全国各都市でおしゃべり会と街頭での増税反対デモをくり広げているれいわ新選組は22日に岐阜市、23日に大阪市、24日に西宮市でおしゃべり会とデモをおこなった。山本太郎代表に加え、関西では大石晃子衆議院議員も参加者との議論に参加した。岐阜市でのおしゃべり会では、ロスジェネ問題、少子化、非正規雇用、消費税など、30年間誤り続けてきた日本の経済政策の下で表面化している問題についての質問が集中した。各地のおしゃべり会での議論の要旨を紹介する。
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質問(大阪) 40年間政治に無知で、今もれいわ新選組を完全に支持しているわけではなく疑問もたくさんある。デモ活動をどのような意図でやっているのか。
山本 この社会に、今の政治が腐っているということを伝えるメディアが少ないなかで世の中を変えるにはメディアを頼ることはできない。メディアは大企業がスポンサーについており、大企業に不都合な情報は大々的に流さない。
デモの目的は、政治のことに対してみんなで声を上げていこうということだ。空気を読んで政治の話は避けられがちだが、それで喜ぶのは国を30年間食い物にし続け、みんなを貧乏にして金持ちになった一握りの大企業や政治家だ。彼らにとっては「政治のことに口出しするのは空気が読めないやつだ」という社会は大歓迎だ。議論もせずネットに流れてきた一文だけを見て世の中を判断するような人が増えれば増えるほど彼らは万々歳だ。
「俺はこの国の株主だ」といううるさい人が増えれば増えるほど、彼らは悪いことをやりづらくなり、人々から収奪することができなくなる。だからこそ目を光らせなければならず、そのハードルを下げるためには声に出して政治のことを語ってもらうことが必要だ。そうはいっても、政治のテーマは幅が広すぎる。多くの人が圧倒的に一番興味があるテーマであるのは、「お金」「経済」だ。今、減税を求めて実現すれば自分の暮らしが楽になり、使えるお金が増える。みんなが声に出しやすい政治的テーマを、街の中に人々を引っ張り出してやられるのは統治側からするとものすごく嫌なはずだ。彼らはみんなが政治について考える何かしらのきっかけを提供されることはものすごく嫌う。
支持者の方のなかにも、「意味がない」という人もいるだろう。いろいろな人の意見を聞きながらやっていくことは必要だが、全員の意見を聞いてミックスして調整して前に進むのがれいわ新選組であるならば、もう消滅している。やっていることが奇抜だといわれることもあるが、人々が政治に変化を求めるうえで、デモはずっと昔からやられてきた戦術だ。
物価だけうなぎ上り 増税と低賃金の悪循環
質問(岐阜) 昨年まで自民党の支持者だったが、定年退職して山本代表のユーチューブを見て感動し、れいわ新選組を支持しようかなという思いで愛知県から来た。今の税金のとり方はおかしい。給料から社会保険料を含め、2割以上が給料から天引きされるのはあり得ない。だが、積極財政に頼りすぎると、不労所得に頼るいわゆる「怠け者」が増えるのではないか。
山本 私たちが訴えている政策の一番大きな柱は経済だ。30年も日本は不況であり、先進国のなかでそのような国はない。不況が来た場合は国がしっかりとお金を注ぎ足し、一刻も早く不況から脱出させなければならない。国に対して「さっさと経済政策をやれ」といっているのが私たちだ。
本格的なデフレに突入した1997年と2022年の日本の実質賃金を他の先進国と比較すると、日本は物価が上がり続けるなか実質賃金は下がり続けているが、日本以外の国は賃金が上がり続けている。
物価が上がっているのは最近の話ではない。これまでも消費税増税のタイミングで強制的に物価が上げられてきた。物価が上がるなか賃金が上がらなければみんなの首が絞まる。
1994~2019年の25年間の不況で、所得の中央値は約131万円低下した。また、2019年の厚労省の調べでは全世帯の54・4%、母子世帯の86・7%が「生活が苦しい」と答えている。そこにコロナと物価高が来たのが今だ。それなのに社会保険料などは上がっている。さらに中小企業はコロナの時のゼロゼロ融資等借り入れの返済が始まっており、このままでは倒れてしまう。だからこそ大胆な経済政策が必要だ。
今、「賃金が上がる」と宣伝されているが、賃金が上がっても物価上昇を上回るほどではない所もあるし、そもそも上げられないという所もある。だからこそ国による減税、社会保険料の減免、給付金が必要だ。
このような政策を打つことで働かなくていいという人たちが増えるのではないかとの懸念もあるが、私は心配していない。社会にはそのような人もいるかもしれないが、多くはそうではない。働くということは生活の糧を手にするためだけではなく、社会や人と繋がるということをプラスの方向で人々にもたらしてくれるものだと私は思っている。
また、いくら減税され、社会保険料が減免され給付金が出たとしても、働くのをやめられるほどのお金は手に入らない。とはいえ今よりも年間数十万円使えるお金が増えたら、一部は貯金したとしても生活するうえで今足りていないものを買うはずだ。それが重要だ。あなたの消費は誰かの所得になる。この循環を大きくしていかなければならない。
質問(岐阜) 岸田総理は「増税メガネ」と呼ばれているが、なぜ減税ができないのか。
山本 景気が悪いのに減税をしない理由は、訳が分かっていないか、何か意図があるかのどちらかしかない。どちらにせよみんなにとっては最悪だ。早く辞めてもらうしかないが、岸田首相が辞めても同じことだ。問題は自民党にあり、野党のなかにもある。直近で起きた物価高に対応するだけでは、本当の問題に照準が合わない。日本は国民の6・5人に1人が貧困であり、先進国のなかでトップだ。この状況に政治家が責任を感じ、この国を立て直すという大きなビジョンに向かって政策をうたなければならない。
質問(岐阜) 同一労働同一賃金や、非正規雇用の問題についての説明やとりくみを教えてほしい。
山本 1990年代から非正規雇用が増えるなかで、実質賃金は下がり続けている。収入が減ってみんながお金を使えなくなると消費が減る。消費が減ればみんなの所得も減る。企業にとって人件費がかかる労働者はコストだ。だからこそ不安定な働き方を増やして安く雇える仕組みを増やしていった。最初の頃は、期間工のような働き方でも高い給料がもらえた時期もあったが、そんな時代は一瞬で終わり、ただ切り捨てやすい仕事へと変わってしまった。コロナのときに最初に首を切られたのは非正規や派遣労働者だ。
不安定な働き方であるなら、当然賃金を上げなければならない。また、仕事を辞めるときにその受け皿として社会保障を手厚くすることも必要だ。その仕事を失ったら終わりで、最後の蜘蛛の糸にしがみつくような気持ちで自分自身を使い潰すような職場に身を投じて、結局潰されてしまえば社会復帰などできずとり返しがつかなくなる。そんな形で壊されてきた人たちが山ほどいる。だからこそ、たとえその仕事を失っても大丈夫というベースを作らないといけない。
常に働く側が主導権を握れるようにしなければ、資本家が社会をコントロールする今のような社会がより強化されていってしまう。
質問(岐阜) 非正規雇用を無くし、正規雇用を増やすことは可能なのか。
山本 安い労働者を手に入れることによって、大資本や大企業がコストカットを進めてきた。これは税制のなかにも組み込まれている。例えば消費税には「仕入税額控除」というものがある。正社員で雇用した場合、そこにかかる消費税額は控除されないが、派遣労働者は「物品」扱いになるので、そこにかかる消費税を控除できる。つまり消費税を安く納めるために、経営者たちは正規雇用を派遣に置き換えてきた。逆にいえば、この制度が不安定労働をどんどん後押ししている。こうした仕組みをなくしていくことも必要だ。
また、私たちは公務員をもっと増やすべきだと考えている。日本の1万人当りの公務員数は264人で、先進国のなかでは圧倒的に少ない。仕事がないから地元からどんどん人が流出するという問題もあるなかで、安定した仕事を創出し、安定した所得があれば、その地域にお金が回る。少子化対策や住民サービスだけでなく、経済のためにも必要なことだ。そして災害時にサポートできる人員を増やすという意味でも必要だ。
ロスジェネの逆襲を 氷河期世代にのしかかる介護問題
質問(岐阜) 自分は、ロスジェネ・就職氷河期世代だ。24歳のときに非正規になってからずっと非正規のまま働いてきた。政治家のなかにこの問題について問題意識を持っている人がどれくらいいるのか。
山本 だいたい30代半ばから50代前半の人たちのことを「ロストジェネレーション(失われた世代)」と呼ぶ。
私も国会で何度も質問してきた。先ほど、この25年間で所得の中央値が平均131万円下がったと話したが、ロスジェネに限っては131万円では済まない。一番打撃が大きかったのが45~54歳で、175万円下がっている。つまり「一番安く使える世代」で、1997年以降日本が本格的な経済不況に突入した頃に社会に出て行った世代だ。大学を卒業しても就職先が見つからない。仕事がなく、大学を出ても初職がバイトで、そこから正社員になるにも大変で、いきなり非正規というケースもある。そして世の中が上向いてきた頃にはその時期の新卒が優先して採用され、どんどん自分が「古く」なっていく。また、スキルアップしようにも経済的、時間的に余裕が持てないのがロスジェネだ。
この世代は団塊の世代に次ぐ大きな人口のボリュームゾーンであり、この世代を支えないとその先は少子化になる。しかし国はこの世代に対してしっかりと支えずに無視し、自分たちと繋がりのある企業などに金を流してきた。それでいて今になって「人口減少が問題だ」などといっているが、自分たちが今の状況を作ったのだ。
25~44歳の単身世帯の所得レベルについて見てみると、1994年は所得500万円台の世帯がもっとも多かった。だが2019年になると、所得300万円台の世帯がもっとも多い。ものすごい減り具合だが、日本の経済の崩壊をそのままあらわしている。
40代後半の未婚率については、1990年は男性6・8%、女性4・6%だったが2020年は男性29・9%、女性19・2%が未婚だ。経済的な理由から1人でしか生きていけないという人たちが圧倒的に増えている。また、「老後が心配」という40代の割合は、単身世帯で85・2%、2人世帯以上で85・8%だ。50代では、単身世帯87・7%、2人以上世帯で82・3%だ。
そして、このロスジェネ世代のなかでも第1世代と呼ばれる50代は親の介護が始まっており、これから40代でもどんどん増えてくる。就職氷河期世代で親の介護をする人の数は、2023年は75万人(4・4%)だが、10年後には200万人(11・8%)に増えるといわれている。
働き盛りの年齢層が、1人生きるのに精一杯でさらに親の介護も加われば、この先さらに貧困化していくのは目に見えている。そしてこの人たちも高齢化していく。そのときにどんな日本になっているだろうか。地獄だ。私はこのままでは普通に道端で人が死んでいるなんてこともありえると思っている。だからこそ今手を打たなければならない。
先日、氷河期世代にかかわる問題について国会で質疑をおこなった後、自分の席に戻るときに自民党の席から「いい質疑だった」といってくれる人もいた。年寄り政治家たちは、まったく関心がないが、年代が近い政治家のなかには問題意識を持っている人もいる。ただ、その問題を国会のなかでもっと大きくとりあげていくべきだと私は思っている。そのようなムーブメントを起こしていくには、今疲れ切ってしまっている人たちも含めて、氷河期世代が力を合わせて政治を動かしていかなければならない。れいわ新選組を支えてくれている人たちのなかには、ロスジェネ世代がとても多い。ロスジェネの逆襲劇をここから起こしていきたい。これから日本を支えていくまさに中核の人たちをしっかりと支えないと日本の未来が大変なことになる。これはとても大きなテーマだ。
質問(岐阜) 少子化対策について意見を聞かせてほしい。
山本 少子化が大問題といいながら、教育を受けるのに借金を背負わなければならないのがこの国だ。大学生の2人に1人が奨学金という借金を背負って、そのうちの多くが利息まで払っている。これではより少子化が進んでしまう。国に「少子化を是正しよう」などという気はない。
少子化対策について、れいわは3つの政策を持っている。
1、教育無償化によって本人やその家族に負担がかからないようにする。日本でそれをやるには5兆円必要だが、これで大学院卒業まで無償化できるならやればいい。学びたい人をサポートし、学問を深めた大人が日本社会の形成に関わっていくことを担保する必要がある。
2、住まいの問題。絶対に失わない住処を手に入れることができるようにする。つまり公的な住宅が必要だ。住所がなければ就職もできない。何があっても失わないものとして「家」を基本にすべきだ。新築でどんどん建てるという話ではなく、国が空き家や空きアパート・マンションなどを安く借り上げることも必要だ。
3、所得が少ない者に対する給付。1人で生きていくのに精一杯の状況で家族はつくれない。
私たちは少子化対策としてこれらを実行すべきだと考えている。
公費は復興に注げ 被災地放置し大阪万博
質問(西宮) 大阪万博に反対したい。
山本 ぜひ大石晃子(衆議院議員)と行動を共にしてほしい。維新を倒すことに人生をかけている。万博やカジノといったデタラメなものは、それによってお金がもうかる一部の資本家のためのものだ。カジノなんて外国の資本家のためにやるものであり、そのために大阪の市民が収奪されることを前に進めようとしているのが維新だ。維新を倒すのは今日明日では難しいかもしれないが、人々の力を集めないといけない。維新をスターダムにおし上げたのもまた維新に賛同した人々の力だ。だがそこに対抗する勢力として対極にいるれいわをおし上げていくことは理に適っているはずだ。「新自由主義」vs「人々第一主義」の一騎打ちができる将来を目指して、まずは目の前の万博を止めるためにぜひ行動を共にしてもらいたい。
質問(大阪) 災害が起こったさいに周辺自治体から物資を集めることはできないのか。
山本 おそらく都道府県あるいは大きな市町など自治体では、災害協定のようなものを結んでいて、物資を調達できるということはあると思う。一方で、国が災害救助法に則ってプッシュ型で必要な物を届けるという仕組みもある。より物資が集まりやすいように周辺自治体によって補完できないかという質問だったが、国がノーマークだった能登半島であのような甚大な地震被害が出ており、どこが災害にあうか分からない状態だ。そのことを考えると、災害に対して、自分たちでも他の所でもすぐに使える体制を整えることは非常に重要だ。今回の災害ではトレーラートイレを持っている自治体が貸し出しをしたりしていた。何かあったときのために防災の観点からさまざまな日用品を備蓄し、そのために必要な場所と物は国がきちんとお金を出すということがこの先必要だ。
質問(大阪) 能登にボランティアに行った人が、一番の問題は下水だといっていた。
山本 上下水をやりなおさなければならない状態だ。先日、私と高井幹事長、大石議員の3人で被災地に行った。その時にも上下水の問題が話に出ていた。
大石 珠洲市では、当時上水がほとんど断水状態でメドが立たず、下水も下水処理場が止まっていた。役所に聞きに行くと、下水処理場に届くまでの下水管の被害がどうなっているかの調査中だった。必要な下水管の1割しか調査できていない段階だったが、調査したうちの九割が被災しているということだった。おそらく市内全体が同じように被災しているだろう。下水処理場は3月中に機能が回復するということだったが、下水管がまだ調査も進んでいないので復旧はだいぶ先になるだろうということだ。