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れいわ新選組、戦闘開始 「5割の有権者とともに」が鍵 保守王国の選挙情勢分析 本紙記者座談会 

 衆議院選挙は19日に公示を迎え、31日の投開票に向けて本戦に突入した。安倍8年、菅1年を経てコロナ禍で行き詰まった自民党は、にわかに岸田文雄を総裁にしてトップの顔をすげ替え、なおかつ選挙の日取りも超短期決戦に前倒しして大慌てで乗り切ろうとしている。山口県内の選挙情勢とあわせて、この選挙の争点は何か、記者座談会で論議した。

 

  他県の読者の皆さんからの問い合わせも多いので、まず山口県内の選挙情勢から見てみたい。

 

出陣式後に遊説に出発するれいわ新選組の竹村かつし(19日、下関市)

  山口県内の選挙区を見てみると、1区は自民党・高村正大(高村正彦の息子)に対して立憲・大内一也。2区は自民党・岸信夫に対して共産・松田一志。3区は自民党・林芳正に対して立憲・坂本史子。4区は自民党・安倍晋三に対してれいわ新選組・竹村克司、直前になって立候補表明した無所属の大野頼子(元山口新聞社員)。4区以外は野党が共闘して一騎打ちとなり、安倍晋三の選挙区だけが三つ巴になった。

 

  直前まですったもんだしていたのが3区の自民党同士の選挙区争奪だった。最終的に現職の河村建夫を押しのける格好で参議院議員から鞍替えした林芳正が公認を獲得し、河村が引退に追い込まれた。直前の総裁選で岸田文雄が勝利し、自民党幹事長が二階俊博から甘利明に変わってトントン拍子での決着となった。自民党県連としては林芳正を推していて河村排除に動いていたが、その通りの展開となった。

 

 県連関係者のなかでは、「3区は早くから林芳正で話がついているのに、河村が息子を国会議員にしたいがためにゴネている」という評価がもっぱらだった。その確約がとれないからしぶとく引き下がらないのだと。最終的に河村の息子を比例候補とすることを本部が提案した形だが、名簿順位が上位ではないといって河村界隈ははぶてている。ただ、河村ときたらここにきて支援者に「林芳正をやれ」と檄を飛ばしている有り様だ。古狸のごね得に付き合わされた支援者たちは「何を考えてるんだ?」と興ざめしている。

 

 本戦での林vs河村を見てみたかったが、保守分裂は回避して一本化した。仮に河村が出馬したとして、宇部興産が全面的に支援に回る林芳正に対しては勝ち目はなかっただろうと大方が見なしていた。芳正としては4区で安倍晋三に挑む度胸はないので、本来地元ではない宇部に住民票を移し、母親が創業一族である宇部興産の力を借りたのだろう。現在の興産のトップが下関西高校時代の同級生でもあるし、宇部の林事務所の所在地ときたら俵田(創業一族)のあの大豪邸の実家じゃないか。そして、4区の林派が安倍晋三の選挙など知ったことかといった調子で3区に乗り込んで選挙応援をしている。

 

12年ぶりに本人が登場した安倍晋三の出陣式(19日、下関市)

  ここにきて必死なのが4区の安倍晋三だ。歴代最長政権などといっていたが、足下が揺らいでいることに慌てている。関係者曰く、本来は妻の昭恵が選挙区に張り付く形で工程を組んでいたのに、21~28日以外はすべて安倍晋三本人が選挙区に張り付くことになったとかで、急遽日程を組み直したようだ。自分が選挙区を丹念に回らなければ10万票に届かないと焦っているそうで、「10万票」をこえるか割るかが一つのボーダーラインになっている。安倍選対としては竹村陣営の得票はせいぜい3万票台と見なしていて、候補者とのたたかいというよりは「10万票とのたたかい」なのだそうだ。

 

 モリカケ桜等々、首相在任中にやりたい放題やってきて、何ら真相解明に至っていない分、「今回は自民党(安倍晋三)に入れたくない」「ケジメがない」という声は根強く、自民党離れがどれほど進むのかも注目されている。本人が慌てる根拠があるのだ。そんな様子を林派は高みの見物で眺めている。選挙そのものでいえば、桜を見る会でお上りさんをした面々が恩返しとばかりに奮闘中だ。まあ、そのための「もてなし」だったのだろう。どれだけ回収できるのか? が得票にも直結するのだろうか。

 

  そんな元首相のお膝元で「山口4区から日本を変える!」と挑んでいるのがれいわ新選組の竹村克司だ。ポスターにもそう書いてある。1年8カ月近く街のみんなのなかに入り込んでポスター張りや挨拶回りをしてきて、ド素人ながら選挙戦に挑戦している。

 

 大企業や労働組合といった組織がなにもついていないなかで、地域の支援者やボランティアに支えられて徹底的な草の根選挙を展開している。公示の日に選挙事務所を覗いたら、期間中に配る政策チラシの証紙張りをボランティアの人たちが黙々とやっていた。10万枚以上まくそのすべてに証紙を張らなければならないのだから大変な労力だ。1000カ所以上ある選挙看板へのポスター張りも支援者やボランティア数十人の力で一気にやったそうだ。組織がないなかでみんなに支えられていることがわかる。

 

 れいわ新選組自体がまだそこまで知られていないなかで、ガチガチの自民党支持基盤においてどこまで得票を伸ばせるかだろう。この選挙区での野党候補の過去最高得票は、政権交代選挙となった2009年の戸倉多香子が獲得した5万8795票で、その際の投票率は71%だった。安倍晋三は全有権者のうち40%以上にあたる10万票を獲得するために必死なわけで、これに勝とうとなると投票率80%の選挙にならなければ及ばないということだ。いかに難儀な選挙かがわかる。

 

 今のところ、とても投票率80%になる空気はなくしらけきっているが、選挙演説によって政治不信を吹き飛ばし、これまで選挙に背を向けてきた層に少しでもアクセスできれば山は動き出すかもしれないし、逆に「これじゃダメだ…」と思われれば動き出さないかもしれない。選挙だけに甘くないし極めてシビアなのだ。選挙に行かない5割が今回の総選挙でもカギを握っているが、山口4区でいえば選挙に行かない4割が決定的な力を持っている。全国平均では自民党の全有権者のなかでの支持率(得票率)は25%だが、山口4区の場合は40%にまで跳ね上がる。これに挑むわけだから、無謀といわれれば無謀であることは確かなのだ。しかし、山本太郎率いるれいわ新選組は安倍晋三の選挙区と麻生太郎の選挙区には単独候補を擁立し、野党の腰がひけた選挙区に殴り込みをかけている。

 

  山口4区は歴史的にゼロ打ち(開票前の午後8時に当確が出る)で野党候補が惨敗してきた選挙区だ。消化試合みたいな選挙が何度となくくり返されてきて、野党候補といっても直前に当て馬が出てくるような選挙ばかりだった。

 

 今回については「れいわ新選組が候補を出すならどうぞ」という形というか、野党共闘という形で山口県では早くから各組織・政党間の一本化調整みたいなものもやられていて、そのなかで野党単独候補として4区は竹村克司となったようだ。選挙区で候補を出すといっても供託金だけで300万円かかるわけで、それ自体ハードルも高いのだ。

 

直前の立憲本部の動き

 

  野党共闘というが、公示の1週間前になって「立憲民主党が昭恵とつながりのある斎木陽平(AO義塾塾長)を山口4区から擁立する」という話がにわかに東京方面から浮上して、一部ではすったもんだしていた。「安倍晋三が枝野に頼み込んだんじゃないか?」ともっぱらだった。そうなると批判票が分裂して、この街では「立憲民主が安倍の手助けをした」となりかねないものだった。

 

 その1週間前の竹村克司の事務所開きには加藤寿彦(元民主党県議、立憲民主党山口県連顧問)も出てきて「ともに頑張りましょう」と挨拶していたし、ため書きまで寄せていたのに、いったい何がどうなってんの? と地元関係者はざわついた。

 

 加藤寿彦とか酒本(立憲民主党県議)も今さら格好がつかないだろうし、そこは全力で県連が阻止したようなのだが、選挙直前になって東京本部からこんな動きが起こったというのは事実なのだ。出馬会見直前まで事は動いていた。4区のなかでは起こりようのない出来事で、場合によっては立憲本部が最後の最後になって安倍の手助けをしたという評価にもなりかねなかった。仮にごり押しした場合、この街における立憲民主の存在は壊滅し、加藤、酒本のポジションが揺らぐものだった。ある意味、土壇場で踏みとどまったといえるのではないか。

 

  選挙なのだから出馬は自由であるし、いかなる政党から誰が出馬してもいいのだが、経緯やタイミングによって真意は推し量られる。「ぶつける」だけの候補擁立など、本命を利するだけと見なすのが自然なのだ。立憲本部はれいわ新選組潰しでも意図しているのだろうか? という思いも広がっているが、4区においては立憲は竹村支援で動いているし、支援者への呼び掛けもやっているようだ。なかなか一筋縄ではいかない舞台裏がある。いずれにしても、れいわは、諸々の政治勢力に対して不信を抱いている4割、5割の有権者と繋がって新しい政治をつくっていくというスタンスに立ってゼロからスタートしているわけで、独自路線をガンガン進んでいく歩みを止めないことだろう。

 

  選挙なんて表通りだけでやられているわけではない。裏通りの動きも含めて選挙なわけで、支持しているような素振りをしながら反対側の応援をするとかいくらでもいる。鵺(ぬえ)みたいなのも当然いる。選対に入り込んでせっせと情報を流す者だっている。そのなかでどれだけの得票を獲得するか、最終的には得票勝負なのだ。

 

  選挙戦が始まって、竹村の選挙カーが自民党支持者にもお願いをしているのが受けている。反自民だけでなく自民党の支持基盤を切り崩しに行かなければ話にならないのだから当然だ。安倍晋三の40%を35%にすれば70%の投票率でも変わってくる。

 

 「山口4区、この選挙区が自民党のガチガチの地盤であることはわかっております。ただ、そんな自民党支持者の皆様にも折り入ってお願いがございます。安倍代議士はモリカケ桜等々、この8年でやりすぎた…。政治家はケジメをつけるべきだとお思いのみな様、あるいは4区は安倍家のものじゃないぞ。林派の地盤でもあるんだぞ、と思っていらっしゃる林派の皆様、こっそりでも構いません。この度の選挙、どうかご家族のうちの一票でも竹村かつしに投票していただけないでしょうか。竹村かつし、こっそりのお願いでございます」
 「選挙区がダメであれば、どうか比例にて皆様のお力で押し上げていただけないでしょうか。山口4区の一つの声ではなく、多種多様な声を国政に届けて参ります。何卒、自民党支持者の皆様におかれましては、ご検討のほど、よろしくお願いいたします。竹村かつし、竹村かつし、れいわ新選組の竹村かつし、ここだけのお願いでございます」

 

 なんてウグイスが叫んでいる。「こっそりのお願い」とかいいながら街中でスピーカーからガンガンお願いしてくる。それを見た林派の面々が「面白い選挙スタイルじゃないか」といって笑っている。

 

  1区、2区はどことなく無風状態だ。いずれ山口県内ではこれらの四つの選挙区を三つに再編することが決まっている。3区の河村引退はそのような選挙区再編の事情から代議士どもがイス取りゲームを始めたことの反映だ。まずは自民党山口県連で浮いていた河村が排除された。次は誰? が始まっている。林芳正は今回衆院選に挑戦しなかったら選挙区確保は難しいと見られ、林派からすると四半世紀にわたる悲願を最後の最後になってつかみとった感じでもある。しかし、数年後には再び世襲代議士どものイス取りゲームは実施される。山口県の人口減少が著しいために、代議士ポストまで淘汰されている。要するに選挙区の私物化争いなのだ。

 

社会の衰退どう打破る

 

  総選挙全体を見たとき、コロナ禍もあるが25年来のデフレや貧困、衰退著しい日本社会の運営をどのようなものにするのか、その舵とりが問われているのはいうまでもない。コロナ禍も経て、国家というものが国民の生命や安全をまともに守ろうともしないし、せいぜい全世帯向けにやったことといえばマスク2枚と10万円支給1回きり。コロナ禍だけでなくそれ以前から国民不在で、いざ疫病禍という危機に見舞われてその本質が暴露されている。

 

 安倍晋三としては東京五輪も100代目総理も自分がやりたかったろうが、如何せんコロナ禍でどうしようもなくなって放り投げた。そして菅に1年尻拭いをさせたがこれも持たず、色合いを変えて岸田にバトンを繋いだ。何も変わってなどいないのだ。

 

  なんだかバラ色の未来を語るような風情で一時的な目くらましの奇襲作戦に出ているものの、のっけから内閣支持率のご祝儀相場も思わしくない。岸田政権とは要するに“小間使い内閣”のようなもので、出馬表明の際に広げた大風呂敷もそっと折りたたんでポッケにしまいこむような男であることが早くも露呈している。

 

  所得倍増というから2倍になるのかと思ったら、それは違うそうで根拠も乏しく、金融所得課税についても「すぐにやるわけではない」と先延ばしし、「新しい資本主義」とやらも国会で叫んだように「成長なくして分配なし!」となると、「成長しないから分配もない」に収斂(れん)するのがオチなのだろう。それはトリクルダウンを叫んで何も滴り落ちてこなかったアベノミクスと同じだ。異次元の量的緩和によって金持ちや富裕層、多国籍資本や金融業界だけが懐を暖めて、社会全体は貧困化が進んだ。こうして選挙直前の衣替えによって期待感だけ持たせ、二枚舌によって欺いていくというのは、相撲でくり出される猫欺しと似ている。立ち会いと同時に相手の顔の前でパチンと手を叩いて目をつぶらせるアレだ。

 

  目下、与野党ともに大騒ぎで迎えた総選挙のなかで特徴的だと思うのは、口先だけにせよ岸田文雄の「新しい資本主義(新自由主義からの脱却)」「令和版所得倍増」「金融所得課税の強化」や、その他に野党がうち出し始めた消費税五%への減税(時限的措置ではあるが…)、時給1500円の実現、コロナ対策としての10万円給付のおかわり実現、国債発行による緊急経済対策の実現など、なんだかどこかで聞いたことがある施策ばかりではないか――という点だ。

 

 山本太郎が街頭でひたすら叫んできた政策のパクリじゃないかと率直に思う。パクリでも何でも、そのことによって政治の方向が是正されていくのならおおいに結構だが、選挙を勝ち抜くためににわか仕立てで寄せていった“猫欺し”や“れいわ乗っかり埋没作戦”なら大概な連中とも思う。なぜ、これまでに主張しなかったのか? と――。しかし、2議席とはいえ国会に殴り込みをかけた意味や存在感の大きさは示しており、この選挙でも大暴れを期待したいと思う。

 

 A ここにきて新自由主義からの脱却や金持ちへの増税、労働者の所得増大が争点になるのは、そんな酷い社会にしてきたことへの反発がかつてなく広がっており、与野党ともに有権者の厳しい視線に晒されているからにほかならない。

 

 この選挙でもっとも重要なのは、選挙に背を向けた5割の有権者とともに歩む政党こそが躍進する可能性を秘めており、いかなる政党も有権者のふるいにかけられるという点だ。自民党と公明党が全有権者のなかでの支持率25%で手にしてきた権力を26%あれば奪取できるが、そうでない泡沫であれば叶わない。現状では5割を蚊帳の外に置いたもとで25%の自公が権力を握りしめ、そうでない側は政党としても崩壊しつつあるというか、労働運動も弱まってきたなかで組織崩壊、疲労が顕在化し、そのなかでの野党共闘に収斂している。政治が膠着・劣化しているような光景だ。この状態をぶち破るまでにはもう少し時間がかかるにせよ、一歩一歩進むほかない。

 

  れいわ新選組は山本太郎が衆院議員選にあたって「れいわは、今日からの12日間、全身全霊でやる」と檄文(下別掲)を発した。戦闘開始ということだ。

 

■衆議院選挙にあたって

 

何があっても心配するな。
あなたには国がついている。
れいわ新選組は、そんな国をあなたと作りたい。

 

コロナで苦しいのではない。
25年以上続く不況の中にコロナまでやってきて苦しんでいるのだ。

 

その不況を作り出したのは、
雇用の流動化の掛け声とともに、労働環境を破壊。
不安定、低収入がスタンダードな労働者を大量に作り出し、大企業に減税、金持ちに減税、その穴埋めとしての消費税を景気低迷期にも幾度も増税し続けた資本家の手先である組織票と企業献金で魂を抜かれた政治屋たちである。

 

政治で壊され、奪われたものは、政治によって修復が可能だ。
そのチャンスが選挙である。
やられっぱなしで黙ってられるか。
どんな目に遭おうとも、その先頭で叫び続けてやる、抗い続けてやる。
そのために旗揚げされたのが、れいわ新選組である。

 

50%の投票に行かない人々とも繋がって、
この社会を180度変える第一歩を踏み出してやろう。

 

私たちには、政策と財源の根拠がある。

今こそ徹底した積極財政で壊れた社会と人々の生活を立て直すチャンス。
自国通貨を持ち、変動相場制にある日本は財政破綻、ハイパーインフレも起こらない。
それは財務省でさえ認めている。

 

上限のインフレ率2%までは徹底的にお金を出せる。
つまりは年100兆円を超える国債発行でも問題はない。

 

6波に向けた検査、保健所、医療の供給拡大はもちろん、コロナで傷ついた事業者への損失を補填。
消費税廃止、教育の無償化、最低賃金1500円を政府が補償、自然エネルギーへの転換で250万人の雇用を生み出す10年計画(脱原発グリーンニューディール)などなど、やるべきことは山積み。
失われた25年をみんなで取り戻す作業の始まりである。

 

れいわは、
今日からの12日間、
全身全霊でやる。

 


2021年10月19日 山本太郎 れいわ新選組 代表談話 

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