Ⅲ 「美しい国日本」とか「道徳教育」といっていたが
安倍氏はかねてから「美しい国日本」をつくるとか、「道徳教育」や「道徳心」の重要性を主張していた。しかし、ここ数年の「モリ、加計、桜、河井」等の事件をみていると、安倍氏自身道徳心に欠けた言動ばかりである。詳しくは後でのべるが、いっていることとしていることがまるで違う。
昔から「偉そうなことをいうが、していることはでたらめだ」といわれる人が最も軽蔑されてきた。今や安倍氏はそのような目で国民から見られているのではないか。多くの国民から軽蔑の目で見られている者が、公の場や人前で堂々と人の道、道徳を説く。自虐ネタの冗句でいっているのかと思っていたら、そうでもなさそうである。みずからを省みて恥ずかしさを感じないのだろうか、不可解である。
我が国の政治、経済、社会、文化すべての分野において、今日ほど「汚い日本」を思い知らされることはない。かつての日本の良さ、日本人の良さがどこかに消え去ってしまった感がある。多くの国民は、これも安倍長期政権の「負の成果」の一つであると思っている。
古来、日本人の美徳とされたのはどのような生き方、考え方、ふるまいだっただろうか。どのような人が、人々の尊敬を集めたのか。逆に、どのような人が軽蔑されたのか。昔から日本人はその人がお金持ちだからとか、権力をもっているからとか、地位が高いなどという理由では尊敬しなかった。その人の人間性でその人を尊敬あるいは軽蔑した。人間性が評価の基準で、地位やお金は尊敬という観点からは、むしろ負の一要素でしかなかった。その点では権力をもった人や地位が高い人が、人間性に欠ける言動をすると、普通一般の人以上にひどく軽蔑された。
道徳の必要性を強く主張した安倍氏は、その主張にふさわしい言動をおこなっているとは思えないが、この機会にあらためてこれまでの言動を見てみよう。
私たちが「この人は尊敬できる人だ。立派な人だ」と思うのは、次のような人ではないだろうか。思いつくままに列挙してみると、
・悪いことをしたときはそれを「認め」「謝罪し」「潔く責任を取る」人
・部下の責任は自分の責任として責任をとる人
・言い訳はせず、結果責任をとる人
・言い訳にもならない言い訳をしない人
・責任感が強く、他人に責任転嫁、責任逃れをしない人
・自分には厳しく、他人には寛容な人
・常識、良識のある人
・他人の痛みが分かる人
・弱者へのいたわりがある人
・ウソをいわない人
・他人を騙さない人
・品位、品格のある人
・恥じらいの精神のある人(恥を知る人)
・礼儀正しい人
・謙虚、謙譲の精神のある人
・ボランティア精神の強い人
・言行一致の人
・正しい恩義を忘れない人
・信義を守る人
・つまらないことで感情的にならず、常に平常心の人
・権力を振り回さない人
・他人の物やカネには絶対手を付けない。疑わしいことはしない人
・公私のけじめがきちんとしている人
これらの項目は、尊敬に値する人物か否かを評価する場合の基準としては一応妥当ではなかろうか。もちろん評価の基準はこんな単純なものではなく、これらの項目以外にも数えきれないほどの多くの項目があると思うが。私たちはこれらに該当する人は尊敬し、これらの項目に当てはまらない、逆のことをおこなう人を軽蔑していると思う。
安倍氏のこれまでの国会答弁や言動を振り返ってみた場合、この項目のうち何項目が当てはまるだろうか。せめてどれか一つでも当てはまるものがないかと探してみたが、残念ながら私(調査チーム執筆担当)は見つけ得なかった。あなたはどうですか? 安倍氏の人柄は、この項目の中のどれか一つでも当てはまると、自信をもっていえる人が下関市民の中に何人いるだろうか。
「モリ、加計、桜」等での安倍氏の言動や国会での答弁等を再チェックしてみると、この各項目の逆は、ほとんどの項目が当てはまりそうである。
まず「責任」については、ほとんどとっていない。「責任はあるあるいうがとりはせず」と揶揄されるように、言い訳にもならない言い訳をしたり、部下に責任を転嫁したりで、責任逃れが目立つ。「潔く責任をとる」とは真反対である。
「ウソをいわない」は、人としての基本であるが、「桜を見る会」についての国会答弁で「118回」も、「森友問題」では「139回」も事実とは違う答弁、いわゆるウソの答弁をしている。これまでに総理大臣が国会答弁でこれほど多くのウソをいった例はなく、このウソの回数だけで総理大臣失格である。一個人でもこれだけウソをいえば誰からも信用されず、人間失格の烙印を押されるはずである。国会でウソの答弁をした責任を問われると「秘書からウソの報告を受けていたから」とか、一般社会では通用しないようなあきれた言い訳ばかりである。
どの組織でもトップに立つ人が、平素からウソは絶対に許さないという人格者であれば、部下はウソをいわないようになる。しかし、トップが「ウソであっても自分が助かるウソや自分の利益になるウソなら許す、むしろ歓迎する」というトップだと、部下は競ってウソをいいだす。トップが腐ると組織全体が腐ってくるというのは、このようなことである。
安倍事務所の配川秘書の処遇を見ると、配川氏があれだけのウソをいったのに、安倍氏のためのウソだから大した問題ではない、ただ、一応格好だけはつけておこうという感じで、公設第一秘書は辞めさせただけで、相変わらず安倍氏の秘書を続けている。
安倍氏が本当に「国民のことを第一に考えている」「国会を国権の最高機関と考えている」とは思えない。「自分第一、自分の支持者第一」であり、「国会軽視」は明らかである。安倍氏が変わらないのだから、安倍事務所の体質、秘書の体質は変わらないだろう。いや、これまで以上にウソ体質、無責任体質が増していくかもしれない。
また、「自分には厳しく、他人には寛容」といえるだろうか。国会での答弁などを聞いていても、他人に対してはそこまでいうかというほど厳しいが、自分自身に対してはまったく寛容である。
これまでの一連の言動からは「恥を知る。恥じらいの精神がある」人とは思えない。「森友、加計、桜、黒川、河井」と続けば、常識的な一般国民は恥ずかしくて人前に出たり、人前で喋ることは躊躇するところだが。
「公私のけじめ」がきちんとできているだろうか。例えば、「桜を見る会」一つとっても、公金を使った公的な行事に、何の社会的功績もない後援会の人を出席させる。これは公権力と公金の私物化、即ち政治と税金の私物化である。公私のけじめはまったくできていない。
このように一つ一つ実証していくと、尊敬できる人か否かの前に、人としての基本的なことである「悪いことをしない人」「疑わしいことはしない人」か否かが問題になりそうである。
結局、「美しい国日本」を唱え、「道徳教育の重要性」を主張し力説した安倍氏自身が、総理大臣として国権の最高機関である国会で何百回もウソの答弁を繰り返す。責任回避をする。このようなウソをいう、責任をとらないような人が道徳的な人だろうか。このような人が総理大臣でいる国は美しい国といえるのだろうか。
Ⅳ おわりに
安倍衆院議員が親子2代にわたってどのような政治、行政をおこなってきたかを見ていこうと、資料を持ち寄って調査を始めた。調査を進めていくなかで、安倍議員にまつわる不正を疑われるような事件や不適正なことがあまりに多いことが、あらためてクローズアップされてきた。
どのような貢献をしたか云々よりも、まず政治家としての基本姿勢がどうだったかということが重要な問題ではないのか。安倍議員は清潔な政治家なのか。政治家や権力者が絶対にしてはいけない公権力や公金の私物化はなかったのか。全国民、下関市民に対して公正、公平な政治、行政をおこなったのか。公権力や公金を使うとき、あるいは使ったときに国民への説明責任を果たしているのか。このようなことを主な視点に、具体的な事例を市民目線で調査し、分析した。
安倍議員の親子2代の関係した主な事件として、今回、調査チームが調査したのは次の13件の事件等である。
①リクルート事件
②2万円で10万円旅行
③パチンコ御殿
④東京佐川急便事件
⑤ゼネコン汚職事件
⑥東京協和信用組合事件
⑦下関市長選にからむ火炎ビン事件
⑧森友学園問題
⑨加計学園問題
⑩「桜を見る会」問題
⑪黒川検事長問題
⑫河井夫妻参院選買収問題
⑬江島元下関市長時代の入札問題。特に神戸製鋼、三菱商事グループとの入札問題
事件、問題ごとに調査報告したが、あらためて主要な事件の概要や問題点を見てみると、①の「リクルート事件」では、リクルート社から多額の違法性の強い株券や現金の贈与を受けながら、「秘書のしたことなので知らなかった」といって、国民に対して何一つ説明していない。当時、国民からもマスコミからも厳しく責任を問われながら責任回避を続け、国民の声を無視したまま今日に至っている。
リクルートからもらった株券やお金もわずかな金額ではない。「もらった株券やお金は秘書が着服していた」あるいは「もらうべきお金ではないお金を秘書が受けとっていたので私が返金した」ということなら「秘書がしたことなので私は知らない」で国民は許してくれるかもしれない。しかし、検察の捜査でも、秘書の着服や返金の事実はない。
結局、賄賂性の強い株やお金は、安倍議員本人又は安倍議員の政治資金に入っているはずである。不当なお金、もらうべきでないお金を業者からもらって、自分の懐あるいは自分の政治団体に入れておきながら「秘書がしたことなので自分には関係ない」という言い訳が通るだろうか。この言い訳が通ると考える国民は一人もいないと思う。
また、リクルート事件は安倍晋三議員も無関係ではない。政治資金は子どもに非課税で相続される。安倍晋三議員は莫大な金額の親の政治資金を非課税で相続している。このなかには、リクルート社から受けとったお金も含まれていると考えられる。親からお金を相続すれば、親が果たしていない説明責任も当然引き継ぐべきである。母親がリクルートからもらっていたお金についても説明してもらいたい。
②の「2万円で10万円旅行」は、「桜を見る会」の前夜祭と同じような、公職選挙法違反の疑いの強い地元支持者接待旅行である。
③の「パチンコ御殿」から⑥の「東京協和信用組合事件」までは、リクルート事件と同じように、特定の業者や個人から違法性のある、あるいは不適正と思われる金銭を受けとったり便宜供与を受けたという事件である。しかし、疑惑のあるいずれの事件についても、国民に対して何らの説明をしていない。疑惑は残ったまま今日に至っている。
⑦の「下関市長選にからむ火炎ビン事件」は、市長選に勝つために安倍事務所の秘書が暴力団親交者をも利用するという安倍事務所秘書の暗部の一端が露呈した事件である。本件では選挙報酬のトラブルからたまたま事件が表面化し、その真相が法廷の場で明らかにされたが、このような汚いことに秘書が関与していたとは驚きである。「安倍事務所は選挙に勝つためには何でもありだ」と、市民がよく噂していることを証明したような事件である。
この市長選を契機に、立候補した古賀氏の父親が経営していた日東建設は、倒産に追い込まれた。日東建設に対する市の工事入札の指名は、市長選(平成11年4月)前の1998(平成10)年度には41回あったが、市長選後の1999(平成11)年度は指名ゼロとなった。指名回数が極端に減少した理由について市議会で質問があったが、担当の建設部長は「指名回数が激減した理由については、建設部長では役不足で答弁できない」と、暗に政治的な理由であることを匂わせた答弁をした。市長選の報復によるものと思われるが、市長選の報復による指名回数の減少は、違法行為である旨の判決が出ている。
⑧の「森友学園問題」から⑫の「河井夫妻参院選買収事件」までは、いずれも安倍政権で安倍首相が主導あるいは深く関与したと思われる事件である。いずれの疑惑事件も安倍首相が説明責任を果たさず逃げ回っているため、あるいは説明・答弁してもウソばかりいうために、疑惑の解明ができず、疑惑のままの状態が続いている。裁判で少しずつ解明に進んでいる事件もあるが、概して未解決のままである。
歴代総理で、これほど疑惑事件が続いた総理はいない。権力の腐敗も極まれりである。それなのに安倍議員本人はいまだに何らのペナルティを受けていない。この事件のとばっちりを受けて亡くなった人がいる一方で、最も重い責任を負うべき人は、政権を投げ出して何一つ責任をとっていない。そればかりか疑惑を抱えたまま政権を投げ出したのに、今やキングメーカー気取りである。あまりに不公平である。日本の政治をここまで堕落させたのに、まだ堕落させるつもりかと痛憤に堪えない。
安倍晋三議員は、かつて田中元首相の地元への利益誘導政治を批判し、娘の田中真紀子議員に対し「親がおこなった地元への利益誘導政治をどう考えているか説明すべきである」と、公の場で主張した。安倍晋三議員は、みずからの「自分や自分の支援者への利益誘導政治(利益供与政治)についてどう思っているのか。親が起こした説明しないままになっているリクルート事件やゼネコン汚職についてはどう考えているのか。これらのことについて逃げ隠れせず、堂々と説明すべきである。説明責任は田中真紀子氏より安倍議員の方がはるかに重い責任がある。
他人に対しては「説明せよ」と強く主張するが、自分が説明しなければならない立場に立った時は、秘書のせいにしたりして逃げ回って説明しない。あるいはウソをいう。これでは私たち下関市民としては、恥ずかしい限りである。
⑬の「江島元下関市長時代の入札問題」は、下関市の大型工事のうち安倍議員と関係が深いとされる神戸製鋼及び安倍議員の実兄が中国支社長を勤めていた三菱商事グループとの契約(入札)について調査したものである。
「奥山工場の焼却炉建設工事」では、神鋼はストーカ炉の工事実績がまったくないので、市の規定上からは神鋼に入札参加資格を与えることはできないのに、市は実績があるとウソをいって神鋼に入札させ、神鋼と契約した。
「リサイクルプラザ建設工事」では、神鋼と随意契約しているが、市は随意契約した理由について「緊急性があったため」と、市議会で答弁した。しかし、これは虚偽答弁で、緊急性がなかったことは市も認めている。従って、地方自治法上、随意契約はできないので神鋼との契約は違法契約である。
「文化複合施設建設工事」については、総合評価方式で安倍議員の実兄が中国支社長をしている三菱商事グループに決定した。評価委員に建設工事に関してはまったくの素人の人を選んだり、市の意向で動く人を選んだりしている。入札金額では原弘産グループの方が約9億1000万円も安かったのに、金額以外の評価委員が主観で評価できる点数で三菱商事グループが高かったために三菱商事グループに決まったが、これでは公平な業者決定はできない。このように大きな問題のある入札(契約)の連続である。
江島市長は、入札問題をはじめ批判が強かったためか、5選をねらった下関市長選を見送らざるを得なかった。下関市長退任後は安倍総理の「腹心の友」として有名なおなじみの加計学園の経営する倉敷芸術科学大学に雇われていた。その後、安倍議員の支援で参院議員となった。自民党では参院山口選挙区から選出される2名は、これまで長門部と周防部から各1名が選出されるのが慣例となっていたにもかかわらず、2013(平成25)年4月の参院選の補選では、長門部から林芳正参院議員がいるのに周防部から選出された岸信夫参院議員の後任として江島氏が公認された。
下関市への貢献がなくとも、また下関市民の評判が悪くとも、安倍議員への長年の功績があったためだろうと噂された。江島議員は森友学園への不当な値引きによる国有地売却問題が起きたとき、国土交通大臣政務官であった。森友学園問題は安倍昭恵氏が深く関与しており、江島議員が関与していないはずはなかろうと、当時大きな話題となった。ただ、真相は不明である。
以上の事例で見てきたように、安倍議員は親子2代にわたって政治権力の私物化、かずかずの金銭疑惑、説明責任からの逃避、公職選挙法違反の疑いのある支持者接待など多くの問題を起こしている。
特に安倍晋三首相になってからは、「政治の私物化」「公金の私物化」「公文書の廃棄、隠ぺい、改ざん」「国会でのウソ答弁」と、違法、不正、不適正と思われる事件の連続で、際限のない状況が続いてきた。国民目線で安倍政権を総括すると、「公権力(政治)の私物化と公金の私物化をおこなった」ことと「それを隠すこと」が政治の目的になっていた。そう考えると安倍政権の下での不正行為のかずかずが理解できる。安倍政治の集大成が「モリ、加計、桜、黒川、河井事件」である。
政治家や官僚は権力で抑えられても、国民がこれほどの悪行の連続を許すはずがなく、厳しい国民の追及の前では首相の座を投げ出すしかなかった。
首相の座を投げ出してからも、全国民をはじめ全国の法律専門家の人たちや犠牲になった赤木さんの遺族などから、真相究明に向けての厳しい追及が続いているのは当然であろう。大多数の国民は、このまま幕引きすることは許されない、真相を究明し、責任のある人は、責任をとるべきだと考えている。
安倍首相によって公務に対する国民の信頼は地に落ち、日本の民主主義の基礎が崩れかけているのに、政権による自浄能力はない。118回もウソの答弁が通る国会では、国会にも悪を正すチェック機能はない。自民党内も権力亡者や権力追随者ばかりで自浄能力はない。
目下の焦点は、司法の場における事実究明と判決であるが、結局、政治・行政正常化の最高・最終手段は、私たち国民一人一人の選挙権の行使である。選挙権は、総理であろうと議員であろうと悪い政治家を辞めさせることができる、私たち国民の持つ最強の権利である。現在のおかしな政治家を選んだのも私たち国民であり、私たちにもその責任がある。
下関市民のみなさん!
正常な日本をとり戻すことができるか否かは、私たち一人一人の選挙権の行使にかかっています。主権者としての誇りと責任をもって選挙権を行使し、正義の通る日本と下関市の実現に努めましょう。あなたの一票が日本を変えます。
(おわり)
お疲れ様でした。衆院選前に多くの人に配布したいです。
冊子か本にまとめて下さると助かります。