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フランス全土で28万人がデモ 政府の燃料課税に抗議し道路を封鎖

燃料庫を占拠するトラック運転手たち(17日)

 フランス国内各地で17日、原油価格高騰のなかで燃料課税引き上げや環境税導入を強行しようとするマクロン政府に抗議する大規模なデモがおこなわれ、フランス内務省は2000カ所以上での抗議行動に28万3000人が参加したと発表した。低賃金と増税で購買力が低下するなか、生活必需品の増税に踏み切るマクロン政府への国民の怒りが爆発している。

 

 フランス国内では今年、ガソリンは15%、ディーゼル燃料は25%も値上がりしており、それに拍車をかけるマクロン政府の燃料課税に対して、燃料価格高騰の影響を受けてきたタクシーやバス、トラックなどの運送業者、また交通手段を車に頼らざるを得ない地方からゲリラ的な抗議行動がはじまった。この運動は「黄色いベスト (Gilets Jaunes)」運動と呼ばれ、参加者たちはドライバーや道路作業員が路上での作業で着用する黄色いベスト(車載用品)をシンボルとして身につけ、各地で道路を封鎖する抗議行動を展開した。行動はSNSを通じて拡散され、一般の市民も含め多くの人たちが路上に出て行動に合流し、1日のうちに主要都市をはじめ全国2000カ所以上に広がった。主催者が特定できなかったため警察当局も対応することができなかったという。

 

 参加者たちは「マクロンは辞めろ」「課税をやめろ」「月500ユーロ(約6万5000円)で生活し、ジャガイモばかり食べている国民のことを分かっていない」などのスローガンを叫び、国歌「ラ・マルセイエーズ」を歌いながらデモをおこなった。あわせて各地の主要道路や交差点を封鎖した。高速道路も、抗議するために押し寄せた多くの車両によって封鎖され、国内全域で交通網が麻痺する事態となった。

 

 マクロン政府は、「地球温暖化対策」と称して炭素課税の段階的な強化を進めてきた。また「大気汚染対策」としてディーゼル燃料(軽油)への課税強化も進めてきた。燃費がよく、ガソリンよりも課税圧力が低かった軽油についても、ガソリン並みの課税水準とする方向で増税したため、軽油はガソリン並みの価格に達した。

 

 フランス国内の軽油価格は今年、1㍑あたり平均1・24ユーロ(約160円)から1・48ユーロ(約191円)まで上昇しており、先月は一時、1・53ユーロ(約197円)まで上がった。さらにガソリンにかかる税金も今年1月に引き上げ、来年にも増税を予定している。アメリカのイラン制裁による中東情勢の悪化も絡んで原油価格はさらに上がる趨勢にある。先月、インターネット上で呼びかけられた燃料減税を求める署名には数日間で30万人を超える人人が署名していた。

 

 ディーゼル車を主力とする運輸業界の労働者や、ガソリン価格の高騰が地元経済を直撃する郊外の町でも抗議行動への支持が広がり、世論調査では国民の4分の3が支持していると地元メディアは報じている。当日は、直接行動に参加する人だけでなく、賛同する人たちも車に常備してある非常用の黄色いベストを運転席の前に置いて意志を示した。

 

 17日以後もトラック運転手たちが燃油を補給する倉庫を占拠したり、デモ隊が路上でキャンプしながら道路封鎖による抗議行動を継続している。首都パリでは、黄色いベストを着た数千人の群衆がシャンゼリゼ通りからエリーゼ宮殿(大統領公邸)へと集まって「マクロン辞めろ」を連呼したため、ついに警察が催涙ガスを使用した。国内で73人が拘束され、227人が負傷、1人が死亡している。公務員にストライキの権利はないものの、一部では警察も抗議行動に参加したとフランス国営テレビが報じている。

 

 行動参加者たちの抗議は、燃料税だけにとどまらず、社会党出身で元投資銀行社員であるマクロン政府が進める「労働改革」による低賃金や雇用の不安定化、鉄道など公共施設の民営化、徴兵制の復活などの新自由主義的政策に向いており、社会的機能と国民生活を圧迫する政策を阻止する直接行動の機運はさらに広がる趨勢にある。

 

黄色のベストを着て道路を封鎖する人々(17日、フランス・アンティーブ)

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