自民党総裁選で山口県内では党員・党友1万8432人のうち1万3902人(投票率75・42%)が投票し、岸田文雄がトップの5565票、高市早苗5032票、河野太郎2947票、野田聖子345票という結果になった。138万人いる山口県民のなかで、自民党員及び党友の占める割合はわずか1・3%にすぎず、それも代議士たちの事務所や末端の議員界隈に至るまでが日頃から党員獲得競争に奔走するなかで、彼らへのおつきあい方々「党員」「党友」になっている人たちだって少なくない。そんな1・3%の自民党コミュニティーのなかで、他県では河野太郎がトップに選ばれるなか、岸田文雄が最高得票を獲得したのだった。
自民党員・党友は全人口の1・3%と聞いて、山口県民のなかでも「保守王国でそんなものか」と感じる人は少なくないようだ。ただ、かといって野党の組織率はそれ以下なのもあって、県下の全自治体の市長・町長ポストは自民党が総なめにしている現実がある。この1・3%コミュニティーを見てみると、党員・党友になった理由は人それぞれで、なかには思想信条を貫いている人も当然いる。一方で、企業なり病院であれば仕事の邪魔をしてほしくない、あるいは仕事を優遇してほしい、行政との関係で県議や市議、あるいは代議士事務所の後援者として影響力を行使したいという願望から、「核の傘」ならぬ「自民党の傘」の下で庇護にあやかりたいと思っている人も多く存在する。相互依存で利害を温める関係なのだ。JC(青年会議所)の若手だって、要はのし上がっていくための階段くらいにしか思ってないじゃないか――と率直に思う。
そんな自民党利権にありつけるなら「年間4000円納めればいいんでしょ? 安いもんじゃない」「代議士のパーティー券をいくらか買って可愛がってもらえるなら、それくらい安いもんだ」とあからさまに語る企業経営者だってざらにいる。要はビジネスのため、ガチガチの自民党支配が貫かれた街で生きていく術のようなものでもある。なかには社員・職員まで自民党員として入党させ、点数稼ぎをする企業や病院だって知らない訳ではない。下関で安倍派企業としてのし上がった関門港湾建設なんて、会社内に支部が置かれるくらいの党員数を誇っている事も、自民党下関支部の関係者ならみんな知っていることなのだ。そして、そんな自民党コミュニティーに属する人たちが桜を見る会に呼ばれて東京に押しかけたことも、その後捜査が始まると押し黙ってしまったことも、街のみんなは「アイツら郷土の恥さらしじゃないか…」「なんの功労も功績もない者がはしゃいでみっともない…」と呆れてきたのである。
ところで、1・3%コミュニティーのなかで争われた党員・党友による総裁選、岸田文雄が山口県において最多得票だったのはいささか意外でもあった。下関で見る限り、期間中に地元で挨拶回りをくり広げていた安倍晋三は「高市をよろしく!」を徹底し、街中に貼り出された自民党の政党ポスターは赤塗りの高市早苗&安倍晋三の二連ポスターに一気に貼り替えられるなど、いかにも高市推しであった。一方で林派の面々には推薦人・林芳正の名で岸田を推すハガキが届くなど、所属派閥によって対応は分かれた。そして、この9年で県知事や代議士の面々はすっかり安倍界隈ばかりに染まっていた折、高市ではなく岸田に軍配が上がったのだった。総裁選が終わって、3区鞍替えを画策する林芳正の仲間たちが、二階降板に大喜びしているのも特徴である。
吉田充春