外交の体為さぬ日米貿易交渉
安倍首相は25日、主要7カ国首脳会議(G7サミット)が開催されていたフランスのビアリッツでトランプと日米首脳会談をおこない、日米貿易交渉で基本合意した。農産物ではアメリカ産の大幅市場拡大、自動車分野ではアメリカ側が関税撤廃を先送りするなど一方的に日本側が譲歩する内容だった。さらに安倍首相は日米貿易交渉とは別枠で、トウモロコシの大量購入を約束した。トランプは会談後の共同記者会見で「中国が約束を守らないせいで、トウモロコシが余っている。それを安倍首相が全部買ってくれることになった」と上機嫌で話した。外務省の発表ではまずトウモロコシを大量に購入したうえで、小麦の大量購入も約束している。米中貿易戦争のあおりを受けてアメリカ国内にだぶつく余剰トウモロコシや小麦を「全部買う」と引き受け、「トランプの忠犬」ぶりを見せつけている。「外交の安倍」どころか、もはや「外交」の体をなしておらず、武器にせよ食料にせよ、みなアメリカの要求を丸のみしていく売国ぶりを暴露している。
「トウモロコシを全部買う」と安倍首相が引き受けたことがいかにトランプを喜ばせたかは、もともと予定されていなかった首脳会談後の記者会見を急きょ、喜喜として開かせたことにもあらわれている。急ぎすぎて日本のメディアは同席できず、アメリカ側の記者だけで記者会見をおこなった。トランプがいかに大喜びし、またそれを米国向けにアピールしたかったかということとともに、安倍首相の立場など眼中にない絶対的な主従関係を垣間見せた。
トランプが余剰トウモロコシの全量購入を大喜びするのは、来年の大統領選挙を控え、大票田である農家票を獲得するためだ。「コーンベルト」の中心であるアイオワ州には熱狂的な支持者が多い。2016年の大統領選で勝利したが、対中貿易戦争の被害を受けて支持率が低下しており、来年の大統領選の勝敗の鍵を握る州の一つになっている。
トウモロコシの大量購入についてトランプは「アメリカ国内のいたるところでトウモロコシが余っている。中国が約束を破ったからだ。安倍総理がそのトウモロコシをすべて購入する」とのべ、さらに「小麦の大量購入もある。小麦の非常に大きな購入だ。トウモロコシに速やかに発注が入るだろう。これは日米貿易協定には含まれない。別の件として合意した」とものべている。これは外務省が発表した「日米貿易交渉に関する日米両首脳の記者会見」の内容だが、大手メディアはトウモロコシの大量購入だけを報道し、小麦については触れていない。
米中貿易戦争で、中国がアメリカからの農産物の輸入を停止しており、アメリカ農産物はトウモロコシや小麦以外にも大豆や豚肉などが輸出先を失いだぶついている。今後それらを日本に押しつけてくる可能性は高い。
トウモロコシについては、飼料用の275万㌧を数百億円かけて輸入することを約束した。これは年間輸入量の3カ月分にあたる。詳細については発表されておらず、これで終わりなのか、3カ月後にまた購入するのかもわかっていない。
中国から閉め出された米国産トウモロコシを全量購入するという報道に日本国内では一斉に批判の声が上がっている。そのため菅官房長官は27日、「ガの幼虫がトウモロコシを食い荒らす被害が九州を中心に広がっており、飼料用トウモロコシの供給が不足する可能性がある」ので米国産トウモロコシを前倒しで購入するのだと苦しい説明をした。
害虫被害については農水省自身が「通常の営農活動に支障はない」と発表している。また、日本は世界最大のトウモロコシ輸入国で、しかも輸入量の9割をアメリカに頼っている。輸入量は1600万㌧で、その75%は飼料として消費されている。国内の自給率は統計的に0・0%とされており、「害虫被害による代替飼料の確保対策」というのはまったく事実とも異なる。
安倍首相は民間企業を通して275万㌧のトウモロコシを買うとのべたが、商社など民間企業も国内に需要のないトウモロコシを買ってまで損を引き受けるはずもない。政府は商社に補助金を出して買わせる、輸入支援措置を検討している。
日本国内で必要性のないトウモロコシ
それにしても275万㌧というトウモロコシを誰に売りつけるのか。
俎上に上がっていた案は、アフリカへの食料支援に回すなどだが、いずれにしても日本国内にはまったく必要のないトウモロコシなのである。飼料用にするにしても、TPP11や日米FTA、日欧EPAなどの締結で、牛肉や豚肉、鶏肉、酪農品の輸入が増大し、国内の酪農・畜産業は重大な打撃を受け、廃業・離農があいつぎ、消費量も減っている。巨額の税金を使ってまったくムダな買い物をし、使い途はないという、理解し難い約束をして国家財政をアメリカに差し出している。
さらに今回問題になっているのは、アメリカのトウモロコシがほぼ遺伝子組み換えだということだ。アメリカから現在輸入しているトウモロコシは食用・飼料用を含めて約8~9割が遺伝子組み換えといわれている。日本では遺伝子組み換え食品の安全性について懸念する声は高い。遺伝子組み換えトウモロコシを飼料とした牛肉や豚肉の安全性について懸念する声も上がっている。
アメリカの余剰農産物を日本が受け入れたのは今回が初めてではない。第二次大戦敗戦直後の食料難に乗じてアメリカの穀物メジャーなどは余剰小麦や脱脂粉乳(アメリカでは豚などの飼料)を日本の学校給食に持ち込んできたし、子どものときからパンや肉食など欧米の食習慣を植えつけ、コメの消費を減退させて日本市場を奪っていった。
さらに戦後の原子力政策も、アメリカの余剰ウランの受け皿づくりのためでもあった。最近では世界中から閉め出されるモンサント社の除草剤ラウンドアップを厚労省が残留基準値の規制を緩和して大量に日本に受け入れている。アメリカで余ったものは日本に押しつければいいというやり方だ。安倍首相の「余ったトウモロコシは全部買う」という表明は、戦後の対米従属政治を引き継ぎ、より露骨に国民の利益も生命の安全もアメリカに差し出す売国外交といえる。このような情けない振舞について、とりわけ「右派」を自称するような陣営から「反日」「売国奴」といった批判の声が上がらず、相手がアメリカなら黙り、韓国や中国ならハッスルするというのも特徴である。
日米貿易交渉 日本側の一方的な譲歩
日米貿易交渉も日本側の一方的な譲歩で決着した。そもそも昨年9月の日米首脳会談で日米貿易交渉に入ることを決めたとき、日本政府は国内の批判をかわすためにこの交渉を「日米物品貿易交渉(TAG)」と呼び、日米FTA交渉であることを隠そうとしたが、日米共同声明の原文にも「TAG」という呼称はなく、物品だけでなくサービスや投資など幅広い分野を含む包括的なFTAであることが示された。アメリカ側は一貫して「日米貿易交渉」と呼んでいる。
今回、農産物分野では70億㌦(約7400億円)以上の米国農産物に市場を明け渡した。日本は現状でアメリカから約140億㌦(約1兆5000億円)の農産物を輸入している。それを1・5倍に拡大する計算になる。
牛肉では現在の38・5%の関税を発効時から一気にTPP参加国と同じ税率まで削減し、2033年4月に9%まで下げる。豚肉もTPP同様の決着となる見込みだ。高価格品の従価税は4・3%を段階的に撤廃する。低価格品の従量税は482円(1㌔㌘)を段階的に50円に下げる。コメや小麦については調整中など。
アメリカはTPPを離脱しており、本来であれば日本側は最初からの交渉やり直しを要求してもいいはずだが、一気にアメリカにTPP水準まで譲歩することを認めた。しかも「TPP水準以上は認めなかった」「成功だ」と国民を欺いている。
そういいながら自動車関税では、TPP水準も獲得できなかった。自動車にかかる2・5%の関税を25年間かけて撤廃するというのがTPPの合意であった。ところが今回トランプは自動車関税の撤廃を拒否した。今回の交渉で日本側はTPPと同じ条件の譲歩を強いられたうえに、別枠として大量の余剰トウモロコシを押しつけられた関係だ。
9月には実質的な日米FTAが締結されるが、その詳細は明らかになっていない。今後さらに農産物の市場開放が要求されることは必至で、コメの関税撤廃まで認めさせられるすう勢だ。さらにこの協定とは別枠で対中貿易戦争のツケが日本に押しつけられることは確実だ。
今回の日米貿易協定の大枠合意で、対象分野とされたのは「農業」「工業関税」「デジタル貿易」の三つだが、デジタル貿易についてはほとんど触れられていない。「デジタル貿易」はTPPでの「電子商取引」分野を基礎にしたものだ。三つの分野とも詳しい内容については日米両政府とも明らかにしていない。日本政府は10月に始まる臨時国会で協定承認をめざし、年内発効も視野に入れている。
安倍政府の屈服的な対米従属外交の行き着く先は米多国籍企業の草刈り場、ゴミ捨て場であり、売国・亡国の道以外のなにものでもない。
遺伝子組み換えトウモロコシNO!
中国が米国からのトウモロコシの輸入をStopしたのは貿易戦争は口実で
遺伝子組み換えトウモロコシの輸入はブロック!だそうです。
国民の健康を守るため!
日本には遺伝子組み換え種で栽培したトウモロコシ、小麦、大豆が
大量に入ることでしょう。私はコーンスターチを添加していない発泡酒を
選び、豆腐、納豆は国産大豆使用を選んで自衛してます。
しかし、牛、豚、鶏などの餌に含まれていると国産でも避けられませんね
愛猫を飼っていますが、コーングルテンミールが入ってますので心配です。