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「アメリカ一極化の破綻と新たな道拓く独自外交」 ジェフリー・サックス教授(コロンビア大学)の欧州議会での講演《下》

(2025年3月14日付掲載)

ヤヌコーヴィチ政権を転覆させたクーデター「マイダン革命」がくり広げられたキエフのマイダン広場(2014年2月)

前編はこちら

 

「マイダン革命」からウクライナ戦争へ

 

ジェフリー・サックス氏

 2014年、アメリカはウクライナのヤヌコーヴィチ政権を打倒するために積極的に動いた。コロンビア大学の同僚ビクトリア・ヌーランド(米国務次官補)と、アメリカの駐ウクライナ大使ジェフリー・パイアットの電話が傍受されたことはすでに誰もが知っている。これ以上の証拠はない。ロシアは通話内容を傍受してインターネット上に公開した。ぜひ聞いてほしい。

 

 興味深いことに、この件に関与した彼らは全員、バイデン政権下で昇進した。これが「仕事」なのだ。「マイダン革命」(ヤヌコーヴィチ政権打倒のクーデター)が発生した直後、私は連絡を受けた。「サックス教授、新しいウクライナ首相が経済危機についてあなたと話したがっている」と。私はすぐにキエフへ飛び、マイダン広場を案内された。そして、いかにアメリカがマイダン周辺にいたすべての人々のために資金を提供し、その「自発的」な尊厳革命を支援したかを聞かされた。

 

 どうか冷静に考えてみてほしい。マイダン革命時、なぜ突然ウクライナ国内に無数の新しいメディアが登場したのか? これらの組織はどこから生まれたのか? これほど多くのバスはどこから来たのか? そして、なぜあれほど多くの人々が一斉に集結できたのか? 冗談ではない。これは組織的な企みだった。そして、それは欧米の市民以外にとっては秘密でも何でもない。その他の誰もがこのことをはっきり理解している。

 

 このクーデター後、ミンスク合意、特に「ミンスクⅡ」が締結された。これは、偶然にもイタリアにおけるドイツ系住民のための南チロル自治県をモデルとしたものだ。また、ベルギー人もよく理解できるはずだ。なぜなら、この合意は東ウクライナのロシア語話者の自治と言語の権利を保障するものだからだ。「ミンスクⅡ」は国連安全保障理事会(2015年2月17日)において全会一致で支持された。

 

 しかし、アメリカとウクライナはこの合意を履行しないと決定した。ミンスク合意の保証国であったドイツとフランスもそれを放置した。これはアメリカの単独行動主義のさらなるあらわれであり、合意の保証人であったヨーロッパは、いつものように完全に無力な補助的役割を演じたにすぎない。

 

 トランプは2016年の米大統領選に勝利した後、ウクライナへの武器供給を拡大した。ドンバス(東ウクライナ)では、ウクライナ軍の砲撃によって何千人もの命が失われた。「ミンスクⅡ」は履行されなかった。

 

 そして2021年、バイデンが大統領に就任した。またも私はこれらの人々を全員知っている。より良い展開を期待したが、再び深く失望した。私はかつて民主党員だったが、今ではどの党にも属さないことを固く誓っている。どちらの党も結局同じだからだ。民主党は次第に完全な好戦主義者となり、党内には平和を求める声が一つもなくなった。これは、ほとんどの欧州議会議員についても同じことがいえる。

 

 2021年末、プーチンはアメリカとの関係において、最後の協議の機会を提案した。彼は、ヨーロッパ向けとアメリカ向けの二つの安全保障協定案を示し、そのうちロシア・アメリカ間の草案を2021年12月15日に正式に提示した。

 

 その後、私はホワイトハウスの国家安全保障担当補佐官ジェイク・サリバンと1時間、電話で会談した。私は「ジェイク、戦争を回避してほしい。戦争は避けられる。アメリカが“ウクライナにまでNATOは拡大しない”といえば、それだけで戦争は防げる」と懇願した。

 

 彼はこう答えた。「ああ、NATOはウクライナに拡大しない。心配することはない」。

 

 私は「ジェイク、それを公に発表してくれ」と頼んだが、彼は「いや、公にはいえない」と答えた。「実際には起こらないことで戦争をするつもりなのか?」と尋ねると、彼は「心配するな、ジェフ。戦争にはならないから」といった。

 

 彼らは決して賢い人間ではない。40年間も、彼らは自分たちの間でしか話をせず、他の誰とも対話をしない。彼らがしているのは、ゲーム理論のシミュレーションだ。「非協力ゲーム理論」では、相手と交渉せずに独自の戦略を決める。これがこの理論の本質だ。交渉理論でも平和構築理論でもない。ただの一方的な非協力的戦略なのだ。

 

 この種のゲーム理論は、元々RAND(ランド)研究所で実用化された。今でも彼らはこれを続けている。2019年にRAND研究所が「ロシアを拡張させる有利な立場からの競争」という論文を発表した。バイデンはこれに従った。この論文(公開文書)は、ロシアをどのように苛立たせ、挑発し、弱体化させるべきかを論じている。これがまさに戦略だ。相手を挑発し、分裂させ、政権交代を起こさせ、国内不安や経済危機を引き起こすことを狙う。これが欧州の皆さんが「同盟国」と呼ぶ存在の姿だ。

 

 当時、ちょうど妻とスキーに行こうとしていた私は、凍える寒さのなかで、サリバンとの長く苛立たしい電話に付き合わされた。

 

 「ああ、戦争にはならないよ、ジェフ」――その翌月、何が起こったかは周知の通りだ。バイデン政権はロシアとの交渉を拒否した。の最も愚かな考えは、1949年のNATO条約第10条に基づく「オープンドア・ポリシー(門戸開放政策)」だ。これは、加盟国の政府が承認する限り、ロシアなどの隣国の意向など一切考慮することなく、NATOはどこへでも拡大できるというものだ。

 

ジェフリー・サックス氏や元外交官、安全保障専門家、退役軍人らが米紙『ニューヨーク・タイムス』(2023年5月17日付)に掲載した意見広告より

 私はメキシコやカナダの人々には「そんなことは考えもするな」と助言する。ご存じの通り、トランプはカナダを乗っとりたいかもしれない。すると、カナダ政府は中国に「オンタリオに軍事基地を作らないか?」と持ちかけることも可能かもしれない。だが、私はそれを勧めない。そのときアメリカが「オープンドアだ。それはカナダと中国の問題であり、われわれには関係ない」というだろうか? そんなはずはない。アメリカは即座にカナダに侵攻するだろう。

 

 だが、ヨーロッパの政治家、欧州議会、NATO、欧州委員会の大人たちは、「ロシアにはNATO拡大についての発言権はない」という馬鹿げた決まり文句をくり返している。これはまったくのナンセンスだ。地政学の初歩以前の話であり、何も考えていないに等しい。

 

 バイデンの交渉拒否によって、ウクライナ戦争は2022年2月に激化した。

 

核軍備管理を破壊 アメリカが一方的に離脱

 

 プーチン大統領の戦争における意図は何だったのか? それはゼレンスキー大統領に中立政策を受け入れさせることだった。その動きは侵攻開始から数日で始まった。ロシアが数万の軍隊でウクライナを征服しようとしたというプロパガンダを信じるべきではない。

 

 まず基本的な点を理解するべきだ。ロシアの侵攻目的は、NATOをウクライナに進出させないことだった。NATOとは何か? ミサイルやCIAの派遣、その他すべてを含むアメリカの軍事力そのものだ。つまりロシアの目的は、アメリカを自国の国境から遠ざけることだった。それ以上でも以下でもない。

 

 なぜロシアはこれほどまでに関心を持つのか?もし中国やロシアが、リオ・グランデ(メキシコ国境)やカナダの国境に軍事基地を設置しようとしたら、アメリカは激怒するだけでなく、10分以内に戦争が勃発するだろう。1962年にソ連がキューバでこれを試みたとき、世界は核戦争の瀬戸際に立たされた。

 

 さらに問題を深刻化させたのは、2002年、アメリカが「弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約」(1972年に米ソが締結)を一方的に放棄し、相対的に安定した核軍備管理の枠組みを崩壊させたことだ。核軍備管理の枠組みは、核による「先制攻撃(指導部殲滅攻撃)」を抑止することを目的としている。そして、ABM条約はその安定性を維持するうえで不可欠な要素だった。

 

 このアメリカのABM条約離脱の決定にロシアは激しく反発した。私がこれまで説明してきたNATOの拡大は、すべてアメリカが核軍備管理の枠組みを破壊する文脈の中で進行してきたのだ。

 

 2010年以降、アメリカはポーランドにイージス弾道ミサイル迎撃システムを配備し、その後ルーマニアにも配備した。当然ながら、ロシアはこれを快く思わない。

 

ポーランドに配備されたミサイル防空システム(米レイセオン社製)

 2021年12月から2022年1月にかけての交渉で議題となっていた問題の一つは、アメリカがウクライナにミサイルシステムを配備する権利を主張するかどうかだった。元CIA分析官レイ・マクガバンによれば、ブリンケン米国務長官は2022年1月にロシアのラブロフ外相に対し、「アメリカはウクライナにミサイルシステムを配備する権利を留保する」と伝えたという。

 

 これが皆さんの「同盟国」だ。そして今、アメリカは中距離ミサイルシステムをドイツに配備しようとしている。覚えておくべきことは、アメリカが2019年にINF(中距離核戦力全廃条約)を破棄したということだ。現在、核軍備管理の枠組みは事実上存在していない(アメリカは2019年2月2日から6カ月間の停止期間を経て、同年8月2日にINFから正式に離脱した)。

 

 ロシアの侵攻から数日後、ゼレンスキー大統領が「ウクライナは中立化に応じる用意がある」と発言したとき、和平合意は手の届くところにあった。私は主要な交渉担当者や仲介者と詳細に話をし、他の人の公の発言からも多くを学び、この詳細をよく知っている。

 

 2022年3月に停戦交渉が開始された直後、プーチン大統領が承認し、ラブロフ外相が提示した文書が当事者間でやりとりされた。この交渉はトルコの仲介者によって進められていた。私は2022年春にアンカラ(トルコ首都)へ飛び、仲介者から直接、詳細な経緯を聞いた。結論はこうだ。ウクライナは合意寸前になって、一方的に交渉を放棄したのだ。

 

停戦交渉潰した米英 100万人の犠牲生む

 

キエフを電撃訪問し、全面的支援を約束したボリス・ジョンソン英首相(2022年4月9日)

 ウクライナが交渉から手を引いた理由は何か? それはアメリカがそうするように指示し、イギリスもそれに拍車をかけたからだ。ボリス・ジョンソン元英首相が2022年4月初旬にキエフを訪れ、同じ主張をウクライナに伝えて事態をさらに悪化させた。

 

 現在のスターマー英首相はさらに悪く、より好戦的である。想像を絶する話だが、それが事実だ。

 

 ボリス・ジョンソンは、「この戦争で危機に瀕しているのは、ウクライナではなく、西側の覇権そのものだ」と説明している。これはウェブサイトでも確認できる。

 

 ミヒャエル・フォン・デア・シューレンベルク(元国連政治平和構築局事務次長、欧州議会議員)と私は2022年春、バチカンで専門家グループと会合を持ち、この戦争の継続からはウクライナにとって何も良いことは生まれないことを説明する文書を作成した。

 

 私たちのグループは、ウクライナが直ちに交渉を開始すべきだと強く主張した。交渉を遅らせることは、大量の死者を出し、核戦争のリスクを高め、さらには戦争そのものに完全敗北する可能性を高めるからだ。しかし、この主張はまったく受け入れられなかった。

 

 当時私たちが書いた文章について、今でも一言も変えたいとは思わない。アメリカがウクライナを交渉から引き離して以来、約100万人のウクライナ人が死亡または重傷を負っているのだ。

 

 しかし、信じがたいほどに意地汚く、冷笑的で、腐敗したアメリカの上院議員らは、この戦争を「アメリカの資金のすばらしい使い道だ」といっている。これは純然たる代理戦争である。

 

 ニューヨーク州に近いコネチカット州選出のリチャード・ブルメンタール上院議員は、これを公然と発言した。ミット・ロムニー上院議員も同じことをいった。「これはアメリカにとって最高の投資だ。なぜなら、アメリカ人は1人も死なないからだ」。信じられない発言である。

 

 そして、アメリカのウクライナ・プロジェクトは完全に失敗した。その根本的な狙いは「ロシアが屈服する」というものであった。ブレジンスキーが1997年に論じたように、アメリカは「ロシアには抵抗する力がない」と確信し、自分たちの優位性を信じていた。

 

 「アメリカがブラフ(こけ脅し)を張れば勝てる。ロシアは本気で戦おうとはしない。本格的には動員できない。SWIFT(国際金融取引ネットワーク)から排除すれば、ロシア経済は崩壊する。制裁でロシアをひざまずかせる。HIMARS(高機動ロケット砲システム)で破壊できる。ATACMS(長距離地対地ミサイル)、F-16(多用途戦闘機)でトドメを刺せる」――正直にいって、私はこんな話を50年以上も聞き続けてきた。わが国の安全保障関係者は何十年にもわたり、こんなナンセンスなたわ言を続けてきたのだ。

 

 私はウクライナ人に懇願した。「主権を守り、領土を守り、命を守り、中立を維持すべきだ。アメリカのいうことを聞いてはいけない」と。

 

 私はヘンリー・キッシンジャー(元米国務長官)の有名な格言を彼らにくり返した。「アメリカの敵であることは危険だ。しかし、アメリカの友人であることは致命的だ」。ヨーロッパのためにもう一度いう。アメリカの敵であることは危険だ。しかし、アメリカの友人であることは致命的だ。

 

現実的な独自外交を トランプについて

 

軍事支援をめぐり激しい口論となったトランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領との会談(1日、ホワイトハウス)

 最後にトランプについて。ウクライナ戦争は終わる可能性が高い。なぜなら、トランプとプーチン大統領が戦争を終わらせることで合意するからだ。たとえヨーロッパが好戦的姿勢を続けても問題ではない。戦争は終わる。だからどうか同僚に伝えてほしい。「もう戦争は終わったのだ」と。

 

 トランプはバイデンの「負け戦」を背負いたくない。ただそれだけだ。偉大な道徳などではない。敗者なのだ。そして今おこなわれている交渉で救われるのは、まずウクライナであり、次にヨーロッパだ。

 

 ここ最近の株式市場は、和平交渉という“恐ろしいニュース”のせいで上昇している。この和平交渉の見通しが欧州議会では恐怖をもって受け止められていることは知っている。だが、これは皆さんが得られる最も喜ばしいニュースであるはずだ。

 

 私はいくつかのヨーロッパの指導者に働きかけた。ほとんどの人間が私から何も聞きたがらなかったが、私はこう伝えた。「キエフへ行くのではなく、モスクワへ行って相手と話し合え。皆さんは欧州連合(EU)だ。4億5000万人の人口と20兆㌦規模の経済を持っている。それにふさわしい行動をとれ」と。

 

 EUは、その自然なつながりによってロシアの主要な貿易相手国であるべきなのだ。欧州とロシアの経済は相互補完的であり、双方にとって有益な貿易関係を築く絶好の条件が揃っている。ところで、もしもアメリカがどのようにノルドストリーム(ロシアと欧州を結ぶ天然ガスのパイプライン)を爆破したかについて議論したい人がいるなら、私は喜んでそのことについて話すつもりだ。

 

 トランプは根っからの帝国主義者だ。世界は大国が支配するものだと明確に信じている。できるときにやりたいことをやり、損失は容赦なく切り捨てる。それはヨーロッパに対しても同じだ。世界で起きているいくつかの戦争の行方はまだ流動的だ。もしヨーロッパが適切な政策を持っていたら止められた戦争だった。中国との戦争の可能性も払拭はできない。だから私は、私たちが新しい平和の時代に入ったといっているわけではない。だが今、明らかに非常に異なる政治の時代、大国間政治への回帰のなかにいる。だからヨーロッパには「ルソフォビア(ロシア恐怖症)」だけを基盤とした外交政策ではなく、独自の現実的な外交政策が必要なのだ。

 

 すなわちロシアの立場を理解し、ヨーロッパ自身の立場を理解し、アメリカとは何なのか、アメリカが何を目指しているのかを理解したうえで、ヨーロッパがアメリカの支配下に置かれるのを防ぐための外交政策だ。

 

 トランプ政権下のアメリカがデンマーク領(グリーンランド)に軍を派遣することは決してありえない話ではない。これは冗談ではなく、彼も冗談でいっているわけではないだろう。本物の外交政策とは、「はい、トランプ氏と交渉して折り合いをつけましょう」というものではない。それがどういう結果をもたらすか知りたければ、あとで私に電話してほしい。

 

 アメリカの役人をヨーロッパの代表にすべきではなく、ヨーロッパの役人をヨーロッパの代表にすべきなのだ。皆さんはこれからも長い間、ロシアと共に生きていくことになる。だからこそロシアと交渉してほしい。現実にヨーロッパとロシア双方にとっての安全保障問題はある。しかし、大げさな話やロシア恐怖症は、ヨーロッパ、ウクライナのいずれの安全保障にもまったく役立っていない。皆さんが賛成して署名し、今では先頭に立って推進している、アメリカの馬鹿げた「冒険」によって、約100万人のウクライナ人が犠牲になったのだ。

 

中東とアジアの和平 EUが果たすべき役割

 

一時停戦を迎え、瓦礫の中を歩いてガザ北部の居住区に戻るパレスチナ難民たち(1月19日)

 皆さんは中東問題でも「何も解決しない」応援団長でしかなかった。アメリカは30年前、中東の外交政策を完全にネタニヤフに引き渡した。イスラエル・ロビーがアメリカの政治を支配している。その仕組みについて私は何時間でも説明できる。非常に危険な状況だ。

 

 私は、それによってトランプが政権を崩壊させないこと、そしてパレスチナの人々を壊滅させないことを願っている。ネタニヤフは戦争犯罪者であり、国際刑事裁判所(ICC)によって正式に起訴された人物だ。これ以上の説明は必要ない。

 

 パレスチナ国家の存在を認めることは、国際法による平和の唯一の方法だ。そして、ヨーロッパと中東の国境で平和を保つ唯一の方法は、二国家解決だ。それを阻んでいる唯一の障害は、国連安全保障理事会におけるアメリカの拒否権だ。これはイスラエル・ロビーの命令によるものだ。

 

 もしEUが影響力を持ちたいのであれば、アメリカに拒否権を撤回するよう求めるべきであり、この点でEUは世界の約160カ国と歩調を合わせることができる。

 

 パレスチナ国家の承認に反対しているのは、基本的にアメリカ、イスラエル、ミクロネシア、ナウル、パラオ、パプアニューギニア、アルゼンチン、パラグアイだけだ(国連はパレスチナを正式な加盟国として迎えることで中東紛争を終わらせることができる)。

 

 中東は、EUが大きな地政学的影響力を発揮できる地域だ。しかし、ヨーロッパはイラン核合意(JCPOA)やイラン問題について沈黙し、さらにヨーロッパの約半分の国が、イスラエルの戦争犯罪や二国家解決の阻害について沈黙している。

 

 ネタニヤフの人生最大の夢は、アメリカとイランの戦争だ。そして、彼はその夢を諦めていない。それが勃発する可能性もゼロではないだろう。私はトランプがアメリカ政治におけるネタニヤフの支配を終わらせることを願っているが、それが叶わなかったとしても、EUが独自の外交政策を持ち、世界の他の国々と協力すれば、この戦争を阻止し、中東に平和をもたらすことは可能だ。

 

 最後に、中国について言及しておく。中国は敵ではない。中国は単に成功を収めた国だ。それゆえにアメリカは中国を敵視している。なぜなら、中国の経済規模は(国際的な価格基準で測ると)アメリカを上回っている――それがすべてだ。アメリカは現実を受け入れようとしない。しかし、ヨーロッパはそうすべきではない。くり返すが、中国は敵でも脅威でもないどころか、貿易や地球環境保全において、ヨーロッパにとって自然なパートナーなのだ。

 

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【出典】

The Geopolitics of Peace – Jeffrey Sachs in the European Parliament(YouTube)

Consortium News「Jeffrey Sachs: The Geopolitics of Peace」February 27, 2025

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