慶應義塾大学医学部眼科学教室の坪田一男教授らの研究チームが、東京都内の小・中学生の最新の近視有病率を調査したところ、小学生の76・5%、中学生の94・9%が近視であるとわかったというニュースが、子どもを持つ親や教育関係者に衝撃を与えている。
小・中学生の多くが近視の傾向があり、めがねをかけるかコンタクトレンズをしなければ、黒板の文字がはっきり見えない。それが低年齢化している。小学1年生時点での近視がすでに60%をこえており、中学生では3学年のすべてにおいて90%をこえていることが判明したという。
また、強度近視が小学生の4・0%、中学生の11・3%であることも明らかになった。厚生労働省の2005年度の報告では、日本における失明原因疾患の第4位が強度近視であり、近視予防は急務だとしている。
学校現場ではこの間、視力が1・0未満の子どもの割合が年年増加し、幼稚園の年長から近視がはじまっていることが問題になっていた。眼科医は、幼児期の近視は始まってしまうと進行が速いため、早期発見と予防を訴えてきた。
文部科学省が2016年に実施した調査によると、裸眼視力が「1・0以下」の小学生の割合は31・4%、「0・3未満」は8・6%であった。小学生の3人に1人が視力が1・0以下である。1979年の同調査では「1・0以下」が17・9%、「0・3未満」が2・6%であった。視力0・3未満の小学生の割合は40年で3倍以上に増えている。
小学校では6年生になると、めがねをかける子どもが目に見えて増える。視力が0・3未満でめがねをかけない子どもたちを前方の席に座らせるのだが、その席が足りない状況もある。養護教諭が近視の子どもに眼科医に行くことをすすめても、家計の困窮ですぐには行けない事情もあることが問題になっている。
近視は、遠方のものを見るときに焦点を網膜上に合わせることができず、手前で焦点が結ばれることにより、物がぼやけ、はっきり見えない眼の状態を指す。専門家は、「近く狭い範囲を見つづけることで、眼の周囲の筋肉が緊張して眼球の運動量が低下し、筋肉が硬くなる。また、長時間集中することで眼球を締めつける状態がつづくことが、眼の成長期にある子どもにとって、視力向上をさまたげる大きな原因となる」と指摘している。
そこから、近視の低年齢化が進む原因の一つに、ゲーム機やスマートフォンなどの普及をあげている。とくに、子どもたちが長時間ゲーム機の画面を集中して見つづける状態が日常的に増えるなかで、これまで近視になりにくかった遠視のある子どもをも巻き込んで近視が増えているという。
またそれと関連して、子どもたちが外遊びをしなくなったことを近視の要因として注目し、屋外活動を奨励している。世界の疫学研究では「屋外での活動時間が1時間未満の子どもは近視になりやすく、2時間以上の子どもは近視になりにくい」という報告も紹介されている。子どもの心身の健全な成長を保障する側から、子どもをめぐる環境や教育のあり方など、教師・父母の論議と行動が求められている。