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米コロンビア大学 イスラエルのガザ虐殺に抗議する学生150人を逮捕 米国で学生・大学人による抗議行動広がる

イスラエルのガザ虐殺に抗議してキャンパス前に座り込むコロンビア大学の学生たち(4月20日、米ニューヨーク)

コロンビア大学の学生たちのパレスチナ連帯行動に共鳴して路上でスタンディングをする市民を逮捕するニューヨーク市警(4月18日)

 アメリカのコロンビア大学(ニューヨーク)で4月18日、イスラエルのガザでの大量虐殺に抗議しパレスチナ人と連帯する学生たちの学内での活動に対して、警察を導入して強制排除し150人以上の学生が大量逮捕される事態となった。アメリカ議会の公聴会でミノーシュ・シャフィク学長が学生たちの言動が「反ユダヤ主義」だと認めたその翌日のことである。学内での自由な対話を通して真実を求めてきた学生たちの反発はさらに高まり、全米の大学でコロンビア大学の学生に連帯する運動が広がっている。

 

 コロンビア大学当局の要請で学内に入ったニューヨーク市警はキャンパス内にいた学生たちを「不法占拠」といって逮捕し、芝生に建てられた「連帯キャンプ」のテントと学生たちの物品を破壊した。大学当局は学生たちを停学処分とし、出席するには年間6万㌦(約930万円)以上という途方もない授業料を支払うという条件をつけている。

 

 この事態が報じられるや、ブラウン大学、イェール大学からハーバード大学までアイビーリーグ(米東部の主要私立大学)の学生たちはそれぞれのキャンパスでの座り込み、ハンガーストライキ、授業ストライキ、異宗教間の祈りを展開し、米国のイスラエル支援と大量虐殺に学術機関が共謀することをやめるよう訴えている。

 

 ノースカロライナ大学チャペルヒル校(UNC)の学生も学内にテントを設営し、集会でハーバード大学の学生が発言し、「堅実なコロンビア大学の学生と連帯してストライキをおこなう」と語った。ボストン大学やマイアミ大学、オハイオ州立大学でも緊急抗議活動がおこなわれた。

 

 コロンビア大学では歴史学者のバーナビー・レインが、アイビーリーグの同僚の教育者たちに、学生たちの抗議活動に連帯するよう呼びかけた。

 

 「私の雇用主であるコロンビア大学が大量虐殺に対する平和的な抗議活動を鎮圧するためにキャンパス内に武装機動隊を出動させているなか、私たちは皆で声を上げなければならない」「逮捕された教え子たちを誇りに思う。歴史もそうなるだろう」

 

 バーナード大学(コロンビア大学内の女子大)を卒業した俳優シンシア・ニクソンは大学当局の対応に、「学生が平和的に抗議活動をする権利を暴力的に押しつぶしていることにショックを受け、恥じている。これは私たちの姿ではない。両校はこれらの学生を直ちに復学させ、自由なパレスチナのためにたたかう権利を守らなければならない」と訴えた。

 

エドワード・サイード守った学風 著書は必読書に

 

エドワード・サイード(1935~2003)

 コロンビア大学はこれまで学問・研究の自由を守るために権力の介入を許さない学風で知られてきた。このことは、パレスチナ研究で世界的に著名なパレスチナ系アメリカ人のエドワード・サイード(1935~2003年)が教授(文学研究・批評)として40年間、教壇に立ったことと無関係ではない。同大学が昨年10月来のアメリカの学生たちのパレスチナ連帯運動の先駆けとなり、今回の弾圧の標的になったこととともに。

 

 サイードは長らくパレスチナ解放機構(PLO)の評議員であったが、1993年のオスロ合意に反対し、アラファト(当時の議長)と決裂した経歴がある。彼はイスラエルがパレスチナ人を抑圧する手段として、「反ユダヤ主義とヨーロッパのユダヤ人の窮状を兵器化している」ことを一貫して批判し続けた。

 

 サイードが「(アメリカでは)強力な組織や利害関係者(報道機関、リベラルな知識人層、軍産複合体、学界、労働組合など)が、イスラエルとシオニズムを無批判に支持することによって、国内的にも国際的にもその地位を高めている」「すべてのリベラル派や“急進派”さえも反シオニズムを反ユダヤ主義と同一視するシオニストの習慣を克服できていないことを認めなければならない」「ユダヤ人大量絶滅の時代に何をしたかという非常にデリケートな領域に踏み込むことへの恐れが、イスラエルへのほぼ全員一致の支持を規制された形で強要する一因となっている」と書いたのは、1979年のことであった。

 

 そのため、サイードはコロンビア大学の研究室をたびたび襲撃され、何度も殺害予告を受けテロやスパイの嫌疑を受けた。2000年7月、イスラエル・ロビーがコロンビア大学にサイードの処罰を求めたとき、大学はこれを拒否する声明で次のようにのべていた。

 

 「大学にとって、政治的に支配的なイデオロギーによる萎縮効果を恐れることなく、自由に自分の意見を表明すべき個人の自由な言論を保護すること以上に基本的なものはない。これは大学の基本的な価値観の核心に切り込まれている」「もしサイード教授の自由な書き込みと発言の保護を否定した場合、次に誰の言論が弾圧されることになるのか、そして誰が報復を恐れることなく自分の考えを話す権利があると諭すことができるのか」と。

 

 そして、コロンビア大学ではサイード教授のポスト植民地主義、ヒューマニズム、民主主義批判に関する著作は人文学科すべての学生の必読書に指定されてきたのだ。大学に向けた学生たちの抗議のプラカードには、次のようなものがある。

 

 「コロンビア大学よ、私に使わせたくないのに、なぜエドワード・サイード教授を読む必要があるのですか?」

 

キャンパスの中にキャンプを張り、座り込むコロンビア大学の学生たち(4月25日、米ニューヨーク)

(4月26日付)

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