⑩「桜を見る会」問題
「モリカケ」と同時並行で起きたこの問題は、いまだ検察による捜査の途上にある。東京地検特捜部は昨年12月、桜を見る会の前夜祭をめぐる公選法違反や政治資金規正法違反の疑いで刑事告発された安倍晋三前首相を不起訴としたが、検察審査会が「不当」として再捜査を求めたからだ。この問題では、これまでに安倍事務所の配川筆頭秘書が政治資金規正法違反で罰金100万円の略式命令を受けている。
安倍氏は「モリカケ」同様にこの問題でも、みずからの過失を認めることなく、虚偽答弁によるはぐらかしに延々と時間を費やし、最終的に秘書に責任をなすりつけた。衆院調査局の集計に基づく安倍首相の虚偽答弁の数は118八回にのぼる。
検察の不起訴を不当とした東京第一検察審査会の議決(7月15日付)は「政治家はもとより総理大臣であった者が、秘書がやったことだと言って関知しないという姿勢は国民感情として納得できない。国民の代表者である自覚を持ち、清廉潔白な政治活動を行い、疑義が生じた際には、きちんと説明責任を果たすべきである」とのべている。
安倍氏自身の「規律を知る、凛とした」説明を有権者は待っている。
1.招待者の半数以上が「政治家枠」
桜を見る会は、1952(昭和27)年から新宿御苑で実施されてきた首相主催の公的行事で、「内閣総理大臣が各界において功績、功労のあった方々を招き、日頃の御苦労を慰労するとともに親しく懇談する」(政府答弁書)ものと位置づけ、皇族や国会議員、都道府県知事、議会議長をはじめ「各界の代表者等」約1万人を招いて酒食を振る舞ってきた。
その招待者の数が、第二次安倍政権発足後の2014(平成26)年から右肩上がりに増え、5年間で2倍近くに膨れ上がった。それにともなって公費支出も固定予算である1767万円の2~3倍にのぼる予算超過が常態化し、ついに2020年度は従来予算の3倍にのぼる5729万円を概算要求していた【グラフ参照】。支出(2019年度)の内訳は「飲食物提供」が2261万5000円で最も多く、「会場設営等」に2167万円、「消耗費・備品」が625万3000円、「案内状等」に464万9000円(2014年度の2・5倍)だ。
なぜこれほど規模が膨らんだのか? 内閣府が公表した2019年度までの数年間の招待者の内訳によると、政治家に割り当てられる「政治家枠」の人数が、2005年度は2744人であったが、2019年度には3倍以上の8894人に増加していた。
「首相(安倍事務所)枠」(安倍昭恵夫人の枠も含む)が1000人あり、副総理など官邸幹部の推薦枠が1000人、特別招待者や報道関係者の枠が1000人、その他の自民党関係者に与えられた枠が6000人と、省庁が推薦する「功績・功労者」以外に自民党の政治的な配慮で全体の半数をこえる約9000人が招待されていた。同時期、国際貢献や災害復旧などの「功労者」の招待者は、406人から182人に減少していた。主役が入れ替わっている。
そして、自民党議員たちは地元後援会員とともに桜を見る会に参加した様子をブログ等に綴っていた。「地元福井の後援会の皆様も多数お越し下さり、たいへん思い出深い会」(稲田朋美)、「今年は平素ご面倒をお掛けしている常任幹事会の皆様をご夫婦でお招き」(萩生田光一)、「選挙のうぐいす嬢の皆様をはじめ、後援会の皆様と参加」(松本純)などである。
なかでも安倍氏の選挙区がある山口県からの招待者は850人と群を抜いて多かった。自民党の友田有県議のブログには、「私の後援会女性部の7名の会員の方と同行しました。前日の早朝に飛行機で上京して、貸し切りバスで東京スカイツリーや築地市場など都内観光をし」、その夜に「下関市・長門市そして山口県内外からの招待客約400人による安倍首相夫婦を囲んだ盛大なパーティー」に参加したとあり、同じく藤井律子県議(現周南市長)は「国会議員さんは、それぞれにご自分の後援会の皆さんを案内されておりますので、山口県からも多くの方が出席されていました」と綴っている。
桜を見る会は税金で開かれる公的行事であり、「功績・功労」とは、いうまでもなく政治家個人に対する「功労」ではない。政治家が選挙で応援してくれた地元支援者を慰労するために自費で酒食を振る舞うことは公選法違反(有権者買収)であるが、首相が主催し、その原資が公金であれば「問題ない」という論理は、公金の私物化以外の何物でもない。
安倍氏は「自治会やPTAなどの役員をされている方々もおり、後援会と重複することもある」と釈明したが、誰がどう見ても選挙の実働部隊の面々である。首相自身に公私を区別する規範意識がなく、事務所や後援会をあげて地元支援者を呼び込んだ挙げ句、招待者が2倍にも膨れ上がったのだった。
いずれにせよ公費が注がれる以上、その使途を明らかにし、招待者の内訳について公表するのが公費支出の原則だが、野党議員がこの問題について国会の質問通告を提出した1時間後に、内閣府は桜を見る会の招待者名簿などの資料をシュレッダーで廃棄。「一連の書類については保存期間1年未満の文書として、会終了後遅滞なく廃棄」「もう今は調べることはできない」(大塚官房長)と、モリカケ同様の「記録も記憶もない」答弁に終始した。公文書管理制度は、施策や予算執行について透明性を確保し、後から検証できるようにして行政の公平公正を担保する目的でつくられたものだが、安倍政権の下ではことごとく証拠隠滅のために使われた。
雪だるま式に膨らんだ桜を見る会招待者の選定について、安倍氏は当初、「とりまとめのプロセスには一切かかわっていない」と説明していた。
ところが、安倍事務所(下関市)が地元の自民党市議や後援会員などの支援者に配っていた文書「内閣府主催『桜を見る会』参加申し込み」は、コピーをして使い回せば本人の家族、知人、友人も申し込みができ、「後日、郵送で内閣府から招待状が届きます」と記されていた。また別紙では、東京スカイツリーや浅草散策などの都内観光ツアー(4コースから選択)、安倍晋三後援会主催夕食会(会費5000円)、桜を見る会をセットにして参加者を募っていた。
また、内閣府から招待状が届く前に安倍事務所が招待決定を通知する文書を推薦者に送っていたことなど、次々に証拠が出てくると、安倍氏は「私自身も事務所から相談を受ければ、推薦者について意見をいうこともあった」「私が把握した各界で活躍されている方々も推薦するよう意見を伝えたこともあった」と説明を修正した。安倍氏および安倍事務所が主体的に招待者の人選にかかわっていたのである。
安倍事務所秘書としても毎年参加してきた前田晋太郎下関市長は記者会見で、桜を見る会に招待されることは「ものすごく名誉なこと」であり、呼ぶ側にとっては「選挙で勝って主催者になって、多くの方に喜んでもらえる」し、呼ばれる側としては「自分が何十年も頑張って応援してきた代議士がトップをとって、招待状が届いて、やっぱり今まで応援してきてよかったな」と思ってもらえる行事であり、政権与党には「ある程度の権限が与えられておかしくない」と見解を披瀝した。
だが問題になっているのは、公私混同による権限の濫用である。
やましいことがないのであれば、招待者名簿等を急いでシュレッダーに掛ける必要もなければ、バックアップデータを隠ぺいする必要もない。証拠の廃棄や隠ぺいは、桜を見る会の開催要領である「各界の代表者」「功労・功績のあった者」という基準を逸脱し、安倍氏自身の恣意的な基準で多くの人を招待していたことの証左ともいえる。
2.桜を見る会前夜祭の費用補填
2013~2019年までの7年間、桜を見る会前日には、安倍晋三後援会主催の夕食会が開催されていた。安倍事務所みずから「桜を見る会前夜祭」と銘打ち、観光や桜を見る会とセットで参加を募っていたものだ。
地元支援者には、安倍派の市議・県議や業界団体など各方面から何通も案内が届き、市議や県議はみずからの支持者に他では得られないステイタスを味わわせることで票固めに利用し、安倍事務所としても選挙の票固めを意識していることは誰でも容易に想像がつく。
だからこそ、ホテルニューオータニやANAインターコンチネンタルホテル東京など都内一流ホテルが使われ、800~850人が参加する大規模なものになっていた。
ところがこの6年間、後援会の収支報告書にこれらの収支が一切記載されていなかった。政治資金規正法では、政治団体の資金の流れを国民の前に公開して政治活動の透明性を確保するため、収支や資産状況の報告を義務づけており、これだけでも違法である。
さらに、これらのホテルの見積もり単価は最低でも1人当り1万1000円なのに対して、後援会が参加者から徴収した会費は5000円。その差額(5年間で推定916万円)は安倍晋三後援会が穴埋めしていた。
前夜祭費用の穴埋めは、政治家自身の選挙区内の有権者に、1人当り6000円、800人で合計480万円分の酒食を無償で提供(寄附)したことになり、政治家の地元有権者への寄附を禁じた公職選挙法違反に抵触する可能性がある。
そのため安倍氏は「(前夜祭の)主催は後援会だが、契約主体は個人。レストラン、旅館で個々が支払うのと同じ」「会場の入り口の受付で安倍事務所の職員が一人5000円(会費)を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手交した」とし、「安倍事務所も後援会にも、一切入金、出金はない。食事代についても領収書を発行していないし、領収書を受けとってもいない」「事務所は関与していない」「差額は補填していない」「明細書もない」と虚偽答弁を118回もくり返した。
参加者850人がそれぞれホテルと契約し、安倍事務所の職員は集金を代行しただけだから、後援会の収支報告書への記載は不要だ、という常識的には信じがたい主張で押し通したが、実態は後援会がホテルと契約しており、会費との差額分は後援会が支払っていた。
その事実が判明し、後援会の会計責任者・配川筆頭秘書が政治資金規正法違反で略式起訴されると、安倍氏は「こうした会計処理は、私が知らないなかでおこなわれていた」としたうえで、「道義的責任を痛感している」と陳謝した。
だが、その違法性を十分に認識できるベテラン秘書が、5年間だけで合計約900万円ものお金を無断で補填したうえに、不記載にするだろうか?あまりに不自然な構図である。
そもそも桜を見る会に1000人もの「首相枠」「首相夫人枠」を設け、開催要領を逸脱してまで地元支援者を多数招待してきた安倍氏が、自身の後援会主催である前夜祭の参加者や会費設定、その会計処理について7年間も「知らない」はずはない。実務のすべてを安倍事務所が取り仕切っており、実質は安倍氏が開催主体である。
通常単価数万円もする都内一流ホテルで、会費1人5000円でパーティーを開催するという発想自体、なんらかの優遇措置や値引きをしなければ成立しない。安倍氏は通常料金の半分以下の会費について、「何回も使って信用のできる相手と一見(いちげん)の方とでは、商売においては当然違う」「参加者の大多数がホテル宿泊者という事情等を踏まえてホテル側が提案した額だ」と虚偽(参加者は他のホテルに宿泊していた)の説明をしたが、仮にホテル側の値引きであったとしても、それは政治家や政治団体による地元有権者への寄附(サービスの無償提供)という違法行為をホテルを介して脱法的におこなったことになる。
このようなことが公然とまかり通るのなら、政治的な権力者は、業者に忖度させて格安料金でパーティーを開き、支援者に支払い金額以上の酒食が振る舞えることになり、有権者買収を禁じた公職選挙法は空文化してしまう。それを国のトップである総理大臣が7年間もやり続け、その合法性を主張するというのでは示しもなにもあったものではない。首相から、「800人の参加者と契約」「明細書等の提示も発行も受けていない」といわれた一流ホテルの側も信用にかかわる話である。
このように安倍氏は、他者を巻き込んで自己の保身のために都合よく事実をねじ曲げて説明し、領収書や明細書など客観的証拠は一切出さず、廃棄・隠ぺいはするのに、その虚偽が暴かれると「私は知らなかった」「秘書が勝手にやっていた」と他人に責任を丸投げした。「道義的責任がある」というのも「私に法律上の責任はない」を体よくいいかえただけである。
だが、少なくともこの件で118回も国会で虚偽説明をしたのは、秘書でも役人でもなく、安倍氏自身である。国会でのウソは国民に対するウソであり、もし「責任を痛感」しているのなら、客観証拠を洗いざらい公にするべきである。今に至るまで一切開示しないのは、「誠実な対応」とはかけ離れている。
3.会費補填の原資はどこから?
さらに不可解なことに、前夜祭の会場となったホテルが領収書を発行したのは、後援会宛てではなく、安倍氏が代表を務める資金管理団体「晋和会」宛てであった。後援会の収支報告書を見ても、そもそも数百万円もの補填ができるほど残高はない。つまり、5年間で約900万円もの差額分を補填していたのは「晋和会」である可能性が高い【図参照】。
その場合、後援会は「晋和会」から寄附を受けたことになるが、両団体の収支報告書にもそれら一切の記載はなく、前夜祭の収支をめぐる2団体の不記載額は実に約5600万円以上にのぼる。そして両団体を司るのが安倍事務所なのである。
安倍氏は昨年12月の記者会見で、前夜祭費用を補填した原資について「食費や会費などプライベートに近いもの」や「妻の出費」「自宅に関わる費用」の支払いのために「貯金を下ろし、手持ち資金として事務所に預けているものから支出した」と説明した。また「支出について詳しい説明はなく、責任者に任せていた」としたが、それは秘書が数年間も数百万円もの安倍氏の私費を無断で使い回していたことになる。
さらに、責任者の秘書は議員事務所の金庫から現金で出金し、口座記録を残さないようあえて現金取引をおこない、ホテル側から晋和会宛てに発行された過去5年分の領収書も廃棄するなど、綿密な隠ぺい工作に至るまで安倍氏に無断でおこなっていたことになる。
なぜ秘書が独断でそんなことをする必要があったのか? 動機がまったく理解できないが、もし本当ならば後援会代表で公設第一秘書だった配川氏が、略式起訴後も解雇されず、私設秘書として安倍事務所で活動していたり、「晋和会」会計責任者であった西山秘書が起訴すらされないのは、不可解極まりない。
その後修正したとする後援会の収支報告書にも、安倍氏からの寄附などの記載はなく、原資不明の「繰越金」として計上されており、依然として補填金の出所は不明のままである。収支報告書の保存期間は3年であるため、いずれお蔵入りになることを見越した処理にも見える。
東京第一検察審査会の議決では、「領収書は、一般的には宛名に記載された者が領収証記載の額を支払ったことの証憑(しょうひょう)とされるから、宛名となっていない者が支払ったという場合は、積極的な説明や資料提出を求めるべきであり、その信用性は、慎重に判断されるべきである」として、東京地検に再捜査を求めている。
金銭スキャンダルを立件するのにカネの出所と流れを把握するのは捜査のイロハである。通常は、問答無用の家宅捜索によって証拠物を押収するのが検察特捜部の常套手段であるが、こと安倍事務所に限っては任意の聴取のみにとどめているため、この不明瞭な金の流れも出所も、何一つ解明されないまま現在に至っている。
4.桜問題をめぐり山口県で起きていたこと
地元選出代議士が総理大臣になったことで、安倍事務所の覚えめでたいというだけでさしたる「功労」も「功績」もない人々が新宿御苑に招かれて公金でもてなされ、夜は高級ホテルで酒食の接待を受けていた。それに加え、公的立場にある前田晋太郎下関市長(安倍事務所秘書出身)が「(桜を見る会は)地方を元気にしてくれている会」「名誉なことを受ける方々が増えていくのは悪いことか?」などの逆ギレ気味の弁護を全国に発信したため、「山口県はどうなっているのか?」という疑念を持たれることにもなった。
桜を見る会に招待されて「元気になっていた」のは、133万山口県民のうちのわずか800人であり、しかも安倍氏を支援する自民党関係者のみである。恥ずかしい思いをしたその他大多数の県民や下関市民にとっては巻き添えであり、迷惑千万な話でしかない。「郷土の恥」と思った県民も少なくない。
その800人も安倍事務所が招待しなければ1人も参加していないわけで、やはり一番に招いた側に責任がある。首相から直々にお誘いがかかったので10万円近くの旅費を叩いて上京し、時の権力者を支える一員として新宿御苑や高級ホテルで著名人と親睦を深めるステイタスを味わえたものの、それが規程を超える公金で賄われたり、公選法にも抵触する買収案件であることが指摘されると、たちまちみんな口をつぐんでしまった。
この問題が明るみに出てから、安倍事務所がある下関市内には、東京からテレビ、新聞、週刊誌の記者が多数押し寄せてきたが、取材に対して堂々と「実態はこうでした」と語る参加者はおらず、息を潜めてダンマリを貫くものだから、余計に世間の疑いの視線が増すこととなった。関係者によると、安倍事務所から箝口令が敷かれていたといわれ、実名でインタビューに応じたり、領収証などの資料を提供でもすれば、秘書が雲隠れして「ほとぼりが冷めるまでスルー」作戦を決め込んでいる安倍事務所に叱られるからである。
また記者たちに「桜に呼ばれたのはどんな功績、功労?」と問われても、「安倍さんの選挙を手伝った」という以外に説明しようがないからかもしれない。
いずれにせよ総理大臣になったものが羽目を外して特権を振り回したことで、その周囲まで自分が天下を取ったような気になって調子に乗るというのは恥ずべきことであり、弁解の余地はない。この間、お膝元の山口県内政局をみても、そのような傾向に拍車が掛かっていたのは事実である。
桜の会への招待者枠は、全国で2度の衆院選、2度の参院選がおこなわれる過程で倍増しており、安倍氏が3選した総裁選がおこなわれた2018年に最も急増していた。
その間に山口県では、衆院全四選挙区のうち2つを安倍兄弟が握り、他も安倍氏にかしずくことで閣僚や党役員ポストを得たものや、安倍氏に抱えられた比例議員たちも自民党清和会入りした。2017年3月の下関市長選では、自民党林派の現職に対して、安倍事務所秘書上がりの前田晋太郎元市議をぶつけ、異例にも安倍首相夫妻が直々に応援に付き添い、力ずくで市長ポストを奪いとったりもした。微妙な利害対立は残っているものの、国会議員から知事や議会ポストに至るまで安倍派一辺倒となり、安倍氏が首相になったことを契機にして政局においても力関係に極端な偏りが生じてきた。
このような独裁支配体制のなかでの圧力で、うかつに物がいいにくいといった状況もあるが、一般市民のなかでその基盤が盤石なわけでもない。首相お膝元といわれる山口県、とりわけ安倍氏の選挙区である下関市の人口は過去5年間で1万3318人も減り、減少数は全国ワースト8位。「地方創生」とか「地方を元気にする」どころか、衰退の一途をたどっているのが現実であり、むしろ多くの県民、市民は、歴代最長の総理大臣や閣僚がおりながら、その厳しい郷土の実情や苦しみが代議士を通じて国政に一切反映されてこなかったことに強い憤りを抱いている。そして権力者に取り入った一部のものだけが優遇されるような私物化政治に心底辟易している。それを繋ぎ止めるための盛大な「桜」ではなかったかとも思われる。
安倍氏は昨年末、桜を見る会前夜祭の違法な会計処理も、自身が国会で放った118回もの虚偽答弁も、その責任はすべて配川秘書にあったとし、「本人は反省のうえ、公設秘書を辞職した」と全国向けにアナウンスした。そして「説明責任は果たすことができた」「来年(今年)の総選挙に出馬し、国民の信を問いたい」として幕引きを図った。
でも実際には配川秘書はピンピンして私設秘書として地元の仕切り役を続けていることを多くの市民は知っているし、このようなケジメも反省もない政治については、自民党支持者のなかでも「いいかげんにするべきだ」という感情が渦巻いている。そのような有権者の心底の思いが次期総選挙でどのようにあらわれるかが注目されるところとなっている。
(つづく)
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