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邦人の命守らなかった安倍政府 「イスラム国」人質殺害問題  政府失格の烙印 

 人質2人の命を安倍政府は守ることができなかった。守れないどころか、右往左往するばかりで交渉はみな他国に丸投げして見殺しとなった。集団的自衛権の行使容認と関わって、あれほど「邦人の命を守る」と叫んできた者が、調子に乗って出かけた中東でわざわざ刺激的な演説や振舞をして災いの元をつくりだし、日本社会全体を危険に陥れるという前代未聞の事態を招いている。人質2人だけでなく、アラブ世界に出向いている在外邦人、日本本土で暮らす国民全体がみなテロの標的として名指しされるなど、ますます「邦人の命」を危険にさらす道を進んだ。本来、国民の生命と財産を守るために政府は機能しなければならない。ところが国益どころか、その生命が脅かされるようなことばかりしているのである。
 
 災いを招いた首相の言動

 「イスラム国」がどのような相手であったとしても、まずは当事者と交渉して条件を煮詰めるなり、対話によって解決の糸口を見出すことが最低限求められた。例え立場が違ったり意見が違う相手であっても、交渉によって話しあいができる関係をつくらなければどうにもなるものではない。昨年8月には既に拘束され、11月にも2人目が拘束されているのがわかっていながら、まるで政府として対応できていなかったことも浮き彫りになった。その間に水面下であっても邦人保護の形をつけることが外務省なり政府の仕事であったが、予告されてはじめてヨルダンやトルコに泣きつく対応となり、後はみな他国任せになった。
 喧嘩相手なり政敵と対話ができない。これは安倍政治の大きな特徴で、安全圏から吠えるのだけは得意という、まるで「子ども外交」のような振舞が今回の事態をもたらした根本原因といえる。欧米に与して大きな気持ちになり、それをやってしまった。しかし、翼賛国会では通用しても、権力のない世界では同じことが通用せず、たちまちにして破綻した。

 疫病神が巣くう政府 泥沼へと誘導するアメリカ

 どこの国も、戦争相手とは戦争もするが交渉もして、譲歩を引き出したり、停戦合意に導いたり、様様な落としどころにつなげていく。しかし今回の場合、「イスラム国」を刺激しただけで日本政府としては交渉できる術がなく、当事者能力などまるでなかった。そして、吠えるだけ吠えて現実に矛先が向いてくると「テロに屈しない」「人命第一」を叫ぶばかりで空転し、外交といえるような代物ではないことを示した。
 アラブ世界の混乱や矛盾に関係がない者が片側の片棒を担ぐという行為が、いかに無知蒙昧でバカげた振舞であるかは結果があらわしている。しゃしゃり出てイスラエルの仲間であることをアピールし、「イスラム国」撲滅資金を得意気になってばらまいた結果、「日本の悪夢が始まる」といわれるまでの緊張関係をつくり出したのである。不用意で軽率な発言をして自分で首を絞めているだけでなく、イスラム圏にいる在外邦人を直接の危険にさらし、日本列島も東京五輪などがターゲットにされてもおかしくない状況をもたらした。
 事件後、「テロリストたちを決して許しません。その罪を償わせるために、国際社会と連携して参ります」「日本がテロに屈することは決してありません」「テロリストの思いをいちいち忖度し、屈することがあってはならない」とのべたものの、テロに屈するも何も、標的にされる理由がなかったのに首相みずからが喧嘩を吹っかけて災いを持って帰ってきたというのが客観視した姿である。外交によって友好を築いて帰ってくるならまだしも、発言によって2人の首がはねられ、日本人全体をテロの標的にして逃げ帰ってくるのだから、戦後の首相としてこれほど悪質で稚拙な人物はいない。70年にわたって築き上げてきた日本の平和外交は「子ども外交」に成り下がったといわなければならない。
 こうした状況を歓迎しているのがアメリカやイギリス、フランスで、有志連合に引き入れたい、もっといえば地上軍として肉弾戦に駆り出したい都合から「日本と共にテロとたたかう!」といって、勝手に腕を肩に回してきている。アラブ人民を抑圧し、植民地支配をしてきたのはアメリカはじめとした欧米各国で、本来、日本は当事者でも何でもない。むしろ原爆を乗りこえ、明治維新では欧米列強に屈服することなく独立を勝ちとった民族として共感が強く、アラブ世界は全般的に親日的であることが知られてきた。中東では欧米による植民地支配との矛盾を基本にして、テロや様様な反米斗争が拡大してきた。このアラブ人民の反抗を抑えるために形成されたのが有志連合で、米欧の覇権を死守するための他国動員にほかならない。
 アメリカは一方で安倍政府を持てはやして調子に乗らせながら、人質事件をきっかけに武力参戦に引きずり込みたい意図を丸出しにしている。おだてれば有頂天になって世界に飛び出し後先考えずにイスラエル国旗の下で得意のばらまきをやったのが安倍晋三で、完全に泥沼に誘導されている。集団的自衛権の行使や、CIA、モサドとの連携、自衛隊が米軍指揮下で運用される体制整備、安保法制など、早くから安倍政府にゴリ押しさせてきた体制をいっきに運用段階へと持っていこうというものである。シナリオがあるのかと思わせるほど、事態はタイミングよく噛み合い、アメリカが望む方向へと進み、子ども扱いの首相が手のひらで踊らされている光景となっている。
 国民の生命財産を守れないものは政府ではない。災いを持ち込んで日本人民の生命を危険にさらす疫病神を退陣させることが求められている。

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