いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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広島の世論は「朝鮮制裁やめよ」 原水禁全国実が宣伝活動 緊張高めるだけの日米政府

 原水爆禁止全国実行委員会は、20~22日の3日間、広島市内で宣伝行動をおこない、今年の8・6集会の報告チラシとともに、北朝鮮制裁問題をあつかった本紙号外「戦争開始を図る安倍政府/兵糧攻めは戦争の手段」「被爆死兵士の碑のない広島/ “兵隊は犯罪者” でよいか」をそれぞれ2万枚配布した。日本政府が北朝鮮制裁に突っ走るなか、被爆市民は冷静に事態を見ながら、原爆投下者アメリカの意図が働いていること、そのために日本がふたたび戦争に巻き込まれることへ怒りを強めている。商業マスコミや、これまで「平和」を唱えてきた原水禁や原水協なども含めて「北制裁」の大合唱をするなか、これらの外側で「アメリカは核を持って帰れ!」という世論が被爆市民の本音をともなって広がっている。

 残虐な原爆投下への怒り重ね
 家の玄関先で近所の人たちと懇談していた宇品在住の80代の婦人は、受け取った号外に目を通しながら、「アメリカが日本をダシにして戦争に使おうとしているんですよ。わたしらにはよくわかる」とうなずきながら話し出した。
 「戦時中、宇品からはたくさんの兵隊が毎日のように輸送船に積み込まれて送り出された。すでに32歳だった主人も終戦40日まえに召集され、陸軍11連隊に配属され、原爆でも運良く助かったが戦後に原因不明で急死した。私も主人を探して地獄と化した町中に毎日のように出かけた。戦争では国民が1番ひどい目にあうんですよ。昔も国からは、“白い服を着ろ”とか“目、鼻、耳を押さえてしゃがめ”とかいわれていたけど、結局は一瞬にして焼き殺されたんです。国の責任は靖国に参ったりするだけでおさまる問題じゃない。また戦争をやろうというなら私らが許しませんよ!」と憤りをぶつけるように語った。
 そばにいた年配婦人は「“アメリカは日本から核を持って帰れ”という号外はいまも大事に取っている。拉致問題というが戦争になれば1人や2人が死ぬのではない、みんな引っ張られて殺される」と語り、「19歳だった弟も兵隊として宇品から船に乗せられたが、戦地に行き着くまえに船といっしょに沈められた。兄弟もみんな原爆で死んでしまって1人もおらん。アメリカは日本を焼け野原にしたのに、それを応援をする政府をみると腹がたつ」とかみしめるように話した。
 江波在住の被爆婦人は、号外を見るなり、「父と姉2人を原爆で殺された。長姉は軍需工場でパラシュートを縫う勤労動員、もう1人は、義勇隊で建物疎開の後片付けをしに家を出たまま、帰ってこなかった。焼け野原の市内を父と2人で姉たちを探し回ったが、見分けがつかないほどの黒こげの死体ばかりで、姉の金歯を目当てに木の棒で1つ1つ死体の口を開けて回った…アメリカのしたことは人間のやることではない」と涙に声を詰まらせながら話した。
 「安倍さんがブッシュにかつがれて、日本だけが制裁に躍起になっている。日本には米軍の核があり、核武装もするなどといいながら他国の船を臨検するなどどう考えてもおかしい。それどころか国民からは年金も削り、生きろというのか、死ねというのか聞いてみたい。共産党(修正主義)も公明党も口ではいいことをいっても選挙の票が最終目的で信用できない。私らはアメリカこそ懲らしめるべきだと思う」と語り、「アメリカ政府に原爆の謝罪を求める」アピール署名をあずかった。
 中華料理店を営む40代の男性は、「北朝鮮よりむしろアメリカの方が攻撃的ではないか。いつ攻め込まれるかわからず、小国が核武装するというのも無理のない話だ。アメリカはイラクにもテロの因縁をつけて攻撃して、戦争前より国を混乱させているではないか」と思いを語った。
 「日本にしてもイラクにしても、アメリカが入ったおかげでどうなったのか考えれば、アメリカに従わない国の言い分は理解できる。小泉は“改革なくして景気回復なし”といったが、結果はこの宇品にもシャッターの数が増えただけ。ただでさえ物価高のうえに大型店が進出してさっぱりになった。郵政民営化、市町村合併…これから日本はどうなるのかと心配は大きくなるばかり。政府は2言目には“アメリカがついている”というが、明らかに孤立して先細りだ。原爆まで落とされて抗議の1つもできないのが同盟関係といえるだろうか。アジアと戦争する前に、日本の独立を考えるべきではないか」と話した。

 「日本が制裁状態」の声も・潰される商店街 
 基町で海産物を扱う商店主の男性は、「新聞やテレビは大騒ぎをしているが、市民の実感は北朝鮮の核どころではない。日本でも、生きていくことができずに困っている人が大勢いるのにひとつも取り上げない」とぶつけどころのない憤りを口にした。「北朝鮮が核実験をしたといっても、使ったことがあるのは世界でアメリカだけ。今回の“制裁”もアメリカの差し金だろう。アメリカに守ってもらうというが日本が鉄砲玉と玉よけに使われるだけじゃないか。アメリカはそういう国だ。“アメリカが来たからよくなった”といわれていたが、全部吸い尽くされてきた。広島を見たらよく分かる」と語った。
 大店法の撤廃で市内には中央や外資系の大型店の出店ラッシュが進み、個人商店は軒並みつぶされ、以前はにぎわった基町地区も寂れきった。残った店は苦しい経営でも、昔からのなじみの年寄りに支えられて踏んばり抜いてきた。「アメリカの圧力でやった規制改革のせいで広島は植民地状態だ。アメリカ式の強者、権力者、金のある者だけがのさばる、野蛮な社会になった。この商店街でも最近は、昔の暴力団の代わりに、市が税金のうえに検査料とか講習料といって年間に少少でない金を請求してくる。払えないと業務停止の“制裁”。国家公認の暴力だ。こんな国が北朝鮮のことばかりをいえるガラか」と吐き捨てるように語った。
 商店街の中に集まっていた年配婦人の1人は、「ここにいるのはみんな被爆者で戦争を体験したものばかりだから、北朝鮮問題を今の調子で締め上げると戦争になるんじゃないかと話題になっている」といい、「戦争中、私の姉は結婚したばかりの主人が出征した。義兄は“必ず生きて戻ってくる”といっていたが帰ってきたのは木の位牌だけだった。昭和20年に宇品から出たが戦地に着く前にアメリカに沈められたという。安倍さんなどは庶民の苦労など分からない。戦争を知らないボンボンが何を騒いでいるのか」と語った。
 別の婦人たちも、「家族はみんな原爆で死んだ。夫の家族も2人しか残らなかった。野蛮人は北朝鮮よりもアメリカだ。なぜ、一般の女や子どもを殺さないといけなかったのか」「台湾では、日本人の小学校と分かっているのに米軍が爆撃して、全校の半分以上が死んだ。子どもまで殺すようなのはアメリカだけだ」「ほんとうに金正日が憎いなら、いつも安全なところから人に命令しないで、安倍さんが自分1人で鉄砲かついでいけばいい。国民全部が巻き込まれるわけにはいかない」など、日本人を虫ケラのように殺したアメリカへの怒りとともに、その属国となって戦争政治をおこなう恥知らずな政治への憤りが共通して語られた。

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