スイス金融大手のクレディ・スイス銀行が世界の富に関する最新の報告書「グローバル・ウェルス・レポート(2019年版)」を発表した。それによると世界人口のわずか1%の最富裕層が世界の富の約44%、また上位10%が82%の富を占有している。一方、人口の半数以上を占める低所得層が保有する富はわずか1・8%だった。略奪的な金融システムとグローバル化による新自由主義が世界を覆うなかで、1%が99%を搾取する資本主義の末期的な症状が改めて浮き彫りになっている。
報告書によると、世界の全人口(成人)のうち保有資産1万㌦(109万円)未満の人々が56・6%(約29億人)を占め、同じく1万~10万㌦(109万~1090万円)が32・6%(約17億人)、10万~100万㌦(1090万~1億900万円)が9・8%、100万㌦超が0・9%という比率になっている。一方で、人口の半数以上が保有する富は全体の1・8%に過ぎず、わずか0・9%(4680万人)の富裕層が全体の44%を占有している【図参照】。
下位半数以上が保有する資産総額が6兆3000億㌦であるのに対し、わずか0・9%の保有総額は158兆300億㌦という天文学的規模にのぼる。
報告書は、中間層が増加したのは中国やアジア諸国、南米(ブラジル)の経済成長にともなうものと分析しているが、全体として格差拡大の趨勢は是正されていない。
最も裕福な上位10%に入る中国人が1億人にのぼり、米国人の9900万人を上回った。これら10%の富裕層が保有する資産は、世界の富の82%にのぼる。5億㌦(545億円)超の純資産を持つ超富裕層(UHNW)の数では、米国(約8万人)が全体の48%を占め単独トップで、中国(約1万8000人)、ドイツ(6800人)、英国(4640人)が続く。過去1年間で世界の富は2・6%増加したが、その多くが超富裕層の資産として蓄積されたことを示している。
報告書は、地域別や大まかな資産範囲の統計にとどまっているが、より厳密にみるなら平均資産の高い米国や中国の国内での格差拡大も著しく進行しており、各国で貧しいものから富めるものへ富の移動が続いている。
国際NGO「オックスファム」の報告書(今年1月)によると、世界の大富豪トップ26人が世界の半数38億人の総資産と同額の富を所有し、世界のわずか1%の超富裕層の資産が、残りの99%が持つ資産総額を上回ることが明らかになっている。
働いて社会を支える大多数の人人の生活が削られて貧困化が進む一方で、みずから富を生み出さず、金融資産を弄んで利潤を貪る一握りの富豪による社会の私物化が進んでおり、その世界的な矛盾は今後さらに高まらざるをえない。