真水はわずか32兆円
れいわ新選組の山本太郎代表は5月28日、ユーチューブによる動画配信で、安倍政府が「世界最大のGDP比四割」として発表した第二次補正予算の内容について、真水(政府支出)部分がGDP比のわずか1割程度の粉飾予算であることを指摘し、さらに真水部分にも「上げ底」が施されている可能性について注意を喚起した。以下、山本氏の主張の概略を紹介する。
安倍首相は5月25日の第二次補正予算を発表した記者会見で「先般の補正予算と合わせ、事業規模は200兆円規模をこえる」「GDPの4割にのぼる空前絶後の規模」「世界最大の対策」「この100年に一度の危機から日本経済を守り抜く」と威勢よくのべた。しかし、だまされてはいけない。事業規模と真水とは意味合いがまったく違う。
第一次補正の事業規模は117兆円。4月30日、安倍首相は「雇用と生活は断じて守り抜いていく。GDPの2割にもあたる事業規模は世界的にも最大級」と自負した。だが事業規模とは、GDP(国民総生産)を間接的に増やすかもしれない対策であり、確実性はない。この117兆円のなかには、納税・社会保険料の猶予予算として26兆円(猶予分は後で支払う義務がある)、民間支出(あくまでも予測)の42・7兆円などが含まれている。当然にも額は大きくなる。
一方の真水は、GDPを確実に直接増やす効果のある対策(政府の財政出動)だ。一次補正の117兆円のうち真水は25・6兆円程度だ。GDP比では4・7%にしかならない。いかに安倍首相が数字の「上げ底」をしているのかがわかる。
そして、二次補正の事業規模も一次補正と同程度の117兆円だ。5月27日に発表された予算額(真水)は、32兆円だ。事業規模のGDP比は21・1%だが、真水だけで見ると5・8%にしかならない。
この二つの補正予算をもって安倍首相は「事業規模200兆円」「GDPの4割」と豪語したが、真水は57・5兆円。実際にはGDP比で1割でしかない。
さらに、京都大学大学院の藤井聡教授(元内閣官房参与)は、第二次補正の真水約32兆円の中身をチェックし、真水部分にも「上げ底」が見られると指摘している。
真水は三つのパートに分かれている。第一パートである通常の真水(約10兆円)は、適正に執行されれば日本国内のマーケットに注入されるものだが、第二パートは「企業資金繰り支援」(約12兆円)だ。これは融資、投資の部類で「貸付」分に相当する。「後で返せ」という話になり、資金が注入されたことにはならない。枠いっぱいに貸し付けて「劣後ローン」(十分な黒字が出ない限り債務者に返済義務がない)にすれば真水として機能するが、積極的に貸付業務をおこなわなければ、支出されることなく終わってしまう可能性もある。
そして第三パートの予備費(10兆円)は、支出項目が確定してない。財政再建の観点からこの予備費を「使い切るな」という財務省見解に従った論調が見られるが、その通りに執行されれば最悪0円となってしまう。
以上を踏まえると、予備費と資金繰り支援のための合計22兆円の予算は、緊縮の態度をとれば「真水0円」となってしまうという指摘だ。藤井教授の懸念通りにことが進めば、真水はわずか10兆円となり、GDP比で1・8%だ。この政府の「上げ底」による偽装は注視していく必要がある。
れいわ新選組は、まず真水で100兆円、さらに追加で100兆円の財政支出で国民生活を底上げし、コロナによる経済萎縮の補てんをすることを緊急提言している。緊縮論にとらわれて、もたもたしている暇はない。これ以外に、この国に生きる人々を救う道はないと考える。