いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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腐敗、堕落、劣化の極み 体為さぬ疑惑まみれの国会 記者座談会

 国会が開会し、さっそく安倍「一強」体制のもとで起きた「桜」「IR」「二閣僚辞任」などの腐敗・私物化問題に焦点が当たり、例の如く安倍政府は誤魔化しと隠蔽、はぐらかしに終始している。モリカケしかり、権力の私物化を根源にした薄汚れた疑惑が次から次へと浮上するが、その度に「人の噂も75日(季節の変わる周期で忘れられる)」でやり過ごし、結局のところモリカケに至るも疑惑は何ら解明されていないばかりか、記録を改ざんし、桜にいたっては名簿をシュレッダーにかける等等、統治機構の在り方もぶっ壊れたかのような事態が続いている。カネに小汚い議員たちも甘利明を筆頭に辞職することなく野放しである。安倍政府はなぜこれほどまでに腐敗堕落し、弛緩しきっているのかを考えたとき、それは地位を脅かす脅威がなく、安住できると確信しているからであり、官僚機構もメディアも相互浸透の作用をともなって右へ倣えで腐敗と劣化を極め、さらに対抗する本気の野党が実質的に皆無だからにほかならない。国会及び支配機構の上層ではアメリカに見初められるという大前提を基礎に「一強」が担保されているのである。こうした政治状況を打開する展望はどこにあるのか、記者座談会で掘り下げてみた。

 

               

  桜を見る会を巡る疑惑も、IR誘致で自民党議員たちが中国企業から賄賂をもらっていた話も、二閣僚の辞任も、既視感すら覚える。慣らされるわけにはいかないが、「歴代最長の政権」はこんなことの連続で、とことん日本の政治は低俗なものになったという印象だ。昔からそうだったのだろうが、本性を欺瞞すらしなくなったことを痛感する。どいつもこいつも「今だけ、カネだけ、自分だけ」が丸出しではないか。IRでカネを受けとっていた議員たちも引き続き議員職にしがみついている。昔ならいったん議員辞職して、禊をして選挙に挑むのが当たり前だったが、けじめもなく議員をやっている。広島選出の河井克行にしても法務大臣が違法行為に手を染めて辞任するなど前代未聞だ。行為そのものは小物感を漂わせてもいるが…。みんな安倍晋三にならって、誤魔化してほとぼりが冷めるのを待つようなのだ。

 

  公の場に出てきたと思ったら「捜査中なのでコメントは控える」とか、逃げる際の決まり文句も出来上がっている。とにかく、次から次に自民党を中心とした腐敗案件が飛び出てきて、しかもヌルっと開けて通されている。上が桜で公私混同なら大臣たちは公職選挙法違反、その下っ端も海外企業から小遣いをもらっている。みんなして腐っているし、それが当たり前みたいになっているところに特徴がある。“腐ったみかん”状態のようにも見える。これでよく法治国家を名乗るものだと思う。小沢一郎の時はあれだけ大騒ぎした捜査機関もまるで動こうとしない。だから、安心しきっている。

 

 C きりがないというか、あまりにもオンパレードで「どうしようもない状態だな…」「腐りきっているじゃないか」と取材先でもよく話題になる。国会なり政府の腐敗堕落、そして劣化が著しく進行してきたのがこの8年の到達ではないか――と。諸々の私物化疑惑にしても歴代政権ではあり得なかったことだ。総理夫人が口出しして国有地が実質無償で払い下げられた森友事件など、通常なら一発退場モノのはずだ。ところが隠蔽に隠蔽を重ねて今日に至っている。そして、籠池夫妻の口封じをしただけで真相は何ら明らかになっていない。臭い物に蓋だ。むしろ憲政史上においてこのような政府が最長であるという現実こそが問題だろう。だからこそ、なぜ最長でいられるのかを考えないといけないのだ。

 

日米FTAの合意書を交わした日米首脳会談(9月26日)

  安倍政府になってから、一連の私物化疑惑が騒動になる一方で、安保法制や特定秘密保護法、TPPや日米FTAの国会承認、水道法や種子法、入管法の改定、消費税増税と法人税の減税、さらに最近では自衛隊の中東派遣をはじめ、アメリカの対日要求はみな丸呑みしてきた。何なら、私物化騒動にメディアをフル動員して目先をそらしつつ、国会審議もろくにやらずに重要法案を通過させるのも手口の特徴だ。国会内で自民党が圧倒的多数の議席を占める「安定」した状態のもとで、多国籍企業や独占大企業が望む政策が実現できるのなら、これらの背後勢力にとっては使い勝手の良い政府ということになる。「私物化に目がないが、行けるところまで安倍晋三に突っ走らせよう」という力が明確に働いている。アベノミクスや日銀による異次元緩和の恩恵を被り、戦後最長の好景気なるもので潤ってきた側からすれば、小汚い少々の利権には目をつむりつつ、この状態が少しでも長く続くことを願っていることは容易に想像がつく。その利益を侵さない従順な政府であるなら、アメリカであれ従属する独占企業であれ、利害は一致する関係だ。確かに低俗極まりないが、なにも考えない反知性主義者が突っ走るという側面をフルに活用している。都合が良いのだ。

 

 A 国益を心配して日米FTAを拒否したり、韓国のように軍隊の中東派遣を拒否したり、水道法や種子法など、国民の食料や水に関わる部門への外資の介入を許さない判断を加えるような障害になる政治家は邪魔なので、何でも丸呑みしながらせっせと私物化に勤しんでいるような者を登用する。霞ヶ関の官僚もそうした力関係や判断がわかるからこそ内閣人事局を忖度し、出世のために面従腹背している。とはいえ、中央省庁では20~30代の若き官僚たちの離職率がすごいことになっているともっぱらだ。「3割くらいいっているのでは?」という指摘もあるほどだ。賢い人材が実現したい政策などの志を持って入省するものの、安倍政府のもとで官僚世界の在り方に幻滅して去っているという。

 

  政治が国民の暮らしについて何ら心配せず、もっぱらアメリカや多国籍企業、独占大企業に奉仕するために機能している。そのために尽くす駒として安倍晋三なり、その界隈で固めた首相官邸が力を握り、内閣人事局なりが官僚世界をも締め上げているなら、その独裁的な力が彼らにとっての「安定」になる関係だ。とにもかくにも安倍晋三だけは引きずりおろしたいという「反安倍」の向きもあるが、誰が首相になろうがこの関係は変わらない。下品な私物化政治は多少収まるかも知れないが、次なる安倍晋三が出てくるのだ。歴史的にずっとそうなわけで、対米従属のもとでアメリカの要求を従順に聞き入れ、なおかつ日本の独占大企業の利害のために貢献する。それこそが自民党だ。

 

 岸信介や吉田茂から数えて3代目の代まできて、政治家の劣化が顕著にあらわれているし、これらがムキ出しの私物化をやった結果、統治への信頼をぶっ壊しているという側面は捉えておく必要がある。曲がりなりにも国民を欺瞞しつつやってきたのが、欺瞞力を失い、権威を失っているのが今日の政治の特徴だ。

 

自公の25%支配 選挙行かぬ5割がカギ握る

 

  では、自民党は本当に強いのかだ。2017年10月の前回衆院選の結果を見たら分かるが、投票率が50%そこらの選挙において、自民党は選挙区での得票率は25%。その内実は比例の得票率である17%に公明の7%プラスアルファを上乗せした数字であることがわかる。選挙区では公明党なしには選挙をたたかえないまでに足腰が衰えている。一方の野党がこれもまた有権者から相手にされていないものだから、すべての得票を足してようやく自民党と互角くらいなのが実態だ。といっても、解体した希望や維新といった自民党補完勢力も「野党」なわけで、これらは対抗勢力でも何でもない。もっとも重要なのは、5割が棄権しているという点だ。

 

 現在、野党共闘が盛んに叫ばれているが、泡沫政党の得票を足したら自民党に勝てるなどと考えているのなら愚かなことだ。なぜなら、自民党も含めて全ての政党に信頼が乏しく、そのために5割もの有権者が選挙から離れているからだ。れいわ新選組の山本太郎が「選挙に行かない5割の有権者に訴えを届ける」と行動を始めているが、自公の25%支配を本気で覆すなら、まさに政治不信で外野席に追いやられている5割とつながり、その生活の困難や実態に心を寄せ、新しい政治勢力としてともに街頭から立ち上がっていくというやり方がもっとも現実的だ。そうでないと、支持率数%の泡沫政党にも有権者の大半は嫌気をさしており、だからこそ泡沫なわけで、これらから「反安倍で野合するから支持せよ」といわれても何の展望にもならない関係だ。自民党と同じように「オマエたちもふざけるなよ!」と思われているのだ。

 

 その政治不信に風穴をあけようと動きはじめているのがれいわ新選組で、次期衆院選では台風の目になり得るのではないか。手練手管ではなく、全国津々浦々で街宣をとりくみ、足を使って正攻法で挑んでいる。いわゆる労働組合や団体のまとまった組織票など持ち合わせていないため、組織力でいえば劣るかも知れないが、旧政治勢力との違いが鮮明になって支持を広げている。戦後75年続いた対米従属構造のなれの果てともいえる旧政治に対して、真っ向勝負を挑んでいく存在になり得る。

 

  国会のなかも、自民vs民主だったころからは随分と様相が変化している。野党が分解しているのが一つの特徴だ。その端緒になった前回の衆院選は相当に陰謀じみていた。民主党が民進党に名前を変え、その代表である前原誠司がみずからの党を解体して希望の小池百合子と合流し、野党殲滅に加担した。選挙で負けることがわかりきっていたのに大政奉還した野田と同じく、自民党と通じた鵺(ぬえ)みたいな動きをした。あれは明らかに野党殲滅が動いていた選挙で、対抗する者がいないなら自民党が大勝することはわかりきっていた。旧民主党の解体でアシストしたようなものなのだ。

 

 しかし、小池百合子が民主党内の左派を切り捨てたところで、行き場を失った枝野をはじめとした面々が追い込まれた末に立憲民主を立ち上げ、街頭から押し上げられる形で思いのほか議席を獲得した。立憲からすると野党殲滅に激怒した有権者の力によってかつがつ首の皮をつないだ関係でもある。しかし、その後がどうだったかというと、とくにパッとした印象もなく埋もれ、最近では希望から枝分かれした国民民主すなわち元々の旧民主党右派との合流協議なるものを延々とやっている状態だ。希望の党に移った際、仲間を切り捨てる役割をした細野豪志は与党願望を丸出しにして自民党二階派に籍を置いているような始末だ。

 

  立憲民主にせよ、国民民主にせよ、民主党政府になって国民を裏切った連中にほかならない。米軍再編問題や辺野古基地建設、岩国基地建設しかり。原発政策や消費税増税、TPP参加など、政権をとったら自民党と同じことをやり始めて、総スカンをくらって解党まで追い込まれた。鳩山退陣、検察による小沢つぶしなどさまざまな経過を経て、菅直人、野田佳彦まで行き着いた。枝野といっても、あの東日本大震災の福島事故で、「直ちに影響はありません」を連呼していた男であって、「ふざけるなよ!」という感情は今もって払拭されていない。彼らの性根は暴露されているのだ。

 

  いわゆる野党共闘なるものが安倍自民党を引きずりおろすシンボルのようにいわれているが、旧政治の残存物のような政治勢力の寄せ集めに、果たして期待を示す有権者がどれだけいるというのだろうか。確かに目前の手の問題としてはわかるが、最終的にはもっと乗りこえた動きをつくり出すこと、それこそ選挙から離れている5割とともに政治を下からひっくり返すような力を結集していくことにしか展望はないのではないか。その志が必要だ。誰のために政治を為すのか、国民のためである--という確固とした理念を掲げて、具体的政策をうち出すことが求められている。政権をとったら知ったことかというような前科がある者は信用されないし、裏切った者は旧社会党のように泡沫でも何にでもなるほかないのだ。それは必然だ。

 

  選挙に5割の有権者が行かない。この政治不信のおかげで自民党の25%支配が続き、今や腐敗堕落しきっている。野党も野党で、批判しているポーズをしながら机の下で手を握りアシストするのがいる。そのもとで脅威がないものだから安倍政府が好き放題をしている。ほかに泡沫政党しかいないのだからあたりまえだ。緊張感など生まれない。

 

 戦後は55年体制が続き、自民党vs社会党の時代もあったが、社会党は村山富市が自民党と野合して首相になって総崩れとなり、その後は民主党が登場したが、先ほど話したような経過をたどって今日に至っている。労働組合がまだ資本とたたかっていた時代には、社会党の強力な基盤になっていたが、今や総評つぶしで出来上がった連合といっても完全なる御用組合で、消費税増税を主張したり、働き方改革で政府とタッグを組んだりしている始末だ。それこそ労働組合の腐敗もひどい。

 

  米ソ二極構造の崩壊や社会主義国の変質も影響しているが、労働運動が退潮していくなかで、国民全体は個々バラバラな状態に置かれ、組織されない個々の労働者なり国民はやられっぱなしになってきた。そこに新自由主義政策がもちこまれ、今や多国籍企業や独占企業にとって天国のような国に変貌している。企業がもうけやすい国、つまり搾取し放題が法的にも許され横行しているから、みんなが貧困にあえぎ、子どもの7人に1人が貧困で、20~30代は貯蓄ゼロが大半を占め、シングルマザーの貧困なども増大している。しかし、一方で本気でたたかう政治勢力が壊滅状態となり、政治の世界ではせいぜい泡沫野党が与党批判をしている程度。これでは幻滅するのも無理はない。

 

 このなかで、あきらめや幻滅ではなく、みんなでまっとうな日本社会をつくっていく力を束ねていくこと、新しい政治勢力として無視できない力を登場させていくことが切実に求められている。れいわ新選組が急速に支持を広げているのは、そうした旧政治に失望してきたみんなの思いが全国に渦巻いているからにほかならない。本紙も全国ツアーを取材して感じたことだが、聴衆であれボランティアであれみんなが本気なのが特徴で、見ず知らずの仲間たちが縦に横につながりを強めている。次期衆院選ではとくに選挙区で力を示すのは相当な困難性があるかもしれないが、旧政治vs新政治の過渡期にあって、どこまで押し上げていけるかが注目点になる。かさぶたとなっている過去の遺物をぶち破っていくことで、新しい変化を生み出していけるのではないか。

 

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