れいわ新選組の山本太郎参議院議員は18日、参院内閣委員会でおこなわれた「セキュリティ・クリアランス法案」(漏洩すれば処罰される機密情報の範囲を経済分野に広げ、機密情報にアクセスする人の身辺調査を民間人に拡大する)の審議で質問に立った。この法案の立案動機として、アメリカが日本に押しつける政策命令書である年次改革要望書や「アーミテージ・ナイレポート」、それらとリンクする経団連の提言を時系列で整理し、これが日本の貧困化やアジアでの孤立を加速させる戦時体制づくりの一環であることを指摘した。以下、質疑要旨を紹介する。(図表は山本議員の質問資料から作成)
適正評価が必要な政治家は野放し? 粒揃いの政務三役
山本太郎 セキュリティ・クリアランス法の質疑に入る前に、本法案は非常に専門的でとっつきにくい。中学生が聞いてもわかるような答弁をどうか心がけていただきたい。私の理解が間違っていないかを確認したい。まず適性評価について。
大臣、重要な秘密を扱える人物か否かを判断するためにも適性評価が必要である。イエスかノーでお答えを。
高市経済安全保障担当大臣 調査の目的は、重要な情報を漏らす恐れがあるかないかということだ。
山本 すなわち重要な秘密を扱える人物か否か、漏らす人ではないことを確認していくためにも、この適性評価は非常に重要である、ということだと思う。
内閣府(に聞く)。大臣、副大臣、政務官、いわゆる政務三役は適性評価を受けなくて良い、除外の対象である。イエスかノーで。
彦谷内閣官房経済安全保障法制準備室次長 国務大臣、副大臣、政務官などについては、本法案11条1項において適性評価を受けることを要しないものとして規定されている。
山本 もう一つ。重要経済安保情報をとり扱うことがないと確定している省庁はあるか?
彦谷次長 「とり扱うことがない」と確定している行政機関はない。
山本 すべての省庁が秘密を扱う恐れがあり、それに関係するものには民間も含め身体検査(スクリーニング)、いわゆる適性検査が必要になるが、ただし政治家は除外。これは大丈夫なのか? 漏らす、おしゃべり、その頂(いただき)に君臨するのは、役人や民間人ではなく、政治家ではないか。ここ数年間を遡って見ても、政務三役で問題があったケースを探すと、あまりにもありすぎて、調べているこちらが音(ね)を上げた。やべぇ奴らが粒ぞろいだ。
たとえば経産省。小渕優子大臣。関連政治団体の不明朗な収支で辞任。ドリル、ハンマーで証拠を破壊、隠滅を図ろうとした本格的ハードコアな反社だ。適性検査ではなく逮捕が必要な案件だ。
他にも、東京電力株を600株保有して利益相反と批判された宮澤洋一大臣。SMバーの料金を政治活動費で支出。人の趣味にとやかくいうつもりはまったくないが、これはまずいのではないか。内閣府、このようなケースで女王様相手に秘密保持を貫き通せると考えるか?
飯田内閣府政策統括官 どのような形で定義されているかわからないのでお答えしかねる。
山本 どういう定義もこういう定義もない。政治家、政務三役は適性評価なしというが、過去の政務三役を見たら、とてつもない粒ぞろいの方々が大勢いらっしゃる。その中には、政治活動費でSMバーに遊びに行っていた人もいる。SMバーと考えた場合には、女王様がいらっしゃって、女王様のいうことは絶対。女王様に馬乗りになられて秘密を漏らせといわれたら、秘密漏らしてしまうでしょ? ということだ。こういうケースでは秘密を貫き通せると考えるかと伺ったが、おそらくなかなか答えづらいということだと思う。女王様から厳しく要求されれば、情報を大量にお漏らし。その可能性は十分にある。だって女王様には逆らえないのだから。
他にも、宮澤大臣が代表を務めていた政党支部が寄付を受けていた企業。その株式の過半数を所有するのが外国人であった問題も浮上。全額返金。女王様への忠誠は絶対、でも支払いは政治活動としてちゃっかり支出。それ以外も含めてカネに対する執着は最高レベルだ。これは適性検査必要なのではないか?
他にも、中川俊直政務官。女性問題で辞任。基本的に不倫とか恋愛関係というのは直接国民には被害はない。究極的には個人的な問題であって、お互いの家庭を巻き込んでおおいに揉めていただければ結構なのだが、一つ問題がある。これはピロートークで情報漏洩というリスクがある。
他にも、初入閣から40日余りで菅原一秀大臣が辞任。カニやメロンなどを有権者に配ったお中元・お歳暮おじさんだ。普通に有権者買収だ。
山際大志郎大臣は、統一教会トップの韓鶴子さんと接触したことを「記憶がおぼつかない」と逃げまくったけれども事実上の更迭。
裏金問題では、西村康稔大臣、そして副大臣が辞任。
経産省のほんの一角を紹介しただけだが、これほどの豪華ラインナップだ。経産省の政務三役は本法案の適性評価の除外対象であるか?
彦谷次長 対象外だ。
山本 日本国を弱体化する目的で家族を破壊、カネと人生を奪い、自民党議員を中心に教団の駒にして永田町に入り込んだカルト統一教会。関連があった政務三役は、少なくとも第2次岸田改造内閣以降、1府13省庁に79人。
還付金といい換えても無理。ただのネコババ、普通に泥棒だから。裏金に絡む政務三役は1府9省庁で12人。全省庁の政務三役は本法案の適性評価の除外対象か?
彦谷次長 対象外だ。
山本 一番やばい政治家という生き物を野放しにして、スクリーニングもなし。一体どんなレベルの秘密法を作ろうとしているのか。穴だらけではなく、穴そのもの。それが本法案だと、この一点だけ見てもわかる。そういう話だと思う。
この件に関してはここまでだが、この先、本法案の審議は複数回に及ぶので、初回の今回は少し大きな視点からお話しさせていただきたい。
米国に忠実国内は衰退 日米資本家の合わせ技
山本 大臣、政治とは、国民の利益を第一に考え、おこなわれるべきものと考えるか?
高市大臣 国家国民の利益の最大化が使命だと思う。
山本 私も同じ考えだ。日本政府には国民よりも優先しなければならない特別大きな三つのしがらみがある。経団連、米国などのグローバル企業、そして米軍だ。
これら圧力団体は、年次改革要望書、アーミテージ・ナイレポート、経団連による提言などの形で日本政府にたびたび政策変更を迫る。
日本政府は、見事忠実にその要望を実現。要望・提言といっても、断ることのできない事実上の命令だ。時間がかかったとしても必ず実現しているのだから。
年次改革要望書とは、過去毎年アメリカが日本に突きつけた要望。1993年、クリントン―宮澤会談で決定。94年から自民党が下野する前年の2008年まで続いた。この要望が出されると、日本がアメリカに対して中間報告を提出。どの程度目標が達成されたかについて報告する。非常に厳しく植民地の仕事を進捗管理するシステムだ。
たとえば1997年要望書では、日本の大規模店舗出店規制を批判。大店法の改正を求めた。それに対し、日本政府は2000年、大規模小売店舗立地法により、大型スーパーマーケットの出店規制を緩和。郊外型の巨大ショッピングセンターが急増。その後、全国の多くの商店街がシャッター通りに。皆さんのご地元もそうなっていないだろうか?
2004年要望書では、商法の改定を要求。日本政府は2007年、会社法改正により、三角合併、外国企業が日本に子会社を作り、その子会社を媒介して日本企業を買収する方法が解禁。これによりシティグループが日興コーディアルグループを完全子会社化。
年次改革要望書、経団連提言、アーミテージ・ナイレポートなど一見別々の主体に見えるこれら圧力団体たちは、共通する利害には力を合わせて目標を達成するために力を尽くす。
たとえば当初13業務に限定されていた労働者派遣法。経団連の前身である日経連が1995年、「新時代の『日本的経営』」で非正規労働拡大への方針を示した後、1996年、アメリカの年次改革要望書では労働者派遣規制の緩和を求めた。その本文では、外国企業に労働力を提供できるよう派遣規制を緩和せよ、派遣業者への制限を撤廃せよと要求。
1999年には派遣法改正で、対象業務を原則自由化。2003年改正では、製造業まで派遣解禁。その結果、雇用は流動化し、2008年には派遣労働者が200万人を突破した。
その後、日本国内は非正規が増加し、格差も拡大。不安定労働が増えれば、賃金自体が上がらない【図①】。その構造を日米資本家の合わせ技で前に進めてきたともいえる。いまや国民の6・5人に1人が貧困。そんな日本に成り下がった。
2004年の年次改革要望書では、郵政民営化を要求。日本政府は2005年に郵政民営化。一時、日本の国債発行額505兆円のうち33%にあたる日本郵政公社保有額166兆円が外資に握られる危機に。
この米国資本のための年次改革要望書は、2008年に自民党が下野すると、形の上では終了。それにより資本家たちは日本政府への強烈な圧力ルートを一つ失ったのか? 否、別の形で日本政府に対する経済面、軍事面での要望は出され続け、確実に実行される。それがアーミテージ・ナイレポートだ。
憲法改正や武器輸出も 要求実現に動く政府
山本 郵政民営化の実現が2005年。その5年前から年次改革要望書よりも先に、外国企業に市場を開放しろ、公共事業を減らせと圧力をかけてきたのが、アーミテージ・ナイレポートだ。
ちなみにその後、公共事業が激減。この時期の前後10年を見れば、公共事業を含む公的固定資本形成(政府がおこなう社会資本整備などへの公共投資)が10年でほぼ半減している。21兆円の減少だ。
建築・土木の分野は、皆さんご存じの通り、乗数効果がもっとも高い分野だ。つまり政府が支出したさい、社会にお金が回る効果がもっとも高い。この予算を10年で半減させれば、当然景気も悪くなり、不況になる。建設事業者は1999年には60万社あったが、2012年に約47万社に減少。13年間で13万社が潰れた。今や日本各地で地震や豪雨が起きても、対応できる地方の建設関係業者は激減している。生活復旧できずに被災者が苦しむ原因の一つを作り出したともいえる案件だ。
公共事業を減らせといった内政干渉、ゴミのような提言で、日本の衰退のために積極的に提言するのもアーミテージ・ナイレポートの特徴だ。
大臣、この方【図②】をご存じか?
高市大臣 アーミテージ(元米国務副長官)さんだ。
山本 彼がテレビ出演したさいの画面を資料にしたのだが、「憲法9条が非常に邪魔である」という趣旨の発言をされている。ここからもわかるように、超タカ派のグローバリスト的観点から日本に提言をされ続けている方だ。首相官邸にご挨拶に来られるほど日本の政治家たちとも近い。この方々が書いたアーミテージ・ナイレポートは、民間シンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)が発行主体だ。
2000年の第1次レポートから、2007年に第2次、2012年に第3次、2018年に第4次、2020年に第5次、そして今年2024年の第6次レポートに至るまで、コンスタントに日本政府へ要求を突きつけている。もちろんこれらは時間をかけても確実に日本政府によって実行される。
とくに第2次安倍政権以降のアーミテージ・ナイレポートに対する忠実な実行ぶりは目を見張るものがある。しかも経団連の提言と重なる、リンクさせているともいえる点に注目いただきたい【表参照=質問資料から本紙作成】。
2000年の第1次レポートでは、自衛隊の海外派遣拡大を強く求めている。その後、日本政府は2001年、米英のアフガニスタン攻撃でインド洋に初の戦時派遣。いわゆる「ショー・ザ・フラッグ」。2004年、人道支援・復興という体でイラクに初の戦地派遣。いわゆる「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」。着実にレポートの要求に応え続けている。
当時、取材を受けた自民党政調幹部も「ここ数年の動きはアーミテージ・レポート通りになっている」と認めるほど。その後もPKO法改正で自衛隊の海外活動は着実に拡大している。
第1次レポートから彼らがくり返し要求している項目は「武器輸出規制の緩和」だ。時期を同じくして日本の経団連もくり返し、しつこく武器輸出解禁を要求。日米安保フォーラム2002年の共同宣言で、「日本の武器輸出管理が厳しすぎる」と指摘。
経団連提言(2004年)では、武器輸出3原則見直しを要望。2010年の提言でも再要望。「武器で商売させろ、輸出させろ」と。これらの日米資本家による提携により、武器輸出3原則の撤廃などがより着実に履行されてきた。しかも、この命令を受けて動くのは自民党だけではない。
2011年12月、民主党政権での官房長官談話見直しから始まり、政権交代で(自民党に)バトンが渡り、安倍政権で徐々に解禁を実行。岸田政権で本格化する。
民主や立憲を名乗る政党が、ここ数年のきな臭い法案に反対しない理由は、古巣からの流れに忠実なだけだ。まさに超党派による見事な連携プレーが武器輸出緩和だ。
2000年から2012年まで3度のアーミテージ・ナイレポートでくり返しのべているのが、「集団的自衛権が行使できないのが日米同盟にとって障害だ」「安保理常任理事国入りをしたければ、フルスペックの自衛権を行使できるようになれ」という要求だ。
一方、経団連も2005年以降、くり返し憲法改正と集団的自衛権を要求。たとえば中国がアメリカを攻撃した場合、日本は直接攻撃されていなくても中国を攻撃することが可能。ただし日本から直接攻撃を受けた国は日本から先制攻撃を受けたことになり、当然戦争に発展するリスクは増大する。これを可能にするためには憲法改正がもちろん必要になる。
だからこそ経団連は順序を追って要求していたが、自民党は解釈改憲という詐欺的手法での集団的自衛権の容認を数の力で勝ちとった。
なぜ経済団体が憲法改正や集団的自衛権を求めるのか? 軍事がビジネスで、それを拡大するためだ。武器を作る、売る、使う。このサイクルを完成させるためだ。
これは軍事が基幹産業で戦争をくり返すアメリカやグローバル企業とも利害が一致している。他国と共同で武器を開発し、それを日本政府にも買わせ、外国にも売る。俺たちにも軍事でもうけさせろという経団連の要求。そして、共同開発での日本側の出資も増やして米国の多方面における戦争展開、戦争ビジネスに必須な武器製造・供給の強化を、ライセンスを売りつけ、日本国内を工場化する。米中の直接対峙を避けるためにも最前線の防波堤、捨て石として日本を機能させようと考え、軍事ビジネスの欲望をたぎらせる、経団連と軍産複合体の要望や提言での見事な連係プレーには本当に脱帽する。
緊張が高まれば株価が上がり、戦争が始まればさらに株価が上がる。そして武器も売れる。
そして日本の軍事費を増やさせるという目標。
2007年の第2次レポートでは、「防衛費が少なすぎる」と注文をつけ、18年の第4次レポートでは「GDP比1%をこえろ」と具体的に指示。安倍首相は2017年に「GDP1%以内に(防衛費を)抑える考えはない」と宣言。岸田首相は2022年、GDP2%にする方針を明言した。
武器の共同開発も、2018年第4次、2020年第5次レポートでくり返し要求され、売国優等生・岸田総理は満額回答。先日の日米首脳会談で、防衛装備品の共同開発・生産・維持整備に関する「日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議」(DICAS)を創設。ミサイル開発などに向けて議論する方針を示した。
これまでのアーミテージ・ナイレポートの実現状況を見ると、アメリカや米軍需産業にとって重要な政策はくり返し要求され、必ず実現していることがわかる。
外交強化こそ安全保障 アジアと敵対ではなく
山本 本法案の話に戻る。大臣、これはアメリカからの指示ではないか? という意見が聞かれることもあるが、そうなのか? 一言で。
高市大臣 そうではない。日本国のための日本国による情報保全制度だ。
山本 くり返し求められてきた重要項目がもう一つある。2018年の第4次レポートでは「日本は早急にファイブアイズへの参加が実現するために必要なセキュリティ保護策を採用しなければならない」。2020年、第5次レポートでは「合衆国と日本はシックスアイズ・ネットワークの形成に向けて真剣に努力しなければならない」。
アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド5カ国による機密情報共有の枠組み「ファイブアイズ」に日本も参加させてやるから重要情報保護の制度をしっかり作れと、当然アメリカ様からの命令だ。日本政府岸田も応じないわけにはいかないと、自民党は昨年3月、ファイブアイズの情報保全制度を意識したセキュリティ・クリアランス法案を提言。そして本国会で法案提出し、今審議をしているところだ。
「日本のために必要だ」ということなのだが、その必要な理由が何なのかということによって見解が変わってくるのではないかと思う。これまで散々日本を草刈り場として差し出してきた。国民を貧困化させたうえに最後の草刈り場としてまた差し出そうとしている姿に多くの国会議員の方々はもちろん気づいていらっしゃるだろう。
この風刺画【図③】は、日露戦争時の日英同盟を皮肉ったものだ。イギリス紳士が子どもの日本に対して「ロシアのコサックに独り占めされる前に火中の栗を取れ」とけしかけている。イギリスはアジアで勢力を伸ばすロシアと正面対決せずに日本とロシアを戦わせて、後はいいとこ取りをするという算段なのだ。
けしかける紳士をアメリカに、火鉢の前にいる者を中国に置き換えれば、現在の東アジアに重なる。もちろん中国だけでなくロシアも入っているのかもしれない。
衆議院の議論などを見ていても、ファイブアイズだの、シックスアイズだのに期待している人たちが結構いらっしゃったので私は恐怖したのだが、ある意味での名誉白人になりたい、肩を並べたい願望からウクライナまで爪を伸ばして、西側諸国という高級クラブの会員になりたい願望から事実上オワコンの国々のパシリとして、どう日本を輝かせるつもりなのか? と思う。どこまで行っても植民地は植民地だ。アメリカが求めているのはそういう日本だ。もちろん甘い言葉でさまざまなことはいわれるだろう。「国連常任理事国入りしたければあれをやれ」とか。アーミテージ・ナイレポートにもあるように、ファイブアイズ、シックスアイズだといわれるが、本気で向こうはそんなことを考えているのか? ということだ。
ここ最近悪化したアジア情勢を力を合わせて乗り切るという“おとぎ話”が通用するのは、ほとんどの人たちが日本語しかできないという、ある意味で情報から遮断された日本国民だけではないか。アメリカという名の帝国、グローバリストの親玉国家は、なんとなくや思いつきで国は動かさない。
戦後アメリカは一貫して日本の軍事力を指揮下に置いてアメリカの世界戦略に利用することを考えてきた。過去の公文書には「世界戦争では日本の軍事力がアメリカの勝利には必要」とある。アメリカは自国の覇権、帝国の拡大のために手段を選ばない。ずっと戦争をし続けているのだから。
過去の密約で有事に自衛隊が米軍の指揮下に入ることは決まっている。「そうじゃない」と国会でも何度も言い訳をしているが、もう決まっている。ごまかすのはやめにしてほしい。
米国務省が公開している公文書。1954年2月8日、アリソン大使と吉田茂首相の会談報告では、「有事のさいに日本における軍事力を使用し、最高司令官は米国の大将(ジェネラル)となることについて日本政府の意図を再確認した。吉田は、現時点ではこのことは機密扱いとするが、この点について確約することに躊躇はないと説明した」とある。この会談後、半年もたたずに自衛隊を創設。協議するという建前だけで、自衛隊を米国の支配下に置くこの仕組みは、岸信介首相が「新安保」へ引き継いだ。中曽根いわく「不沈空母」。時は流れて、岸田いわく「米国は一人じゃない」「米国とともに」。恥ずかしげもなく宗主国に宣言しているのだ。
ウクライナでの戦争も、パレスチナでの虐殺も、本気になればいつでも休戦にできる、戦争を止めることができる力をアメリカは持っているはずだ。でも本気を出さない。自国民だけは死なせずに武器だけを提供し続ける。これは「オフショア・バランシング」ではないか。戦争特需は維持できるという話だ。だから終わらせない。当然、アメリカの23年度武器輸出額は過去最高だ。
長い歴史のなかでやりとりされてきた大きな流れのなかで、このような法案が出されていることも知ってか知らずか、賛成してしまっている、事実上国内の武器製造施設の国有化を目指し、「支援名目」とうそぶき、他国にも武器を供給する――そんな法案にも野党第一党は賛成しているが、本法案に関しては参議院野党第一党の先生方は「違う」と見せていただきたい。この流れに乗らないでいただきたい。止めていただきたい。一旦立ち止まろう。話はそこからだ。
この国の自主独立ということは、非常に重要であると私は思っている。残念ながら今の日本は植民地。私はそう考えている。大臣はこの国が植民地だと思われるか?
高市大臣 主権国家だ。
山本 もちろん主権国家という体をしている。では、どうして北方領土が返ってこない? 北方領土を返した後、そこに米軍が置かれることを懸念したロシア側が返さない。それに対して、米軍に基地を置かせない、訓練区域を広げさせないという約束を米軍にさせろというが、日本側はそれはできないといった。だから返ってこない。自分の国の国土に対して、そんなことさえもアメリカにいえないような国が主権国家であるわけがない。植民地だ。
なぜ米国内で許されていないような訓練が日本国内で可能になるのか? 超低空飛行などさまざまなことがだ。それは植民地だからだ。この状況において、オワコンの西側諸国と一緒にこの先心中するみたいな考え方はやめていただきたい。
もちろん外交だからバランスをとる必要があることはわかる。西側諸国とも仲良くすればいいし、それ以外の国々、なによりもアジアと力を合わせていかなければ話にならない。どっちかに賭ける話ではない。それを今、西側諸国、NATO諸国、G7に集中的に力を入れていくというのは、この国の安全保障を脅かすものになると思う。
この経済安全保障という部分において、このような制度を作っていくことは、何かしら脅威となる国々があらわれたときのために、日本が調達しているさまざまな重要物資について、日本の基盤を守ることも大事だし、対立する国からの供給が途絶えたら危険だから調達先を複数に広げていくという考え方は当然だとは思う。でも、やはり一番は今までやっていない外交を厚くしていくしかない。アジア外交を。
今現在、ファイブアイズ、G7というところとより強く寄り添っていくという形になっているが、踏み込んだ話ではあるが、そこに仮想敵国みたいなものがあるのか?何かしら私たちの経済基盤を揺るがす者、侵害する者があるという前提でこういう法案が作られているのだと思うが。
高市大臣 日本の安全保障は、特定の国を念頭に置いたものではないということになっている。
山本 建前上はそうだと思う。だが、間違いなくアメリカによる中国に対する締め付けの一環でさまざまなことが展開されている。対中国ということに関して新たな法律、仕組みが敷かれていっている状況だろうと思う。
でも一つ皆さんに考えていただきたいのは、敵国条項(第二次世界大戦中に連合国の敵国であった国に対する措置を規定した国連憲章の文言)だ。敵国条項は死文化などしていない。だから削除しなければいけないということになっている。
最後に大臣、所管とは違うと思うが、敵国条項が削除されない限りは、私はアジアでの平和、経済は守れないと思う。これを削除させることは必要だと思うか?
高市大臣 所管外で、お答えするわけにはいかない。
山本 経済は外交とも繋がっている問題だ。それを考えるならば、今の問題に関してもお答えいただきたい。これは次回に繋ぎたい。
政治で山本さんほど日本の本質的歴史的構造問題に迫っている人を知らない。れいわ新撰組を文字どおり野党第一とう、ゆくゆくはこの国の舵取りを、この国が滅びる前に、是非とも実現させたい。
アメリカは、言うなれば未だに「帝国」であり、周縁国の日本などから搾れるだけで搾ろうとする姿勢は変わっていない。また、その姿勢は、アメリカの政治的経済的利益の障害である台頭する中国などの国々と軍事的衝突を引き起こすが、その時も、自らの被害は最小限にすることを目論む。代理戦争の色彩が濃いロシア・ウクライナ戦争もその事例であり、そのウクライナの役割を日本にも課そうとしている。そういった背景が、「機密保護法案」にはあると言える。その意味で、山本太郎の指摘は、極めて的確かつ適正である。