いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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「資本主義終焉」を叫ぶ国際行動  世界のメーデー 5大陸で大集会やデモ

 世界5大陸でたたかわれた今年のメーデーは、アメリカを震源とする世界恐慌が資本主義の崩壊を露呈するなかで、労働者や勤労人民が主人公となる新しい社会を切実に求める機運が大きく盛り上がった。米欧諸国では金融巨頭や産業独占資本の救済ではなく、人民を救済せよというスローガンが叫ばれ、マルクスの肖像画とともに「資本主義は終わりだ」と大書した横断幕が掲げられた。中南米やアジアの途上国でも、対米従属と新自由主義の破たんのなかで欧米支配からの独立と、相互援助の経済統合をめざし、社会主義を求める力の台頭を示した。
 欧州では、フランス、ドイツ、イタリア、ギリシャ、スペイン、イギリス、スイスなど各国でメーデーがおこなわれ、恐慌を理由に大量解雇、工場閉鎖、賃下げを労働者に押しつける一方、銀行や独占大企業には巨額の血税を投入することに抗議した。スイスのチューリッヒのデモには、「ゲームは終わった」と資本主義の破産をあらわすプラカードが掲げられた。ロンドンのデモにはマルクスの肖像画があらわれた。
 フランスでは、戦後初めて労働総同盟など8大労働組合センターがメーデー統一行動をとりくみ、全国300カ所であわせて120万人がデモ行進をおこなった。労働者らは、サルコジ政府の財政緊縮政策によって失業の増大や実質賃金の低下がもたらされたこと、大銀行や独占企業の救済のために260億もの税金をつぎ込む一方で、労働者や勤労人民をまったく助けようとしない政府に激しい怒りをぶつけた。
 首都パリでは医療労働者や教師、学生など16万人が、医療や教育予算の大幅カットに抗議した。失業率が年末までに10%に達する見通しも出るなかで、「死ではなく、労働を」といったプラカードが人目を引いた。
 ドイツでは労働総同盟(DGB)など主要労組が400カ所で集会、約50万人が参加した。DGB議長はブレーメン市の集会で、「賭けに失敗したツケは、賭けたものが支払うべきだ」とマネーゲームで荒稼ぎしながら、失敗したら税金による救済を求める金融資本を激しく非難した。
 イギリスの首都ロンドンの集会では、機械、電機、運輸などの労働者を組織するユーナイトの代表が「新自由主義は破たんした。われわれは公共サービスを維持し貧困層を支援するための景気対策を政府に要求する。今は労働運動の新たな機会だ。子どもたちの未来のためにたたかおう」と呼びかけた。
 ギリシャでは、首都アテネやテッサロニキなど主要都市で集会・デモがおこなわれた。アテネでは労働者や学生など6000人が、「われわれは大銀行の損失を償わない」と書いた横断幕を掲げて市中行進した。一方、鉄道やバス、フェリー、空港など公共交通機関の労働者は、政府の緊縮政策に抗議してストライキに突入した。
 スペインでは、首都マドリードで6万5000人が雇用の保障と社会保障を求めて行進した。失業率が欧州でも最悪の17%にのぼり、失業者が来年新たに100万人増えることが予測されるため首都に限らず各地のデモで労働者を路頭に放り出す政府・独占資本への怒りが沸騰した。

 社会主義放棄への怒り噴出 ロシアや東欧 
 ロシアでは首都モスクワで7万人、全国500カ所であわせて250万人がメーデー集会に参加した。旧ソ連崩壊以来の最大規模であった。モスクワ中心部にあるカール・マルクスの像の近くでは、「破たんした政府を退陣させよう」と書いた横断幕を掲げて参集した人人が、「政府は大企業や寡頭支配層を助けるために税金を浪費してはならない」と訴え、人民の声に耳を傾けようとしないプーチン政府に抗議した。
 ロシアの通貨ルーブルが40%も下落し、失業問題が深刻化し、生活が貧困化するなかで、広範な人民は失業や貧富の格差のない平等な社会、すなわち社会主義の再建を切望するようになっている。
 旧ソ連加盟国や東欧諸国でのメーデーは、欧米資本が恐慌の犠牲を押しつけることに反対するとともに、1990年代初頭に社会主義を投げ捨てたものへの怒りがぶちまけられた。そしてポーランドでは「資本主義はもはや機能しない」という横断幕があらわれ、ウクライナなどでも「資本主義は終わった」とするプラカードが多数あらわれた。
 旧ソ連や東欧諸国での20年前の政変について、世界の帝国主義支配層は「社会主義の終えん」を叫んだが、現実は資本主義の大崩壊であったことを身をもって体験した人人の訴えといえるだろう。

 国境越えた団結掲げ大行進 ア メ リ カ 
 メーデーの発祥地アメリカでは、今年も首都ワシントンやニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、サンディエゴなど全米の主要都市で、数十万人が「労働者は国境を越えて団結する」などを掲げて集会・デモをおこなった。おもな要求は、現在アメリカの生産の主力を担うようになっている1300万人もの移民労働者に合法的地位を与えること、すべての人民のための健康保険制度を設立すること、イラク戦争を終結すること、人種主義に根ざした移民へのとりしまりと強制収容を中止すること、労働者の基本的権利を擁護することだった。
 ロサンゼルス市では移民労働者、労働組合、人権擁護団体など6万人がメーデー行進に参加。シアトル市では移民労働者や労働組合員など5000人が繁華街をデモ行進。シカゴ市では運輸労働者、学生、移民擁護団体など2500人が行進。マサチューセッツ州では400人の移民労働者がボストン市からエバレット市まで行進した。
 いずれの集会・デモにおいても、アメリカ経済で重要な役割を担う移民に対する当局の強制捜索や国外追放などの不当な扱いに抗議し、オバマ政府と議会に移民の合法化を求め、「永住権を勝ちとるまでたたかい続ける」ことを宣言するものとなった。
 メーデーに参加した青年の1人は「大銀行や独占企業の経営者は寄生虫だ。貧しいものが種をまいて汗水流して育てても、その果実は富めるものがかすめとる」と語り、恐慌が多くの若者に資本主義離れを起こさせたことをあらわした。
 カナダでは、首都オタワ、モントリオール、トロント、エドモントン、バンクーバーなど主要都市でメーデー行進がくり広げられた。トロント市では、4000人の労組員と移民労働者が「すべての移民に市民権を与えよ」と訴えた。ハミルトン市では、700人余りの鉄鋼労働者や退職労働者が世界恐慌を理由にして、劣悪な賃金や労働条件を労働者に強要する大企業と政府に反対し、「労働者の尊厳を守るためにたたかおう」と訴えた。

 新自由主義をうち破り発展 ラテンアメリカ 
 近年、アメリカの新自由主義をうち破り、中南米の経済統合による発展やアメリカの干渉に団結してたたかっているラテンアメリカ諸国のメーデーは、今年も新しい発展的な様相を見せた。
 南米ベネズエラでは、主要都市で集会・デモがおこなわれた。首都カラカスの集会で挨拶に立ったチャベス大統領は、「わが国の労働者はけっして賃金奴隷に戻ることはない」とのべ、「資本主義から社会主義への移行を成功させ、新しいモデルをつくるには研究や計画、労働者の教育と団結が欠かせない」と訴えた。
 南米ボリビアの首都ラパスのメーデー行進では、モラレス大統領が鉱山労働者とスクラムを組んで先頭に立った。集会で同大統領は失業給付の充実など労働者の権利を強める一連の法令を公布したことを明らかにした。アメリカの執ような干渉を打破して、憲法改正の国民投票に勝利したことの喜びが会場全体に溢れていた。
 アルゼンチンの首都ブエノスアイレスでは、最大労組の労働総同盟(CGT)主催のメーデー集会に約10万人が参加した。世界恐慌が拡大するなか、労働者はフェルナンデス政府が弱肉強食の新自由主義路線からの転換をいっそう強力に進めるよう求めた。
 チリでは、労働者1万人が労働力流動化の名のもとに、スト破り要員として未組織労働者を臨時雇用する権限を資本に与える法案に反対してデモ行進した。
 中米でも近年、左翼政府が相次いで誕生するなかでエルサルバドル、ニカラグア、メキシコ、グアテマラ、ホンジュラス、プエルトリコ、キューバなど各国でメーデーがとりくまれた。
 エルサルバドルでは3月の大統領選挙で、ファラブンドマルチ民族解放戦線の候補が勝利した。メーデーではこれを祝賀すると同時に、中南米人民の反米反帝の団結を求めて、キューバやベネズエラなどの首脳の肖像画を描いた横断幕が掲げられた。
 キューバでは、首都ハバナをはじめ全国各地でメーデー式典がおこなわれた。ハバナの革命広場の集会には労働者や学生、婦人ら各階層の人人数十万人がキューバの国旗をなびかせ「社会主義か死か」と書いたプラカードを掲げて参加した。
 また集会には、アルゼンチン、ブラジル、エクアドル、ウルグアイ、アメリカ、カナダ、オーストラリア、スペイン、イギリス、フランスなど約70カ国から200の労働組合や国際連帯組織の代表約2000人が合流した。
 キューバ政府と人民は、新自由主義のグローバル化によってひき起こされた経済恐慌の影響に立ち向かい、アメリカ支配層の50年に及ぶ対キューバ経済封鎖政策による困難を乗り越えて、祖国を守り社会主義革命を推し進めていく不退転の決意をあらわした。
 メキシコでは、豚インフルエンザを理由にカルデロン政府が押しつけた5月1日から5日間の外出自粛要請をはねのけて、オアハカ、アカプルコ、クエルナバカの3市で、教師数千人がアメリカをまねた教育改革によって、公立学校の教師と学校間の競争を煽ることに反対した。
 またラサロカルデナス市では、鉄鋼労働者5000人が政府の自宅待機要請をはねつけ、鉱山労組への弾圧を糾弾してデモ行進した。グアダラハラ市やシウダードフアレス市でも、自治体労働者や教師、学生らが外出自粛令を蹴ってメーデー集会を開き、デモ行進した。
 グアテマラの首都グアテマラシティでは、労働者数千人が賃金引き上げと雇用の保障を要求し、中央広場に向けて行進した。デモ隊は「政府は最低賃金を支払わない企業を処罰するべきだ」と訴えた。
 ホンジュラスでは、労働者がアメリカと中米諸国、ドミニカ共和国とのあいだの自由貿易協定に反対しようと呼びかけた。
 プエルトリコでは、首都サンフアンで電力労働者、自治体職員、消防士、バス運転手、教師など数千人が、緊縮財政政策の一環としてうち出された三万人の首切り計画に反対し、市中行進をおこなった。また公共部門の労働者は休暇をとってメーデーに参加し、首切りや国営企業の民営化計画の撤回を要求した。

 恐慌口実の首切り等と対決 アジアでも行動 
 アジアでは、フィリピン、「韓国」、カンボジア、パキスタン、インドネシアなど各国でメーデー行動がくり広げられた。
 フィリピンでは戦斗的労働組合センター・KMU傘下の労働者がマニラをはじめ主要都市で集会・デモをおこなった。労働者らは恐慌を口実にした大量首切りや賃金切り下げ、雇用制度の改悪に反対した。
 首都マニラでは1万人余りの労働者が集会に結集。KMUのラボグ議長は、世界恐慌を引き起こし、多大な犠牲を労働者に押しかぶせたものはアメリカ帝国主義であり、それに国を売って手助けしているのはアロヨかいらい政府であることを暴露した。このあと参会者は市中行進に移り、アメリカ大使館への抗議行動をおこなった。
 「韓国」では、民主労総が約500の市民団体とともに国会付近の広場で集会を開き、恐慌を口実にした不当な解雇や賃金引き下げの撤回、李明博政府の退陣を要求した。デモ行進ではとくにアメリカとの自由貿易協定の撤廃を要求した。
 パキスタンのペシャワル市では、主要な労働組合がメーデー集会を開き、民主主義と平等にもとづく搾取のない社会を築くために一致団結してたたかうことを宣言した。
 カンボジアの首都プノンペンでは、縫製労働者やホテル労働者など1000人以上が賃金引き上げや労働条件の改善を要求し、労組員に対する迫害を非難し、市中行進をおこなった。
 トルコでは、イスタンブール市のタクシム広場で31年ぶりにメーデー集会が開かれた。労働者や学生など5000人が「メーデー万歳」「われわれはいかなる抑圧にも屈服しない」と大書したプラカードを掲げて、勢いさかんなデモをおこなった。
 インドネシアでは、ジャカルタなど十数都市でメーデーがとりくまれた。ジャカルタ市中心部の広場には三〇を超える労組から約三万人が結集。集会後のデモでは、「政府は労働者の雇用を守れ」「契約労働や非正規労働をなくせ」などと訴えながら、大統領府まで目抜き通りを行進した。

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