いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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役に立たない自衛隊撤退せよ 小泉政府は世界的に孤立  イラク住民との対立は深まる

 戦後59年目を迎えた日本は、平和擁護の圧倒的国民世論を押しきって海外に自衛隊を派兵し、直接に侵略戦争の片棒を担ぐアメリカの植民地国家として、世界的にも孤立の道をすすんでいる。イラク戦争が大量破壊兵器のためでもなく、復興支援でもなく、自由と民主のためでもなくアメリカによる石油略奪のための民族弾圧の強盗戦争であることは、だれの目にも明らかになった。イラク人民の生命と誇りをかけた民族解放斗争の発展によって戦争の性質が暴露され、スペインはじめ世界各国で、世論の高まりを受けて撤退する国国も出はじめた。イラクやアラブ・イスラムをはじめ世界的な反米斗争の発展がアメリカを窮地に追いこんでいるのである。それは強大な武力を持つアメリカ帝国主義よりも全世界人民のたたかいが勝ることを証明している。全世界のたたかいと連帯して戦争放火者とたたかうことなしに日本の平和は実現できない。正義の反占領斗争をたたかうイラク人民をはじめ世界の平和愛好勢力と団結して自衛隊撤退の世論と運動を強力にすすめることが求められている。
   
 イラク人民は撤退を要求
 今月になって起きたイラクでの邦人人質事件で、イラク側からは「親愛なる日本国民へ」むけて、「広島・長崎原爆と同じようにイラク人民は殺りくされている。日本国民の力で、イラクからの自衛隊撤退の圧力を政府にかけてほしい」というメッセージがくり返された。小泉政府が「撤退しない」とか「テロに屈しない」とか大騒ぎして人質を危険にさらすなかで、人質となったメンバーは殺されるのでなく、いずれも解放されて日本にもどってきた。人質解放は、ファルージャをはじめ米軍の大量殺りくで殺されていく女、子ども、市民の苦しみに思いをいたし、米軍とその下請軍隊としてイラク人民殺りくの手伝いをする自衛隊の撤退を要求する日本と世界の世論と運動が結びついた結果であった。
 メンツをつぶされた政府や与党幹部は、冷たい顔をこわばらせて腹を立てた。商業マスコミもたくみに世論誘導に参加して、人質となった3人にたいする「自己責任論」のバッシングを展開。自衛隊撤退のイラク人民と日本人民の要求、さらにはイラク戦争をめぐる問題の本質をかき消すためにやっきになった。結果それは世界の笑いものになったぐらいで、多くの日本国民は人質解放に安どし、自衛隊のイラクからの撤退と野蛮な人殺し強盗戦争に反対する世論はさらに強く広がりを見せるものになった。
   
 米軍の支援が任務 6000億も戦費負担
 小泉首相は米軍が武力行使に踏み切る以前から「米国が武力行使に踏み切ればこれを支持するのが妥当」と主張してきた。武力行使を開始すると「非戦斗地域に自衛隊員を派遣する」「大量破壊兵器はあった」と叫び回ってイラク特措法を成立させた。そして昨年8月にはブッシュ政府に「逃げるな。陸上自衛隊を派兵できないなら実用的な支援からはじめろ!」と脅されると、「いつも金だけで血を流さないというのは国際社会において通用しない」などといってイラク北部への陸自部隊派兵のほかに、4年で6000億円(55億㌦)にのぼるイラク戦費の負担を表明。税金を身ぐるみはがされるようにとられて毎日の生活にギリギリしている国民を驚かせた。
 そして日本人外交官2人が犠牲になると、世論誘導に利用して「テロには屈しない」と戦争拡大を表明。人質事件でも「テロに屈しない」「(自衛隊撤退を求める)テロ集団の要求には応じない」などといって人質を危険にさらす言動ばかりとった。もっぱらアメリカ合衆国の「奴隷」のような姿勢で、武力参戦に持ちこみ、戦争動員をエスカレートさせる道を突っ走ってきた。
 石破防衛庁長官は陸自本隊派遣に先立った1月の会見で、「われわれは戦争をしに行くのではない。1人でも多くの人人に幸せを与えることだ」と「人道復興支援」を強調。そして日米安全保障条約について「つらいとき、苦しいときにともに目的を同じくすることが、わが国の平和と独立につながると信じている」とのべた。
 小泉は「イラクの復興・安定は日本の国益に直結する」「全世界がイラクの安定した民主政権をつくるのに汗を流している。日本がお金だけ出せばいいという状況ではない」「一国平和主義にとどまって日本の平和と安定を期すか、国際社会と協力してそれを期すのかが問われるのがイラク派遣の問題だ」といった。そして「非戦斗地域(イラク特措法には戦斗地域となれば活動を中止して撤退しなければならないとある)」であることが大前提のうえで、「安全確保はじゅうぶんなものと判断した」として陸自先遣隊と航空自衛隊本隊に派遣命令を出した。
 「愛される自衛隊」「周辺住民との円滑な関係づくり」「失業に苦しむ住民の雇用や政府開発援助再開による経済支援」といって、陸自本隊はイラク南部サマワにかつてない重武装で乗りこんだ。そして航空自衛隊はクウェートからイラクへ、アメリカ軍の攻撃に使う武器、弾薬をせっせと運ぶ任務についた。商業マスコミは「復興支援」だけをとりあげて国内世論の扇動にいそしんだ。日本のジャーナリズム・マスメディアが真実を隠ぺいしたり、ズルイ黙殺をしたりで世論誘導をやることはきわ立っている。「戦前は大本営発表。いまはペンタゴン発表」といわれるようになった。
  
 イラク全土で蜂起 各国は撤回開始
 その後3カ月以上が経過してどうなったか。イラク戦争をめぐっては、いまや自衛隊派遣のたてまえすらなくなっている。イラク全土が侵略者アメリカ軍との武装斗争に決起し、ファルージャだけでなくイラク各地で同様の「戦斗地域」と化している。一部の武装勢力というものではなく、農民や労働者などが地域ぐるみで占領軍を撤退させイラクの独立と平和のために蜂起しているのである。孤立したアメリカ軍の狂暴な虐殺が、イラク人民の宗派をこえた大団結を生み、大規模なデモ行動が起き、親兄弟を殺された子どもから一般市民までが銃を持って、命をかけた祖国擁護のたたかいへ決起を促している。フセインが独裁者であろうがなかろうが、イラク人民はアメリカ占領軍とたたかっている。
 サマワでも現地の武装勢力とオランダ軍が銃撃戦をくり広げた。今月22日にはサマワのオランダ軍宿営地に砲弾が撃ちこまれた。自衛隊はオランダ軍の連絡を受けてコンテナや装甲車の中に避難したと伝えられた。イラク情勢が激化し、米軍とイラク人民との戦斗が激しくつづくなかで、サマワでも自衛隊撤退を求めるデモが起き、外には出れず、かといって撤退するわけでもない自衛隊はひたすら郊外の宿営地にジッーとたてこもっている。たくさんの税金を使って、イラクにいる意味はないのだ。最近では自衛隊宿営地付近にも迫撃砲が撃ちこまれたが、政府はそれでも「非戦斗地域だ」といっている。

 世界的にはスペイン軍の撤退につづいて中米のホンジュラス、ドミニカ共和国が撤退を表明。エルサルバドルもそれにつづく動きを見せている。その他にもポルトガル、フィリピン、タイなど派遣している国国が揺らぎはじめている。日本政府は「撤退すればテロを利するだけ」「判断は各国のそれぞれ」とくり返している。現実に全世界で高まる反米斗争の高まりと、イラクで勢いをもって発展する人民斗争の高まりを故意に無視してアメリカへの追随を深めている。それはアメリカにたいして自決権すら持たず、戦争の泥沼に巻きこまれていく愚かな植民地国家としかいいようがない。

 泥棒の下働きをする自衛隊
 もともと自衛隊派兵が、占領した米英軍がイラクで人民の強力な抵抗にあって泥沼に入り、独仏露各国が出兵を拒否し、カナダなども難色を示すなかで、窮地にあるアメリカの強い要請にこたえてかり出された出兵であった。だれの目から見てもわかることは、第二次大戦ですら行かなかったはるか遠くの見も知らぬイラクの地で自衛隊が独自行動できるわけはなく、アメリカ占領軍の指揮下で、そのコマとなって動くほかないことは明らかであった。そして自衛隊が、石油を略奪し、生活を破壊している占領軍一味として、イラク国民の恨みのマトになることは火を見るより明らかであった。それは窮地に立つアメリカ軍の肉弾要員と見るほかない。
 小泉は「復興支援だ」といって自衛隊を出した。そして「復興支援のために行っているのに攻撃されたら反撃は正当防衛だ」「テロには屈しない」といって、武力参戦を正当化する論法である。人質事件での政府の対応は、3人の解放よりもむしろ殺害を誘導し武力参戦に踏み出す格好の材料にする意向が働いていたとみても不思議ではない。復興支援に行った3人が殺されずに帰ってきて小泉は腹を立てた。
 アメリカが「イラクの民主化」といってフセインどころでない人殺しをやって恨みを買い、自衛隊が「復興支援」などといって米占領軍の下働きをする。イラク人民に大量の爆弾の雨を浴びせ、電気水道などのライフラインを破壊し尽くし、病院も学校も石油施設も発電施設も破壊しつくしたアメリカ一味の自衛隊が「復興支援」を叫んでも、イラク人民が納得するわけがない。なによりイラクの戦後復興は破壊者であり戦争放火者であるアメリカ占領軍を追い出さなければできるわけがないのである。
   
 日本の独立が急務 石油強奪に動員
 すでにアメリカがイラク戦争で大義名分としてきた「アルカイダとの関係」、「大量破壊兵器の保有」などの根拠は崩壊し、イラクの地下に豊富に眠る石油資源を略奪する泥棒戦争であったことは明らかになっている。それは人をなぐりつけて薬を売りつけるような、ならずものの蛮行としかいいようがない。世界で豊富な資源を有する国家は、ならずものアメリカの巡航ミサイルの的にされ、屁理屈をつけては攻撃の対象になるというのがアフガン戦争であり、イラク戦争である。
 イラク戦争によって米軍需大手は在庫兵器の大量消費で軍需景気をおう歌。チェイニー副大統領と関係の深いハリバートンなど米国の建築関連大手企業もイラク復興事業でボロもうけしている。イラク国内は米占領軍の下請である連合国暫定当局(CPA)が、国営企業の100%民営化、関税撤廃、「利益の無制限国外移転」など、アメリカがイラクの富を好き放題に強奪できるように変えた。こうしてイラク国民の大多数が失業し、貧困にあえいでいる。石油を略奪し、植民地的な占有、略奪、殺りくの性質が明らかになるにつれて、イラク国民の怒りが高まり、米占領軍への武装攻撃をふくむ抗議の行動が激化するのは当然であった。そして自衛隊の「復興支援」はイラクを支援するのではなく、石油を略奪し、復興需要にまぶりつくアメリカ企業の復興支援であり、そのおこぼれに預かる日本企業の復興支援を意味している。
 91年の湾岸戦争への掃海艇派遣から、PKO法によるカンボジア派遣等等、そして最近ではアフガン攻撃でもアメリカ軍の人殺しの手伝い要員としてインド洋で油運びをやってきた。「アメリカ兵からはバナナと呼ばれて、みじめなあつかいだった」。帰還した自衛隊員が家族に漏らす情けない話は山口県下関市でも聞かれた。
 90年代をつうじて、「後方支援」などといってズルイ形でジワリジワリとアメリカの引き起こす戦争への下請参戦の態勢を強めてきた。そして国内では有事法、個人情報保護法案等、世論弾圧の法整備をすすめてきた。これがイラクへの武力参戦にとどまらず、今後想定している朝鮮、中国、ロシアなどとの、まさに日本を戦場とした戦争までもすすむことは疑いない。この日米同盟による戦争放火に反対し、平和擁護の斗争を日本国内で力あるものに結集していくことは重大な課題となっている。
 アメリカに隷属した戦争政策が、日本国内では、国民からふんだんにしぼりとった税金を軍事費につぎこむ。あれだけの税金をとっておきながら、医療費はじめ社会保障費や教育費など国民生活に必要なものは国民負担にかぶせて、いまや義務教育すらまともに保障しない、生活弱者には「自己責任」で「死刑宣告」。不景気で路頭にほうり出された失業者には仕事がなく、急にはどうにもならない。市町村は自治体合併で切り捨てられる羽目になっている。国民生活の破壊の実情が都市部といわず、郡部といわずあふれている。権力の中枢は戦争の方が忙しくて、国民の幸せや生活についてはいっさい考えない無責任国家というほかない。
 すべての平和を愛し国を愛するものが、日本の独立と民主主義、平和と繁栄を求めるたたかいのために政党政派や思想信条をこえて一致団結した国民的な力を結集することが必要であり、そのために下からの運動を盛り上げていくことが求められている。

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