れいわ新選組代表の山本太郎参議院議員は1日、参議院予算委員会で質問をおこなった。質疑のなかで山本議員は、岸田首相は経済対策に所得税減税などをあげているが、減税が実施されるのは来年夏頃であることなどを答弁で引き出したうえで「大変なのは今だ」と訴えた。普段の食事を節約する家庭が大幅に増えていることや、値上げされた商品の販売数量が減少していることなど深刻な経済の落ち込みをデータを用いて指摘した。そして、自民党政権下で30年間、世界的に見ても日本の経済が大幅に落ち込んでいることについて各省に問い、官僚の答弁から具体的な数字やデータを引き出しながらその実態を浮き彫りにしていった。そして、今こそ減税や季節ごとの一律10万円給付が必要であり、それが実現可能であることを訴えた。以下、国会質疑の要旨を紹介する。
山本 「増税メガネ」と呼ばれる政治家がいる。総理、誰のことかご存じか。
岸田 ネット等でそういった名前で私を呼んでいるという動きがあることは承知している。
山本 このニックネームがさらに「増税クソメガネ」へと進化した政治家がいる。総理、誰のことかご存じか。
岸田 名前が進化したということだが、そういったことは承知していない。
山本 ネットでの岸田総理のあだ名は、私自身はたいへん失礼な話だと思う。なぜなら総理は所得税の減税を進めようとしている。百歩譲って、「増税メガネ」ではなく「減税メガネ」と呼ばれる局面だと思う。この減税について、賛否はあるがまずは一定評価されるものだと思う。
総理の素直な心を聞きたい。単純な質問だ。「賃金を上げたい」と思うか。イエスかノーか。
岸田 デフレからの脱却、そして経済の好循環を実現するうえで賃上げがもっとも重要だと認識している。
山本 もう一問。「景気を上げたい」と思うか。
岸田 賃金を上げ投資を盛り上げる。そうした成長と分配の好循環を実現する。結果として景気を盛り上げることにつながればと考えている。
山本 総務省、最新の家計調査の「食料」はどうなっているか。
総務省・岩佐統計局長 最新の2023年8月の家計調査結果によると、食料への支出は1年前の同じ月に比べ、物価変動の影響を除き実質2・5%減り、11カ月連続の減少となっている。
山本 今年7月の日本生活協同組合による「節約と値上げの意識についてのアンケート調査」によると、家計における節約のトップは、「普段の食事」であり、回答は前回から18・6%増加し61・9%だった。昨年の前回調査では、節約のトップは「外食」だった。外食を控えることで家計を調整していたが、それでは間に合わなくなり毎日の食事を削る人々が激増している。
調査会社インテージが全国6000店舗のスーパーマーケットを調べた結果、平均価格が値上がりしている食品のうちほぼ全品目で販売数量が減少し、必需品でも販売数量が落ちている。生活者は買えず、値上げした事業者も売れない。かなり追い込まれている。
10月16日に総理はスーパーに出向いて視察しているが、感じたことを話してほしい。
岸田 デフレからの脱却、賃上げに向けて努力をしていかなければならないということでとりくみを進めてきた。結果として賃上げ・投資において30年ぶりといえるような大きな動きが出てきているのは事実だ。しかしそこにエネルギー危機等を背景とする物価高が国民生活を襲っている。まだ賃上げが物価高においついていない。そして物価高の状況もたいへん深刻な状況にあるということを現場の従業員の方々から直接話を聞いた。物価高に対しては、可処分所得を増やし、物価高に負けない賃上げを盛り上げていかなければならないという思いを新たにした。
山本 総理はこの視察に行ったうえで、減税や給付金は必要だと改めて感じたか。
岸田 賃上げに向けても30年ぶりの前向きな動きが出てきている。これを来年につなげられるか、経済の好循環を持続できるかが今問われており正念場だ。ただそこへ大きな物価高が襲っている。この物価高に国民のみなさんが負けないように頑張ってもらうには、まずは一時的であっても可処分所得を増やさなければならない。そのため減税と給付金を組み合わせることによって可処分所得を支えることが重要だと考えている。
山本 今回の目玉政策である「所得税の減税」は、来年の夏から始まるということでよいか。
岸田 所得税・住民税の減税については1人当り4万円という減税額を考えているが、実際に減税が実施されるのは来年の6月ごろになると思う。経済対策でもっとも重要なのは賃上げだ。物価高に賃上げが追いつき、実質所得がプラスになることが重要だ。来年、再来年が実質所得がプラスになる大変重要な時期になる。この時期に合わせて可処分所得をしっかりと盛り上げていくことが重要だということでこういった所得税・住民税減税を用意した。
しかし、今本当に目の前で苦しんでいる方にはもっと早く可処分所得を盛り上げなければならないということで、今現在、低所得者で地方交付金を使っての給付をおこなっている方々に、上乗せする形で給付をおこなうというのがもっとも現実的でスピード感ある対応だということから、給付を減税に組み合わせる制度を考えた。
山本 総理、それでは間に合わない。このままでは人が死ぬ。大変なのは今だ。「来年」という言葉があったが、それでは間に合わない。「困っている人たち限定」というが、困っている人の線引きはどうやるのか。中間の所得者で苦しんでいる人たちはたくさんいる。過去にどれだけ給付してきたかの実績はあっても、今現在困っている人たちはいっぱいいる。大変なのは今だ。「年を越せるかどうか」という状態の事業者も人々もたくさんいる。来年の夏にちょっとだけアメ玉を舐めさせるだけではどうにもならない。
それと給付金をスピード感を持ってやるという話があったが、これはたったの一回、しかも世帯限定。話にならない。全員に配って、金持ちは後から所得税でとればいい。すべての国民に悪い物価高が収まるまで、季節ごとの10万円給付をやるくらいのことが必要だ。
ただちにやるべきことは、消費税は廃止、悪い物価高が収まるまですべての人に季節ごとの一律給付、社会保障の減免だ。なぜこれらが必要か? 先進国で日本だけ30年間経済不況だ。そこにコロナが来てさらに物価高。まさに今が国難だ。人ごとのように「国難が来たら配るかもしれないが、今は配らなくていいだろう。この先配らなくていいだろう」という話ではない。今が国難、ずっと国難だ。
減税と一律給付は可能 消費税は福祉の為ならず
山本 私たちがのべているようなここまで徹底した政策をやったとしても、ハイパーインフレでとんでもなく物価が上がるようなことは起きない。賃金が上がって景気が回復する。そのことをこれから証明する。
ここに示すのは、参議院調査室のマクロ計量モデルによる試算結果だ。消費税5%減税と10%減税をした場合、1人当り賃金と物価上昇率はどうなるか。
▼5%減税をやった場合、減税から7年後の1人当り賃金は何もしない場合に比べ17・4万円増える。また物価上昇率は1年後に約0・3%まで下落し、その後緩やかに上昇し3年目がピークで上昇率は1・4%程度。その後は低下していく。
▼10%減税をやった場合、減税から7年後の1人当り賃金は何もしない場合に比べ35・7万円増える。また物価上昇率はただちにマイナス2・1%まで下落しその後緩やかに上昇して3年目がピークで上昇率は1・8%程度。そこから先は低下が始まる【上図】。
▼季節ごと(年4回)、1・2億人に10万円を給付すると、何もしなかった場合に対し1人当り賃金は6年後に約28・5万円増える。物価は2年後に1・9%まで上昇するがその後上昇率は低下し、6年後には1・3%程度になる。給付金は公共投資と違ってすぐに消費に回らないため、物価はさほど上昇しない【図1】。
この消費税減税と給付金が一番話が早い。逆にいえば、国を一刻も早く立て直すにはこれしかない。総理、消費税減税をぜひやってもらえないか。
岸田 賃金が物価高に追いついていない時点において、可処分所得を押し上げていかなければならないという問題意識は、今回の予算委員会の議論を聞いていても各党において共通していると感じる。ようは手法の問題だ。政府として消費税減税という手法は社会保障との関係でとらない。
所得税減税に先立ち、住民税非課税世帯に今おこなっている支援に上乗せして合計10万円支給する。そして所得税減税と給付金の間にある所得層の方々にも、地方交付金を使って重点支援をおこなう。こうした支援をおこなうことが、幅広い所得層を支援するうえで重要だという判断で政府として可処分所得の支援策を用意した。
山本 (直前に質問をおこなった)山添委員の質問のときに、総理は今何が効果的か様々なメニューを考え検討した結果、この所得税減税と給付になったとのべたと思う。その検討のなかに、消費税の減税は含まれていなかったと答えたが、そうなのか。
岸田 消費税減税については、少子高齢化が進むなかで増大する社会保障費を支える重要な財源であるため、引き下げることは考えなかった。
山本 「不景気のときに財源が減るが、消費税があれば財源は減らない」。これは一番やってはいけない。社会にお金が回っていないのに無理矢理消費税で間引くことになる。消費税は何かを食べるために、何かを飲むために、生きるために払わなければならない。無理矢理搾りとっている。それなのに政府が消費税減税を検討すらしていなかった。言葉がない。すべてを検討して「これが一番だった」というなら話は別だが、これでは自分たちの、財務省の、経団連の好みだけピックアップしたという話ではないか。
なぜ日本が30年も不況が続いているのか。総理自身が所信表明で非常に冷静な分析をしている。その議事録の抜粋だが、総理、読み上げてもらえないか。
岸田 (本人は読み上げず)「この30年間、日本経済はコストカット最優先の対応を続けてきました。人への投資や賃金、さらには未来への設備投資・研究開発投資までもが、コストカットの対象とされ、この結果、消費と投資が停滞し、さらなる悪循環を招く。低物価・低賃金・低成長に象徴されるコストカット型経済とも呼び得る状況でした」
山本 まるで他人事のようだが、30年の不況はあなたを含め自民党がやってきたことだ。自民党が経団連の要望をしっかりと受けて、組織票と企業献金で買収されながら政策を売っていった。非正規などいつでも首を切れる安い賃金の労働者を大量に増やして、資本家がよりもうかるような法律を作ったのが自民党ではないか。どこかよその国で起こっていることをいうかのような所信表明だった。90年以降、非正規労働者が増え続け、実質賃金は低下している。30年かけて日本を貧しくさせたのは自民党と経団連だ。
資本家にとってのコストは「労働者」と「税金」だが、昭和の終わりから平成の終わりまで法人税が減税され続けている。そしてそれは消費税増税のタイミングで法人税が減税される仕組みになっている【図2】。今テレビを見ている皆さんから搾りとられた消費税は、その一部しか社会保障に使われていない。庶民には増税して社会保障負担を上げまくり、資本家がよりもうかるよう法律を作り変える。その結果大企業の内部留保は10年以上過去最高益を更新し続けており、大企業の現金預金はリーマンショック後から右肩上がりになり、昨年時点で295兆円となった。10年間で約127兆円も増えている。
30年で没落した日本 実質賃金も下がり続け
山本 一方、庶民はどうだろうか。厚労省、生活が苦しいという人の割合を聞かせてほしい。
厚労省・森川政策統括官 2019年国民生活基礎調査において、生活意識が苦しいと答えた人の割合は、全世帯で54・4%、高齢者世帯で51・7%、母子世帯で86・7%、児童のいる世帯で60・4%となっている。
山本 ここにコロナが来て物価高になった。世界のなかで日本はこの30年でどうなったか。内閣府、世界の名目GDPに占める日本の割合は1995年と2022年ではどうなっているか。
内閣府・林政策統括官 IMFのデータベースによると、世界の名目GDPに占める日本の割合は、1995年は17・7%、2022年は4・2%だ【図3】。
山本 1人当りの名目GDPの日本の順位は2000年と2022年でどうなったか。
内閣府・林政策統括官 2000年は2位、2022年は32位だ。
山本 主要国と比較した日本の実質賃金の伸び率の推移はどうなっているか。
厚労省・森川政策統括官 OECDが国際比較可能なように調査した2022年の実質賃金は、1997年を100として、アメリカ139・9、イギリス133・7、ドイツ118・4、フランス125・9、イタリア100・6、カナダ134・0となっている。他方、日本の毎月勤労統計調査の実質賃金によると、1997年を100として2022年は85・6となっている。
山本 経産省、IMD競争力ランキングとは何か。1989年と2023年の日本の順位は。
経産省・山下経済産業政策局長 IMD競争ランキングとは、スイスの国際経営開発研究所が公表しているものだ。日本の総合順位は、1989年は1位、2023年は35位だ。
山本 1989年と2020年の時価総額ランキング上位30社の日本企業は。
経産省・山下経済産業政策局長 1989年は上位30社のうち21社が日本企業だったが、2020年に上位30社に入っている企業は存在しない。
山本 別の情報で見ても、上位50社に日本企業の姿はない。
まず総理には発言に責任を持つという基本から正してもらいたい。総理はこれまでに宣言した内容を簡単にひっくり返す癖がある。2021年9月の自民党総裁選中に総理は、「消費税を10年程度は上げることは考えない」と発言した。しかしわずか8カ月後には「当面消費税について触れることは考えていない」と変質している。やろうとしていることはまるで「4年間増税しない」といいながら増税した民主党ではないか。これをもう1回やるつもりか。
経団連は頻繁に消費税増税を求めており、9月に入ってからは2週間に1回の頻度になっている。総理、消費税増税をいつやるつもりなのか。
岸田 消費税の増税は考えていない。
山本 飼い主が求めているのだからそのうちやるだろう。
てのひら返しはまだまだ続く。総理は「所得倍増」をひっさげて総裁選に勝利したが、政権発足から実質賃金は倍増どころか落ち込み続けている【図4】。そこで一発逆転と、総理が最低賃金1500円に引き上げると宣言した。ちなみに10年後の話だ。いい加減にしてもらえないか。今から10年間も総理で居続けることが難しい人が、「10年後に最低賃金1500円」とうち出すことを、“空手形”という。
フランスの大手コンサル「キャップジェミニ」が、世界に富裕層がどれだけいてどれだけの資産を持っているかを調査し公表している。「富裕層」とは、すぐにでも投資可能な資産を100万㌦以上持っている人と定義しているが、日本の富裕層の数は365万人でアメリカに次ぎ世界第2位だ。増税が必要ならばまずこの「お友だち」からとってはどうか。今回のケチな所得減税のあとには、税負担増の嵐だ。庶民から搾りとり、資本家や大金持ちにはとことん優遇。「聞く力(ただし金持ちに限る)」? 勘弁してくれ。
しっかり苦しみの声を聞いてほしい。私たちが掲げている消費税減税や社会保障料の減免、そして何よりもすぐに効果があらわれる給付金を、悪い物価高が収まるまでかならず季節ごとに実施すべきだ。
30年弱らせた日本の経済をしっかりと立て直してもらいたい。だが自民党には無理だ。踊り子が変われども振り付けは同じ。自民党を倒すしかない。れいわに力をください。