「山本太郎は本当にセンスがないな」――国会の中でそう笑われた。でも今、各党のマニフェストを見てほしい。自民、公明、立憲以外は、みんな消費税の減税を訴えている。2019年時点では、消費税減税の“げ”の字もなかったのだ。たとえ少なくても風穴は開けられる。消費税廃止に向けて、まずは減税。それを私たちの力でもっと前に進めさせてほしい。

 

 「消費税廃止なんて無理」――そう思われる方は、「消費税は社会保障の財源になっている」と思っている善良な方が多いのではないだろうか。それは騙されている。消費税とあなたの社会保障とは、ほとんど関係がない。消費税とは「直間比率」(直接税と間接税の比率)の是正――つまり、つまり誰かの税金を下げるために、その穴を補うために作られたのが消費税だ。

 

歪められた税制と雇用

 

 山本 では、あなたが払っている消費税は、誰のためにとられているのか?


 残念ながら、大企業に大減税するため、大金持ちを優遇するための穴埋めとして使われているのが消費税の正体だ。テレビや新聞はそんなことはいわない。新聞は軽減税率が適用されている。飴玉をもらっている連中が本当のことをいうだろうか? テレビも母体は新聞社であり、利害関係者だ。テレビや新聞で本当のことをすべて伝えられるわけではない。

 

 でも事実関係は、データを見ればはっきりしている。消費税を上げるたびに法人税は下げられ続けてきた。その10年、消費税が上がるたびにこの国は衰退の一途だ。なぜなら消費税とは、あなたの消費を削り、国全体の消費を弱らせる。

 

 消費とは何か? あなたが物を買うときに払うお金は、回り回って誰かの所得となる。消費が弱れば、所得も弱る。

 

 一部の者たちに票とお金をもらい、落選したときには仕事の斡旋までしてもらえる。そんな関係性から、国会議員のバッジを付けた後に、彼らは誰のために働くか? 大企業のため、資本家のために汗を流し続ける自民党。

 

 それだけじゃない。彼ら(大企業)にとっての一番のコストである労働環境を破壊した。1990年から非正規雇用が拡大し、今やその勢いは、働く人全体の4割。さらに増えようとしている。「不安定」「すぐにクビを切れる」「給料は安い」…こんな仕事が増えればどうなるか。一人一人の購買力が弱っていく。所得を減らした者は、物を買えなくなる。買わなくなる。さらに社会にお金が回らなくなる。

 

 非正規労働者を増やした結果、減ったものがある。実質賃金だ。社会にお金が回らなくなれば、事業者も売上が減る。賃金を下げたり、首切りにもつながる。そんな悪循環を続けてきた30年が日本の経済だ。

 

 日本の未来に光はあるのか? そう聞かれたとき、国は間違いなく存在するだろうが、その国内に生きている人たちは倒れるしかない――そんな将来しか見えない。あなた自身が自分の未来に希望を持てているか? 不安しかない。当然だ。このまま行けばそうなる。

 

 不安を作るのも政治。これまでの不安を作ってきたのも政治。そして、それを希望に変えていくのも政治。その鍵を握っているのが、みなさんだ。

 

 この国の最高権力者は総理大臣じゃない。あんなものは雇われ店長に過ぎない。前のメガネもクビになり、今度のメガネもすぐクビになる。この国の真の最高権力者、オーナーはあなただ。その50%が票を捨てたら、圧倒的に負けてしまう。でも、この50%近くの人たちが動けば、社会なんて大きく変わっていく。そういうルールのゲームなのだ。

 

 諦めないでほしい。あなたがいなければ、変えられないのだから。あなたがいなければ、始まらないのだから。一緒にやってやろう。その先頭に立たせていただきたい。

 

 れいわ新選組は、空気は読めるが、空気は読まない。馴れ合いのクラブとして存在している永田町に徹底的に抗い、大きな穴を開けていく。

 

ものづくり大国・日本の再興を(大阪)

 

演説するれいわ新選組の山本太郎代表(20日、大阪市天王寺)

 山本 この30年の政治は、裏切りに次ぐ裏切り。逆にいえば、国内を草刈り場にし、国を切り売りしてきた。労働環境を破壊し、税の歪みをつくり、そして一部の者たちだけが大成功を収め、多くが沈没するような構造をつくってしまった。

 

 そのなかで失われたものは何か? 日本のものづくりだ。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」といわれたものづくり。日本国内の需要がなくなった。需要がないところに商売なんて成り立たない。だから企業はどんどん海外に出ていく。製造業は空洞化した。

 

 今こそこの国に必要なものは、そういった企業たちに国内に帰ってきてもらって、この国で真面目に働いている中小企業のみなさんと連携していきながら、もう一度「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という国をとり戻すことだと私は考える。

 

 日本国内で作られた日本国の製品を、日本国政府が買い上げていく。メイド・イン・ジャパンを政府が買い上げていくという政策だ。これはもうすでにアメリカでおこなわれている。年間80兆円規模の予算を使い、アメリカ国内で、アメリカ国民によって作られた製品をアメリカ政府が買い上げる。これによって製造業が息を吹き返した。安定した労働、賃金の高い良質な雇用が生まれている。

 

 これを日本もやったほうがいいと私は思う。だから、私たちれいわ新選組は、そのような政策「バイ・ジャパニーズ計画」を掲げている。アメリカでは、オフィス家具からヘリコプターのブレードに至るまで、ものすごく幅広に買い上げていった。死んでいる製造業にどんどん血液を流していくわけだ。日本もやろう。その技術が失われたわけじゃない。このまま不況、経済不調の状態が続けば、今、日本が持っている技術さえ失われてしまうことになる。

 

 ものづくり大国、日本をもう一度、私は再興する必要があると思う。ぜひやらせてほしい。

 

ロスト・ジェネレーションの苦境を救え(神戸)

 

れいわ新選組の阪急神戸三宮駅東口サンキタ広場での街頭宣伝(20日)

 山本 世界広しといえども、景気が悪いときに増税する自殺国家は存在しない。各国、消費税的なものは減税する。

 

 たとえばコロナ禍。世界では100以上の国が消費税的なもの、付加価値税と呼ばれるものを下げた。なぜか? 誰かの消費が誰かの所得に変わる――この循環にブレーキをかけてしまえば、社会にお金が回らなくなる。そうなれば事業者は倒れる。失業者が生まれる。社会が不安定になる。国を守るうえでも、安全保障上、経済を安定させる責任が国にはある。だから消費税的なものは減税するのが当たり前だ。

 

 1997年、日本は消費税を五%に上げた。その翌年から日本は、本格的デフレ、不況に突入。その不況によって生み出されたものが、就職氷河期世代、ロスト・ジェネレーションだ。100社以上面接を受けても新卒なのに就職先が見つからない。正社員になれない。バイトでつなぐ。非正規でつなぐ。社会がちょっと景気が良くなっても、正社員として採用されることはない。そのような状況で、泥水をすするようにして生きてきた人がこの国にはいっぱいいる。

 

 一昨日、ニュースになっていた。40代後半の男性。5日間何も食べてなかった。所持金がなくて。おにぎりを盗もうと思ってコンビニに強盗に入った。2千数百円相当を、カッターナイフで店員を脅して盗んだ。でも去り際にこういった。「近くの公園にいるから警察呼んでくれ」と――。この国で生活していけないという状況は、もはや生活保護などでは救えない状態になって、今や刑務所がセーフティーネットになっているのだ。もう無茶苦茶だ。こんな国はもうやめにしたい。とっとと変えよう。そのためには間違った経済政策を変えていかなければいけない。

 

 一部の者だけプラスになって、今や過去最高益を何年も連続であげ続けている大企業の減税のために、これ以上みなさんから消費税をとり続けるいわれは一切ない。

 

 彼らは30年もうかり続け、十分に謳歌した。だったら次はみなさんの番じゃないか? 徹底した減税。徹底した社会保険料の減免。悪い物価高が収まるまでの間は、当然、必要なものは現金給付だ。こんなことは世界では当たり前の政策だ。そのような政策をこの国にもつくっていこう。

 

 消費税の減税や廃止は、みなさんへの悪影響はほぼない。逆にプラスの影響しかない。30年失われた消費と投資、合わせて需要をとり戻すための第一歩だ。

 

 なかでも一番助かるのが中小零細だ。税の滞納の5割は消費税だ。滞納しているのは中小零細だ。法人税は赤字ならば納めなくてもいいが、消費税は赤字であっても絶対に払わなくてはならない。中小零細は立場が弱い。取引先が大手である場合、消費税が上がったときに「上がった分はお前らが持て」みたいな不平等な話が押し付けられてるところも結構ある。とてもじゃないけど払えない。借り入れするしかない――そんな形で消費税を納めている人たちがいっぱいいるのだ。

 

 この国の労働者の7割が中小企業に雇用されている。大企業のみ優遇30年。中小企業こそもっと優遇すべきだ。雇用の7割を支えているのは中小零細だ。ここに対してしっかりと息を吹き返してもらうためにも消費税は廃止すべきだ。

 

国民生活や経済と直結する安全保障問題(神戸)

 

演説する伊勢崎賢治氏㊧と山本太郎代表(20日、神戸・三宮駅前)

 伊勢崎賢治 僕はまだ政治家ではない。学者として東京外国語大学で17年間教えてきた。それも日本人ではなく、イラク、アフガニスタン、バングラデシュ、インド、スリランカ、アメリカなどからの留学生に国際関係論を教えてきた。また、17年間、陸海空自衛隊の精鋭たちが学ぶ防衛省の統合幕僚学校でも教えてきた。こういうことを聞くと山本太郎さんとは反対側にいる人間と思われるかも知れないが、僕の考えは簡単だ。戦争をいかに避けるか、殺し合いをいかに避けるかだ。これを研究し、教えてきた。学者になる前は、紛争地において国連代表、また日本国の外交官として、たとえばアフガニスタンなどで働いてきた。

 

 こういう場で僕が外交・防衛問題について話すと「そんな話は私たちの日常の暮らしとはかけ離れている」とツッコミが入る。だが、実はそうではない。繋がっている。

 

 岸田政権が去年、2027年までに防衛費を倍増すると発表した。いわゆる43兆円の軍拡だ。

 

 これが達成されると、日本は世界第3位の軍事大国になる。アメリカ、中国に次ぐ規模だ。(憲法)9条の国が、今や世界3位の軍事大国。この不景気にもかかわらずだ。だから、みなさんの生活と直結している。

 

 なぜ防衛費が増大するのか? その一つの理由は、みなさん(国民)が怖がるから。それだけだ。

 

 何に怖がるのか? 今、中国が怖いだろうか? だから「自衛隊をもっと強くしよう」「アメリカともっと軍拡しよう」となるわけだから。誰も異を唱えない。というか、異を唱えにくい。そういう雰囲気づくり。これが問題なのだ。

 

 中国が怖いだろうか?確かにスーパーパワーだ。アメリカと同じように。くしゃみをしただけで、われわれは風邪をひく。そういう意味では確かに警戒しなければならない。

 

 ちょっと面白い話をする。今から40年前の長いスパンのなかで、アメリカが軍事侵攻した国はどのくらいあると思われるか? 13カ国に侵攻した。つまり侵略みたいなものだ。そのうちの一つ、アフガニスタンで僕はアメリカのために闘った。では、中国がこの40年間に軍事侵攻した国は? ゼロだ。

 

 もうひとつ。アメリカは、アメリカ国外に自国の軍事基地をいくつ置いているだろうか? 80カ国に750だ。そのうちのひとつがここ(日本)だ。というより、その80カ国の中で一番デカい米軍基地を持っているのがここだ。

 

 では中国は、中国の外にいくつ基地を持っているか? 1個だ。ジブチというアフリカの北東部。そこには米軍も基地を持っている。実は自衛隊も恒久的な軍事基地をここに持っている。この9条の国が、もはや外国に軍事基地を持っている。これを固定化したのが、旧民主党政権だ。僕は大反対したのだが、日本はすでに軍事基地を持つ国になっている。そして、岸田内閣の計画通り防衛費が倍増されたら、日本は本当の軍事大国になるわけだ。

 

 今、中国の話を聞いてどうだろうか? そんなに怖がる必要があるだろうか? 怖がるなとはいわない。軍事はスーパーパワーだ。でも、そんなに怖がる必要あるのか? そこなのだ。

 

 みなさんを怖がらせると誰がもうかるか? もちろん日本が「もっと武器がほしい、ほしい」となれば、武器産業はもうかる。それと政治家だ。国民の恐怖というのは、一番票になるからだ。これは古今東西、ひとつの法則だ。国民を怖がらせる――これが一番力を集中させる手段となる。それはしょうがないのかもしれない。恐怖は誰でも持つのだから。でも、ほどほどにしよう。ほどほどに怖がろう。そのために、ひとつのファクト(事実)を提示しているわけだ。

 

 確かに中国は珊瑚礁を埋め立てたりしている。でも実は、日本も同じようなことをやっている。沖ノ鳥島で。でも、まだ中国は、この40年間、一度も他国を侵略していない。そのことを頭に置いて、その「怖い、怖い」に少しだけブレーキをかけてほしい。それがみなさんの生活にもっと予算を投資することを助ける。イージス艦一隻買うお金があったら、高校無償化もできるし、大学も無償化できるのだから。

 

近隣国との外交こそ要

 

JR博多駅前でれいわ新選組山本太郎代表の街宣を聞く人々(21日)

 山本 伊勢崎さんは、東ティモールで国連PKO暫定行政府の県知事を務めた。そんな国会議員はいない。それだけでなく、アフガニスタンの武装解除までやっていた人だ。そこまでの外交、調整をできるような政治家は国会には皆無だ。

 

 逆にいえば、第2次安倍政権以降、北朝鮮から発射された衛星ロケット、ミサイルと呼ばれるようなものは100発以上だが、これに対して日本政府は、中国経由で「けしからん」といっているだけだ。外交などやっていない。みなさんがテレビ・新聞で見ている外交というものは、持参金付きの海外旅行程度のものだ。本物の外交をしなければいけない。

 

 私たちは国を引っ越しできるわけではない。隣近所とうまくやるのは当たり前のことだ。経済も密接に繋がっている。中国との間にたった2カ月間、緊張が生まれた場合、経済はどうなるか? スーパーコンピュータ「富岳」が弾き出した試算では、2カ月間の緊張で1・4兆円分の物資が中国から入ってこないだけで、53兆円の生産額が消失する。それだけのものが作れなくなれば、この国の労働者はどうなる? そして、作ったものを輸送や販売する、さまざまな業界に影響が広がっていけば、この消失は53兆では済まない。桁が変わる。

 

 つまり何か? 緊張が生まれるだけでも人が死ぬ。戦争にならなくても人は死ぬのだ。それを考えたときに、まずやるべきは、軍拡で近隣国との緊張を煽ることではなく、これまでやってきていない外交をしっかりやるということだ。

 

 たとえば、アメリカと中国の緊張が高まっているといわれるなかで、アジア諸国はどうしているのか? はっきりしている。「どっちにも乗らない」「アメリカ側につくのか、中国側につくのかを、俺たちに選ばせるな」という態度をしている。これは軍事力や国力が小さい国が集まって大国の暴走を止めるための手法「ボーキング(尻込み戦略)」と呼ばれるものの一つだ。そのなかで、日本だけがアメリカの尻馬に乗って、「台湾有事がー」「中国がー」といって軍拡までしている。防衛費43兆円の中身も何も決まってなかったのに国会を通過させた。

 

 アメリカから武器を買う。国内で武器製造をする。ミサイルも1000㌔、2000㌔、3000㌔も飛ぶようなものを開発していく。このような状況になれば当然、緊張は高まるし、下手すれば戦争になる。そんなことでは国は守れない。一見格好良く聞こえるかもしれないタカ派、「日本が舐められないように」というような中二病では国は守れない。現実を見なければダメだ。

 

 そのためには、まず外交だ。その先頭に立っていただくべき人が、私は伊勢崎賢治さんだと思っている。リアルな安全保障を、国会の中でしっかりと議論をたたかわせていただく。この国に本物の安全を、そして経済的繁栄を、そのための基礎はアジアの安定にある。私は今こそ国会にこういったことの実務家に入っていただく必要があると思っている。どうか皆さんの力を貸していただきたい。

 

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