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ブッシュの覇権外交が破産  朝鮮非核化の6者協議 テロ支援国解除の作業開始

 北京で開かれていた朝鮮半島の非核化を協議する6者(米・朝・中・露・「韓」・日)会談は13日午後、2005五年9月の共同声明を具体化した共同文書を採択して閉会した。朝鮮が60日以内に核施設閉鎖と国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れ、見返りに重油100万㌧相当のエネルギー支援や人道支援などを5者がおこなうことが明記された。1994年の米朝枠組み合意を覆して、朝鮮への先制攻撃、政権転覆など戦争と圧力に狂奔してきたブッシュ米政府の大破綻を示した。それはまた、イラク、アフガンでの泥沼にあえぎ、中東や中南米の反米機運やアメリカ人民の反戦運動の高まりによってブッシュの「一極至上主義」が破産したことを浮き彫りにするものとなった。

 米国は対朝鮮政策を手直し
 今回の6者協議の共同文書は、朝鮮が初期段階措置として、寧辺などの核施設5カ所を対象にした行動措置を「停止・封印」「核施設不能化」などの段階に分け、各段階に対応する形で見返り措置を規定。「閉鎖とIAEAの査察受け入れ」段階で重油5万㌧、その後核施設の「無能力化」の段階で重油100万㌧相当のエネルギーを支援するなどの措置が定められている。また、アメリカは①テロ支援国家指定の解除、②朝鮮との貿易を規制した敵国通商法を終了――へ向けた作業を開始することにした。
 実はこの「初期段階措置」の大枠については、昨年12月の6者協議再開に合わせて米朝が直接協議するなかで合意し、覚え書にまで調印していたもの。05年9月の6者協議の共同声明は、朝鮮がすべての核兵器を放棄する、アメリカは核兵器や通常兵器で朝鮮を攻撃しないことを明記していた。その直後からアメリカが朝鮮への「金融制裁」を始め、朝鮮が「敵視政策を止めよ」と反発して、共同声明の実行は頓挫していた。「米朝2国間協議はしない」、非核化をめぐって「見返りは与えない」としていたアメリカが、昨年末に朝鮮と覚え書に調印していたこと自体、対朝強硬策を転換したことを示すものだった。
 さかのぼれば13年前の1994年、米朝間では朝鮮が核開発を凍結する見返りに、アメリカが軽水炉(原発)を提供する、軽水炉完成まで重油提供などのエネルギー支援をする、国交正常化するなどの枠組み合意をしていた。その約束をほごにしたのは、ほかならぬ01年に登場したブッシュ政府であった。
 ブッシュ政府は、対朝鮮政策の全面的見直しを叫び、重油供給を停止、軽水炉建設も中断した。「9・11テロ事件」を機に「反テロ戦争」をわめきたて、アフガン侵略を開始するとともに、イラク、イラン、朝鮮を「悪の枢軸」と呼んで政府転覆の意図をあらわにした。そして核戦力を柱に軍備増強に拍車をかけ、朝鮮などへの先制核攻撃も辞さないとする軍事戦略をうち出し、まず大うその口実でイラク侵略を始めた。
 「ブッシュのポチ」と呼ばれた小泉前政府は、朝鮮との「平壌宣言」をブッシュにつぶされると、「拉致問題の解決が先決」とマスメディアを使って来る日も来る日も「拉致」を騒ぎたて、排外主義世論を煽った。昨年の朝鮮による核実験に対しては、安倍政府は国連安保理での制裁決議採択に奔走し、海上での臨検実施という戦争挑発に拍車をかけた。閣僚らが相次いで「敵基地先制攻撃」から「日本の核武装」まで叫び立て、明日にでも朝鮮からミサイルが飛んでくるかのような風潮を煽った。
 ところが、昨年11月の米中間選挙でブッシュ共和党が敗北したことを契機に、アメリカの対朝鮮政策の手直しが始まった。それは朝鮮にとどまらず、アメリカがイラクやアフガンをはじめ全世界で横暴に進めてきた「一極至上主義」がことごとく行き詰まり、大破綻をきたしたからである。

 イラク・アフガンも行詰り
 イラクでは独立と自由を求める人民の反撃、武装勢力の活躍で、米軍は袋のネズミのようにバグダッドで首をすくめ、「掃討」に1歩出れば路肩爆弾や狙撃兵にやられ、すでに3000人を超える米兵が戦死、2万人以上が負傷した。アメリカ国内の米軍撤退世論は日増しに高まり、イラク開戦に賛成した民主党や共和党の1部からも撤退要求が出る事態となった。ブッシュがそれに背を向けて米軍2万人の増派をうち出すや、狂気の沙汰だと支配層内部も分裂、収拾がつかなくなった。
 アフガンでも占領5年が過ぎて、米軍とNATO軍に対する人民の怒りが日を追って高まっている。旧タリバン勢力など武装勢力の再結集が始まり、大衆に支えられて占領軍への攻勢が強まっている。外国軍の戦死者が続出するなかで、アメリカは欧州諸国に兵員増派を求めるが、その多くが拒否するなどNATOの分裂もきわだってきた。
 中東全体でも、昨年夏のイスラエルを手下にしたレバノン侵攻の失敗、パレスチナでの民族独立斗争弾圧の失敗、核開発を口実にした、イランへの戦争恫喝や政権転覆の失敗など、ブッシュ政府の中東全一支配計画は音を立てて崩壊している。
 さらに中南米では、キューバ、ベネズエラ、ボリビアの反米連合を軸にエクアドル、ニカラグアにも反米政府が誕生し、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、チリなどの左翼政府と連携した中南米統合の潮流が強まっている。それは明確にアメリカ主導の米州自由貿易圏(FTAA)と対決するもので、アメリカの押しつける新自由主義に反対し、多国籍企業から自国の資源や企業をとり返し、圧倒的多数の貧困を解消するための社会政策を強めるものである。ブッシュ政府は相次ぐ左翼政府の誕生に恐れおののき、政府転覆や経済圧力を強めているが、それがかえって反米潮流を結束させることとなり、打つ手を失っている。もはやアメリカの「裏庭」は反米の最前線になりつつある。

 主導したネオコン人脈失脚
 こうして、世界の力関係はブッシュ政府にとってますます不利となり、フランスやドイツ、イタリア、スペインなど欧州主要国までブッシュ離れを始めている。「ブッシュのポチ」といわれた英国のブレア首相はのたれ死にしようとしている。
 内憂外患で死に体となったブッシュ政府は、「単独行動主義」の好戦的政策を主導したネオコン人脈の首を切り、政策の手直しをせざるをえなくなった。イラク開戦を主導したウルフォビッツは1足先に世界銀行に回されたが、昨年中間選挙後は国防長官ラムズフェルド、ボルトン国連大使も首にされた。
 ネオコン人脈に見立てられて能力もないのに首相の座についた安倍首相は、初めから無策、無能をさらけ出すことしかできなかった。対朝鮮であれほど制裁・圧力、戦争挑発とブッシュ政府のために働いたのに、今回の6者協議ではかやの外に置かれた。他の5者代表が1人も「拉致問題」に言及するものがいなかった。もちろん共同文書にもなかった。共同文書に対して、安倍首相は「拉致問題とエネルギー支援は矛盾しない」などと国会で訳の分からない答弁をし、醜態をさらしている。麻生外相はライス米国務長官に電話し、「日本には拉致問題がある」と泣きついて、ライスから「協議では進展があり、固めることが大事だ」とたしなめられる始末だった。アメリカのいいなりになってきたあげく、もはや世界の誰にも相手にされない政府となっている。

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