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長崎の衰退打開する力が結集 『雷電』長崎公演実行委

長崎市中央公民館で5日、今月16日におこなわれる劇団はぐるま座『動けば雷電の如く』長崎公演の第2回実行委員会が開かれた。会には原爆展を成功させる長崎の会(吉山昭子会長)の被爆者や主婦、商店主、武道指導者、歴史文化協会理事などが参加。公演日が10日後に迫るなかで、市民の現状変革の強い思いとともに「庶民の力で長崎を変えていく活力にしていこう」と公演が期待を集めていることが語りあわれ、公演成功に向けてさらにとりくみを盛り上げていくことが確認された。
 はじめに劇団はぐるま座団員から、4月から本格的にはじまった『雷電』公演のとりくみの概況が報告された。これまでに、長崎市老人クラブ連合会や民生・児童委員協議会、医師会、仏教連合会、歴史文化協会、農業委員会、さるくガイドなどの会議で劇の内容を紹介する紙芝居が上演され、市内の商店や事業所、病院、寺、自治会、小・中学校、公民館などで700枚以上のポスターが掲示され、長崎の会をはじめ、商店主、会社役員、農業者、医師、薬剤師、老人クラブ、自治会、武道クラブなど170人を超える人人に総計1400枚のチケットが預けられていることが報告された。
 とりくみのなかでは、長崎市が抱える県庁舎移転問題、市役所、公会堂の建て替えなどのハコモノ行政に対する痛烈な批判が語られ、「市民の声に耳を貸さず、台風が来たら冠水するような埋立地に防災拠点を移そうとしているが、新築だけでも1000億円。基金は400億円しかなく、新たな起債で借金を上乗せすることになる。この不景気になにを考えているのか。アメリカ型の市場原理主義では地域は衰退する。本当に力をもっている市民が力を合わせることが大事だ」(商店街理事)、「長崎では以西底曳き漁業が衰退し、三菱製鋼所や三菱電機も撤退した。三菱造船も正社員は数百人しか残っていない。県全体の人口もこの40年で13万5000人も減っている。農漁業をはじめ地場産業を振興しなければいけないし、若者の雇用がなければ商工業は発展しない。根本から考え直すうえで、みんなが力を合わせる明治維新の劇はぴったりだ」(商店主)、「アベノミクスというが、小泉改革から中小企業には利益がまわらない構造にされている。政治家は議会に入ったとたんに腐っていくが、中小企業や市民が下からつながって町づくりをやっていかないといけない。このような劇をみて自分たちの刺激にしたい」(商店街理事)など、欧米列強の侵略を阻止して独立と倒幕を成し遂げた明治維新への関心と響きあって語りあわれていることもいきいきと報告された。
 また、市内の高校や大学では、「高杉晋作のことははじめて知ったが、これだけのことをした人がこんなに早く亡くなったのは悔しく感じた」「三菱の新規採用はわずか10人で、県内就職希望者も半数以上は県外へ出て行かざるを得ない状況になり、一方では自殺やいじめなど痛ましい事件も増えている。自分さえ良ければいいというのではなく、みんなのために人生をかけるすばらしさを伝えたい」と教師から語られ、演劇部では紙芝居を見た生徒たちがすすんで観劇を申し出る状況になっていることも報告された。その他、スポーツ少年団、少林寺拳法道場などで指導者たちが熱意を持って子どもたちに観劇を勧めていることも報告された。
 論議のなかでは、参加者みずからの被爆や戦中戦後の経験とともに歴史を受け継いでいく大切さが語られ、とりくみのなかで「市内の空気が変わってきており、現状を打開する活力にしていきたい」と熱気のこもった論議となった。
 商社出身の年配男性は、戦時中、学徒動員で三菱の工場に配属されて被爆した経験をのべ大学同窓会の体験記を「原爆と戦争展」に寄贈したことをきっかけにしてはぐるま座とのつながりが始まったことを明かし、「4年前の初演の時期に比べて、市民の反響が変わっているという点が重要だと思う。それだけ市民の経済的な苦しさが増している。吉田松陰をはじめ明治維新が果たした役割について学校教育ではほとんど扱わないし、先日の核兵器廃絶の署名を日本政府がやらなかったことも大手新聞社ではほんの数行しか扱わない。安倍政府になって物価は上がり、ろくなことになっていない。どんどん真実を伝えて、行動していくという流れを盛り上げていくことが必要だ」とのべた。
 長崎の会の婦人は、原爆投下後に長崎市内で浦上川に積み重なるおびただしい遺体を見たこと、ビルマに出征した父親が復員後一年で亡くなり、親のいないなかで厳しい戦後を乗り越えてきた経験を語り、「原爆も戦争も聞くのも嫌だったが、下関の友人の勧めで参加して現在まで頑張っている。平和な社会を作るために力になれるように頑張りたい」とのべ、積極的に知人に観劇を勧めていることを報告した。
 商店主の婦人は、「はじめて聞く人には、しっかり真実を教えなければいけない。被爆後の焼け野原にアメリカ軍の飛行機から撒かれたビラには“日本よい国、紙の国”“日本よい国、バカな国”と書かれていた。持ち帰ると母親からこっぴどく怒られた。そんな怒りが今も長崎市民のなかにはある。二度と同じ目に遭わせないために、私たちが頑張らないといけない」と決意をのべた。
 男性被爆者は、「地方分権型の社会ではなく、中央集権になり、長崎でも大型の工事は大手のゼネコンが軒並みさらっていく。水産業も旋網船の漁獲量が減り、魚市場も郊外に移転させられ仲卸もやっていけない。おとなしくしていてはいけないと思う」と語り、公演への期待を寄せた。
 武道指導者の男性も、「高杉晋作のような生き方を子どもたちに伝えたい」と道場で紙芝居の上演を企画していることを明かした。
 また、「長州藩が倒幕戦争を開始したとき、長崎の町衆が振遠隊を作って長州軍を加勢し、倒幕を成し遂げるとまたもとの町人に戻った。なんの見返りも求めずに世直しに貢献した祖先の生き方に誇りがある。選挙の前と後で態度がコロコロ変わる今の政治家とはまるで違う」「県庁舎移転は、県庁の高台から始まった長崎の町の成り立ちを否定するもの。アメリカ型の物欲主義ではなく、正当な歴史を教える教育をすることから始めなければいけない」と語りあわれ、公演日に向けて幅広い市民に観劇を呼びかけていくことが確認された。

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