「今までの仕組みに何か問題があるのか」、「ややこしくて何のために入れるのかさっぱりわからない」と人々に不評のインボイス制度。インボイス制度導入のウラには輸出大企業に巨額の消費税を還付する仕組みを正当化する狙いがあるのだ。
トヨタなど輸出大企業はいくら貰っているのか
輸出大企業は消費税を1円も税務署に納めないばかりか、毎年、巨額の還付金を貰っている。2022年4月から2023年3月期(1部2022年1月から12月期)の大企業の決算をもとに還付金をいくら貰っているか計算したのが【表1】だ。還付金額の第1位は例年のようにトヨタ自動車で、年間5000億円を超えている。表1に示すように、還付金上位20社で1兆9000億円もの還付金を貰っている。
「令和3年度国税庁統計年報書」によれば、還付金の合計は税率が10%に上がってから年間7兆5000億円にのぼっている(国税消費税と地方消費税の合計)。このうち輸出大企業への還付金は90%とみられるので、およそ6兆7500億円にのぼる。この額は全事業者が納めた消費税のおよそ20%にあたる。つまり、事業者が苦労して納めた消費税のうち、5 分の1は税務署に入らず、輸出大企業にとられてしまうのだ。
各社の還付金額は税務署も企業側も発表しない。そのため、表1の還付金額は湖東が各企業の決算書(有価証券報告書)によって推計計算したものだ。推計ではあるが、実際に各企業に還付された金額と大差はないと思う。その証拠は、【表2】に示したように、各国税局が発表した税務署の消費税収の中にマイナス、つまり赤字の税務署があるからだ。
たとえば赤字税務署第1位は愛知県の豊田税務署で、言わずと知れたトヨタ自動車の本社があるところ。赤字金額は2021年4月から2022年3月期で4943億円(税率10%)。この額はトヨタや他の輸出企業に還付された金額5600億円から、豊田税務署管内の中小事業者約8000社が納めた消費税約657億円を差し引いた金額である。還付金合計額の5600億円のうちトヨタ1社への還付金を95%と推定するとトヨタへの還付金は5320億円ぐらいになる。
どういう仕組みで還付金が貰えるのか
簡単に輸出企業が還付金を貰える仕組みを説明しよう。皆さんは「消費税の税率は何%か」と質問すると、「標準税率の10%と軽減税率の8%の二つ」と答えるだろう。だが、日本にはもう一つ0%(ゼロパーセント)という税率があるのだ。ゼロパーセントは輸出売上げだけに適用される税率で、一般消費者・国民が目にすることはない。
このゼロパーセントを使って、トヨタの還付金額を計算してみよう。トヨタの年間売上げは約14兆円。うち輸出売上げが約10兆5000億円、国内売上げが約3兆5000億円。輸出売上げの10兆5000億円にゼロパーセントをかけると答えはゼロ。国内売上げ3兆5000億円には10%の消費税がかかるので、答えは3500億円。そして、消費税が含まれているとされる仕入れや外注費、設備投資や諸経費が8兆8000億円あり、これにかかっている消費税分(仕入税額控除額)が8800億円。控除額の8800億円から3500億円を引くと答えはマイナス5300億円。
トヨタの還付金は年間5300億円となるわけだ。つまり、輸出還付金が貰えるのはゼロ税率と仕入税額控除方式があるためだということがわかる。
フランスが生み出したゼロ税率と仕入税額控除方式
では、インボイス制度と輸出還付金制度が生まれたのはなぜか。歴史を振り返ってみよう。
輸出ゼロ税率をはじめて導入したのはフランスで1948年にさかのぼる。フランスには1936年に導入したメーカーの製品に課税する「製造業者売上税(税率10%)」という名の売上税があった。はじめはメーカーの売上高に10%課税する単純な売上税だったが、1948年にメーカー側が「仕入れた部品にも売上税がかかっている。二重課税ではないか」と文句をつけた。
たとえば、自動車メーカーがタイヤを仕入れるとしよう。タイヤメーカーもタイヤの売上に10%の売上税を払っているから、なるほど二重課税と言えば二重課税になる。
じつは1948年1月に「ガット協定(関税及び貿易に関する一般協定)」が締結され、それまで輸出企業に補助金を出していたフランスは補助金を出せないことになった。そこでフランス政府と財界が編み出したのが、輸出販売にゼロ税率を適用し、仕入れに含まれている売上税を還付する仕組みである(仕入税額控除の原型)。その際、還付するのだから、仕入先から本体価格と税金を別記した請求書をもらい、それを還付の証明書に使うことにしたのである(インボイス制度の原型)。つまり、ゼロ税率とインボイスによる仕入税額控除方式をはじめて導入したのはフランスで、その目的は、輸出還付金の正確性を担保するためのものだったのである。
直接税を間接税に見せかける為にインボイス制度導入
フランスは1954年、「製造業者売上税」の名称を付加価値税に変更した。名称を変更したのには訳がある。それまでの「製造業者売上税」は直接仕入原価に含まれていた売上税だけが仕入税額控除の対象であったが、経費や設備投資など周辺取引も仕入税額控除の対象に拡大したのである。つまり今日の輸出還付金額制度と同様、還付金額を拡大したのである。
付加価値税という税金はわが国の消費税と同じような税金だが、後述するようにもとをただせば、シャウプ博士が1950年に日本で提案した付加価値税で、企業の付加価値に課税する直接税であった。
フランスは付加価値税を導入する際、直接税ではガット協定で輸出還付金が認められないため、付加価値税を間接税だと定義したのである。そして間接税を還付するのだから、ガット協定に違反しないと主張した。そのため、企業の決算と関係なく、事業者登録番号を付したインボイスを集計して納税額の計算をするようにしたのである。つまり、インボイス制度は直接税である付加価値税を間接税らしく見せるための誤魔化し手段なのである。
直接税の消費税・付加価値税に輸出還付金はWTO協定違反
付加価値税・消費税の原型は1950年、シャウプ勧告で有名なシャウプ博士が日本で提案した税金である。シャウプの付加価値税は事業税にかえて赤字でも取れる税金として考案された。今の事業税もそうだが、当時の事業税も赤字だと税金はとれない。そこでシャウプは企業の利益(欠損金)に人件費と利息、地代家賃を合計した金額を付加価値とし、これに課税するとしたのである。この仕組みをシャウプの加算法と言う。
シャウプは付加価値を計算するもう一つの方法として、年間売上高から年間仕入れや諸経費を差し引く方法を提案した。この仕組みをシャウプの控除法という。控除法で引くことができないものは給料、利息、地代家賃。これが仕入税額控除方式の原型であり、シャウプが考案したもの。つづめて言えば、シャウプの付加価値税は給料にかける税金だったのである。だから赤字でも払わなくてはならないわけだ。
シャウプの付加価値税は直接税であるから、価格への転嫁も輸出還付金制度もない。そのかわり、事業者免税点制度や事業者のつけた帳簿・決算から納税額を計算する帳簿方式、法人税・所得税と同時申告・同時納税等々、直接税の特徴的仕組みをもっていた。シャウプの付加価値税は、赤字でも納税しなければならないため、事業者・国民の猛反対を受け、一度も実施されないまま、1954年に廃案になっている。
インボイス導入前のわが国の消費税は直接税だったシャウプの付加価値税とそっくり同じではないか。違うのは間接税だと言い張って輸出還付金制度を設けていることだ。
政府・財務省は、WTO協定違反の直接税を還付し続けていることの後ろめたさのために、間接税らしさを装うインボイス制度をくっつけたのである。
税払っていないのに還付といえるのか
税金の還付とは、自分が払った税金が多かったときに返してもらうことを言う。
サラリーマンが年末調整で還付されるように、毎月給料から天引きされた所得税が多かったから還付されるのだ。だが、トヨタをはじめとする輸出企業は自分で税務署に納めたことは一度もない。下請けや買入先の事業者が苦労して税務署に納めた税金を自分が払ったものとして還付してもらうのである。しかも下請け単価をたたいてたたいて、消費税を払ったかどうかもわからないのに、請求書や領収書に記載された消費税を自分が税務署に納めたものとして還付してもらうのである。しかも、下請けはトヨタから預かったとされる消費税をそっくりそのまま税務署に納めるわけではない。下請けも仕入税額控除をしたうえ、トヨタが払ったとされる消費税額と全く無関係の税額を納めるのである。他人が納めた税金を返してもらうのは税の還付とは言わない。いわば横領である。
さらに、消費税には非課税取引がある。代表的なのはアパートの家賃収入や社会保険診療報酬である。輸出売上げは外国の顧客から日本の消費税を取ることはできないとして還付を受けているのであるが、これらの非課税取引も、入居者や患者から消費税を取ることができないのは同じではないか。
それなのに非課税取引は輸出のように、ゼロ税率が適用されないため、仕入等に含まれている消費税分は還付されない。医師会などがゼロ税率適用を求めているのは、輸出企業への還付金が事実上輸出補助金になっており、不公平極まりない制度だからである。
輸出還付金制度を廃止すること、偽インボイス制度を廃止することは公平、公正な税制を求める人々にとって焦眉の急だといってよい。
自民党は大企業が支持基盤なのだから、有利な税制にするのは当たり前です
観光やら建設業者なども同じでコロナ禍でキャバクラなど放っておかれたのは当たり前です。
国民全てに有利になどしませんよ、政治とは分配なんですから
嫌ならサラリーマンも政党を作って自分らに有利な税制に持って行けば良いのです。
今回の住民税非課税世帯に配布も僅かばかりのお金で投票してくれるからです。
中間層なら僅かばかりのお金では馬鹿にされたと思うでしょう。
インボイスの実施理由解りました、有り難う御座いました。