統一地方選が佳境を迎えるなかで岸田政府は、月初めから安保関連3文書の改訂にもとづく防衛財源確保法、防衛産業強化法案を国会審議入りさせ、地方選投開票の直前に採択に持ち込もうとしている。選挙のどさくさに紛れて国の大軍拡に道を開く法案可決を図る暴挙について、れいわ新選組(山本太郎代表)は18日、「『安保3文書』関連2法案(防衛増税、防衛産業支援法)の採決に強く反対する」として声明を発し、国会内の異常な動きに警鐘を鳴らしている。以下、内容を紹介する。
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統一地方選挙の真っただ中、まるで「だまし討ち」をするかのように、岸田政権の掲げる主要政策に関連する法案が衆議院本会議で相次いで審議入りしている。まず、原発や化石燃料温存にも使えるGX移行債の発行を可能にする「GX財源法」の衆院での採決、続いて間髪入れずに60年以上の老朽原発運転を可能にする束ね法案である「GX電源法」の審議入りとなり、粛々と経済産業委員会で決められた日程を消化するかのように採決にむけて審議が進められている。
そして、先日の衆議院本会議での政府の「安保3文書」に対する対総理質疑をアリバイとして、6日には「防衛財源確保法」の審議入り、そして翌7日には、防衛産業を強化するための「防衛産業基盤強化法」が審議入りした。
特に「防衛財源確保法」は、昨年末に閣議決定した政府の安保3文書の一つ「防衛力整備計画」で示した通り、防衛予算を現計画の1・6倍近くも増やし、防衛費を5年間で43兆円にまで膨張させるものである。これによって防衛予算は国内総生産比の2%にまで引き上げられることになり、日本を世界第3位の軍事大国とする法案である。
また、一方の「防衛産業基盤強化法」も、国家安保戦略等にあるように、単に国内防衛産業の衰退防止だけではなく、海外への「武器輸出」(防衛装備移転)を国が支援する内容やさらには「戦後初の装備品の生産設備の国有化」を可能にする条項まで盛り込まれている。
与党はこれらの法案と合わせて、防衛装備移転三原則(旧・武器輸出三原則)の緩和の議論を5月以降に始めると報じられており、これらが複合的に軍事産業の促進に突き進む恐れがあり、問題が極めて大きい。
そして、与党はこの問題の多い「防衛産業基盤強化法」を、14日に衆議院の委員会審議入りさせ、18日に、一般質疑を3時間挟み、法案自体についてはいきなり統一地方選挙期間中の21日金曜日に質疑・採決を提案するという暴挙に出ている。そもそも委員会審議入りはさせてはならなかった法案であり、私たちは強く抗議し、他のまともな野党にも連帯を求める。
さらに政府は4月5日に外交政策として、民間支援のODA(政府開発援助)に加え、他国に対し防衛力強化の能力構築支援を行う枠組みである、OSA(政府安全保障能力強化支援)について、「外務省設置法」のみを法的根拠に国家安全保障会議で決定した。このことにも私たちは強く抗議する。
すでに、自公を除く野党四党は財源確保法について、それぞれの理由で反対姿勢を示している。2法案は極めて問題の大きい法案であり、私たちも反対を表明するとともに、いずれは「採決という出口」が見えてくる委員会での審議継続に強く反対する。
改めて、わたしたち、れいわ新選組はうったえる。
政府が、GX関連法に続いて、統一地方選挙の真っただ中に各党が地方での選挙応援に多忙を極めている中で、日本の今後の運命を左右する重大法案を次々と審議入りしていることに強い警戒感を覚えている。本2法案の問題点は既に本会議での登壇質疑から明らかであり、委員会での与党ペースの日程消化を進めないように、野党各党が連帯を強く確立すべきであると。
これらの安保関連2法案の問題点は明瞭である。
政府が人々の日々の暮らしよりも、日米の防衛協力の強化、日本の防衛装備品の海外への輸出の支援など、この国の産業構造にいわゆる「軍産複合体」を組み込むものである。そして、日本の平和国家としてのありようを変貌させるものである。対米従属と並行した軍拡へと舵を切り、同時に他国への武器輸出などを通じてやがて日本の存在が「死の商人」に変貌しかねない、恐ろしい危険性を秘めた法案である。
経済学には、「大砲か、バターか」という議論がある。これは、わかりやすく言えば、物的や人的な資源に制約がある状況では、「ひとつの物やサービスを供給するために生産するにあたり、他の供給を常に犠牲にしなければならない」ということである。つまり、危機を煽り、防衛需要の喚起を経済政策に据える国の外交安全保障政策は、結果として民間の需要を犠牲にする、ということである。つまり、軍拡は人々の暮らしを犠牲にするのである。
今回の防衛財源確保法と今年度予算には、防衛増税だけではなく、防衛費増額の財源として、公的病院のインフラ更新のために積み立てさせたお金、750億円を防衛費に回すと決めており、それを可能にする条項が含まれている。
さらに、与党では、巨額の積み上げを行っている予備費の使い残し(剰余金)も、防衛財源への繰入れを目論んで、議論を進めている。
先日、医療従事者の過酷な労働環境の改善のないまま、全国の国立病院の労働者がストライキを実施した。軍拡財源のために、公的病院等の積立金を召し上げる政府の姿勢こそが、この国の「バターより大砲」の姿勢を明確に物語っている。
「大砲かバターか」について、その大統領退任演説(1961年)において米国産業構造の軍産複合体化に強く警告を発した、元軍人のドワイト・アイゼンハワー大統領は、「すべての大砲も戦艦もロケットも結局のところ、空腹を十分に満たすことができない人々からの盗みを意味するものである」と大統領在任時(1953年)に述べている。
大砲かバターか、ミサイルかメシか。どちらを選択すべきかは明らかである。
れいわ新選組は積極財政によって人々の暮らしの底上げを訴え、徹底した平和外交によって、我が国が地域の緊張を緩和する先導役になるべきであるという考えのもと、この二法案について強く反対するものである。
地方から国を揺らす。現在の統一地方選では地方から国に対して、暮らしにかかわる予算を地方が十分に措置できるように、これまで通りの消費税の廃止、インボイスの中止に加え、積立金の活用や、地方交付税の交付金の大幅な増額を訴えるとともに、地方からの平和発信の重要性も合わせて訴えていく。
2023年4月18日
れいわ新選組