TPP協定の批准から、これに沿って国内法の整備にとりかかっており、種子法廃止、種苗法改定、農業競争力強化支援法、農村地域工業誘導推進法、水道法改定、市場法の改定(事実上廃止)、官民連携推進法、漁業法改定などが次々に進んでいる。その背景に2016年に日本がTPP協定に署名するさいにかわした日米交換文書がある。日米交換文書には「日本政府は投資家の要望を聞いて、各省庁に検討させ、必要なものは規制改革会議に付託し、同規制改革会議の提言に従う」とあり、韓国では米韓FTA締結によって国内法200本の変更がなされた。
TPP協定、日欧EPA、日米FTAという大型の自由貿易協定が発効し、牛肉や豚肉、チーズなどの輸入が急増している。昨年7月に農水省が食料自給率の計算に「食料国産率」をとり入れることを決定した。飼料の自給率を反映しない計算で、本来11・9%の牛肉の自給率が43・9%まで跳ね上がる。これは国民をあざむくものだ。
今後は、日米交換文書に記載されている国民皆保険制度の見直し、教育の民営化が進み始める。国民皆保険制度は実質上解体され、自動車保険でいう自賠責のような存在になり、そのほかは民間の医療保険にとってかわるようになる。このままで行くと日本もマイケル・ムーアが映画『シッコ』で描いたアメリカの医療制度のようになっていく。そして教育の民営化がその次にくる。すでに大学入試の英語試験をベネッセが受注するなど民営化が始まっている。アメリカではオバマ政権のときに公立小・中学校が大量に閉鎖され、30万人の教職員がクビになり、小・中学校は株式会社になっていった。日本もあらゆる面で民営化、自己責任が叫ばれ、TPP協定の本質であるグローバル企業600社による日本国民、世界市民の支配が始まっている。
新型コロナの感染拡大によって、世界の穀物輸出国、食料輸出国のうち9カ国が禁輸または輸出制限措置をとった。一部運送が止まり、9割が海外で生産されている野菜の種子が延着し作付けに間に合わなかった。気候変動があり、日本でも今100年に一度の洪水などが起こっている。30年前の冷害では東北のコメが6割もとれず、タイから緊急輸入したが、このようにいつ食料危機が来るかわからない。今の政府はそれに対する対応策をとっていない。
TPP協定は憲法違反だという裁判をやった。3年前に最高裁判決がおりたが、そのなかで種子法の廃止はまさにTPP協定によるものだと主張すると、判決理由のなかで、「種子法の廃止はTPP協定によるものだということを否定できない」という判決になっている。
種子法廃止でどうなる 奪われる日本人の主食
種子法があることで、私たちはどういう恩恵を受けてきたか。種子法は日本人の主食のコメ、麦、大豆の種子について、都道府県が責任を持つようにその責任を規定したものだ。それによって国民が飢えることがないように優良な品種を安定して安く農業者に提供してきた。各都道府県が設置している農業試験場では、たんねんに異株を抜きとりながら原原種、原種を栽培し、県として「発芽率90%」を保証してコメ農家に提供している。これは日本だけでなく、アメリカもオーストラリアもカナダも主食の種子については、国及び各州の農業試験場で安定供給する制度をもうけている。
ところが種子法廃止の際に政府は「種子法があることで民間の優秀な品種が普及できない」といい、農水省が三井化学の「みつひかり」、住友化学の「つくばSD」などの民間企業のF1品種の種子を奨励して回った。「みつひかり」は、収量が「コシヒカリ」の1・2~4倍以上、味は「コシヒカリ」以上だという。収穫したものは全量買いとりという形で、全国でもわりと生産されている。「みつひかり」は吉野家の牛丼のコメ、「つくばSD」はセブンイレブンのおにぎりに使われているコメだ。「みつひかり」の種子価格は今までの「コシヒカリ」の種子価格の全国平均と比較して概ね10倍くらいだ。日本モンサントの「とねのめぐみ」は、丈が低いので台風や風に強い。だが、化学肥料を3割増しほどの多肥にするため、最初の年は収量が多いが2年、3年すると土地が疲弊していくのか徐々に収量が減ってくるようだ。
生産者は企業と契約書をかわしてこういったコメをつくるようになっていく。その際、企業から指定された農薬、化学肥料がセットになっており、全量使いきらなければ「損害賠償責任を負う」となっている。ある企業と契約した場合、台風などで作物が全滅したときも生産者の責任となっている。非常に一方的な契約だ。
種子法が廃止されて、これまで県がつくり農協が販売してきたコメ、麦、大豆の種子がなくなると、農家が自家採種しない限り、これら民間のタネしか手に入らなくなる。日本のコメは伝統的な固定種を品種改良した種子だったが、民間のタネはF1品種であり、それも壊れようとしている。
日本の育種知見は世界に冠たるものがある。それらの育種知見は都道府県や農研機構が持っている。山口県でも小麦「せときらら」などの登録品種をつくっている。各県が持つコメ、麦、大豆、果物、野菜などで特産品として奨励している品種は、どこの県でも優良な育種知見だ。種苗法改定で話題になったシャインマスカットは、農研機構がつくった国の育種知見だ。そういった育種知見は、知的財産として扱われるようになり、農業競争力強化支援法では八条四項で、各都道府県の優良な育種知見を民間企業に提供するように定めた。そのとき私は当時の知財課長に「海外の事業者などにも適用されるのか。無償で渡すのか」と聞くと、「当然、海外の事業者にも提供する場合もある。無償ではなくお金をもらって契約する」と答えた。
農業競争力強化支援法八条三項では、「銘柄が多すぎるので集約せよ」としている。日本には天皇家の古代米だけで17種類といわれており、全国で少なくとも1000種類のコメが作られている。これを民間の「みつひかり」や「つくばSD」、豊田通商の「しきゆたか」、日本モンサントの「とねのめぐみ」など、民間のF1品種の種子数種類に集約することを意味している。各県が提供してきた公共品種がなくなり、民間品種だけになると、私たちはそれしか食べることができなくなる。
たとえば全国でもっとも作付け面積の多い「コシヒカリ」は品種登録期間が終わり一般品種になっているが、各県で「コシヒカリBL」など病気に強い品種を開発しており、これらは登録品種となっている。かりにこの育種知見が民間に譲渡されたり、民間企業が日本の貴重な種子の育種知見を応用して新品種の登録・応用特許を申請すれば、農家はロイヤリティを払わなければ生産できなくなる。
メキシコはトウモロコシの原産国だが、今はモンサントやシンジェンタにロイヤリティを払わなければ生産できなくなっている。フィリピンのコメ農家も同じだ。同じことがいずれ日本でも起きてくることを、われわれは考えなければならない。
種子法廃止の直後、農水省から「稲、麦類及び大豆の種子について(通知)」という事務次官通知が出た。このときの事務次官は、私が農林水産大臣のときに飛ばした人物で、経産省に行ったのちに農水省に戻り、事務次官になった。そのさい「私は農水省を葬式に出すために来た。経産省の一農水局でいい」といい放った男だ。菅官房長官にかわいがられていた男でもある。
この通知では「都道府県に一律の制度を義務付けていた種子法及び関連通知は廃止するものの、都道府県がこれまでに実施してきた、稲、麦類及び大豆の種子に関する業務のすべてを、直ちに取りやめることを求めているわけではない」としている。いずれ予算はつけないということだ。そして、「民間事業者による稲、麦類及び大豆の種子生産への参入が進むまでの間、種子の増殖に必要な栽培技術等の種子の生産に係る知見を維持し、それを民間事業者に対して提供する役割を担う……」としている。民間企業に渡すまで維持せよということだ。
国内でもすでに2019年ごろから遺伝子組み換え「コシヒカリ」が栽培されている。政府はコメだけでも遺伝子組み換えの種子の一般ほ場での試験栽培を認めており、いずれ本格的な栽培が始まる怖れがある。また飼料用米としてゲノム編集、シンク能改変イネの種子が用意されている。今後、たとえば飼料米は「多収のゲノム編集でなければ補助を出さない」といった形で普及させる可能性もある。さらに種苗法改定が決まった直後、筑波大学などが、今年5月から、ゲノム編集のGABAトマトの種苗を家庭菜園向けに無償で提供することを発表した。1週間で3000人の応募があり、5000人に苗が提供される。
農水省は「有機農業を25%にする」と発表したばかりだが、内容をよく読むと「ゲノム編集の種子」と書いてある。また、「緑の食料システム戦略」で化学肥料を減らしていく方向も出しているが、減農薬や無農薬ではなく、RNA農薬(従来の化学農薬に比べ、周辺環境への安全性を謳う)を開発するとある。日本が考えている有機農業はいわば遺伝子組み換え技術によるものだ。昨年11月に農水省は検討会を開き、ゲノム編集を有機認証できないかを話し合った。「これから25%は有機農業になっていくんだ」と思ったら、そう簡単ではないということだ。
遺伝子組換えとゲノム 日本はGM承認大国
遺伝子組み換えやゲノム編集の研究では、世界的な権威はカリフォルニア大学のイグナシオ・チャペラ教授だ。EUが、ゲノム編集について遺伝子組み換えと同じように規制すると決めたのは、チャペラ教授が説明したからだといわれている。
日本政府は「ゲノム編集と遺伝子組み換えは違う」といっているが、チャペラ教授は「遺伝子細胞というのは、それぞれがお互いにコミュニケーションをとってバランスをとっている。一つの遺伝子が壊されると、周りの遺伝子(細胞)は騒ぎ出す。思わぬ科学的な現象が起きたりして、人間に危害を加えるような化学物質や抗生物質を出したりする」と話していた。ネズミ1匹の遺伝子をゲノム編集で破壊しただけで、1600の副作用が出たという報告が『ネイチャー』誌に載っている。
今、研究者たちはゲノム編集のことを、「ニューGMO」といい、新しい遺伝子組み換え技術とみなしている。教授は、「ゲノム編集は、核兵器と同じように人類に多大な害を与えることになる。生物兵器の技術であり、何らかの規制をしなければならない」と指摘していた。
日本は、政府が承認している遺伝子組み換え農産物だけで317種類もある。アメリカですら197種類だ。今現在、日本で作付けできる遺伝子組み換え農産物が134種類ある。今や日本は世界に冠たる遺伝子組み換え農産物の国になっている。そして遺伝子組み換え農産物には必ず除草剤ラウンドアップの耐性がある。
ラウンドアップに関してアメリカで2018年8月10日に歴史的な出来事があった。アメリカの学校の用務員であったジョンソンさんが、ラウンドアップを20~30回校庭にまいたことが原因で末期ガンになったと、モンサントを相手に裁判をした。その結果、モンサントにジョンソンさんへの320億円の支払いを命じる判決が下った。これは世界を震撼させ、アメリカだけでなく中国、韓国、台湾でも大きくとりあげられた。だが、日本ではまったく報道されなかった。
私がアメリカでジョンソンさんにお会いすると、彼の腕はケロイドのような状態になっていた。日本人に対するメッセージを求めると「ラウンドアップだけは一刻も早く使用をやめるようにしてくれ」といっていた。今やアメリカではモンサント社に対して12万件の裁判が起こされている。そして世界49カ国がラウンドアップ除草剤の使用を禁止した。NHKの「クローズアップ現代」が、ジョンソンさんの裁判のことをとりあげて、世界各国が使用を禁止していることを報じたが、日本のホームセンターに行くとラウンドアップが並んでいる。
ラウンドアップはグリホサートというのが主成分だ。これはベトナム戦争のときの枯れ葉剤と同じ効能を持つもので、アミノ酸をつくる植物のシキミ酸経路を壊す。日本はこともあろうにこのグリホサートの残留許容量を大幅緩和し、今や小麦で30ppm、中国の0・2ppmと比較すると150倍だ。アメリカ、カナダ、オーストラリアの日本向けの小麦にはみんなラウンドアップが散布されている。日本の小麦を調べたら大手3社の小麦粉からグリホサートが検出された。学校給食で輸入小麦でつくられたパンからもグリホサートが検出され、国産小麦を使っているパンからは検出されなかった。
アメリカでもゼン・ハニーカットさんという母親が、子どもが3人ともアレルギーで、次男がある日突然、理由もなく怒り始める自閉症の症状が出た。その原因を調べていくうちに、小麦にかけるラウンドアップの主成分のグリホサートが腸内細菌に影響を与えていると考えるようになった。ゼンさんたちが調べると、お母さんたちの体内からグリホサートが検出された。
モンサント社は、グリホサートは尿で排出され人間の体内には残らないといってきた。しかしゼンさんの話を聞き、体内にグリホサートがあるかどうかを調べるために国会議員23人の髪の毛をフランスに送って調べたところ、国会議員23人のうち19人からグリホサートが検出された。
アメリカでは母親たちの運動が大きく広がり、スーパーに行くと、肉も卵もケーキでも「NonGMO」の表示がついた商品が溢れている。ブラジルでも韓国でも3分の1ぐらいはオーガニック商品だ。アメリカでは7年前までは、遺伝子組み換え食品がスーパーに並んでいたが、2016年からは遺伝子組み換え農産物は頭打ちで、現在は年に10%の割合でオーガニックの生産が伸びている。またEUでは、年に7%の割合で有機/自然栽培の農産物が増えている。
韓国ではほとんどの小中高の学校給食が無償かつ有機栽培の食材だ。ブラジルは法律で、3割は有機食材のものを学校給食にと決めている。台湾も、学校給食で遺伝子組み換え農産物を使っていない。フランスもそうなってきた。EUも学校給食がその方向になりつつある。ロシアは2014年から本格的に有機栽培にとりくみ、遺伝子組み換え農産物の栽培を禁止し、かつ一切の輸入も禁止している。日本ほどの農薬大国は他にない。
昨年には種苗法も改定 自家増殖一律禁止
そして昨年、種苗法が改定された。これまでは、登録品種でもコメ、麦、大豆、イチゴ、サトウキビ、芋類、果樹類など、基本的に次期作以降自由に自家増殖(採種)が認められていて、土地に適した品質の安定した作物を生産してきた。ところが自家増殖を一律禁止にして、登録品種はお金を払って許諾を得るか、もしくはすべての苗を購入しなければならなくした。違反した場合には懲役10年以上もしくは1000万円以下の罰金で、共謀罪の対象になる。タネの交換会で登録品種を交換したら警察が踏み込んでくるということも起こるかもしれない。
種苗法改定の理由にしていたのが、「日本の優良な品種の海外流出を防止する」ということだ。しかし、自家採種している日本の農家から海外流出した例があるのか聞くと、農水省は「ありません」といっている。改定前の種苗法のもとで、山形県はサクランボの品種の海外流出がわかったとき、刑事告訴して輸入差し止めの仮処分を申立て、止めることができた。当時裁判にかかわった弁護士は、種苗法を改定しなくても育種知見は守れるとはっきりいっている。
政府がここまで嘘をつくとは思わなかった。しかし、種苗法改定の議論のなかで、「登録品種は一般品種の10%にすぎないので農家には影響がない」としていたが、農水省が2015年におこなったアンケート調査で52・2%の農家が登録品種の自家増殖をしているという結果が出ていた。これを農水省はひた隠しにしていた。自家増殖している理由でもっとも多かったのは「生産に必要な種苗の量を確保するため」だった。
コメの登録品種だけでも青森県は99%、北海道は80%、沖縄県のサトウキビは80%、栃木県のイチゴは83%など、各県の特産品種のほとんどが登録品種だ。農家は自分の栽培している作物が登録品種なのかそうではないのかわからないまま栽培しているのが現状だ。今、北海道と徳島の種子を守る会が、農家を対象に、「自分がつくっている品種が登録品種なのかどうか、わかりますか」という調査をしている。たぶん多くの方が知らないと思う。登録品種でも自家採種自由だったのだから当然だ。
すでに登録品種は8315種あり、エゴマで2種類、シソで7種類、ウドで3種類、サツマイモで65種類登録されており、年間800種が農水省のわずか20人の審査員のもとで新品種として登録されている。種苗法改定で、これまで農水省が責任を持って原則現地調査および試験栽培をしなければならなかったのが、農研機構に委託できることになるので、さらに新品種の登録が加速する。農水省は「伝統的な有機栽培農家、自然栽培農家は在来種の自家採種をしているので、なんの心配もいらない」とはっきりいった。ところが黒豆の在来種の黒千石を品種登録した北海道北竜町の関係者は、在来種と登録品種の区別はまったくつかないといっていた。ある日突然裁判を起こされたら、栽培農家は負ける。
これまでの種苗法では、育種知見の侵害で裁判になった場合、実際に登録品種と伝統的な栽培農家の品種を試験栽培し、違いが鑑定できるかできないかで判断されてきた。実際に宮城県でナメコ茸の伝統的な栽培農家が企業から訴えられたが、企業側が登録品種を出せなくて負けた。
ところが、今回の種苗法改定では三五条で、伝統的な栽培農家の品種が新しく育種登録した品種と異なるかどうかの判断は農水大臣ができるようにした。企業のいいなりにしかならない。さらに、葉の色や形などを記録した特性表だけで判断できるようにしている。裁判をしたらほとんど伝統的な有機栽培農家は負けてしまう。だから「有機栽培農家、自然栽培農家は安全だから心配いらない」というのは大間違いだ。
世界で例のない「自家増殖一律禁止」の法律ができ、いよいよ種子を金もうけの材料にした多国籍企業の支配が始まる。種子法廃止違憲確認訴訟のなかでも国が出してきた答弁書で「種子法廃止はTPP協定によるものだ」とはっきりと書いている。種苗法改定も、農業競争力強化支援法も同じだ。多国籍企業600社が日本の私たちの暮らしを支配するためのものなのだ。これが日本だけが厳しい形で始まっている。
私たちは何ができるか 地方から行動を
種子法が廃止されて2年のあいだに北海道から鹿児島まで、25の道県で種子条例ができることになった。
数日前に徳島県と秋田県が種子条例をつくり原原種を残すことにした。3月22日に岩手県が種子条例を県議会で可決する予定だ。条例制定の準備中の自治体を含めて来年には32の道県で種子条例ができると思う。そうすることで県が責任を持って、コメ、麦、大豆の原原種を守り、原種をつくり、優良な品種を農業者に安く提供できるようになっている。
昨年12月25日に、日本のタネを守る会が主催して、全国で種子条例をつくった関係者に集まってもらい意見交換会をした。当初、種子条例をつくる自治体に対して厳しい姿勢を見せていた農水省が、「種子条例は歓迎」といい始めている。そして自民党も公明党も「種子法廃止復活法案」の審議入りに応じて1回目の審議がおこなわれ、継続審議中だ。地方が動いて国が動き始めているということだ。
広島県では30年前から、F1の品種が農家のなかに広がり伝統的な在来種は消えることを危惧して、県が出資し民間の出資も加わってジーンバンクを設立した。県の伝統的な在来種を発掘調査して保存管理する。3年に1回は農場でタネを更新しながら、そのタネを無償で農家に貸し出して、原物を保存管理し、特徴をデータ管理している。そうすると裁判になってもたたかえる。
まず「山口県のタネを守る会」をつくってほしい。そして山口県の優良な在来品種を発掘調査して保存管理することだ。そして山口県でも市会議員や県会議員の力を借りながら種子条例をつくってほしい。山口県ではこのままでは原原種がつくれなくなる。日本には在来種を保全する法律がないので、県で在来種を保全する条例をつくって、在来種を発掘調査して農家に貸し出す制度をもうけたらいいと思う。
実は現状では民間企業が「育種知見などを提供しろ」といえば、種苗法と農業競争力強化支援法八条四項に基づいて断ることはできない。法律的にいって「譲渡しない」という条例はつくれないが、育種知見の譲渡を厳しくするという条件はつくることはできる。
例えば民間企業が、山口県のコメの登録品種である「せときらら」の知見を提供しろといったときに、農業者、消費者、学識経験者を入れた審議会をもうけて、2年かけてアセス調査をし、品種提供でどういう影響が出てくるかの調査をする。そして意見をとりまとめて県議会に報告し、県議会で4分の3以上の同意がなければ育種知見は提供できないといった厳しい条件をつくる。場合によっては、県民の税金でつくった知的財産であり、県民の住民投票によらなければ提供できないという条例でもいい。そういう条例は合法だ。事実上、やれば阻止できる。
愛媛県今治市では、市の承諾なくして遺伝子組み換え農産物をつくったら半年以下の懲役と、50万円以下の罰金を処するという条例をつくっている。市の承諾を得るのに4つの条件をつけている。また北海道の遺伝子組み換え農産物に関する条例は、遺伝子組み換え農産物を事実上、作付けできないようにしている。それが地方自治だ。法令に反しない限りの内容で条例をつくることができる。
日本は明治以来、中央集権国家だった。だが今の法律では国と地方自治体は同格だ。地方分権一括法は、国の地方自治体に対する指揮命令監督は一切禁止になっている。泉佐野市はふるさと納税に関する総務省通知に対して裁判で争い、泉佐野市が勝訴した。最高裁の判決では「国の通知はたんなる助言に過ぎない」と出された。例えば山口県の防府市として「学校給食を有機食材にする。無償にする」という条例をつくれば、市は従わないといけない。韓国ではそうやって各市町村が条例をつくって学校給食を無償化し有機食材にした。
私たちは主権者であり、私たちが地方を動かし、国を動かすことができる。種子条例が25道県でできたことはいい例だと思う。あきらめることはない。動けば必ず結果は出る。
日本のタネを守る会の会長は、JA茨城中央会の会長だ。タネの会には24のJAが入っている。昨年の種苗法改定に対しても、各地のJA組合長が反対し、各市町村から種苗法改定反対だという声や意見書が次々に出された。例えば北海道197の市町村のうち4割の市町村が、たった1カ月のあいだに検討して意見書を出した。審議の見送りや慎重論を唱える動きが全国200ほどの地方地自体から出された。県議会からも2、3カ所上がっていた。
全国各地がみんな動き出している。学校給食についても千葉県いすみ市では学校給食に地元でとれた無農薬の有機米を100%使用し、野菜もジャガイモ、玉ねぎ、大根、人参など7種類をすべて有機食材でまかなえるようになった。愛知県東郷町とか長野県松川町や熊本県山都町などでも給食の有機食材化が進んでおり、本気でやればなんでもできる。昨年9月25日に東京都世田谷区で「学校給食を有機食材にする全国集会」があった。今年4月中には、全国各地のみなさんがネットでつながって学校給食を有機食材にするネットワークを立ち上げる予定だ。ぜひ環境保全型農業会も団体として参加していただきたい。福岡県では「給食を有機食材にしてほしい」という署名を集めて知事に出したら、知事から前向きな回答がきたという知らせがきた。全国が動き出している。日本の政治が変わるには地方が変わらなければいけない。私たちが変われば、地方が変われば政治は変わる。私たちが動かなければ、私たちの周りは動かない。私たちの次の世代の食の安全を守るには、今、動かなければならないと思う。
実際に地方で種子条例制定が広がり、国会で種子法廃止復活法案の審議も始まった。学校給食を有機食材にしようという動きがどんどんできてきた。あらゆる動きが地方で始まっている。日本を変えるのは今からだ。
給食のパンに使われるせときらら、これは遺伝子組み換えではないのですか?遺伝子マーカーを使っていると見たので心配しています。
tppから脱出せねば。脱退して自国の余剰地で全て作ろう。やる気になれば国内で増やす事は可能。誰の国なんだろうね。