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国際刑事裁判所(ICC)がネタニヤフらの逮捕状を発行 推定18万人死亡のガザ虐殺の戦争犯罪 問われる締約国日本の態度

(2024年11月25日付掲載)

イスラエルによる攻撃で数千人の子どもたちが死亡したガザ地区ジャバリア難民キャンプ(12月4日、パレスチナ)

 パレスチナ・ガザ地区で1年以上にわたって続くイスラエルによる大量虐殺をめぐり、国際刑事裁判所(ICC)は11月21日、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相に対し、戦争犯罪などの容疑で逮捕状を発行した。現在、124カ国がICCの締約国になっているが、欧州諸国のなかからもこの決定を支持する態度表明があいついでいる。

 

 ネタニヤフらに対しては、5月20日、ICCのカリム・カーン主任検察官が逮捕状を請求していた。理由は、ガザを完全に封鎖して食料や水などの搬入を阻止していることが「飢餓を戦争の手段として用いる」戦争犯罪に該当すること、ガザの住民に対する大規模攻撃が人道に対する犯罪を構成すること、などだった。この間、予審裁判部が審理していたが、以上の内容が認められて正式に逮捕状の発行となった。

 

ネタニヤフ首相

 この決定に対して、ネタニヤフ首相は「反ユダヤ主義的な決定」だと猛然と抗議し、米バイデン大統領も「言語道断」と非難する声明を出して受け入れない姿勢を示した。一方、イギリス、イタリア、カナダ、スペインなど締約国があいついでICCの決定を支持する態度表明をおこなっている。

 

 パレスチナ問題を担当している国連特別報告者フランチェスカ・アルバネーゼ氏は、「イスラエル指導者らの逮捕命令は、虐殺加害者に対する処罰および正義の実施というわれわれの要求の実行であり、パレスチナ人は爆撃、殺害、飢餓から守られるべきだ」とのべた。

 

 5月に逮捕状が請求されたときから、イスラエルとアメリカはこれに激しく反発し、ICCに対して脅迫じみた圧力をかけてきた。米連邦議会上院議員らがカーン検察官に対し、「米国のICCへの支援をすべて終了し、ICCの職員や支援者に制裁を科し、あなたや家族の米国への入国を禁止する」との書簡を送った。連邦下院ではICC関係者への制裁を可能にする法案も可決された。

 

 一方、全世界で「ガザのジェノサイドを止めろ」「パレスチナ連帯」の大規模な世界同時行動が何度もとりくまれ、イスラエル国内でも即時停戦を求めて数十万人がデモ行進をおこなうようになった。

 

 グローバルサウスの国々が批判を強め、南アフリカの提訴によって国際司法裁判所(ICJ)がジェノサイドの審理を開始し、「予防する全手段を講じよ」との暫定命令を出した。また、国連人権理事会がイスラエルへの武器禁輸を求める決議を可決した。さらにICJは、イスラエルによるガザと西岸の占領は不法であるとしてその終了を訴える勧告的意見を出し、9月の国連総会で1年以内の占領終了を求める決議が採択された。

 

 さらにイスラエル国会が10月、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を禁止する法律を制定すると、パレスチナ問題を担当する国連特別報告者がイスラエルの国連加盟国資格停止の検討を提言した。

 

 現在までにガザでは、子どもや女性をはじめ4万4000人以上が虐殺されている。瓦礫に埋まっている人を含めると、死者は18万人以上ともいわれる。これに対して世界中で即時停戦、ジェノサイドと占領をやめよとの声が上がるなか、イスラエルと最大の武器供与国であるアメリカの孤立がきわめて鮮明になっている。

 

 ICCは、戦争犯罪や人道に対する犯罪など「もっとも重大な犯罪」を犯した個人を国際法にもとづいて訴追・処罰するための国際刑事法廷で、冷戦終結後に世界で内戦が頻発するなか、2002年に設立された。国連の機関であるICJと違って、国連から独立した機関であり、締約国によって支えられている。

 

 アメリカにとっては、9・11以後のイラクやアフガニスタンに対して侵略戦争をおこなっている時期であり、みずからが提訴されることを恐れてICC設立条約(ローマ規程)の批准を拒否。イスラエルも拒否している。一方パレスチナ自治政府は、2012年に「国連のオブザーバー資格を持つ非加盟国」と認められ、2015年にローマ規程の正式な締約国になった。それによってICCに管轄権があることになり、今回の逮捕状発行となった。

 

 ICCの逮捕状の発行によって、すべての締約国はネタニヤフらの捜査・訴追への協力、身柄を拘束して引き渡す義務を負うことになった。日本は締約国であるとともに、ICCの最大の資金拠出国である。

 

 日本政府・外務省は、イスラエル大使を呼び出して、今回の決定に従う日本政府の方針を厳粛に告げなければならない。また、イスラエルが国際社会の警告を無視してあくまで虐殺を続けるなら、イスラエルとの軍事協力の中止、経済・外交関係の見直しを判断しなければならない。ただちにガザの虐殺をやめさせるための、世論の一層の喚起が求められている。

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