(9月30日付掲載)
れいわ新選組代表の山本太郎参議院議員は9月25日、能登半島震災からの復旧途上で豪雨災害に見舞われた石川県輪島市に赴き、視察報告とともに被災者やボランティアから聞きとった要望の内容をSNSで発信した。被災地では浸水や土砂災害が拡大し、断水も長期化しており、一刻も早い国からの大胆な支援が求められているが、総裁選もはさみ政府の対応は依然として鈍い。同26日には同党を代表して天畠大輔参議院議員が岸田首相、松村内閣府特命担当大臣(防災担当)宛ての要望書を提出し、国が復興までの道筋を示したうえで早急に補正予算を編成すること、物資支援・応援職員の拡充などを求めた。山本氏の現地報告とれいわ新選組の要望書を全文紹介する。(中見出しは編集部)
9月25日、能登半島・輪島に訪れた。
元日の大地震つづき、豪雨災害。
度重なる苦しみの中にいる被災された方々にお見舞いを申し上げます。
そしてお見舞い申し上げるだけで終わる、今の政治状況を変えて行く努力をして参ります。
豪雨により一時孤立してしまった集落、町野町(まちのまち)を訪れた。
結論は、現場には支援が足りていない。
国からの応援要員を最大限派遣することを始めなきゃ話にならない。
大規模な財政投入も必要。国に申し入れを行う。
以下、簡単なリポートで被災された方々の声をお届けする。
国の先回り支援なし 応援要員の派遣は急務
お邪魔したのは町野町の仮設住宅。浸水被害はなかったという。ただし、断水と停電はある。
避難所には食事が届くが仮設住宅には、食べ物は提供されない。「家があるんだから自分でできるだろ」という対応。
仮設のキッチンはIH、電気がなきゃ動かない。
何より、この地域唯一のスーパーは浸水、店自体開いていない。
危機感を持ったNPOが食材を提供し住民と炊き出しを始めたという。
1日2度、生活用水を自衛隊が給水に来てくれるが、朝には水が出ない状態。
飲料水は?
集会所にはペットボトルが並ぶが、勝手に持って行かないよう張り紙がされている。
配給制ですか? と聞くと、そうはなっておらず、車で40分離れた店で水を購入しているという。
ここには自治会的なものが存在せず、リーダーもいない。皆の意見を集約することもできない。
このような混乱を調整するための人も、行政や国から送り込まれていない。
トイレは?
「水の問題もあるんだけど、流せば溢れる可能性があるから携帯トイレ。」
集会所にもトイレがあり使って良い凝固剤が置かれていた。数を数えると50回分しかない。今日ここにある全て、という。
ここの仮設は100人弱が暮らしており、1日の必要分を単純に計算しても700個は準備する必要があるはず。
輪島に来る前日の9月24日に内閣府に確認をしたが、今回の能登半島の豪雨災害に対して、国はプッシュ型の支援(先回りした支援)は、物資を含め行っていない、という。自治体の力だけで乗り切れる、という判断だ。
炊き出しの手伝いに来ていた「在宅」の方がいたので話を聞いた。
必要物資はもらえてますか?
「いいえ。避難所でもない、と返されて、ここでももらえません。」
一般的には在宅であっても必要物資は避難所などでも分けてもらえるはずだが、実際に現場では対応する人によって変わる場合もある。
NPOが食材を持ち込んで炊き出しをしているので、在宅でも厚意で分けてもらっているという。
他の在宅の方は食事はどうしてるのか。
「私は両親が仮設にいるので炊き出しの情報があるから来てる。他の在宅の人は情報もないだろうから、みんな困ってるんじゃないかな。」
かなりひどい混乱状態ですけど原因は何と考えますか? と支援するNPOの方に聞くと、
「役所の支所がありますが、基本職員3人で回してるようです。豪雨で応援がどれだけ入ったかは分かりませんが。物資がいくらあっても、それを管理して、在宅の人にも渡るよう、どこどこで支給するから取りに来てくださいとお知らせしたり、渡す場所を設定して動線作ったりシステマチックに行う必要があるけど、住民からの様々な問い合わせに答えるだけで精一杯で疲弊してます。物資に関することまではカバーできてない印象状態です」。
行き当たりばったりで思いつきの支援を行う側は、やっている感で満たされるだろうが、交通整理する人材も派遣されないまま現場は混乱。丸投げである。
食事、生活用水はもちろん、飲み水さえ十分に住民に行き渡らない状況は異常だ。
まずは国からの応援要員を現地に多く派遣することからしか始まらない。国に申し入れる。
コミュニティの危機 不可欠な生業の保護を
自宅に流れ込んだ土砂の撤去作業を行っていた住民に話を聞いた。
国がひとつ何でもやる、と言ったら何を言いますか?
「この町での生活を守るために必要なものには無条件でお金を出して欲しい。たとえば、スーパー。1軒しかないんですけど、移動手段がない高齢者には生命線。地震があっても踏ん張って営業してくれたけど、豪雨とのダブルパンチでもう一度再開は厳しいと聞いてる。その並びにあるガソリンスタンドも同じ状況。もちろん事業者単位でいくら出るとかでない、とか、なりわい補助金がどうしたとか、平等でないとか意見もあるかもしれないけど、この町で生きるために必要なインフラは特別に国からお金を出して守って欲しい。町の中で食品や燃料を調達できる唯一の商店やスタンドがなくなれば、車で40分以上かけて調達しにいかなければならなくなる。そんな状態になれば、町は崩壊する。」
大地震に続く豪雨。その中で現地には足を運ばず、米国で卒業旅行を満喫した総理。
退任間近であっても被災地及び被災された方々にこれまで再三、「コミュニティを守る」と豪語してきた。残りわずかな任期の間に、総理としての責任を果たす施策を打って欲しい。
これも国に申し入れする。
被災した仮設住宅 先見通せず削られる命
町野の仮設住宅は直接の浸水・土砂被害はなかった。
一方、輪島市中心部の仮設は被災。
ボランティアセンターに手伝いに入ってる方に話を聞く。
正式な数などは役所で確認を、と前置きし、
「輪島では2900世帯以上が50くらいの仮設団地に暮らしていて、今回の大雨の被害に遭ったのは4つの団地。停電断水の両方、またはどちらかがまだ不通という状態です」
これまでも全国で起こる災害への支援を行なってきた、という。
大きな地震の後に豪雨災害。
こういった二重の災害ってこれまで経験しましたか?
「確か、東日本の時に、気仙沼と岩手の方で小規模なものはあったと思う。ここまでのは記憶にない。」
その後、142世帯が暮らす仮設住宅を訪問。
ほぼ全戸、床上浸水。低いところで床上10㎝、高くて80㎝という。
ここで高齢者の見守りを手伝っているスタッフが応対してくれた。
まず、見守りってどんなことをやってたんですか? と聞くと、
「レスパイト(息抜き)のお手伝い。仮設は狭いとこだと四畳半。そこに夫婦で入るとか、親子二人で暮らすケースもある。ずっと狭い家の中で息が詰まっちゃうといけないから、ご飯でも行きませんか、カラオケは? お風呂行きませんか、と外に連れ出したりするんです。例えば、夜8時、9時に寝たい高齢の親と一緒に暮らす子ども。子は仕事が終わって帰ってくるのが親の就寝時間と重なったり。電気消したいのに消せないとか、電気消す薄暗い中で帰宅後の時間を過ごす、とか。昔だったら部屋が別だから気にならなかったことが、今は狭い部屋でお互い逃げ場がない。仮設は日頃から何かとストレスが溜まってしまう環境。そういった中でストレス緩和のお手伝いをやってました。」
その立ち位置からみて、豪雨後の住民の方々はどうですか?
「不安でしょうがない、って声が多い。ここに住めるのかもハッキリしないから。買ったばかりの家電が水没した人も大勢。また新しく自分で買うのか、それともなにかしら支援があるのか、情報は皆無。広域避難する、とかしないとか噂も飛び交ってる。そうなると、土砂を出して掃除するのか、ここを片付けるのか、判断もつかない。」
国に何か一つ、やれと言えるなら?
「見通しを立てて欲しい。ここに住みますよ、公営住宅に入れますよ、とか次を見据えられるような言葉、情報も支援もない。そういった材料がなければ先が見えない。先が見えないままだと、どんどん削られていく。市町や県だけで判断させることで復旧復興がここまで遅れたことを考えれば、予算をしっかりつけてしっかり国が助言してはっきりした見通しを示させて欲しい。今みたいな混乱してる急性期を気丈に片付けとか頑張ってる人でも、そのあとが心配です。基本的には仮設は3年間。その後は出ることになってるし。将来を見通せないと生きる気力が奪われる。」
大地震に豪雨という二重の災害の中で、生きていてくれているだけでも十分だ。
被災された方々は十分に頑張りすぎている。
いい加減、頑張らなければならないのは政治だ。
早急に希望が持てる見通しと、少なくとも豪雨前の状況に戻す経済的支援は絶対。
通常国会から求め続けている補正予算の編成を国に求める。
災害ゴミの処理難航 パッカー車の大量投入を
輪島の市街地での浸水被害地を回って話を聞いた。
今、困っていることは何ですか?
「地震のゴミ出しルールと、豪雨災害のゴミ出しルールが全く違うものになっていて、混乱してる。地震被害の時には、自宅脇に置いておけば回収してもらえたが、豪雨被害となると、自分で集積所に持ち込まなければならない。高齢者が多い地域で、移動手段もない方々はどうすれば良いのか。地震と豪雨被害でルールが変わり、困っている」
全国で毎年起こる大雨被害。
水と泥に浸かった家財道具や瓦礫を持ち込む集積所。
そこに向かう道路は毎度大渋滞が起こり、移動手段のない人々は、ボランティアや、NPO・NGOが何とかするという人々の善意に乗っかることでお茶を濁してきたのが、日本の災害対応だ。
2018年西日本豪雨の時にも委員会で再三、パッカー車(ゴミ収集車)を大量に投入するよう国に要請してきた。
パッカー車が各戸を巡回して回収すれば、渋滞もなく、地震と豪雨の二重災害で苦しむ人々の苦労を軽減できる。
地震と大雨は違いますからなど、杓子定規で運用上難しいなど言ってる暇はない。
分別はどうする、と声も上がりそうだ。
SDGsな復興を目指すとか、国や自治体はアピールしてきたが、必要なことは、心が折れそうになっている人々に対して豪雨被害からの回復がスピーディーに行われることだ。分別を厳しくやりたいなら、それを行う雇用を別に作って、集積所で時間をかけてやれば良い。
今は、パッカー車を大量投入して、住民の負担を最大限軽減すること。
政府に求める。
https://x.com/yamamototaro0/status/1839223598671868114
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令和6年9月26日
内閣総理大臣 岸田文雄 殿
内閣府特命担当大臣(防災担当) 松村祥史 殿
能登半島地震被災地のための復興ビジョンの提示と物的・人的支援拡充の要請
れいわ新選組代表山本太郎は令和6年9月25日、豪雨災害に見舞われた能登半島地震被災地を訪問した。
元日の能登半島地震の被害から復旧が進まぬ被災地に、9月21日、記録的な豪雨が襲ったことで浸水・土砂被害が拡大。断水が長期化する状態も踏まえて以下、要請する。
1.先行きを示せ。復旧・復興への国のビジョンを示し、実現のための補正予算組みを
地震被害を受けて仮設住宅に入った、半壊だが何とか自宅で暮らせる、と生活復旧の途上で、豪雨災害に見舞われた被災者は、この先この地域に住み続けることができるのか不安の中に取り残されている。
このまま住み続けて大丈夫なのか、広域避難するのか、いつ住宅再建できるのか、公営住宅に入れるのかなど、その「先行き」を自治体任せにせず、早急に国がバックアップを行い、責任を持って示さねばならない。
これまで国としてのビジョンも示さず、結局は自治体に丸投げ、被災者の運命をなりゆきに任せてきたことで、不安を募らせ、地域を離れざるを得ない状態にまで追い込んできたことを猛省せねばならない。
今回豪雨災害に見舞われ、まもなく冬場には雪の影響も受ける被災地に、安心して住み続けられる見通しを保証するため、住宅再建、基本インフラの復旧のビジョンを国が示し、迅速な実現のため、国が予算を確保して国の責任で復旧を進めることを被災者すべてに対して総理自ら誓約すること。まずは早急な補正予算組みを求める。
2.商店やガソリンスタンド復旧・営業再開のため十分な財政支援を
地震と豪雨で営業再開の見通しが立たない店舗も多く、今回訪問した輪島市町野町で住民は地域での生活継続ができるのか心配している。
「地元スーパー商店が営業再開できなければ、40分かけて車で買い物に行かなければいけない」と不安を語る被災者の声がある。ガソリンスタンドやスーパーは生活のためのインフラである。国が十分お金を出して復旧・営業再開をする。そのための予算を確保し、営業再開支援の方針をすぐにでも示してほしい。
3.プッシュ型支援を早急に。被害世帯に水、食事、携帯トイレ等必需品を
9月24日時点で珠洲市では1750戸断水、輪島市では3236戸断水(24日時点)と報じられている。多くの住宅が断水被害に見舞われるなか、上下水道がつながらず被災者にとって飲料水やトイレの確保が急務となっている。
現場では飲料水や携帯トイレが足りていない。
物資は足りていたとしても、それを住民に届ける仕組みがない。
9月25日に訪問した町野町の100人近く暮らす仮設住宅団地には、携帯トイレの在庫は50個しかなかった。自衛隊による最低限の生活用水の給水支援はあっても飲料水は支給されていない。40分かけて遠方の商店に飲料水を買いに行く仮設住民もいる。
食事支援に関しては避難所のみであり、仮設などはNPOの支援者が持ち込んだ食料品や炊き出しでなんとか食べつないでいる。
被災した住宅で暮らすいわゆる「在宅避難者」には今回、豪雨で被災しているのにも関わらず、支援物資が届く仕組みがない。避難所に取りに行っても「ない」と帰された住民もいる。
・在宅避難者と仮設住宅入居者に対して、国の責任で炊き出しと入浴支援を実施することを求める。
・携帯トイレ、飲料水など断水世帯にとって生活に不可欠な物資や生きる上で必要な炊き出しを含め食料のプッシュ型支援を早急に再開、拡充するよう求める。
・トイレの確保については高齢者や障害者のニーズを踏まえ、必要な場所に必要な数、車椅子利用者向けのトイレを設置することも求める。
4.物資の受け入れ等に関わる応援職員の増員を
他方、ただ膨大な物資を送れば良い、ボランティアを大勢受け入れれば良いと言うことではない。調整役がいなければ回らない。
今回訪問した輪島市町野では支所職員は3人しかいないと聞いている。これでは住民からの問い合わせなどに忙殺され、送られてくる物資を住民に受け取ってもらう仕組みなど構築できるはずもない。
マンパワーが足りない状態では、物資が集まっても、仮設住宅や自宅などで被災された方々にまで物資が行き渡ることは考えられない。被災者の現状把握など到底無理であろう。調整などの作業はすべて社会福祉協議会に丸投げするというのだろうか。
元日からの地震、今回の豪雨で心が折れそうになるのは住民だけではない。自治体職員も疲弊している。現場で様々な受け入れに当たる自治体職員の人員体制を増強するために、すぐにでも災害支援受け入れ実務経験のある国の職員を十分な数、豪雨で被災した自治体に派遣することを求める。
5.パッカー車を大量投入しゴミ出しに係る住民負担の軽減を
被災地では豪雨被害で出たゴミを被災者自ら集積場に運ばなければいけない事態が生じ、住民が混乱している。
集積所にゴミを運ぶため道路は渋滞し、車のない被災者はNPO等の支援に頼るほかない。2018年西日本豪雨の時にも国会質疑で再三、パッカー車(ゴミ収集車)を大量に投入するよう国に要請してきた。パッカー車が各戸を巡回して回収すれば、渋滞もなく、地震と豪雨の二重災害で苦しむ人々の苦労を軽減できる。
分別は集積所で行うことを前提に、まずパッカー車を大量投入して、住民のゴミ出しに関わる負担を最大限軽減することを政府に求める。
ここまで地震からの復旧が遅れ、脆弱な状態で大雨被害を受けることになったのは、政府が資金、人員、物資など十分なリソースをスピードを持って投入してこなかったことのツケである。政府には痛切な反省に立って、被災地にこれまでとは規模の異なるリソースをスピードを持って投入することを求める。
なお本日の申し入れに間に合わなかったほかの提言については、近日中に、申し入れを行う。
れいわ新選組