■亀有駅前(告知なし) 7月1日(水)
5日に投開票を迎える東京都知事選は最終盤に入った。れいわ新選組公認の山本太郎陣営は、都内各地でのゲリラ街宣を連続的におこないながら、最終日に向けてラストスパートに入っており、街宣では非正規雇用で働いている30代、40代、50代の当事者もマイクを握ってコロナ禍における過酷な労働や生活の実態を訴えるなど、有権者を主体に都政変革の気運を盛り上げている。
7月1日、葛飾区亀有駅前での街頭演説には、風雨をついて多くの通行人が足を止め、山本太郎の訴えに耳を傾けた。
山本氏は「昨年春に一人でれいわ新選組を旗揚げをした。緊張感のない国会の中で、与党からも野党からも嫌われるような、国会内部の余計なことを皆さんにお知らせするような勢力が拡大していけば、国会の中に緊張感が生み出せるのではないかと考えたからだ。さらに20年続くデフレのなかで、“デフレの脱却を目指す”といいながら、本気にならない政治を解消するためには、国が皆さんに大胆な財政出動をし、生活を底上げしていくことが必要だ。そのために自分自身が総理大臣になってそれを実行したいと思ったからだ」とのべた。しかし、新型コロナの感染拡大によって東京都内では多くの人々が収入を減らし、職を失い、20代から80代の人までの人々が路頭に迷っている状況を目の当たりにし、「コロナ禍の前から4割もの非正規労働者がおり、今月やっと乗り切れるくらいの給料で命を繋ぎ、1週間も収入が途絶えたら家賃が払えなくなる状態だった。一度でも不況、自然災害、感染症拡大が起きればたちまち路上に追いやられる。どうして国はここに手当てをしないのか。どうして東京都はここに本気にならないのか。個人による支援活動ではまったく追いつかない。路上で出会った人たちは、全部自分のせいだというが、それは違う。小泉、竹中の時代から自己責任、自助、共助が振りまかれ、国に頼るなという考えが刷り込まれてきたのだ。それでは政治はなんのためにあるのか」と訴えた。
「政治の役割は、あなたが安定した生活を送れるように最大限の努力をすることだ。その約束のもとに、あなたは税金を支払っている。このバランスが大きく崩れている。コロナのような大災害ともいえる事態に陥ったときこそ、国は通貨発行権を行使し、お金を刷ることによって人々の生活を底上げし、会社を倒さない、失業者を生み出さない、飢える人を作り出さないようにする。それこそが経済政策であるはずだ。それを国がやらず、配られたのは二枚のマスク、10万円は届かない。皆さんに頑張れという前に、今頑張るべきは政治だ。それを実行するために知事選に立候補した」と呼びかけた。
ゲストとして、フリーランスとして働く女性もマイクを握り、次の様に訴えた。
「百貨店を中心に仕事をしている。コロナ災害で百貨店が休業した4月上旬から5月末までは失業状態。自粛中は自宅でできる仕事を少しもらったが、収入は3分の1以下となり、生活困窮に陥った。独身なので、収入ダウンは生命に関わる大問題だ。ようやく国の休業補償が決まり始めた四月末ごろ、どんな補償を受けられるのか役所へ相談しに行った。提示されたのは融資貸付だけで、持続化給付金の対象にならないと説明された。驚いたのは、窓口の方もネットで上がっている内容しか知らず、説明を受けてないということだ。役所が機能しておらず、脆弱なシステムであることに気づいた。役所で提示された家賃補償を受けようと問い合わせても、私の場合、収入が3分の1にダウンしていても補償が受けられなかった。収入が月8万円以内でないと対象外なのだ。家賃補償は5万円ほど。全額出たとしても家賃との差額は、収入8万円の中で自己負担しなければならない。東京で単身で家を借り、きちんと税金、保険、光熱費を払ったらとても暮らしていけない。“食べないで生きろ”と言われているように思い、目の前が真っ暗になった」
「友人がいろいろ調べてくれ、役所で対象外といわれた持続化給付金を受けられることを知り、藁をもつかむ思いで申請したが、私は昨年、フリーランスと正社員の収入があり、雑所得で確定申告をしていたため対象外となってしまった。目の前がさらに真っ暗になり、お金の不安で押しつぶされる苦しい毎日を過ごした。その後、国会で雑所得や給与所得のフリーランスも給付をするべきという議論が高まり、6月末からようやく受付が始まっているが、雑所得も給付対象にしてほしいと声を上げると“浅ましい、お前の頭の中は金だらけだ。お前の能力がないから仕事がないんだ。自業自得だ”と心ない言葉をかけられることもあり、私は絶望した。海外のコロナ保障を調べるとニュージーランドやドイツなど、ロックダウン後すぐ4カ月分の生活費が振り込まれ、8割休業補償されたと知り、この国の異常さを確信した。なぜこの国は困っている人をすぐ救う制度になっていないのか」
「人はウイルスだけではなく、貧困でも死ぬ。補償なき自粛は殺人に値する。補償を求めるのはお金に浅ましいからではなく、生きたいからだ。私は政治に無関心だったツケを今回、痛烈に味わった。政治は生活だ。直結している。第二波が来て、また補償なき自粛を強いられるのは本当にもうご勘弁願いたい。太郎さんに先頭を託すが、太郎さん一人に任せるのではなくもっともっと横に拡がって私たちが続いていくことで、この状況を変えていける。必ず変わる」。
山本氏は「多くの人々が倒れ、生活苦が生まれ、それが広がっていけば、回り回ってお金持ちや自称勝ち組と呼ばれる人たちも、最終的に財を減らさざるをえない。社会はひとつであり、みんなで回しているのだ。その根本を見つめ直すならば、底上げをしていけばしていくほど全体が豊かに向かって行く。その方向性を示し、実現させるのが政治の役割だ」とのべ、コロナの災害指定、都債15兆円を元手にした都民への10万円再給付、中小事業所への損失補てん、授業料1年間無償化、医療従事者やエッセンシャルワーカーへの危険手当、都立病院の独法化阻止などの具体的政策をのべた。
さらに「これまで経団連が3割の組織票で子飼いの議員を国会のみならず議会に送り込み、自分たちの都合のいいルールを作ってきた。コロナ災害にあっても電通、パソナへの給付金が優先される。その政治のコントロール権を皆さんの元に取り戻そう。新聞報道では小池さん独走といわれるが、約3割の345万人の投票先は決まっていない。私は絶望してない。政治は変えられるし、その鍵を握ってるのは皆さんだ。あなたが生きてるだけでも価値があるという世の中を作るのが政治の役割であり、それをコントロールしていくためにこの選挙はとても重要だ。東京を変えて日本を変えていく。東京から永田町を揺らしていこう。空気は読まない! 空気を作ろう!」と、力の結集を呼びかけた。
雨が降りしきるなかでも聴衆の数は増え続け、演説に聞き入っていた子どもを抱いた母親、家族連れ、高齢者、学生まで多様な人々が拍手を送った。
■小岩駅前(告知なし) 7月2日(木)
2日の小岩駅前でのゲリラ街宣には、種子法廃止や種苗法改定の阻止に向けてたたかっている元農水大臣の山田正彦氏も応援に駆けつけた。山田氏は「出馬会見を聞いて心が震えた。私の長い政治生活のなかで、これほど弱者の側にたって命懸けでたたかう政治家は他にいなかった。東京都が変われば日本も変わる。地方自治法、地方分権一括法によって東京都と国は同格だ。法律に反しない限り、東京都は国に臆することなく独自政策を実行できる立場にある。金太郎飴のように国に従う自治体ではなく、本気で都債15兆円をはじめとする政策によって、コロナ禍から都民の生活を守れるのは山本太郎さんしかいない」と呼びかけた。
終盤戦に遊説した下町地域では、コロナによる営業自粛によって苦しんできた商店主たちが演説内容に共感していた。
葛飾区内の商店街役員の男性は「コロナ禍で都知事選の街宣ができず、このまますんなり小池の続投が決まっていいものかと思っていた。ここまで消費が冷え込んだのだから、時限立法的にも消費税をゼロにするなどしなければ、わずかなお金を配るだけではインパクトがない。その意味で山本太郎が訴えている消費税ゼロには共感するし、東京五輪もゴリ押しするのではなく、無理であることをはっきり言っていることも支持したい。コロナによる自粛で商店街は客足が減り、1日のお客がゼロの日もあった。都は飲食店やナイトクラブなど限られた休業店舗に50万円の協力金を出すといっているが、それ以外の店は救われない。小池知事は都の貯金を9割以上使い果たして、起債をしたくないから基準を撤廃して自粛要請も補償もしない方針だ。“カネがないから後は知らない”という話でコロナ感染が止められるとは思わない。自民党員ではあるが、一番考え方が近いのが山本太郎だと思っているし、都民を守るためならば、借り入れをしてでも守るべきときだと思う」と話した。
酒屋を営む80代の男性は「いいかげんな政治のおかげで国民の生活は惨憺たる状況になった。野党も経済的な問題で与党を追及しようとはしない。そのなかで山本太郎が政府が10万円配ったのを逆手にとって“もう10万円配る”といっているのがおもしろい。うちの店も昨年12月から500万円以上の赤字。都が50万円の協力金を出すというので80軒ある商店街のほとんど休業してしまったが、いまだにその50万円は入っていないという。私も客が激減した五月は支払いのために250万円を20日間で用意しなければならなくなって苦しかった。しかも昨年からは40%減で、50%減に達してないから持続化給付金の対象にもならなかった。それでも一昨年と比べると60%減だ。リーマン・ショックのときはまだ余裕があったが、いまは元手がないから持ちこたえる余力がない。とくに小泉改革で酒屋の免許を規制緩和し、全国で3万5000店もの酒屋が潰れ、3000人以上が自殺した。これは業界紙で知ったが、一般紙は扱わなかった。亀有でも34店舗あったのに4店舗までに減った。そしてコンビニや量販店が増えて酒屋が力尽きていたところにコロナが襲ってきた。政府がなにかやるたびに生活は苦しくなる。国民の生活のことを何も考えていない膠着した政治を揺り動かして、政治をおもしろくしてもらいたい」と期待を語った。
支援団体で活動する女性は演説を聞き、「コロナでホームレスになった人に声を掛けると身分証を持っていても、生活保護を受けることをためらわれる。“自分は今夜はガード下にいくから……”といって遠慮する人が多い。電車の人身事故が増えているのも、経済的に、精神的に追い詰められている人が増えていることと関係している。本来は国がきちんと救済するべきなのに、放置しているから東京都から変えるしかない。山本太郎さんが小池都政を追い詰める勢いが持てるまで、私も周囲に広げたい」と意気込みを込めて語った。
■新宿駅西口 7月2日(木)
新宿駅前での街宣には、馬淵澄夫衆議院議員や須藤元気参議院議員がゲストとして登壇。馬淵氏は、作家ヘルマン・ヘッセの言葉を引用し「鳥は卵の中で戦う。卵は世界だ。生まれ出ようと欲するものは、ひとつの世界を壊さなければならない。まさに新しい政治をつくって、生まれ出ようと、新しい日本をつくろう、新しい東京をつくろうという者は、政治を変えようとする者は、壊さなければならないものがある。それこそが古い政治だ。できないばかりを言っている政治ではなく、何が必要かを考えて真っ先に行動する政治。その先頭に立つ山本太郎さんを、全力で支えよう」と力強く呼びかけた。
また、コロナ不況のなかで何十年も勤めてきた会社からクビを宣告された50代の男性も登壇し、「コロナで仕事を一瞬で追われたり、失業して心の病気になって引きこもってしまったり、追い詰められて精神のバランスを崩したり、本当にたくさんの人が今でも苦しんでる。これまでは“自分さえよければいい”と、そのことを他人事のように見ていた。この無関心がこんな社会をつくったのではないのか。無関心、諦めはもうやめたい。皆さん一人一人で、僕らの未来を変える行動をやろう」と訴えた。