小泉首相が訪朝し、金正日総書記と会談して、国交正常化交渉を再開する共同宣言をした。日朝間の国交を正常化させ、善隣友好関係を発展させることは、日本の民族としての誇りを回復することであり、日本とアジアの平和のためにきわめて重要なことである。
日朝関係は戦後57年の長きにわたって国交不正常の状態をつづけてきた。かつて天皇を頭とする帝国主義支配階級は、朝鮮を侵略し、日本に併合して、政治も経済も文化や教育も朝鮮民族としての独立と自由を奪い、犯罪的な日本の戦争にもかり出し、強制連行もして多大な犠牲を強いた。戦後、日本の独占資本集団はアメリカが単独占領したもとでひき起こした朝鮮戦争に加担して、殺された百数十万人をこえる朝鮮人民の血にまみれたドルで息を吹き返して「高度経済成長」へとすすんだ。国交不正常の状態は、この侵略と戦争の状態を半世紀以上もつづけるという異常なものである。
このような歴史的経緯から日本には在日朝鮮人が多く生活している。在日朝鮮人は戦後は、「日本人」としての権利もなくなり、義務だけあるが職業選択の自由も極端に制限され、戦前以上に困難な状態におかれてきた。
戦後57年にわたって国交不正常をつづけてきたのは、戦後の日本の支配階級がアメリカに屈従し、アメリカの朝鮮南北分断政策に加担し対朝鮮敵視政策に従ってきたからである。いま政治はアメリカのいいなりとなり、自衛隊は米軍の下請軍隊として徴用され、日本の資金は巻きあげられて大企業はつぎつぎにアメリカ資本に乗っとられ、かつて朝鮮人に日本語を教えたように、いま日本語もまともでない小学生にアメリカ語を教え、アメリカへの民族劣等意識と植民地的退廃がまんえんしている。かつての朝鮮侵略に恥を知らぬ戦後の支配階級が、現在の対米従属と日本の植民地状況に恥を覚えないのである。日朝国交の回復は、日本民族としての誇りにかかわる問題である。
小泉政府は、日朝の国交正常化をやりつつ、ブッシュ政府の戦争政策に加担する道をすすんでいる。アメリカは戦後、在日、在「韓」米軍を使って核攻撃態勢をとり、演習と称する威かくをつづけてきた。昨年のテロ事件後、さらにエスカレートし、「悪の枢軸」と名指しし、先制核攻撃態勢をとっている。有事法制はその戦争に日本を総動員するものにほかならない。それは日本の若者をアメリカの戦争のために命を捨てさせ、日本人民の生命と財産を守るどころか、逆に日本本土を戦場とし、はかりしれない人人が殺される危険性を強めることである。
日朝会談で商業マスメディアは、日本人拉致問題が交渉のすべてであり、それは「国家テロ」であり、「制裁せよ」と強調している。拉致され、死亡した家族の悲しみと怒りは察するに余りあるものである。それについては国交交渉のなかで正しく解決されるべきである。しかし、そのことをマスメディアや国家機関が利用して、日朝間の不正常状態をあらためて平和的な善隣、友好関係を前進させるのでなく破壊し、あげくは「テロ国家」と叫んで朝鮮への戦争熱をあおるために利用するならば、それはアメリカの尻馬に乗って、朝鮮民族の不幸だけでなく、日本民族の重大な不幸をもたらす危険なものであるといわざるをえない。かつて「邦人保護」が大きな口実とされて、300万人をこえる戦死者をつくった破滅的な戦争に突きすすんだことはけっして忘れてならない痛ましい教訓である。
アメリカが「テロ報復」を叫んで、実際には国内の軍需産業をもうけさせ、石油利権を奪うなど帝国主義的な野望のために、アフガンからイラクと世界中に戦争を広げようとしていることをまねるのは愚かなことである。小泉政府は日朝共同発表を順守して、国交の正常化を急がなければならない。