れいわ新選組の山本太郎参議院議員は4月28日に新宿駅南口で街宣(政治的のど自慢大会)と、東京・ビジョンセンター新宿マインズタワーでの「おしゃべり会」をおこない、29日に秋葉原駅前で街宣をおこなった。参加者からの質問や意見に対して山本代表が答えていく対話形式で進行し、政府による棄民が続く能登地震被害対応や自民党の政治資金問題、生ぬるい追及に終始し自民党政府の追認機関に成り下がった野党の存在など、この間国政のなかで浮き彫りになった問題について明らかにした。また、物価高や円安などの経済問題も議論のテーマに上がり、市民みんなの手で政治を変えるための勢力を一段と強めていくための意気込みが高まっている。新宿と秋葉原の3会場での質疑のなかから主な内容を紹介する。
能登被災地の現状は明日の我が身
質問 防災の話をするときに、「自助・共助・公助」という言葉が使われるが、今の日本では自助と共助に頼りすぎていると思う。
山本 ざっくりいうと、自助=自分の足で立て、共助=周りに助けてもらえ、公助=国や行政の力で、ということだ。今の日本において、「国に頼ろうと思うな。自分でなんとかしろ。周りに助けてもらえ」という状況は災害以外でも同じだ。全国に9000以上ある子ども食堂は、まさにこの国の「自己責任で生きろ」という政治の結果生み出された、善意の塊だ。国がきちんと子どもたちの貧困に手当をしていれば、子ども食堂すら必要なかったはずだ。この国の未来である子どもたちに対してもそのような姿勢である政治が、災害が起きたときにみなさんの命を守ると考える方が間違いだ。
本来なら国がインフラ、衣食住のすべてを一生懸命提供し、災害発生以前の状況以上に復興させていく気概が必要だ。だが現実は、自助・共助でなんとかしろという姿勢だ。例えば、今回地震災害が起きた能登半島にある6市町は、日本の面積の0・45%程度だ。わずかこれほどの地域でさえ、発災から4カ月経った今でも飲み水がない。下水道が通っていないため携帯用トイレが必要だが、十分に提供されていない。それどころか「お前たち、そろそろ自分たちで立ち上がる頃だろう」ということで、国はプッシュ型支援を3月末に打ち切っている。一言でいえば棄民だ。
これまでの他地域での災害においても、国が途中で手を引いたがために今もその地域が立ち上がれていない。その結果、日本という国そのものが弱体化していく。「安全保障」を声高に叫びアメリカの尻を舐め、さまざまな武器を購入する。しかし実際は足下の災害において人々を見捨て、生活復旧さえもままならない状況を与えることは、安全保障問題において一番の痛手だ。一刻も早く生活復旧が進み、発災前以上の復興が進むような手当をすることが本当の安全保障だ。
被災地につぎ込まれてているお金があまりにも少ない。1年間の予算(通常予算)は、12月から組まれ、翌年の2、3月に衆参両院で審議をおこない、次年度の予算を決める。能登半島地震が起きたのは1月1日で、その時点で予算案には能登半島地震のことはいっさい入っておらず、地震被害に対してお金を使うには、新たに補正予算を組まなければならなかった。だが、結局能登半島地震に特化した補正予算は組まれていない。端から見殺しだ。
阪神大震災のときには1月中旬に地震が発生したが、国はすぐに補正予算を組んだ。1年の予算を通す前に阪神大震災に対応できる補正予算を先に通し、その後に1年間の予算を通した。一刻も早く復興を進めるにはそこに大量のお金をつぎ込まなければならないし、大きな金額を見て被災地の人々が「これで復興できる」という希望を持つことができる。能登半島地震ではそれをやらず、自由に使えるお金としてある「予備費」を使うから大丈夫だということにしたが、それで足りるわけがない。
1年間の予算審議を止めて補正予算を勝ちとるためには、野党が戦わなければならなかった。だがそれをせずに、やっていたのは裏金の話だ。もちろん裏金の話は大切だ。しかしその問題よりも先に、まずは被災地を救うための補正予算を組まなければならなかったのに、それをしなかった。与党も野党も腰が入っておらずだらしがない。そことたたかっていかないといけない。薄れてしまった公助を最大化することがこの国のテーマだ。今国がいっている安全保障なんてペラペラだ。貧乏な国の軍事大国化はやめなければならない。国内の安全保障の方が重要だ。
質問 能登地震のことで父から質問を預かってきた。4カ月経った今でも能登が放置され政治から無視されている状態なのに、ウクライナなどを支援している。能登の復興はどうなるのだろうか。
山本 約2週間前に珠洲市に行って行政関係者やNPOなどに話を聞いたが、現地では水が足りていない。成人男性に必要な1日あたりの飲み水は1・2㍑、また1日に必要な生活用水は230㍑だ。これは厚労省による災害時の水の支援というガイドラインのなかで最低限の目標として示されている。しかし今被災地では、給水車までポリタンクを持って行って汲んで来なければならず、例えば自衛隊の給水車なら「1世帯あたり20㍑まで」という状況だ。まったく足りていない。さらに飲み水さえも足りていないというのは異常だ。
水道復旧率は珠洲市で41%、輪島市で87%といわれている。ただ、これは蛇口をひねれば水が出るという数字ではなく、家の前の水道管まで水が来ているという状態にすぎない。そして、今現地では家の前まで水が来ていても、家の中の水道管が壊れているため水が使えないというケースが圧倒的に多い。だが国はそのことについて調査すらしていない。
家の中に水を引き込むには宅地内漏水を直さなければならないが、そのための工事はすべて自前だ。工事をする職人も足りていない。輪島市の職人に話を聞くと、2月に修理の依頼を受けた所の工事を今やっている状況だという。いつ水道工事ができるかもわからないのにその家に住むというのはかなりハードな話だ。上下水が直っていない状態では住めない。この問題を一刻も早く前に進めなければコミュニティを守れなくなる。
だから、総理に対して宅地内漏水工事ができる職人を全国に呼びかけて、能登に来るための移動費と宿泊費を担保し、さらにできれば工賃を上げて国が負担してくれということをお願いした。「家の中は私有財産だから国がお金を出せない」などといっている場合ではない。
家の蛇口をひねって水が使えるようになるまでに今年いっぱいもしくはそれ以上かかるといわれている。そんな状態で半年以上も住み続けられない。すでに水を汲みに行くことを諦めた高齢者もいると聞くが、水汲みを辞めるということは生きることを諦めるのと同じだ。このままでは災害関連死が増える。国が本当に危機感を持たないといけない。
今年の夏はここ数年のなかで一番暑くなるといわれているなかで、生活用水も飲料水も足りず、さらに家でトイレもできないので15分かけて公的施設のトイレまで歩いて行かなければならない人もいる。人が生活していく条件がまったく揃っていない。だが国は携帯トイレを数多く送ってくれといってもやらず、飲み水を送ることもなかなかやらず「もう店で買えるだろう」という。国として終わっている。
国会で質問をするたびに「ちゃんとやります」というので、少しは進んだかと思って一週間後にどうなったか聞くと、まったく何も進んでいない。国権の最高機関において総理大臣に求め、総理大臣が答えているにもかかわらず、まったく動きなしだ。ファミレスや居酒屋で話しているのとわけが違うといいたい。腐り切っている。今のペースで行けば、復興以前に生活の復旧すらもまだまだ道のりは遠い。
今のままでは、能登よりもより多くの被害が予想される南海トラフ地震や首都圏直下地震の被災者は国から見殺しにされる。それをなんとか止めるためにも、能登地震への政府対応を「ちゃんとやれ」と国民みんなで声を上げていかないといけない。
消費税廃止は必須 他国では短期間で実現
質問 このまま自民党が政権を握り続ければ、消費税は何%まで増税されるのだろうか。
山本 自民党が政権を握り続ける限り消費税の増税が続くと思っているかもしれないが、立憲民主党になっても消費税の増税はやられるだろう。自民党も立憲民主党もほとんど同じだ。例えば、武器輸出については民主党政権時代に官房長官談話の内容を少し変えたりして道筋が作られた。また、行きすぎた自由貿易を可能にするTPPを結ぶための道筋を作ったのも民主党だ。そして消費税は「4年間上げない」といっていたのに上げたのも民主党だ。自民党も立憲民主党も、名前や看板を変えたところで存在自体はたいして変わらない。世の中が壊れるスピードが遅くなるか早くなるかだけの違いだ。
もちろんこの民主党政権時代の背後には自民党と公明党が蠢いている。彼らは自分たちが政権をとったときに汚れた仕事をしたくないがために、後の政権交代を見据えて民主党に汚れ仕事をどんどんやらせたと私は見ている。
消費税増税を望んでいるのは経済界だ。消費税が増税されるたびに法人税が減税されるというお約束がある。そして大企業にとってプラスになることは、その傘下で働く者たちにとってもプラスになる。例えば、大企業の労働組合もそうだ。そういう意味では、「労働者の代表」といわれる連合などにもプラスの話ならOKということになってしまう。だから、彼らからすると消費税増税に対してそこまで抵抗がない。立憲民主党の岡田克也幹事長も消費税減税に対しては、「物価高対策として消費税の減税は考えられない」「所得税の減税と同じように時間がかかる」といっている。
倒さなければならないのは自民党だけではないということだ。立憲民主党のなかにいる財務省の考えそのままの人間も倒していかなければならない。今の時点での野党共闘なんて幻想だ。自民党をアシストし続けている奴らまで倒さなければ社会は変わらない。
消費税を導入することで、経済が弱る。民間最終消費支出の減少額を見てみる【図①】。この国の一番大きなエンジンは個人消費、つまりあなたがお金を使うことだ。景気が悪くなると消費支出が減る。みなさんの記憶のなかで「不況がやってきた時」というと、リーマンショックのことを思い浮かべる人もいるのではないか。このときの消費支出の落ち込みは4・1兆円だ。一方、消費税5%に増税したときには7・5兆円減少だ。さらに消費税8%で10・6兆円減少、消費税10%ではコロナの影響もあり18・4兆円も落ち込んでいる。消費税とは、消費を弱らせ経済を弱らせるものだ。だから世界のどこを探しても消費税を上げるバカな国家は存在しない。
消費が落ち込むと、景気が後退する【図②】。消費税を5%に増税した後に落ち込んだ経済が、消費税を上げる前の水準まで回復するのに3年9カ月を要した。一方でリーマンショックは回復までに1年9カ月だ。また、消費税8%にした後は5年経っても回復していない。それなのに消費税10%に増税し、さらにコロナも重なって4年経っても回復していない。
この国の政府は、自国民に経済制裁を与え続けている。狂っている。だから消費税は最低でも減税、そしてここまで経済が落ち込んでいる状況では消費税は廃止しなければならない。だが、このことを国会で訴えると、政府は「消費税減税には時間がかかる」と言い訳をする。こういう発言をする者は全員詐欺師だと思って間違いない。海外では消費税と同様の「付加価値税」があるが、コロナ禍においてイギリスは付加価値税の減税を発表してからわずか7日間で実施した。ドイツは28日間、アイルランド23日間、マレーシアは16日間で実現している。減税するのは決して難しいことではない。
質問 れいわ新選組は消費税ゼロを訴えているが、私はスウェーデンのような消費税も含めて高負担だが高福祉で老後の心配もない社会が理想だと思っている。
山本 考え方はよくわかる。将来的にそのような状況が導き出せるなら良いかもしれない。だが今の日本でそれは無理だということはみなさんもよく分かっているだろう。政治に対し全幅の信頼を置いている人はほとんどいないだろう。そのような状態で高い税率を課されて、それが自分のために使われるという前提さえも履行されない可能性がある。まず必要なのは、政治とみなさんとの間に信頼関係を醸成することだ。100%の信頼はあり得ないが、国民が政治を監視し、常にお尻を叩くという仕事がクリアできなければそのような税制・社会は実現できない。今のように多くの人たちが政治に絶望して距離をとり、白旗を揚げて興味を持たない現状のなかで、政治家が甘いことをいいながらみなさんに高負担を強いて「みなさんにキックバックします」なんていう話は信じてはいけない。今必要なのはみなさんに対する高負担ではない。
アベノミクスの過ち 庶民への財政出動なし
質問 アベノミクスは大失敗だと思う。
山本 「今の円安はアベノミクスの副作用だ」といわれることは、はっきりいって間違いだ。アベノミクスのせいならもっと早く円安になっているはずだ。私が参議院議員1期目の6年間、当時の総理大臣だった安倍さんがおこなう政治に対してずっと批判する立場でいた。ただ、経済政策に対しては、100%ではないが一定認める部分はあった。
アベノミクスの第一の矢は、「異次元の金融緩和」によってお金の量を増やす。第二の矢は、「機動的な財政出動」で足りていないところにお金を出す。第三の矢は、「規制改革」的な話でずれすぎているのではっきりいってどうでもいい。
アベノミクスとは、安倍さん独自のものではない。その言葉の響きだけでなく中身を見ないといけない。アベノミクスは、経済が停滞したときに自国の通貨を発行できる国は通貨を発行するという、当たり前の経済政策をやっているだけだ。世の中に回っているお金が減り続けている状態を不況という。このようなときに、国は足りていないお金をみずから注ぎ足すことができる。例えば国が公共事業を発注して仕事を創出し、現場にお金を届ける。他にも、「政府調達」によってパトカーからオフィス家具、会議で使う鉛筆一本まで、さまざまな国内製品を国が買い上げることもできる。他にも、減税や給付金などで世の中にお金を回していくことができる。この当たり前の経済政策が、アベノミクスの「第二の矢」に入る予定だった。
アベノミクスの失敗とは、第一の矢はしっかりとやったのに、一番重要な第二の矢を放たず、大胆な底上げをやらなかったことだ。庶民には矢さえ飛んでいない。矢が刺さったのは経団連などのお得意様だけで、自分たちの票やカネに繋がる的にしか矢を飛ばさなかったことが間違いだった。だから金融緩和をやって財政出動をしたのに景気は良くならなかった。さらに第二の矢が足りていないにもかかわらず、消費税増税までやってしまったおかげで、社会からお金が間引かれた。
安倍さんの失敗は第二の矢を放たなかったことと、消費税を増税したことだ。彼の場合、財務省に借りがあったから仕方がない。森友学園で自分の嫁が学校経営者と仲が良く、国民の財産である国有地をタダ同然で差し上げていた。そして総理に忖度するためにさまざまな公文書が改ざんされ、最終的に財務省の職員が命を絶ってしまった。その背景に総理大臣がいて、改ざんに関して「総理のご意向」みたいなものがあったとなるともう政権崩壊だ。そういう意味で、財務省への借りを返すには消費税の増税をやるしかなかったのだろう。だがそんなことみなさんには関係ない。
質問 日銀の植田総裁が会見(4月26日)した後、また円安が加速して1㌦=158円になったことについてどう考えているか。
山本 円安になっている大元の理由は、日米の金利差、つまり景気の差だ。日本はゼロ金利のような状態を続けて、お金を借りたい人が借りやすい状態を創り出そうとしてきた。しかしそこに需要がないからお金を借りたい人は出てこない。世の中で物が売れないのに投資できない。需要自体が喚起されていないから、そこにお金が流れていかないのだ。
一方で、日本の政治の立ち振る舞いは、世界から見放され始めているのではないかと思っている。日本の今後の不穏な部分に対して、世界の投資家たちが不安を感じているのではないか。例えば、先日岸田首相が100%アメリカに対する「ウォシュレット外交」を展開した。「アメリカを一人にさせない」というケツ舐め発言はある意味、アメリカがおこなう戦争に日本も付いていくという宣言だった。それだけでなく、これまでの日本のあり方を180度変え、武器を共同開発して輸出しながらさらなる植民地としての役割を拡大させていくということが世界に伝わっている。その結果、日本政府の先行きの不安を汲みとっているはずだ。国内は放置して貧困化を進めれば、期待は薄れざるを得ない。だから今の円安は、日米の金利差という問題以上に、日本の政治が評価されたうえでの数字だというのが私たちの一つの見方だ。
国会で戦わぬ野党 「泥棒」議員がルール改変
質問 国会で数日前から政治資金規正法改正案をめぐる特別委員会が開かれている。立憲の蓮舫氏が岸田総理に追及していたが、結局ザル法になりそうな気がしてならない。詳しい説明が可能なら教えてほしい。
山本 資料を作っていないのでこの場でみなさんに詳しく説明することはできない。各党が案を出し、政治とカネをめぐるルールをどのように変えていくかというものを出している。例えば、企業からの献金の禁止や、パーティーの禁止などがある。このなかで、一番緩い規制内容になっているのが自民党だ。そもそも自民党議員の4分の1が裏金議員なのだから、その泥棒側から出されるルールが緩いのは当たり前だ。これこそ茶番だ。泥棒はさっさと辞職させるべきであり、ルールに関しての話はそれからだ。また、野党もその泥棒たちが考えた法改正を次々に通過させている。どういうつもりなのか。
一番効果的に止められる場面が、2月の衆議院の予算審議の場だった。いくら参議院でいろいろなことをいっても、30日で自然に成立してしまう。なので衆議院で徹底的に粘らなければならなかった。少なくとも「安倍派5人衆は全員辞職」を実現させない限り、予算なんて絶対に通さないということを野党が全体的にやる必要があった。そうなると、自民党側も呑まなければ仕方なくなるはずだ。だがそんなこともやらないばかりか、結局泥棒たちも救ってしまった。裏金議員であっても500万円以下は党内の処分さえなく、納税すらしなくてもいいという。世界広しといえど、泥棒と一緒に法改正をする国などあるだろうか。
質問 私は音楽を生業にしている。国立の音楽学校である東京藝術大学のピアノが財政難で売却しなければならなくなったり、国立科学博物館を維持するためにクラウドファンディングに頼るということがあった。とても恥ずかしいことだと思うが、れいわ新選組として文化や芸術に対してどのような政治的アプローチをしていくのか。
山本 そのニュースを知らなかったのでびっくりしている。今、国が大学に対してお金を出しているのは、先端技術のような分野や学部になっており、カネをすぐに生み出さないような学問は軽んじられている。だが、これまでノーベル賞を受賞してきた先生方は、モノになるかも分からない「ムダ」だとされてきたものをずっと研究し続けて結果を残している。だから基礎研究は非常に重要だ。それなのに国が学問の幅に色分けをして排除していく運用をするのは危険だ。学びたい人がいて、教える人もいる分野については今後も維持していけるだけのものを国が投入していかなければならない。「集中と選択」みたいなことを学問に持ち込んではならない。
この国は文化を軽んじている。アニメ等、「クールジャパン」などといって利用するときは利用するが、現場のアニメーターはあまりにも安い給料で限界だ。
2021年に文化庁の委託事業で、「一般社団法人芸術と創造」が主要国と日本の文化予算について調査をした。これによると、2021年度の日本の文化予算は1145億円で、日本、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランス、韓国の6カ国のうち、もっとも少なかった。1位のフランスは約5000億円、5位の韓国は約2300億円だ。日本だけ圧倒的に少なく、国家予算全体に占める文化予算の割合も0・11%で最低だった。古くから続く伝統的な文化を守ったり、新しい物を創造していくためのさまざまな活動を支援していくことができるのは、個人や民間ではなく、国だ。国が主体的にお金を出さなければできない。
質問 中国の強引な海洋進出が問題になり、対中包囲網なども形成されつつあるが、その点についてどう考えているか。
山本 どこかの国が強引に軍事的行動を進めることは絶対に止めなければならず牽制が必要だ。また、一国では対応することは難しいので、周辺国の当事者であるASEAN諸国とも協力しなければならない。また、そこにアメリカやNATOの面子が入り込むのは余計なお世話だと私は考える。私たちの地域のことは私たちで話し合って決める必要がある。
ASEAN諸国は、米中の緊張状態に対して牽制し続けてきた。アメリカ陣営に位置している韓国でさえ「どんな陣営に入っても、中国との協力は不可欠だ」と物申している。どの国においても中国とは切っても切れない関係であり、緊張をもたらすことはやめたいというのはどの国も同じだ。
自分たちの国としての意志をはっきりと持たないといけない。もうアメリカに付いていくような時代ではないし、それによって与えられる被害が大きすぎる。なぜならアメリカの基幹産業が軍需産業だからだ。戦争をし続けなければ経済が回らない。だからさまざまな作戦を通じていろいろな国々に戦争の火種をばらまいてきた。また、直接戦争をやらないにしても、武器やお金を送り続けている。ウクライナがまさにそうだが、アメリカの口から「戦争を終わらせよう」とは出てこない。その証拠に、23年度の決算では武器輸出額は過去最高だった。このように戦争特需を手放したくない国がアメリカだ。次の戦争を東アジアで始めることは絶対に止めなければならない。そして日本国民を本当の意味で守るために周辺国と手を繋いでいくことが一番重要だ。
次は議席2桁の中規模政党目指す
質問 2019年に旗揚げして8人の国会議員を輩出しているが、今後の見通しは?
山本 ぬるま湯の国会を一気に冷えさせるような緊張感を生み出すグループを作るしかないと思い、2019年の春に1人で旗揚げした。今は8人の国会議員がいるが、700人の国会議員のうちの8人だ。とはいえ、バックに宗教もいない。自民党は統一教会、公明党は創価学会と表裏一体であり、彼らは経団連のいいなりだ。だったら私たちは一般市民のみなさんをバックにつけていくのが一番強い。背景がはっきりしないので、私たちは今永田町のなかで一番警戒されている。全国の有象無象が力を合わせて勝ちとった8議席が、ここからさらに拡大するということは彼らにとっては悪夢だ。なぜなら選挙に興味がないと思われていた市民が、選挙のやり方を学び、今まで大企業や宗教、さまざまな組合のなかに閉じ込められてきた議席を獲得するためのノウハウを共有し始めたら、社会をひっくり返すきっかけになってしまうからだ。
一番直近の選挙の目標としては、まずは少なくとも二桁の議席が必要だ。二桁の議席があれば中規模政党の仲間入りをすることになる。
今、立憲民主党なら対総理大臣質疑がNHKのテレビ入りでの持ち時間が95分あり、その間総理を詰められる。予算の時期になったら、衆参合わせて2カ月間審議がおこなわれる。その期間中全部テレビ入りで総理を詰め続けられたら、政権交代できるに決まっている。それでも何もできないんだからよっぽど彼らはマヌケだ。
一方、私の今の持ち時間はわずか12分だ。なかなかこれでは難しい。ただ、中規模政党になれば持ち時間が24分以上に倍増する。閉ざされた国会での議論を続けることは事実上の「ブラックボックス」であり、みなさんが政治に興味を持てないような状況になっている。だが、テレビ入りの場合なら強制的にNHKが放送するので、偶然テレビを見た人たちがこの国の酷さを目にしたり、総理がいい加減な答弁をしていることを目にすることになる。
だからまずは数を増やして攻撃力を増やす。さらに野党のなかでも、例えば法案の提出のときに「れいわを巻き込まないと前に進めない」という状況をつくり出す。このように、人数を増やすことでさまざまな場面で無視できない勢力になっていく。
今は野党のなかでも「れいわは早く潰したい」という思いになっているようだ。例えば、ある委員会でとんでもない法案の審議がおこなわれたとしても、私たちは数が少ないからその委員会審議に入れない。だから私たちがその法案に対して意志を示すには、本会議場しかない。とんでもない悪法が通過しようとしているのに、粛々と採決を迎えていいわけがない。大変な審議がおこなわれているということを国民に気づいてもらうためにも粘らないといけない。だから私たちの議員はその場で、「与党も野党も茶番!」というプラカードを掲げた。その結果、懲罰を与えられて除名の一歩手前までいった。一般的には「またれいわがバカなことをやっている」と思われるかもしれないが、なぜそんなバカなことをやっているのか、その背景を調べてもらうための行動の一つでもある。そして、おかしな法案に対しては、国会が数カ月停滞しようとも体を張って止めないといけない。
質問 予算を3カ月も止めてしまったら国は終わってしまうのでは?
山本 予算は春にとるので関係ない。ちなみに、本予算を止めたとしても暫定予算というものが組める。だから心配しなくてもいい。悪いものはみんなで一緒に止めよう。そんなこともテレビから知らされない。学校でも習わないからみんなは知るよしもない。だから「国会でいわれていることは本当だ」「自民党の議員がテレビでこういっていた」と鵜呑みにしてしまう。そして家庭のなかでも友だち同士の間でも、政治の話をしたら空気を読めない奴扱いされてしまう。そんなこと自体がおかしい。
10代~30代の死ぬ原因の1位が自死だ。子どもから大人までこの国の未来が絶望に包まれているということがこの数字にあらわれている。なぜ戦争も紛争もないのに毎年2万人以上の人が死ななければならないのか。30年の不況をつくり出し、一部の者にしか金が流れない。この国を収奪して、草刈り場にして、コロナが来ても物価高が来ても人々を救わずに、自分たちだけは裏金を持って逃げる。おかしいに決まっている。「政治がおかしい」というあなたの感覚は絶対に間違っていない。だから絶対にそのまま手を離すことだけはしないでほしい。絶対に監視の目を緩めないで、一緒にひっくり返そう。政治が作った地獄は、政治で変えられる。政治によって決めたものは、政治によって覆せる。当たり前のルールだ。それをみんなでやろう。
この国の未来はあなたの手の中にある。雇われ店長ごときの時の総理大臣に好き勝手させてたまるか。踊り子の背後にいる振り付け師と対峙していくしかない。50%の人たちが投票を諦めているのなら、その力を結集してひっくり返していこう。あなたがこの国のオーナーなのだから。
(5月8日付)