いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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320万人で死に足りぬか 国会で「八紘一宇」絶賛  往生できぬ軍国主義の亡霊

 参院予算委員会で自民党女性局長の三原じゅん子が「八紘一宇」を大絶賛して物議を醸している。NHK会長の籾井にしろ、経営委員の長谷川三千子、作家の百田尚樹、世界観を共有する田母神俊雄、その他の極端な女性の右傾化大臣たちにせよ、安倍政府になって周囲でとり立てられてきた人物たちを見てみると、かつての第2次大戦で敗北して葬り去られていた天皇制軍国主義を正当化し、320人の国民を死に追いやった戦争指導者の亡霊と共に敗者復活戦を挑んでいるのに特徴がある。戦争責任を何らとらなかった側が開き直って暴れ回る姿に憤激の世論が高まっている。
 
 今度は米軍の肉弾で命差し出す

 三原じゅん子はドラマ『三年B組金八先生』でツッパリ生徒役をしていた女性俳優で、2010年の参院選比例区で自民党が国会議員としてとり立てていた。本人が安倍自民党で出世街道に乗るために覚えたての言語を披露したのかあるいは質問を用意した背後が意図的に仕込んだのかわからないものの、国会議論の中心は租税回避(タックスヘイブン)問題であったのに、唐突に「八紘一宇」発言が飛び出して人人を驚かせた。本人の発言を見てみると、
 三原じゅん子 今日皆様方にご紹介したいのが、日本が建国以来大切にしてきた価値観、八紘一宇であります。八紘一宇というのは、初代神武天皇が即位の折に「八紘(あめのした)を掩(おお)ひて宇(いえ)と爲(なさ)む」とおっしゃったことに由来する言葉です。
 昭和13年に書かれた『建国』という書物がございます。「八紘一宇とは、世界が1家族のように睦みあうこと。一宇、すなわち一家の秩序は一番強い家長が弱い家族を搾取するのではない。一番強い者が弱い者のために働いてやる制度が家である。これは国際秩序の根本原理をお示しになったものであろうか。現在までの国際秩序は弱肉強食である。強い国が弱い国を搾取する。力によって無理を通す。強い国はびこって弱い民族をしいたげている。世界中で一番強い国が、弱い国、弱い民族のために働いてやる制度ができたとき、はじめて世界は平和になる」ということでございます。 
 これは戦前に書かれたものでありますけれども、八紘一宇という根本原理のなかにですね、現在のグローバル資本主義の日本がどう立ち振る舞うべきかというのが、示されているのだと私は思えてならないんです。
 というものだった。

 出世の為に「右翼」弄ぶ 売国政治を糊塗 

 「八紘一宇」は、かつての大戦で天皇制軍国主義が国民を戦争に動員していく際、大東亜共栄圏と結びつけて用いた侵略美化のスローガンだった。その歴史的経緯を知っていながら、戦後70年を迎えた現代に開き直って美化する動きがあらわれている。安倍政府の登場以後、取り巻きといえば「大日本帝国は正しかった」「侵略ではなかった」とかつての戦争を肯定することが「美しい国、ニッポン」の誇りであるというような、戦前回帰の思想を披露する者ほど首相から取り立てられ、政府ポストや要職についてきた。背骨に染みわたった思想というより、どれもとってつけたような右翼的言辞であり、安倍晋三に気に入られるため、出世の道具として「右翼」を弄ぶ者ばかりである。三原じゅん子もその末端で、妖怪にとりつかれたような振る舞いを始めているにすぎない。
 かつての大戦では、320万人もの邦人の命が奪われた。新興の資本主義国だった日本は市場が狭隘化してすぐに行き詰まり、侵略に次ぐ侵略を重ねていった。ところが日中戦争では中国人民の抵抗にあって大敗北を喫し、その敗退過程で今度は無謀なる太平洋戦争に突っ込んでいった。南方の島島で日本兵は飢え死にや病死をくり返し、帰らぬ身となった。最後は米国に原爆を投げつけられ、日本列島の都市という都市が空襲で焼き払われて終戦を迎えた。戦争終結にあたっては「中国で叩きのめされた」のではなく、米国に屈服する道を選んだのが天皇制軍国主義の指導者たちだった。戦後は「軍部の暴走」にみな責任を転嫁し、今度は対米従属のもとで独占資本はその地位を守られ、安倍晋三はじめとした末裔たちへ権力を引き継いできた。叩きのめされなければならなかった権力が、アメリカに媚びを売ることで生きながらえてきたのである。
 あの戦争が正しかったというなら、まず第1に320万人もの国民の生命を奪った責任を負わなければならず、戦争を知らない子どもたちだからといって開き直りが許されるものではない。国民の生命だけでなく、中国や朝鮮、アジア諸国で奪った生命についてもどのような態度をとるのか、まさに日本民族として誇りある態度とはどうあるべきか、曖昧にはできない。狭い国会のなかで自己陶酔や粋がった主張を披露するのではなく、「八紘一宇」が素晴らしいものだったと世界に向かって正面から発言すべきである。自民党は70年前の戦争指導者たちの意志を継いで、亡霊たちと共に敗者復活戦をするのだと選挙公約に掲げ、正々堂々叫んで回らなければならない。320万人では死に足りないのだと全国民に向かって訴えなければならない。
 2012年末の衆院選で安倍晋三率いる自民党政府が発足して2年以上が経過した。この間、特定秘密保護法や日本版NSC設置法を強行可決し、集団的自衛権の行使を巡る憲法解釈を閣議決定で変更し、今国会では安保法制に手をつけるなど、日本社会を戦争できる国へと導いてきた。その戦争は「邦人の生命」を守るためでも何でもなく、米軍の鉄砲玉として自衛隊を地球の裏側まで駆り出し、奴隷軍隊に成り下がるものである。
 中東に出かけるとアメリカを喜ばせたいばっかりに挑発的な発言をやり、邦人の命が奪われた。最近ではチュニジアでも日本人が殺害された。アメリカの奴隷になって経済的に貢がされるだけでなく、為政者が何の躊躇もなく日本人の生命を危険にさらすまでになった。
 国を売り飛ばした性根だけは引き継がれ、それを糊塗するように時折、歯が浮くような調子で「日本人の誇り」等等の言辞を弄ぶ。安倍戦争政府がやろうとしているのは70年前の戦争続行ではなく、米軍の奴隷としての戦争にほかならず、日本民族の誇りを投げ捨てた者にしか踏み込めない道である。

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